24 / 33
やっぱり黒幕は……
しおりを挟む
家を出て私たちは美久さんが待機してるという近くのファミレスに向かった。
大きなボストンバッグを抱えている(とはいえ、私の当座の荷物と言ってもその程度なのだけれど)マイケルさんを見て美久さんは、
「よかった。首尾は上々だったようですね」
と言った。
「うん、あんまりにも上手くいきすぎて怖いくらいだよ。更紗ちゃんをそのまま連れて帰って良いっていうんだもの」
その言葉にマイケルさんは、手に提げているボストンバッグを示しながらため息をつく。だけど美久さんはそれを聞いてもちっとも驚かなかった。
「荷物があるんでしたら、電話で呼んでくれれば、行きましたよ」
と言っただけ。
「良いよ、重くないから。それに、マンションに帰っても何にも食べるものないし、ここでお昼食べてとりあえず買い物に行かなきゃ。更紗ちゃんのもの、何もないもの」
でも、ベッドなんてその日に運んでなんてくれないよねとぶつぶつ言うマイケルさん。確かに一緒に住むっていうのはそういうことだと思うけど、何気にリアルすぎて辛い。
「ああ、それなら心配ないですよ」
だけど、美久さんはこともなげにそう言った。
「ま、そのかわりと言っては何ですけど、ほかにやってもらうことがありますので、ここでお昼は無難な選択かもしれませんね。じゃぁ、まずははいコレね」
と、私たちに一枚の用紙を手渡した。私たちはその特殊な紙質に同時に驚く。
それは婚姻届けだった。それも白紙ではなく、保証人の欄にはもうママと幸太郎さんの名前がしっかりと書かれてあり、あとは私たちが署名押印すれば良いだけになっているし、更にその横にはご丁寧に二人の戸籍抄本を入れた封筒まであったりして……
「ねぇこれって……」
私がおそるおそるそう尋ねると、
「月島さんのお母様がいきなり初対面の男性に大事なお嬢さんを渡す訳ないじゃないですか。ちゃんと社長が根回ししてあったんですよ」
と、美久さんはウインクしながらそう答えた。うわっ、じゃぁママもグルだったってこと?
「できるだけ長く一緒にいてもらうには、ちょっとでもスタートを早くしてもらった方がってね。タケちゃんが入院している間に、社長がお母様にお話を持って行きました。
僕なんかは突拍子もないと言って叱られるんじゃないですかって言ってたんですけど、予想に反してお母様が大乗り気で。『パパの説得の方は任せておいて』とおっしゃってくださって」
そうかもしれない。娘に内緒で見合い話を進めるような人だもの。もらいにくる……しかも交渉に行ったのが、息子の幸太郎さんなら、ママ二つ返事で受けるだろう。ママ、イケメンに弱いもんね。
「それを区役所に出したら、一旦お宅に戻りましょう。月島さんが気に入るかどうかは分からないですけど、一応調度も絵梨紗ちゃんとで揃えてありますから。
食材も薫さんが入れてくれてます」
至れり尽くせりというのはこのことを言うのだろうか。あまりにも用意周到な作戦に、私は若干目眩を覚えてしまったほど。幸太郎さんってば、本当に過保護過ぎだ。
お昼ご飯がくるまでに婚姻届けに署名押印し終わった私たちは、もはや味なんて分からなくなってしまったそれを食べ、美久さんの運転で区役所に行き、そのまま櫟原更紗になった。
「さ、行きましょうか。お義兄さん、お義姉さん」
区役所の駐車場で美久さんに早速そう言われた。
「うれしいな。僕ね、男ばっか3人の兄弟なんです。お姉さん欲しかったんですよね。タケちゃん、僕もそう呼んで良いですよね」
と本当に嬉しそうにいう美久さん。
「う、うん」
マイケルさんも一旦は肯いたんだけど、
「お義姉さん、お義姉さん。お義姉さん。言い響きだなぁ」
と、やたら連発している内にみるみる機嫌が悪くなる。
「やっぱダメ! お義姉さんって言ってる美久くんの顔がエロい」
「ひどいな、そんな気なんてないですよ。僕は純粋にお姉さんが欲しかっただけなのに」
「それでもダメ」
「じゃぁ、なんて呼べば良いんですか」
そんなマイケルさんと美久さんの会話をききながら、ああ私は櫟原の一員になったのだなと思った。
大きなボストンバッグを抱えている(とはいえ、私の当座の荷物と言ってもその程度なのだけれど)マイケルさんを見て美久さんは、
「よかった。首尾は上々だったようですね」
と言った。
「うん、あんまりにも上手くいきすぎて怖いくらいだよ。更紗ちゃんをそのまま連れて帰って良いっていうんだもの」
その言葉にマイケルさんは、手に提げているボストンバッグを示しながらため息をつく。だけど美久さんはそれを聞いてもちっとも驚かなかった。
「荷物があるんでしたら、電話で呼んでくれれば、行きましたよ」
と言っただけ。
「良いよ、重くないから。それに、マンションに帰っても何にも食べるものないし、ここでお昼食べてとりあえず買い物に行かなきゃ。更紗ちゃんのもの、何もないもの」
でも、ベッドなんてその日に運んでなんてくれないよねとぶつぶつ言うマイケルさん。確かに一緒に住むっていうのはそういうことだと思うけど、何気にリアルすぎて辛い。
「ああ、それなら心配ないですよ」
だけど、美久さんはこともなげにそう言った。
「ま、そのかわりと言っては何ですけど、ほかにやってもらうことがありますので、ここでお昼は無難な選択かもしれませんね。じゃぁ、まずははいコレね」
と、私たちに一枚の用紙を手渡した。私たちはその特殊な紙質に同時に驚く。
それは婚姻届けだった。それも白紙ではなく、保証人の欄にはもうママと幸太郎さんの名前がしっかりと書かれてあり、あとは私たちが署名押印すれば良いだけになっているし、更にその横にはご丁寧に二人の戸籍抄本を入れた封筒まであったりして……
「ねぇこれって……」
私がおそるおそるそう尋ねると、
「月島さんのお母様がいきなり初対面の男性に大事なお嬢さんを渡す訳ないじゃないですか。ちゃんと社長が根回ししてあったんですよ」
と、美久さんはウインクしながらそう答えた。うわっ、じゃぁママもグルだったってこと?
