26 / 32
父親
しおりを挟む
「ほのが!っ、つう……」
ほのかが事故に遭ったと聞いて、怪我をしていることも忘れて起き上がろうとした秀一郎だが、激痛でそれはかなわなかった。その様子に、
「おとなしくしてろ。傷が開くぞ」
と言った克也の一瞬緩みかけた表情が、
「それで、子どもは? 子どもはどうしました?」
という秀一郎の言葉で再び固まる。
「秀、おまえがどうしてそのことを知ってる。
……まさか……!」
と続ける声が震え、バンっと、克也が病室の壁を叩く音が響く。
「ほのちゃんに妊娠兆候は認められるが、エコーにはまだ映ってはいなかった。たぶん受精卵がまだ映るほど育っていないせいだろう。妊娠4週か……多く見積もっても5週ってところだ。それも彼女がうわごとで『子どもを助けて』と言っていたので念のためにした検査だ。
しかも、出張先から慌てて駆けつけた旦那が知らないその事実を、なんで兄貴のお前が先に知っている。
ま、それだけなら双子の片割れのお前に真っ先に伝えただけというとも言い逃れはできるだろう。
それじゃぁ、この未来さんを庇ってお前が刺されたことはどう説明する。
『子どもの本当の父親』が秀、お前で、お前が産むことを反対したからじゃないのか?」
そして、そう推理して声を荒げる克也に、
「うん、さすがだね。克也さんの言う通りだよ」
と、観念したように秀一郎は頷く。それを聞くとカッと秀一郎を睨んで、
「それを避けるために秀はほのちゃんを嫁に出したんじゃなかったのか。俺は、そう聞いたぞ」
何故、未だに不毛な関係を続けているのかと克也は問うた。すると、
「最初は僕が避妊してたんだ。けど、孝憲が生まれた後、ほのが『もう子どもは要らない』ってピルを飲み始めた。けど、本当は飲んでなくて……いや、体質で飲めなくて……」
と秀一郎は渋々状況を説明し始めるが、その内容に克也の眼光がどんどんと鋭くなり、それにつれて秀一郎の声が小さくなっていく。
「ああ、馬鹿馬鹿しい、安全日だのピルだのだなんて、子どもで男をつなぎ止めようとする女の常套手段じゃないか。
それに、ほのちゃんは計画のためなら手段を選ばないことは、未来さんの一件でもよーく分かってるだろ。
ったく、お前の腹なんか縫ってやらなければよかった」
なんなら今から戻そうかという克也に、
「そうしてもらっても構わない。潮時だと思う。いや、僕みたいなのは最初から生まれてこなかった方が良かったんだ」
と真顔でそういう秀一郎。その返答に克也は頭を抱える。
「お前、ホントにバカか。そんなことしたら、こんどは俺が殺人犯になっちまうだろ。
にしても、生まれてこなかった方が良かったとは。YUUKIの御曹司が何を言ってる」
世界を手にしているといっても過言じゃないだろと嗤う克也に、
「本当に、御曹司ならね。残念だけど僕には結城の血は一滴も流れてないんだ」
と秀一郎は驚くような出生の秘密を語り出す。それを聞いて、
「んなバカな。お前ら双子なんだろ? 二人とも? それともお前だけが、お袋さんが産んだことにしてどっかから連れてきたのか?」
と言う克也。それならまだ良かったと秀一郎は思う。ほのかとまったく血のつながりがないのであれば、ほのかの希望通り秘密裏に子どもを儲けても良かった。
「違うよ。僕たちは双子だけど、父様の子どもはほのだけで、僕は違う男の子だ」
「まさか!」
「嘘じゃない。父様はそのために自ら命を絶たれた」
最愛の母様と親友に裏切られたんだよと拳を堅く握り秀一郎は絞り出すようにそう言ったが、
「それは違うな」
と入り口の方から克也以外の声がした。ハッとしてふたりが見るとそこには秀一郎の母夏海の今の夫、諏訪健史が立っていた。
「確かに、秀一郎君は私の実の息子だ」
そして、秀一郎が自分の息子だとあっさり認めた。
「そりゃ、理論上はまったくあり得ない話じゃないけどさ……」
医療従事者である克也もその事実に驚きが隠せない。
「ただ」
だが、話には続きがあった。
「ただ?」
秀一郎の凍り付くような視線をものともせず、
「ただ、夏海を龍太郎を裏切った悪女のように思っているのは間違っている。
彼女は寧ろ被害者だ」
健史はさらに驚くべき真相を語り始めた。
ほのかが事故に遭ったと聞いて、怪我をしていることも忘れて起き上がろうとした秀一郎だが、激痛でそれはかなわなかった。その様子に、
「おとなしくしてろ。傷が開くぞ」
と言った克也の一瞬緩みかけた表情が、
「それで、子どもは? 子どもはどうしました?」
という秀一郎の言葉で再び固まる。
「秀、おまえがどうしてそのことを知ってる。
……まさか……!」
と続ける声が震え、バンっと、克也が病室の壁を叩く音が響く。
「ほのちゃんに妊娠兆候は認められるが、エコーにはまだ映ってはいなかった。たぶん受精卵がまだ映るほど育っていないせいだろう。妊娠4週か……多く見積もっても5週ってところだ。それも彼女がうわごとで『子どもを助けて』と言っていたので念のためにした検査だ。
