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ただ、助けられただけの……
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正巳との電話を切ってから今度は私の会社に電話を入れた。
私が勤めるのは、作業ロボットを作っている会社。作業ロボットというと大手の企業が独自に作っているように思われるだろうが、実は割と小さな会社が手作業でということも多い。相手のニーズをいかに形にできるか。それは施設の規模ではなく、開発者の発想能力に負うところが多いからだ。
工業高校の機械科をを出た私は、そんなオーダーメイドな物づくりに惚れ込んでこの会社に入った。
だけど、だからと言ってロボットアニメはあまり見ない。小さい頃はともかく、少し大きくなってからは特に。 何故かというとメインを張るロボットたちは結局がとこ兵器として扱われていることがほとんどだからだ。
ロボットは人を幸せにするものじゃなくっちゃ。誰かが不幸になるような使い方は『彼ら』とってもかわいそうだと思う。
そして、その台詞も実は社長吉田直也の受け売りだ。彼は私の遅ればせながらの初恋の相手。だけど、12歳も年上の社長に私が淡い思いを抱いたときには、既に奥様の由佳さんとの結婚が決まっていて、私はいきなり失恋してしまったのだけど。
「はい、吉田工作所です」
由佳さんがハキハキと明るい声で電話に出た。
「あ、由佳さん、月島です」
それに引き替え私の声はどよんとしている。足が痛いせいもあるけど、それだけじゃない。正直どう言って休もうか悩んでいる。納期の差し迫った仕事があって、本当なら休んでいる暇などないのだ。
「あ、あのね……昨日、足怪我しちゃって……いま動けないんです。今日……休ませてもらえませんか」
続いて、びくびくとそう切り出した私に、
「足怪我して動けないって、入院しちゃったの?」
由佳さんは驚いてそう聞き返してきた。
「い、いえ入院はしてないんですけど。昨日日曜日だったでしょ、まだ松葉杖がないんですよ。ケガ以前に私、運転できないですし、ウチの母も免許持ってなくて」
と、私が由佳さんに事情を説明していると、
「月島、怪我したって?」
電話の声が急に社長に変わって、
「月島、今すぐ着替えて出られるように準備しておけ」
社長がそう言った。
「へっ?」
「俺が迎えに行ってやる」
えっ、わざわざ?
「良いですよ。ミュートスの納期もうすぐでしょ? 私にかまけてる間に動作確認しておいてください」
「だからだろうが。こいつは月島の女性的な発想のおかげでモノにした奴だ。月島が動作確認しないで、誰がやる」
確かにこの仕事は私が女としていつも疑問に思っていたことをふと口に出したことで一気に形になった『子』だ。
「でも……」
「お前、怪我したといってホントはサボりたいのか」
口ごもる私に社長がちょっと怒った様子でそう言う。
「違いますよぉ。ただ、家の前今……」
だけど、そこで私ははたと困った。マスコミが家に来てますとストレートに言っても、私は一般人。鼻で笑われそうだ。
「月島の家の前がどうだってんだ」
その時私は川崎ブルージーンズの大ファンである社長が愛読しているスポーツ紙が今回熱愛報道を取り上げた「毎朝スポーツ」だということを思い出した。
「社長、今日のスポーツ新聞見てください」
「なんだ、藪から棒に」
「三面開いてください」
バサバサと耳元で新聞をめくる音がする。
「ん? 釣りがどうかしたか。まさか、その下のエロい小説じゃないだろうな」
釣り? ああ、社長本当に3面目を開いちゃったのか。しかもエロい小説って……そんなもん見せて何を説明するって言うんですか。
「違います! 裏の方、芸能欄ですよ」
「おお、ならそれを早く言え。なんだ、Tetraの武道館コンサートか? 違う? ああ、青木賞作家の熱愛報道って奴か。それがなんだ」
「そのお姫様だっこされているのが私です」
「これが、月島? 確かに言われれば似てないこともないな」
私は、怪我をして動けなくなっているところを助けられて家まで送り届けてもらっただけなのにスポーツ紙にとられたと、この写真の状況を掻い摘んで説明した。
