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父の死の真相
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「ウソだ。そんなのでたらめだ!」
と声を荒げる秀一郎に、
「子宮外妊娠でごくごく初期に流産してしまったため、妊娠経験のなかった夏海はそのことに気づかなかった。
龍太郎は後日何らかの形で、そのことを知ってしまったんだよ」
健史は淡々と龍太郎の死の真実を語る。それを聞いた秀一郎は、
「母様さえ知らないことをなぜ父様が知ることができるっていうんです。
自分に都合の良いことばかり言わないでくださいっ……つっう!!」
思わず健史につかみかかろうとして、激痛に阻まれる。
「それは私にも解らない。しかし、龍太郎は本当にそう思っていたんだよ。これを見てくれ」
それに対して健史はそう言うと、一通のエアメールを取り出して秀一郎に渡した。そこには懐かしい父の字で健史が言った内容が綴られ、最後にしっかりと結城龍太郎という署名までされていた。だが、それはエアメールで、しかも宛先が健史ではないことに気づいた秀一郎が、これも偽造したのではないのかと健史を睨む。健史は、
「裏を見てほしい。当時の私の名と住所が記載されているだろう。
龍太郎はかつての同級生を宛名に、差出人を私にしてこの手紙を投函した。住所は実在するものだが、そこにその同級生はいない。当然宛先不明で帰ってくるだけなのだが、外国であるために日本国内の数倍の時間がかかる。龍太郎はそのタイムラグを利用して、すべての捜査が終了した後にこの手紙が届くようにしたんだ」
と言った。
「確かに、初期流産の何割かは子宮外妊娠が原因だと記憶していますが、小母様は本当に妊娠していたんでしょうか。
週数にもよりますが、通常の月経よりも症状は重かったはずです」
克也はそこまで聞いて、医者としての見解を述べる。
「たぶん、間違いなくね。
私もそこの所が気になって、ネットで検索した症状を夏海にそれとなく聞いてみたんだ。
明らかにいつもより激しい生理痛と吐き気やめまいまでして早退したことがあったそうだ。龍太郎もそのことは知っていたはずだと」
「だとすれば、どこかで子宮外妊娠の症例を聞いて、当時の小母様の症状と酷似していたことで、そういう結論に達したんでしょうね」
克也は、健史の説明を聞いて納得したように頷く。しかし、秀一郎には納得がいかなかった。
「だけど……だけどなんでそれだけのことで父様が……」
確かに愛する妻を陵辱してまで得ようとしたのはトラウマになるかもしれないが、自殺するほどのものだろうか。すると、
「聞いた時期も悪かったんだ。
あの時龍太郎は鼻を悪くしていてね。治療が必要だった。だが、耳鼻咽喉科は治療期間も長いし、予約でもしなければ待ち時間が長い。そもそも会社を背負っている立場上予約しても行ける状態ではなかった。
そこで、その事情を聞いた医師は、龍太郎に開発されたばかりの新薬を処方した。
劇的に症状が回復するその薬には、ある欠点があった。すべてではないが、鬱症状を引き起こすことがあったのだ。
これは憶測に過ぎないが、彼の母親は解離性障害だったから、鬱に作用しやすかったのではないかと。
そして、龍太郎は医師が『必ず家族のいるところで服用するように』という注意を守らず、一人で服用したんだ。
龍太郎の死後、薬の袋と診察券で医師に問い合わせた結果、それがわかった」
「そんな……」
健史の説明を聞いた秀一郎は持って行き場のない悲しみに、拳を握り込むことしかできなかった。家族とともに飲めと言われた薬を父が内緒で飲んでいたのは理解できる。それは母が、薬に対して非常に神経質だったからだ。そんな副反応を持っていると知れば、母は『仕事を休んででも別の治療をしてちょうだい』と泣いて父に懇願したはずだ。父の方もできるのであればそうしているからこそ、飲もうとしていた薬なのだと。
そして、マイナスな思考になったところに聞いた『もう一人の子どもの存在』良かれと思ったことが全部裏目に出てしまった父は、ついに自分の人生まで否定してしまったのか……
