Cascade~行為の代償~

神山 備

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父親

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「ほのが!っ、つう……」
ほのかが事故に遭ったと聞いて、怪我をしていることも忘れて起き上がろうとした秀一郎だが、激痛でそれはかなわなかった。その様子に、
「おとなしくしてろ。傷が開くぞ」
と言った克也の一瞬緩みかけた表情が、
「それで、子どもは? 子どもはどうしました?」
という秀一郎の言葉で再び固まる。
「秀、おまえがどうしてそのことを知ってる。
……まさか……!」
と続ける声が震え、バンっと、克也が病室の壁を叩く音が響く。
「ほのちゃんに妊娠兆候は認められるが、エコーにはまだ映ってはいなかった。たぶん受精卵がまだ映るほど育っていないせいだろう。妊娠4週か……多く見積もっても5週ってところだ。それも彼女がうわごとで『子どもを助けて』と言っていたので念のためにした検査だ。
しかも、出張先から慌てて駆けつけた旦那が知らないその事実を、なんで兄貴のお前が先に知っている。
ま、それだけなら双子の片割れのお前に真っ先に伝えただけというとも言い逃れはできるだろう。
それじゃぁ、この未来さんを庇ってお前が刺されたことはどう説明する。
『子どもの本当の父親』が秀、お前で、お前が産むことを反対したからじゃないのか?」
そして、そう推理して声を荒げる克也に、
「うん、さすがだね。克也さんの言う通りだよ」
と、観念したように秀一郎は頷く。それを聞くとカッと秀一郎を睨んで、
「それを避けるために秀はほのちゃんを嫁に出したんじゃなかったのか。俺は、そう聞いたぞ」
何故、未だに不毛な関係を続けているのかと克也は問うた。すると、
「最初は僕が避妊してたんだ。けど、孝憲が生まれた後、ほのが『もう子どもは要らない』ってピルを飲み始めた。けど、本当は飲んでなくて……いや、体質で飲めなくて……」
と秀一郎は渋々状況を説明し始めるが、その内容に克也の眼光がどんどんと鋭くなり、それにつれて秀一郎の声が小さくなっていく。
「ああ、馬鹿馬鹿しい、安全日だのピルだのだなんて、子どもで男をつなぎ止めようとする女の常套手段じゃないか。
それに、ほのちゃんは計画のためなら手段を選ばないことは、未来さんの一件でもよーく分かってるだろ。
ったく、お前の腹なんか縫ってやらなければよかった」
なんなら今から戻そうかという克也に、
「そうしてもらっても構わない。潮時だと思う。いや、僕みたいなのは最初から生まれてこなかった方が良かったんだ」
と真顔でそういう秀一郎。その返答に克也は頭を抱える。
「お前、ホントにバカか。そんなことしたら、こんどは俺が殺人犯になっちまうだろ。
にしても、生まれてこなかった方が良かったとは。YUUKIの御曹司が何を言ってる」
世界を手にしているといっても過言じゃないだろと嗤う克也に、
「本当に、御曹司ならね。残念だけど僕には結城の血は一滴も流れてないんだ」
と秀一郎は驚くような出生の秘密を語り出す。それを聞いて、
「んなバカな。お前ら双子なんだろ? 二人とも? それともお前だけが、お袋さんが産んだことにしてどっかから連れてきたのか?」
と言う克也。それならまだ良かったと秀一郎は思う。ほのかとまったく血のつながりがないのであれば、ほのかの希望通り秘密裏に子どもを儲けても良かった。
「違うよ。僕たちは双子だけど、父様の子どもはほのだけで、僕は違う男の子だ」
「まさか!」
「嘘じゃない。父様はそのために自ら命を絶たれた」
最愛の母様と親友に裏切られたんだよと拳を堅く握り秀一郎は絞り出すようにそう言ったが、
「それは違うな」
と入り口の方から克也以外の声がした。ハッとしてふたりが見るとそこには秀一郎の母夏海の今の夫、諏訪健史が立っていた。
「確かに、秀一郎君は私の実の息子だ」
そして、秀一郎が自分の息子だとあっさり認めた。
「そりゃ、理論上はまったくあり得ない話じゃないけどさ……」
医療従事者である克也もその事実に驚きが隠せない。
「ただ」
だが、話には続きがあった。
「ただ?」
秀一郎の凍り付くような視線をものともせず、
「ただ、夏海を龍太郎を裏切った悪女のように思っているのは間違っている。
彼女は寧ろ被害者だ」
健史はさらに驚くべき真相を語り始めた。
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