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結婚式って、実は大抵は経験値ゼロ
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後日、何で後から決まった私たちの結婚式の方が先なのよと言う私の抗議に、
「そりゃ、親より先に結婚式はできないでしょ」
と、幸太郎さんと薫さんが口を揃えて言った。
「それに、奏を私たちから離して置くのにも限度あるし」
と、薫さん。みんなのアイドルである奏ちゃんだけど、基本はパパママとの3人家族。側にいなきゃ意外と大丈夫なんだけど、顔見ちゃうともう、ダメなんだよね。結局、結婚式も披露宴もほとんどどっちかが抱いていたりして。
「改めて二人の結婚式って言ったって、集まる面子はかなりかぶるからな。会社とこっちの親戚は丸かぶり。だからって、親戚は身内だからともかく、会社関係は外せねぇし。ま、時間と経費の省力化だな。
それに、予想通り仕切直してる暇なかったろ」
すると、幸太郎さんがそう付け加えた。名実共に櫟原の一員になってから、幸太郎さんの口調はぐっとくだけた。そう、年だって5つしか離れていないんだから、丁寧にしゃべられる方が悲しくなっちゃう。
そして、予想通りというのか計画通りというのか、あれからあまり日を置かずに私たちのところにコウノトリが飛んできた。確かに、幸太郎さんたちの結婚式を待って用意していたのでは、ドタキャンになっていたことだろう。薫さんと違い、つわりもほとんどなくて安定期なら無問題だろうけど、その薫さんのことを知ってるだけに、おそらくマイケルさんがGOサインを出さないだろうから。
そして、季節は変わり、私のお腹の中で新しい命がポコポコと自己主張するようになった頃、マイケルさんの新作が発表された。しかも今度は異世界ファンタジー。
実はその発端は私たち二組の結婚披露宴。宴も終盤になった頃、珍しく酔ってしまった幸太郎さんが美久さんに向かって、
「おいビクトール、こっちのミシェルは幸せにしたからな。おい、聞いてんのか?」
と言うと、美久さんはそれを窘めもせず、
「はい、ちゃんとこの目でしっかり焼き付けさせて頂きましたよ、鮎川様。私も本当に嬉しいです」
と、別人みたいな口調でそう返した。それに、マイケルさんが食いついたのだ。
「幸太郎君、美久君、何それ? 何の遊び?」
目をきらきら輝かせて二人に聞くマイケルさんに、美久さんは、
「あのね、2年前のあの事故の時、僕たち実は、同じ夢を見てたんですよ。パラレルワールドに飛ばされる夢。そこで、顔は同じだけど環境の違う僕たちに出会ったんです」
と、不思議な夢の話を始めた。それを聞いたマイケルさんは一緒にいた編集長の菊田さんと大いに盛り上がり、早速その夢の話を元にこの作品「道の先には……」を書き上げた。
そうそう、結婚式の話で……
「経験値ゼロなのにどうして結婚式が先なのよ」
と、まだ小声でぶつぶつ言っていた私に、
「ほとんどの人は結婚式は一回しかしてないですよ。経験値がある方が少ないんじゃないですか」
と、それをしっかり聞いていた美久さんにそう言われてしまった。
それはそうなんだけどね、そうなんだけどね……
やっぱり納得いかないんだわ、私。
-The end-
「そりゃ、親より先に結婚式はできないでしょ」
と、幸太郎さんと薫さんが口を揃えて言った。
「それに、奏を私たちから離して置くのにも限度あるし」
と、薫さん。みんなのアイドルである奏ちゃんだけど、基本はパパママとの3人家族。側にいなきゃ意外と大丈夫なんだけど、顔見ちゃうともう、ダメなんだよね。結局、結婚式も披露宴もほとんどどっちかが抱いていたりして。
「改めて二人の結婚式って言ったって、集まる面子はかなりかぶるからな。会社とこっちの親戚は丸かぶり。だからって、親戚は身内だからともかく、会社関係は外せねぇし。ま、時間と経費の省力化だな。
それに、予想通り仕切直してる暇なかったろ」
すると、幸太郎さんがそう付け加えた。名実共に櫟原の一員になってから、幸太郎さんの口調はぐっとくだけた。そう、年だって5つしか離れていないんだから、丁寧にしゃべられる方が悲しくなっちゃう。
そして、予想通りというのか計画通りというのか、あれからあまり日を置かずに私たちのところにコウノトリが飛んできた。確かに、幸太郎さんたちの結婚式を待って用意していたのでは、ドタキャンになっていたことだろう。薫さんと違い、つわりもほとんどなくて安定期なら無問題だろうけど、その薫さんのことを知ってるだけに、おそらくマイケルさんがGOサインを出さないだろうから。
そして、季節は変わり、私のお腹の中で新しい命がポコポコと自己主張するようになった頃、マイケルさんの新作が発表された。しかも今度は異世界ファンタジー。
実はその発端は私たち二組の結婚披露宴。宴も終盤になった頃、珍しく酔ってしまった幸太郎さんが美久さんに向かって、
「おいビクトール、こっちのミシェルは幸せにしたからな。おい、聞いてんのか?」
と言うと、美久さんはそれを窘めもせず、
「はい、ちゃんとこの目でしっかり焼き付けさせて頂きましたよ、鮎川様。私も本当に嬉しいです」
と、別人みたいな口調でそう返した。それに、マイケルさんが食いついたのだ。
「幸太郎君、美久君、何それ? 何の遊び?」
目をきらきら輝かせて二人に聞くマイケルさんに、美久さんは、
「あのね、2年前のあの事故の時、僕たち実は、同じ夢を見てたんですよ。パラレルワールドに飛ばされる夢。そこで、顔は同じだけど環境の違う僕たちに出会ったんです」
と、不思議な夢の話を始めた。それを聞いたマイケルさんは一緒にいた編集長の菊田さんと大いに盛り上がり、早速その夢の話を元にこの作品「道の先には……」を書き上げた。
そうそう、結婚式の話で……
「経験値ゼロなのにどうして結婚式が先なのよ」
と、まだ小声でぶつぶつ言っていた私に、
「ほとんどの人は結婚式は一回しかしてないですよ。経験値がある方が少ないんじゃないですか」
と、それをしっかり聞いていた美久さんにそう言われてしまった。
それはそうなんだけどね、そうなんだけどね……
やっぱり納得いかないんだわ、私。
-The end-
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