「父様……」
秀一郎は腹に激しい痛みを感じながらも嗚咽を止めることはできなかった。
と声を荒げる秀一郎に、
「子宮外妊娠でごくごく初期に流産してしまったため、妊娠経験のなかった夏海はそのことに気づかなかった。
龍太郎は後日何らかの形で、そのことを知ってしまったんだよ」
健史は淡々と龍太郎の死の真実を語る。それを聞いた秀一郎は、
「母様さえ知らないことをなぜ父様が知ることができるっていうんです。
自分に都合の良いことばかり言わないでくださいっ……つっう!!」
思わず健史につかみかかろうとして、激痛に阻まれる。
「それは私にも解らない。しかし、龍太郎は本当にそう思っていたんだよ。これを見てくれ」
それに対して健史はそう言うと、一通のエアメールを取り出して秀一郎に渡した。そこには懐かしい父の字で健史が言った内容が綴られ、最後にしっかりと結城龍太郎という署名までされていた。だが、それはエアメールで、しかも宛先が健史ではないことに気づいた秀一郎が、これも偽造したのではないのかと健史を睨む。健史は、
「裏を見てほしい。当時の私の名と住所が記載されているだろう。
龍太郎はかつての同級生を宛名に、差出人を私にしてこの手紙を投函した。住所は実在するものだが、そこにその同級生はいない。当然宛先不明で帰ってくるだけなのだが、外国であるために日本国内の数倍の時間がかかる。龍太郎はそのタイムラグを利用して、すべての捜査が終了した後にこの手紙が届くようにしたんだ」
と言った。
「確かに、初期流産の何割かは子宮外妊娠が原因だと記憶していますが、小母様は本当に妊娠していたんでしょうか。
週数にもよりますが、通常の月経よりも症状は重かったはずです」
克也はそこまで聞いて、医者としての見解を述べる。
「たぶん、間違いなくね。
私もそこの所が気になって、ネットで検索した症状を夏海にそれとなく聞いてみたんだ。
明らかにいつもより激しい生理痛と吐き気やめまいまでして早退したことがあったそうだ。龍太郎もそのことは知っていたはずだと」
「だとすれば、どこかで子宮外妊娠の症例を聞いて、当時の小母様の症状と酷似していたことで、そういう結論に達したんでしょうね」
克也は、健史の説明を聞いて納得したように頷く。しかし、秀一郎には納得がいかなかった。
「だけど……だけどなんでそれだけのことで父様が……」
確かに愛する妻を陵辱してまで得ようとしたのはトラウマになるかもしれないが、自殺するほどのものだろうか。すると、
「聞いた時期も悪かったんだ。
あの時龍太郎は鼻を悪くしていてね。治療が必要だった。だが、耳鼻咽喉科は治療期間も長いし、予約でもしなければ待ち時間が長い。そもそも会社を背負っている立場上予約しても行ける状態ではなかった。
そこで、その事情を聞いた医師は、龍太郎に開発されたばかりの新薬を処方した。
劇的に症状が回復するその薬には、ある欠点があった。すべてではないが、鬱症状を引き起こすことがあったのだ。
これは憶測に過ぎないが、彼の母親は解離性障害だったから、鬱に作用しやすかったのではないかと。
そして、龍太郎は医師が『必ず家族のいるところで服用するように』という注意を守らず、一人で服用したんだ。
龍太郎の死後、薬の袋と診察券で医師に問い合わせた結果、それがわかった」
「そんな……」
健史の説明を聞いた秀一郎は持って行き場のない悲しみに、拳を握り込むことしかできなかった。家族とともに飲めと言われた薬を父が内緒で飲んでいたのは理解できる。それは母が、薬に対して非常に神経質だったからだ。そんな副反応を持っていると知れば、母は『仕事を休んででも別の治療をしてちょうだい』と泣いて父に懇願したはずだ。父の方もできるのであればそうしているからこそ、飲もうとしていた薬なのだと。
そして、マイナスな思考になったところに聞いた『もう一人の子どもの存在』良かれと思ったことが全部裏目に出てしまった父は、ついに自分の人生まで否定してしまったのか……
「父様……」
秀一郎は腹に激しい痛みを感じながらも嗚咽を止めることはできなかった。
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