「じゃぁ、まだ表にリポーターがいるってんだな」
「はい」
「由佳、俺は月島を病院に連れていくから」
「外にはリポーターが張ってるんですよ」
それを聞いて私が慌ててそういうと、
「張ってるからってどうだってんだ。それは月島のせいじゃないだろ」
と、社長が言った。そりゃそうですけど。
「あっちも仕事だろうが、こっちも仕事だ。堂々と出てくりゃいいんだ。ただ、月島単独で行動するのは大変だろう。だから、今日は俺が行ってやる」
そう言われればそうだ。何も、私が逃げ隠れする必要はないのだ。私は本当に怪我したところを助けられたそれに過ぎないのだから。
私は少ししてからやってきた社長の車で家を出て病院に行き、松葉杖を借りて会社に出勤した。
病院に行っていた分、段取りがくるっていつもより遅くなったお昼休みにつけたテレビのワイドショーで、マイケルさんが緊急会見を行っていた。私との関係を取りざたされて、
「彼女が怪我をされたところを偶然通りかかり、車で来ていたので病院に連れて行って自宅まで送っただけ。恋人とかそういうものではないです」
マイケルさんは関係各所にファックスを送って済む内容を、みんなの前に出て拳を握りしめて力説していた。でも、
「本当に彼女とは何の関係もないんです。ですから、くれぐれも彼女の所には取材をしたりしないでください」
そう土下座せんばかりに頭を下げるマイケルさんの姿を見て、奥さんに誤解されて大変だったのかもしれないな思った私は、これで良かったと思いながら何となくもやもやしていた。
その効果があったのかどうかは知らないが、雨が降ってきたこともあり、帰りは先輩の庄司さんが贈ってくれたのだが、行きにはいた報道陣がもう見あたらなくなっていた。
そして、帰宅後、正巳から
「俺がガツンと言ってやったから。なかなかまともな会見してやがったじゃん。これで更紗も安心だろ」
と、言われたけど、それを聞いても私のもやもやはとれなかった。
私が勤めるのは、作業ロボットを作っている会社。作業ロボットというと大手の企業が独自に作っているように思われるだろうが、実は割と小さな会社が手作業でということも多い。相手のニーズをいかに形にできるか。それは施設の規模ではなく、開発者の発想能力に負うところが多いからだ。
工業高校の機械科をを出た私は、そんなオーダーメイドな物づくりに惚れ込んでこの会社に入った。
だけど、だからと言ってロボットアニメはあまり見ない。小さい頃はともかく、少し大きくなってからは特に。 何故かというとメインを張るロボットたちは結局がとこ兵器として扱われていることがほとんどだからだ。
ロボットは人を幸せにするものじゃなくっちゃ。誰かが不幸になるような使い方は『彼ら』とってもかわいそうだと思う。
そして、その台詞も実は社長吉田直也の受け売りだ。彼は私の遅ればせながらの初恋の相手。だけど、12歳も年上の社長に私が淡い思いを抱いたときには、既に奥様の由佳さんとの結婚が決まっていて、私はいきなり失恋してしまったのだけど。
「はい、吉田工作所です」
由佳さんがハキハキと明るい声で電話に出た。
「あ、由佳さん、月島です」
それに引き替え私の声はどよんとしている。足が痛いせいもあるけど、それだけじゃない。正直どう言って休もうか悩んでいる。納期の差し迫った仕事があって、本当なら休んでいる暇などないのだ。
「あ、あのね……昨日、足怪我しちゃって……いま動けないんです。今日……休ませてもらえませんか」
続いて、びくびくとそう切り出した私に、
「足怪我して動けないって、入院しちゃったの?」
由佳さんは驚いてそう聞き返してきた。
「い、いえ入院はしてないんですけど。昨日日曜日だったでしょ、まだ松葉杖がないんですよ。ケガ以前に私、運転できないですし、ウチの母も免許持ってなくて」
と、私が由佳さんに事情を説明していると、
「月島、怪我したって?」
電話の声が急に社長に変わって、
「月島、今すぐ着替えて出られるように準備しておけ」
社長がそう言った。
「へっ?」
「俺が迎えに行ってやる」
えっ、わざわざ?