しかも、出張先から慌てて駆けつけた旦那が知らないその事実を、なんで兄貴のお前が先に知っている。
ま、それだけなら双子の片割れのお前に真っ先に伝えただけというとも言い逃れはできるだろう。
それじゃぁ、この未来さんを庇ってお前が刺されたことはどう説明する。
『子どもの本当の父親』が秀、お前で、お前が産むことを反対したからじゃないのか?」
そして、そう推理して声を荒げる克也に、
「うん、さすがだね。克也さんの言う通りだよ」
と、観念したように秀一郎は頷く。それを聞くとカッと秀一郎を睨んで、
「それを避けるために秀はほのちゃんを嫁に出したんじゃなかったのか。俺は、そう聞いたぞ」
何故、未だに不毛な関係を続けているのかと克也は問うた。すると、
「最初は僕が避妊してたんだ。けど、孝憲が生まれた後、ほのが『もう子どもは要らない』ってピルを飲み始めた。けど、本当は飲んでなくて……いや、体質で飲めなくて……」
と秀一郎は渋々状況を説明し始めるが、その内容に克也の眼光がどんどんと鋭くなり、それにつれて秀一郎の声が小さくなっていく。
「ああ、馬鹿馬鹿しい、安全日だのピルだのだなんて、子どもで男をつなぎ止めようとする女の常套手段じゃないか。
それに、ほのちゃんは計画のためなら手段を選ばないことは、未来さんの一件でもよーく分かってるだろ。
ったく、お前の腹なんか縫ってやらなければよかった」
なんなら今から戻そうかという克也に、
「そうしてもらっても構わない。潮時だと思う。いや、僕みたいなのは最初から生まれてこなかった方が良かったんだ」
と真顔でそういう秀一郎。その返答に克也は頭を抱える。
「お前、ホントにバカか。そんなことしたら、こんどは俺が殺人犯になっちまうだろ。
にしても、生まれてこなかった方が良かったとは。YUUKIの御曹司が何を言ってる」
世界を手にしているといっても過言じゃないだろと嗤う克也に、
「本当に、御曹司ならね。残念だけど僕には結城の血は一滴も流れてないんだ」
と秀一郎は驚くような出生の秘密を語り出す。それを聞いて、
「んなバカな。お前ら双子なんだろ? 二人とも? それともお前だけが、お袋さんが産んだことにしてどっかから連れてきたのか?」
と言う克也。それならまだ良かったと秀一郎は思う。ほのかとまったく血のつながりがないのであれば、ほのかの希望通り秘密裏に子どもを儲けても良かった。
「違うよ。僕たちは双子だけど、父様の子どもはほのだけで、僕は違う男の子だ」
「まさか!」
「嘘じゃない。父様はそのために自ら命を絶たれた」
最愛の母様と親友に裏切られたんだよと拳を堅く握り秀一郎は絞り出すようにそう言ったが、
「それは違うな」
と入り口の方から克也以外の声がした。ハッとしてふたりが見るとそこには秀一郎の母夏海の今の夫、諏訪健史が立っていた。
「確かに、秀一郎君は私の実の息子だ」
そして、秀一郎が自分の息子だとあっさり認めた。
「そりゃ、理論上はまったくあり得ない話じゃないけどさ……」
医療従事者である克也もその事実に驚きが隠せない。
「ただ」
だが、話には続きがあった。
「ただ?」
秀一郎の凍り付くような視線をものともせず、
「ただ、夏海を龍太郎を裏切った悪女のように思っているのは間違っている。
彼女は寧ろ被害者だ」
健史はさらに驚くべき真相を語り始めた。
0
あなたにおすすめの小説
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どんなあなたでも愛してる。
piyo
恋愛
遠征から戻った夫の姿が変わっていたーー
騎士である夫ディーノが、半年以上の遠征を終えて帰宅した。心躍らせて迎えたシエラだったが、そのあまりの外見の変わりように失神してしまう。
どうやら魔女の呪いでこうなったらしく、努力しなければ元には戻らないらしい。果たして、シエラはそんな夫を再び愛することができるのか?
※全四話+後日談一話。
※毎日夜9時頃更新(予約投稿済)&日曜日完結です。
※なろうにも投稿しています。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
女の子がほとんど産まれない国に転生しました。
さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。
100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳
そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。
当面は2日に1話更新予定!
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる