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そうだ、夢オチでいこう
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ビクトールたちが完全に消えてしまった途端、時間が元通り流れ始めたらしく、いつの間にか(薫にとってはな)俺にがっしり抱かれてキスされている薫が状況に付いていけなくて暴れ出した。俺はますます力を込めて薫を抱き、ディープなキスを施す。おっと、俺は今まで意識を失っていたことになってんだよな、
【フローリア、愛してるよ】
俺は寝ぼけた振りをして、英語で薫にそう囁いたんだが、宮本に聞こえるようにと唇を離してしまったのがマズかった。その拍子に薫はするりと俺の腕から抜け出し、『ぐきっ』って音を立てて、俺の右頬に痛みが走った。薫の奴が俺を殴りやがった。それもグーでだ。
「あ、鮎川っ! いきなり舌を入れてくるなんてどういう了見? ホントはいつから意識があったの、この無駄なフェロモン垂れ流しのエロ親父が!」
誰がエロ親父だ、先にキスしてきたのはそっちの方じゃねぇか! 俺はそっちのご希望に沿っただけだぞ。大体俺は、据え膳は食わないではいられない気質なんでね。そう言いたいのをぐっと堪えて俺は寝ぼけた様子で、
「フローリア」
と言う。
「はい?」
すると、なぜか薫が返事をしやがる。
【フローリアってんだぞ】
だから、今度は英語でそう聞く。
「だから何だってんのよ」
しまった、寝ぼけてないのがバレバレだったかと一瞬ヒヤッとしたが、薫は気づかずに名前に反応しているようだ、ラッキー!
「お前薫だろ、何返事してんだよっ」
「鮎川こそ何言ってんのよ、フローリアは私の英名、 薫は日本名!」
「は? 英名とか日本名とかセレブなこと言ってんじゃなぇよ、薫のくせに。お前、ばーちゃんがイギリス人なだけだろ」
英名ね、俺がコータル、宮本が音読みのビクと、何となくかすった名前になってんのに、こいつだけ何で思いっきり違う名前なんだろって思ってたんだよな、納得。ま、それでもとりあえず薫とのバトルには乗っておくことにして、俺はそういった。
「イギリス人だからよ。私ね、教会で幼児洗礼受けてるの。フローリアはその洗礼名なの! だけど鮎川がなんでその名前を知ってんの?」
「俺の夢の中に出てきたお前にそっくりな女がその名前だったんだよ」
「もしかして、先輩も僕と同じ夢を見てたんですか?」
すると、今度は宮本が身体を乗り出して、その台詞に食いついてきた。
「僕と同じ夢って……お前、王都グランディーナとか言うとこに行ったか?」
俺はしれっとそう返す。
「はい、車ごとおっこちちゃいましたよね」
「スライム食ったか? しかも俺の分まで」
「はい。でも、ちゃんとスライムプリンって言ってくださいよ。なんかそれじゃ僕がスライムのおどり食いをしたみたいじゃないですか」
「似たようなもんだ。じゃぁ、マシュー・カールは?」
「はいっ! エリーサちゃんですよね」
単純な宮本の顔が喜びで輝く。
「俺と同じ夢見てたってのか?」
それに対して俺は首をひねりながら、そう答えた。夢オチにしてしまわなきゃな。じゃねぇと……
「そうです。二人で同じ夢を見てたんですよ!」
それを聞いて宮本が無邪気にはしゃぐ。
「信じらんねぇ。まぁ、そこまで一緒なんなら、同じ夢だったのかもな」
俺は、不承不承という体でそれを認める発言をした。これで完璧に、夢オチだ。俺は、あいつ等に聞こえないように安堵のため息を吐いた。