「良いですよ。ミュートスの納期もうすぐでしょ? 私にかまけてる間に動作確認しておいてください」
「だからだろうが。こいつは月島の女性的な発想のおかげでモノにした奴だ。月島が動作確認しないで、誰がやる」
確かにこの仕事は私が女としていつも疑問に思っていたことをふと口に出したことで一気に形になった『子』だ。
「でも……」
「お前、怪我したといってホントはサボりたいのか」
口ごもる私に社長がちょっと怒った様子でそう言う。
「違いますよぉ。ただ、家の前今……」
だけど、そこで私ははたと困った。マスコミが家に来てますとストレートに言っても、私は一般人。鼻で笑われそうだ。
「月島の家の前がどうだってんだ」
その時私は川崎ブルージーンズの大ファンである社長が愛読しているスポーツ紙が今回熱愛報道を取り上げた「毎朝スポーツ」だということを思い出した。
「社長、今日のスポーツ新聞見てください」
「なんだ、藪から棒に」
「三面開いてください」
バサバサと耳元で新聞をめくる音がする。
「ん? 釣りがどうかしたか。まさか、その下のエロい小説じゃないだろうな」
釣り? ああ、社長本当に3面目を開いちゃったのか。しかもエロい小説って……そんなもん見せて何を説明するって言うんですか。
「違います! 裏の方、芸能欄ですよ」
「おお、ならそれを早く言え。なんだ、Tetraの武道館コンサートか? 違う? ああ、青木賞作家の熱愛報道って奴か。それがなんだ」
「そのお姫様だっこされているのが私です」
「これが、月島? 確かに言われれば似てないこともないな」
私は、怪我をして動けなくなっているところを助けられて家まで送り届けてもらっただけなのにスポーツ紙にとられたと、この写真の状況を掻い摘んで説明した。
「じゃぁ、まだ表にリポーターがいるってんだな」
「はい」
「由佳、俺は月島を病院に連れていくから」
「外にはリポーターが張ってるんですよ」
それを聞いて私が慌ててそういうと、
「張ってるからってどうだってんだ。それは月島のせいじゃないだろ」
と、社長が言った。そりゃそうですけど。
「あっちも仕事だろうが、こっちも仕事だ。堂々と出てくりゃいいんだ。ただ、月島単独で行動するのは大変だろう。だから、今日は俺が行ってやる」
そう言われればそうだ。何も、私が逃げ隠れする必要はないのだ。私は本当に怪我したところを助けられたそれに過ぎないのだから。
私は少ししてからやってきた社長の車で家を出て病院に行き、松葉杖を借りて会社に出勤した。
病院に行っていた分、段取りがくるっていつもより遅くなったお昼休みにつけたテレビのワイドショーで、マイケルさんが緊急会見を行っていた。私との関係を取りざたされて、
「彼女が怪我をされたところを偶然通りかかり、車で来ていたので病院に連れて行って自宅まで送っただけ。恋人とかそういうものではないです」
マイケルさんは関係各所にファックスを送って済む内容を、みんなの前に出て拳を握りしめて力説していた。でも、
「本当に彼女とは何の関係もないんです。ですから、くれぐれも彼女の所には取材をしたりしないでください」
そう土下座せんばかりに頭を下げるマイケルさんの姿を見て、奥さんに誤解されて大変だったのかもしれないな思った私は、これで良かったと思いながら何となくもやもやしていた。
その効果があったのかどうかは知らないが、雨が降ってきたこともあり、帰りは先輩の庄司さんが贈ってくれたのだが、行きにはいた報道陣がもう見あたらなくなっていた。
そして、帰宅後、正巳から
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