「できるだけ長く一緒にいてもらうには、ちょっとでもスタートを早くしてもらった方がってね。タケちゃんが入院している間に、社長がお母様にお話を持って行きました。
僕なんかは突拍子もないと言って叱られるんじゃないですかって言ってたんですけど、予想に反してお母様が大乗り気で。『パパの説得の方は任せておいて』とおっしゃってくださって」
そうかもしれない。娘に内緒で見合い話を進めるような人だもの。もらいにくる……しかも交渉に行ったのが、息子の幸太郎さんなら、ママ二つ返事で受けるだろう。ママ、イケメンに弱いもんね。
「それを区役所に出したら、一旦お宅に戻りましょう。月島さんが気に入るかどうかは分からないですけど、一応調度も絵梨紗ちゃんとで揃えてありますから。
食材も薫さんが入れてくれてます」
至れり尽くせりというのはこのことを言うのだろうか。あまりにも用意周到な作戦に、私は若干目眩を覚えてしまったほど。幸太郎さんってば、本当に過保護過ぎだ。
お昼ご飯がくるまでに婚姻届けに署名押印し終わった私たちは、もはや味なんて分からなくなってしまったそれを食べ、美久さんの運転で区役所に行き、そのまま櫟原更紗になった。
「さ、行きましょうか。お義兄さん、お義姉さん」
区役所の駐車場で美久さんに早速そう言われた。
「うれしいな。僕ね、男ばっか3人の兄弟なんです。お姉さん欲しかったんですよね。タケちゃん、僕もそう呼んで良いですよね」
と本当に嬉しそうにいう美久さん。
「う、うん」
マイケルさんも一旦は肯いたんだけど、
「お義姉さん、お義姉さん。お義姉さん。言い響きだなぁ」
と、やたら連発している内にみるみる機嫌が悪くなる。
「やっぱダメ! お義姉さんって言ってる美久くんの顔がエロい」
「ひどいな、そんな気なんてないですよ。僕は純粋にお姉さんが欲しかっただけなのに」
「それでもダメ」
「じゃぁ、なんて呼べば良いんですか」
そんなマイケルさんと美久さんの会話をききながら、ああ私は櫟原の一員になったのだなと思った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
一条さん結婚したんですか⁉︎
あさとよる
恋愛
みんなの憧れハイスペックエリートサラリーマン『一条 美郷(※超イケメン)』が、結婚してしまった⁉︎
嫁ラブの旦那様と毒舌地味嫁(花ちゃん)....とっ!その他大勢でお送りしますっ♡
((残念なイケメンの一途過ぎる溺愛♡))のはじまりはじまり〜
⭐︎本編は完結しております⭐︎
⭐︎番外編更新中⭐︎
俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜
ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。
そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、
理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。
しかも理樹には婚約者がいたのである。
全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。
二人は結婚出来るのであろうか。
ヤクザのお嬢は25人の婚約者に迫られてるけど若頭が好き!
タタミ
恋愛
関東最大の極道組織・大蛇組組長の一人娘である大蛇姫子は、18歳の誕生日に父から「今年中に必ず結婚しろ」と命じられる。
姫子の抵抗虚しく、次から次へと夫候補の婚約者(仮)が現れては姫子と見合いをしていくことに。
しかし、姫子には子どもの頃からお目付け役として世話をしてくれている組員・望月大和に淡い恋心を抱き続けていて──?
全25人の婚約者から真実の愛を見つけることはできるのか!?今、抗争より熱い戦いの幕が上がる……!!
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる