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凶行
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息子に刃を向けると言ったほのかを止めるべく差し出した秀一郎の手を巧みにかいくぐり、母屋をめざしたほのかは、すやすやと眠っている龍也の前に立った。だが、道連れにすると言ったものの、その無垢な姿を見てしまうと、自身の息子孝憲と重なり刃物を振り下ろすことができない。
「ほの、バカなことは止めるんだ。さぁ、それをこっちに貸して」
やがて後を追ってやってきた秀一郎にそう言って差し出された手をほのかはすんでの所で振り切って今度は秀一郎に刃を向ける。
「バカはどっちよ。秀だって自分の子を殺そうとしているじゃない」
まだ生まれてないだけで同じ命よと涙目で言うほのかに、秀一郎は返す言葉がなかった。
しかし、そのとき、物音を聞きつけて未来がやってきた。今の秀一郎は、帰宅後何をおいても息子の顔を見ないとはじまらないので、玄関にいなければ龍也の所にいると判断したからだ。
「秀一郎さん、お帰りだったんですか。
ごめんなさい、龍也がお昼寝している間に、千波の遠足の用意をしておこうと思って……」
と言いながら龍也の寝ている部屋のドアを開ける。それを見たほのかの目がすっと細められ口の端が上がった。
(そうよ、この子が悪いのよ。この子がいなかったら秀は私から離れたりしなかった)ほのかは罪悪感を感じない新たなターゲットを見つけたのだ。そして、
「あ、ほのかさん……」
と予想外の来訪者に、こくりと軽い挨拶をした未来は、その手に子ども部屋には似つかわしくない物を握っている事に気づいて後ずさりする。秀一郎が、
「未来さん、逃げて!」
と叫ぶが、恐怖で手が震え、閉めてしまった部屋の扉を再び開けることができない。(殺される……!)目を閉じた未来に、ドンっと衝撃が走る。てっきり刺されたと思った未来だが、痛みはない。代わりに。
「つっ……」
という呻きと共にどうと倒れたのは秀一郎。女二人の間に割って入って、自らの腹で刃を受けたのだ。
「秀! ……どうして? どうしてあんな子を庇わなきゃならないの!?」
ほのかはその事実に半狂乱になりながら秀一郎にそう聞く。
「どうって……家族だからだよ」
それに対して秀一郎は肩で息をしながらそう答えた。
「家族? 秀の家族は私だけよね!」
小さい頃からずっと一緒だったじゃないと、ほのかはわなわなと震えながらそう言うが、
「……いや、今の僕の家族は未来さんと子どもたちだ。人は小さい頃のままではいられない。今は君にだって鳴澤や孝憲がいるじゃない。
わざわざ火中の栗を拾いに行く事なんてないんだ」
と秀一郎はほのかを諭すように返す。ほのかはそれを聞くと、何度も頭を振り、
「イヤよ、イヤ、イヤ! 秀なんて大嫌い!!」
と言って家を飛び出していった。
「ほの、バカなことは止めるんだ。さぁ、それをこっちに貸して」
やがて後を追ってやってきた秀一郎にそう言って差し出された手をほのかはすんでの所で振り切って今度は秀一郎に刃を向ける。
「バカはどっちよ。秀だって自分の子を殺そうとしているじゃない」
まだ生まれてないだけで同じ命よと涙目で言うほのかに、秀一郎は返す言葉がなかった。
しかし、そのとき、物音を聞きつけて未来がやってきた。今の秀一郎は、帰宅後何をおいても息子の顔を見ないとはじまらないので、玄関にいなければ龍也の所にいると判断したからだ。
「秀一郎さん、お帰りだったんですか。
ごめんなさい、龍也がお昼寝している間に、千波の遠足の用意をしておこうと思って……」
と言いながら龍也の寝ている部屋のドアを開ける。それを見たほのかの目がすっと細められ口の端が上がった。
(そうよ、この子が悪いのよ。この子がいなかったら秀は私から離れたりしなかった)ほのかは罪悪感を感じない新たなターゲットを見つけたのだ。そして、
「あ、ほのかさん……」
と予想外の来訪者に、こくりと軽い挨拶をした未来は、その手に子ども部屋には似つかわしくない物を握っている事に気づいて後ずさりする。秀一郎が、
「未来さん、逃げて!」
と叫ぶが、恐怖で手が震え、閉めてしまった部屋の扉を再び開けることができない。(殺される……!)目を閉じた未来に、ドンっと衝撃が走る。てっきり刺されたと思った未来だが、痛みはない。代わりに。
「つっ……」
という呻きと共にどうと倒れたのは秀一郎。女二人の間に割って入って、自らの腹で刃を受けたのだ。
「秀! ……どうして? どうしてあんな子を庇わなきゃならないの!?」
ほのかはその事実に半狂乱になりながら秀一郎にそう聞く。
「どうって……家族だからだよ」
それに対して秀一郎は肩で息をしながらそう答えた。
「家族? 秀の家族は私だけよね!」
小さい頃からずっと一緒だったじゃないと、ほのかはわなわなと震えながらそう言うが、
「……いや、今の僕の家族は未来さんと子どもたちだ。人は小さい頃のままではいられない。今は君にだって鳴澤や孝憲がいるじゃない。
わざわざ火中の栗を拾いに行く事なんてないんだ」
と秀一郎はほのかを諭すように返す。ほのかはそれを聞くと、何度も頭を振り、
「イヤよ、イヤ、イヤ! 秀なんて大嫌い!!」
と言って家を飛び出していった。
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