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妻として、義母として
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表にかかれた月島家控室のプレート、いるはずもない和光さん、そして和光さんの背後にキャスターでつるされているドレスは、先週密かに私がチェックしたウエディングドレスと、それによく似たテイストのもの。おそらく、あの日私は実際に着てないから、微妙にサイズの違う物を数枚用意してあるのだろう。それが表す意味は……やっぱり。
「どうして、和光さんがここにいるんですか?」
私は和光さんに敢えてそう聞いてみた。
「先日のご来店時のことを聞かれた櫟原社長から私に月島様のお支度のご指名がございました」
「だけど、日曜日はデパート休みじゃないですよね」
「ええ、今日はお休みを頂きまして、和光由佳個人として参りました」
「すいません、ワガママ言っちゃって」
「いいえ、櫟原様とは先代様からのお付き合いですから。行田もくれぐれもよろしくと申しておりました」
すると和光さんから予想通りの答えが返ってくる。ちなみに行田さんというのは、あの支店長の名前だそう。
「じゃぁ、これを着るのはやっぱり……」
私なんですね? その言葉に和光さんは、
「ええ、もちろん。小物もドレスに釣り合いがとれるよう、心を込めて選ばせていただきました」
胸を張ってそう答えた。
「ありがとうございます」
「では、これを」
「ち、ちょっと待ってください……トイレ、トイレです」
「そうですね、長丁場になりますので」
そして、早速ドレスに着替えさせようとした和光さんを後目に私はあわててトイレに逃げ込んだ。
親として出席するはずの結婚式の主役がまさか自分だなんて……一体どんな顔をしたら良いのかわからない。
やがて、覚悟を決めてドレスを着込んだ頃、幸太郎さんがシルバーのタキシードを着てやってきた。それをみる限り幸太郎さんたちの代わりに私たちが結婚式をするのではなさそうだ。
「どういうことなんですか、今日は幸太郎さんたちの結婚式でしょ?」
私はプリプリ怒ってそう言った。
「もちろんそうですよ。この日のために準備してきましたから」
「だったらなんで、こんな……」
「だからですよ」
「??」
相変わらず幸太郎さんの語り口はわからない。この人、いつもわざと質問を質問で返すような話し方だよね。
「結婚式って夫婦になる二人の新しい門出ですけど、今まで育ててくれた親たちへの感謝って側面もありますよね」
首をひねり続ける私に幸太郎さんはにっこり笑ってそう答えた。
「ええ」
「だから、これは俺の親父に対する感謝です。それにどうせだから結婚するんなら両親揃って薫を迎えてほしいなと思っただけです」
だからって、親子で結婚式なんて普通考える? それに、入籍はもうしているわけだし、私たち充分戸籍上は親子だよ。
「それに、親父も結構年だから、子供はできるだけ早くほしいとか言ってるでしょ? 俺たちのことが一段落してからなんて言ってたら、俺たちと同じ轍踏みますからね」
幸太郎さんはそう付け加えて、私にウインクした。その言葉に一気に私の頬が火照る。
た、確かに……知識だけは豊富だからと、できやすい方法をレクチャー付きで試されているのは事実だったりするけど。
そのあと、パパやママ、正巳と美奈子さんが揃ってやってきた。
「お義姉さん素敵です!」
とはしゃぐ美奈子さんの横で相変わらず苦虫噛みつぶしたような顔をしている男性陣。
「一応更紗のツレには知らせたからな。もうそろそろここに来るだろ」
「うん、ありがと」
私が素直にお礼を言うと、正巳は照れたように私に背を向けて、
「俺もあいつに顎で使われるのは癪に触るが、今日の更紗の顔に免じて大人しくしといてやるわ。ホントにもう、愛されてる顔しやがって」
ぼそっとそう言う。あいつと言うのはたぶん幸太郎さんのことだろう。まぁね、ちょっとキャラ被ってるかもだし、正巳にとって幸太郎さんはある意味天敵かもしれないな。……にしても、愛されてる顔ってどんな顔よ!
うぅ、やっぱこの二人似た者だわ。
しばらくして、連れだってやってきた私の友達たちは、私の有名人との寝耳に水の結婚に興味津々で質問の嵐。うーん、正直な馴れ初めを話したら、友達にはかなりウケるだろうけど、パパは真実を知ったら机叩いて帰っちゃいそう。
「その話はね、また家ででもゆっくり。遊びに来てよ」
と、無難な台詞で乗り切る。彼女たちも、
「更紗の新居に呼んでくれるの。そこには市原健もいるわけだね。うん、行く行く! 色紙持っていくわ」
と盛り上がってくれた。けど、サインするんだったら、作家には色紙じゃなくて、著作でしょ。と心の中ではツッコミを入れつつ、正直ホッとした。
そして、係りの人に呼ばれた私は、不機嫌でも拒否らないでちゃんと来てくれたパパと腕を組んでチャペルの扉の前にたった。
妻として義母として私は名実共に櫟原更紗になるためにマイケルさんに向かって今その一歩を踏み出す。
……でも、でもね……
何で後から決まった私たちの結婚式の方が先なのよ! そこだけは、何か納得いかない!!
