コントラの名手

神山 備

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音メゲー

 「はあっ……」
日本の一般家庭の三倍くらいある大きさのダイニングテーブルに置かれたザ、日本の朝食に思わずため息が出る。後から解ったことだが、食事に関しては、本人の生まれ育った環境がモロ反映されるらしい。貴族だから豪華に、しかし、豪華といっても日本庶民の私にはその豪華さの規準が判らないので、私にとっての晴れの日ご飯が旅館の朝ご飯になるのだろうと推測する。
 とはいえ、出されたものに文句を付けるつもりはない。私は座って食べ始めた。だって、メニューはアレでも食材は一級品。アジはふっくら脂がのってるし、納豆は黒豆で作られているし、既に割って小鉢にいれられている卵はこんもりつやつやしている。そこにかけるのは、有機丸大豆醤油。これが不味いわけがない。
 ……ないはずなのだが、マナーが気になって料理の味がいまいちわかんない。私の目の前ににこやかではあるけれど、目の奥が笑っていないお母様が私の箸使いをチェックしているから尚更。

 楽器演奏が重用視されているこの国では、音楽院入学は社交界デビューに相当する。成績優秀者は音楽省で王宮専門楽師になれる他、男女に関係なく、玉の輿に乗れる。……そう、このゲームも他の音ゲー同様乙女ゲームの要素を多分に含んでいるのだ。
 しかーし、私は音ゲーをやりたかったからやってただけで、乙女ゲーをやりたかったわけではないので、選択肢は今まで攻略サイトに丸投げしてきたのだ。顔をみたら攻略対象は判るけど、攻略方法なんておぼえてないよ(泣)この状態では選択肢自体が出ないっぽいもん。
 そんなこんなで美味しいはずの、ザ・日本の朝食を私はちっとも味わうことなく終えてしまったのだった。
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