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広波クリニック
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秀一郎たちは、
「まったく……俺はいつかこんな日が来るんじゃないかと思ってたよ」
腕組みをしながら苦々しい顔でそういう克也に出迎えられた。
「す、すいません……克也さん」
そして、肩で息をする秀一郎に、
「怪我人がしゃべるんじゃない。しゃべるだけの元気があるんなら、こんな風に担ぎ込まれてくる血の気の多い奴らのように、麻酔なしで縫おうか」
と言ってニヤリと笑う。
「先生、さすがにそれは……」
思わず止めに入った未来に、
「冗談だ。秀のようなお坊ちゃんにはとうてい耐えられないだろうしな。内臓に傷でもあった日には大手術だ。未来さんも覚悟していたほうが良いですよ」
手を振りながらそう言った後、用意していたストレッチャーに秀一郎を連れてきた看護師二人で乗せて手術室へと向かう。その手際は非常に良い。だが。進んだ先に秀一郎は首を傾げる(あれっ、設計段階で手術室なんてなかったんだけどな)克也の診療科は心療内科。手術など必要ないはずで、なぜこんな物を作ったのも、それなりに需要があるようなのも分からない。だが、それを質問したところで克也にはまた
「しゃべるな」
と言われるだけだと思ってそのまま素直に麻酔を受ける。秀一郎が割り込んできて躊躇したのか、傷は浅く臓器の重大な損傷はなかった。刺された傷をふさぐだけでよかったので、比較的短時間で縫合手術は終わった。
やがて、麻酔から醒めた秀一郎は、未来が側にいないことに気づいて、
「未来さんは?」
と、様子を看にきた看護師に聞く。
「ちょっとお待ちください」
と言うので、別室で休んでいたのかと思っていたら、やってきたのは克也だった。まぁ、縫合してくれたのだから、患者の経過を看るのは当然のことだろうと思う。
「どうだ、気分は」
と、医者として当然の質問をする克也に、
「どうって言っても、別に。まだ麻酔が効いているのかな、痛みもないよ。
このたびは本当にありがとう。助かった。
でも、克也さん手術室なんて何であるの?」
と、当然身体を起こすことはできないので、首だけで会釈する。
「ま、止むに止まれずってとこでな。秀は権堂の親父さんを知ってるか」
それに対して克也はそう質問を質問で返す。変わった名字だが、共通の知り合いにそんな人はいなかったはずだ。すると、克也は
「権堂一。青龍会のドンといえばわかるか」
と付け加えたので、秀一郎はその説明に目をむいた。克也は秀一郎の驚いている様子を見なかったように、
「ここな、すぐ近くに青龍会の組事務所があるんだよ。
んで、開院間もない頃に、腹に弾を食らった奴がウチに逃げ込んできてさ、仕方なく弾出してやったんだよ。警察にはもちろん内緒でな。
そしたら権堂の親父さんに気に入られちまったのか、礼だとか言って勝手に改装されちまったんだよ。
以来、ここは青龍会の隠れ駆け込み寺だ。
ま、本業ではとっても入ってこない金が入ってくるんで、文句も言えないんだけどな」
と言いながら秀一郎の脇から入れてあった体温計を抜いて熱のないことを確認する。そして、
「では、単刀直入に聞く。一体、どうしてこんなことになった」
それまでの笑顔を消してそう質問した。
「……」
ケンカの原因を答えあぐねている秀一郎に、克也は
「未来さんからはおまえが盾になったと聞いているが、ほのちゃんが彼女を狙うなんて今更だろ。
しかもあの後、ほのちゃんは車に轢かれて意識不明の重体だ。
何があったんだ、答えろ秀」
と詰め寄った。
「まったく……俺はいつかこんな日が来るんじゃないかと思ってたよ」
腕組みをしながら苦々しい顔でそういう克也に出迎えられた。
「す、すいません……克也さん」
そして、肩で息をする秀一郎に、
「怪我人がしゃべるんじゃない。しゃべるだけの元気があるんなら、こんな風に担ぎ込まれてくる血の気の多い奴らのように、麻酔なしで縫おうか」
と言ってニヤリと笑う。
「先生、さすがにそれは……」
思わず止めに入った未来に、
「冗談だ。秀のようなお坊ちゃんにはとうてい耐えられないだろうしな。内臓に傷でもあった日には大手術だ。未来さんも覚悟していたほうが良いですよ」
手を振りながらそう言った後、用意していたストレッチャーに秀一郎を連れてきた看護師二人で乗せて手術室へと向かう。その手際は非常に良い。だが。進んだ先に秀一郎は首を傾げる(あれっ、設計段階で手術室なんてなかったんだけどな)克也の診療科は心療内科。手術など必要ないはずで、なぜこんな物を作ったのも、それなりに需要があるようなのも分からない。だが、それを質問したところで克也にはまた
「しゃべるな」
と言われるだけだと思ってそのまま素直に麻酔を受ける。秀一郎が割り込んできて躊躇したのか、傷は浅く臓器の重大な損傷はなかった。刺された傷をふさぐだけでよかったので、比較的短時間で縫合手術は終わった。
やがて、麻酔から醒めた秀一郎は、未来が側にいないことに気づいて、
「未来さんは?」
と、様子を看にきた看護師に聞く。
「ちょっとお待ちください」
と言うので、別室で休んでいたのかと思っていたら、やってきたのは克也だった。まぁ、縫合してくれたのだから、患者の経過を看るのは当然のことだろうと思う。
「どうだ、気分は」
と、医者として当然の質問をする克也に、
「どうって言っても、別に。まだ麻酔が効いているのかな、痛みもないよ。
このたびは本当にありがとう。助かった。
でも、克也さん手術室なんて何であるの?」
と、当然身体を起こすことはできないので、首だけで会釈する。
「ま、止むに止まれずってとこでな。秀は権堂の親父さんを知ってるか」
それに対して克也はそう質問を質問で返す。変わった名字だが、共通の知り合いにそんな人はいなかったはずだ。すると、克也は
「権堂一。青龍会のドンといえばわかるか」
と付け加えたので、秀一郎はその説明に目をむいた。克也は秀一郎の驚いている様子を見なかったように、
「ここな、すぐ近くに青龍会の組事務所があるんだよ。
んで、開院間もない頃に、腹に弾を食らった奴がウチに逃げ込んできてさ、仕方なく弾出してやったんだよ。警察にはもちろん内緒でな。
そしたら権堂の親父さんに気に入られちまったのか、礼だとか言って勝手に改装されちまったんだよ。
以来、ここは青龍会の隠れ駆け込み寺だ。
ま、本業ではとっても入ってこない金が入ってくるんで、文句も言えないんだけどな」
と言いながら秀一郎の脇から入れてあった体温計を抜いて熱のないことを確認する。そして、
「では、単刀直入に聞く。一体、どうしてこんなことになった」
それまでの笑顔を消してそう質問した。
「……」
ケンカの原因を答えあぐねている秀一郎に、克也は
「未来さんからはおまえが盾になったと聞いているが、ほのちゃんが彼女を狙うなんて今更だろ。
しかもあの後、ほのちゃんは車に轢かれて意識不明の重体だ。
何があったんだ、答えろ秀」
と詰め寄った。
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