「どうして、和光さんがここにいるんですか?」
私は和光さんに敢えてそう聞いてみた。
「先日のご来店時のことを聞かれた櫟原社長から私に月島様のお支度のご指名がございました」
「だけど、日曜日はデパート休みじゃないですよね」
「ええ、今日はお休みを頂きまして、和光由佳個人として参りました」
「すいません、ワガママ言っちゃって」
「いいえ、櫟原様とは先代様からのお付き合いですから。行田もくれぐれもよろしくと申しておりました」
すると和光さんから予想通りの答えが返ってくる。ちなみに行田さんというのは、あの支店長の名前だそう。
「じゃぁ、これを着るのはやっぱり……」
私なんですね? その言葉に和光さんは、
「ええ、もちろん。小物もドレスに釣り合いがとれるよう、心を込めて選ばせていただきました」
胸を張ってそう答えた。
「ありがとうございます」
「では、これを」
「ち、ちょっと待ってください……トイレ、トイレです」
「そうですね、長丁場になりますので」
そして、早速ドレスに着替えさせようとした和光さんを後目に私はあわててトイレに逃げ込んだ。
親として出席するはずの結婚式の主役がまさか自分だなんて……一体どんな顔をしたら良いのかわからない。
やがて、覚悟を決めてドレスを着込んだ頃、幸太郎さんがシルバーのタキシードを着てやってきた。それをみる限り幸太郎さんたちの代わりに私たちが結婚式をするのではなさそうだ。
「どういうことなんですか、今日は幸太郎さんたちの結婚式でしょ?」
私はプリプリ怒ってそう言った。
「もちろんそうですよ。この日のために準備してきましたから」
「だったらなんで、こんな……」
「だからですよ」
「??」
相変わらず幸太郎さんの語り口はわからない。この人、いつもわざと質問を質問で返すような話し方だよね。
「結婚式って夫婦になる二人の新しい門出ですけど、今まで育ててくれた親たちへの感謝って側面もありますよね」
首をひねり続ける私に幸太郎さんはにっこり笑ってそう答えた。
「ええ」
「だから、これは俺の親父に対する感謝です。それにどうせだから結婚するんなら両親揃って薫を迎えてほしいなと思っただけです」
だからって、親子で結婚式なんて普通考える? それに、入籍はもうしているわけだし、私たち充分戸籍上は親子だよ。
「それに、親父も結構年だから、子供はできるだけ早くほしいとか言ってるでしょ? 俺たちのことが一段落してからなんて言ってたら、俺たちと同じ轍踏みますからね」
幸太郎さんはそう付け加えて、私にウインクした。その言葉に一気に私の頬が火照る。
た、確かに……知識だけは豊富だからと、できやすい方法をレクチャー付きで試されているのは事実だったりするけど。
そのあと、パパやママ、正巳と美奈子さんが揃ってやってきた。
「お義姉さん素敵です!」
とはしゃぐ美奈子さんの横で相変わらず苦虫噛みつぶしたような顔をしている男性陣。
「一応更紗のツレには知らせたからな。もうそろそろここに来るだろ」
「うん、ありがと」
私が素直にお礼を言うと、正巳は照れたように私に背を向けて、
「俺もあいつに顎で使われるのは癪に触るが、今日の更紗の顔に免じて大人しくしといてやるわ。ホントにもう、愛されてる顔しやがって」
ぼそっとそう言う。あいつと言うのはたぶん幸太郎さんのことだろう。まぁね、ちょっとキャラ被ってるかもだし、正巳にとって幸太郎さんはある意味天敵かもしれないな。……にしても、愛されてる顔ってどんな顔よ!
うぅ、やっぱこの二人似た者だわ。
しばらくして、連れだってやってきた私の友達たちは、私の有名人との寝耳に水の結婚に興味津々で質問の嵐。うーん、正直な馴れ初めを話したら、友達にはかなりウケるだろうけど、パパは真実を知ったら机叩いて帰っちゃいそう。
「その話はね、また家ででもゆっくり。遊びに来てよ」
と、無難な台詞で乗り切る。彼女たちも、
「更紗の新居に呼んでくれるの。そこには市原健もいるわけだね。うん、行く行く! 色紙持っていくわ」
と盛り上がってくれた。けど、サインするんだったら、作家には色紙じゃなくて、著作でしょ。と心の中ではツッコミを入れつつ、正直ホッとした。
そして、係りの人に呼ばれた私は、不機嫌でも拒否らないでちゃんと来てくれたパパと腕を組んでチャペルの扉の前にたった。
妻として義母として私は名実共に櫟原更紗になるためにマイケルさんに向かって今その一歩を踏み出す。
……でも、でもね……
何で後から決まった私たちの結婚式の方が先なのよ! そこだけは、何か納得いかない!!
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