「そうですよ。僕が目を覚ましても先輩ずっと目を覚まさないし、もしかしたら同じ夢の中にいるのかもって、戦闘不能を治す呪文唱えたんですけど、それでも起きてこないし、途方に暮れてたんです。そしたら、谷山先輩が『王子ならお姫様のキスで目覚めるんじゃないか』って。いやぁ、ホントにお姫様のキスが効くとは思いませんでした」
げっ、こいつ戦闘不能回避の魔法なんつーもんをまだ覚えてたって? そういや、こいつ妙に記憶力が良かったんだっけ。それも好きなことに関してはとんでもない威力を発揮するとか? どんだけオタクなんだか。
ま、とにかく薫は俺のために俺にキスしようとしてくれてた訳か。でも、ふつうはキスされるのはお姫様の方だろ。結局俺の方からしてやったから、それも間違いでもないか。
「余計なことしやがって」
俺は顔がにやけてくるのを何とか抑えながらそう言った。
「は?」
「お前が余計なことしなきゃ、今頃はその夢の世界で、お姫様と甘い新婚生活の真っ最中だったんだ。何が悲しくてこの凶暴女のキスで戻らなきゃなんねぇんだ」
いや、ホントは嬉しかったんだが、そんなことは口が裂けても言えねぇから、俺はワザとそんな風に悪態を付いた。
「何ですって! 宮本君、あんたまだ魔法使える? お姫様として命じるわ、こいつを瞬殺して」
そしたら薫は顔を真っ赤にして怒りだして、宮本に命令する。宮本はちょっと困った顔をしながら、
「しゅ、瞬殺って、物騒な。でも、谷山先輩すごく心配してたんですよ。それなのに、そんな言い方するなんて。海より深く反省してください」
そう言って手を前に繰りした。お、お前まさかまだ他にも魔法を覚えてるってのか? い、一体他に何の魔法覚えてるってんだ?
「お、おい何の術をかけるつもりだ。宮本? まさか、あの『一億年』とか言わないでくれよ。ホント、ゴメンあやまるからさ」
俺は完全にビビりながらそう返した。夢オチにしたのはマズかったか、夢だと思ってる宮本は気楽に覚えている最高の魔法を使ってくる可能性大だもんな。
だが、宮本が手を振り上げてもうダメだと諦めた瞬間、あいつの身体はぐらりと傾いで
「なーんてね」
というふざけた一言を吐きながら宮本はばったりと倒れた。
そっか、王子に戦闘不能回避の魔法かけだんだっけな、こいつ。大変! と慌ててナースコールする薫を後目に、俺は内心、助かったぁと、胸をなで下ろしていたのだった。
【フローリア、愛してるよ】
俺は寝ぼけた振りをして、英語で薫にそう囁いたんだが、宮本に聞こえるようにと唇を離してしまったのがマズかった。その拍子に薫はするりと俺の腕から抜け出し、『ぐきっ』って音を立てて、俺の右頬に痛みが走った。薫の奴が俺を殴りやがった。それもグーでだ。
「あ、鮎川っ! いきなり舌を入れてくるなんてどういう了見? ホントはいつから意識があったの、この無駄なフェロモン垂れ流しのエロ親父が!」
誰がエロ親父だ、先にキスしてきたのはそっちの方じゃねぇか! 俺はそっちのご希望に沿っただけだぞ。大体俺は、据え膳は食わないではいられない気質なんでね。そう言いたいのをぐっと堪えて俺は寝ぼけた様子で、
「フローリア」
と言う。
「はい?」
すると、なぜか薫が返事をしやがる。
【フローリアってんだぞ】
だから、今度は英語でそう聞く。
「だから何だってんのよ」
しまった、寝ぼけてないのがバレバレだったかと一瞬ヒヤッとしたが、薫は気づかずに名前に反応しているようだ、ラッキー!
「お前薫だろ、何返事してんだよっ」
「鮎川こそ何言ってんのよ、フローリアは私の英名、 薫は日本名!」
「は? 英名とか日本名とかセレブなこと言ってんじゃなぇよ、薫のくせに。お前、ばーちゃんがイギリス人なだけだろ」
英名ね、俺がコータル、宮本が音読みのビクと、何となくかすった名前になってんのに、こいつだけ何で思いっきり違う名前なんだろって思ってたんだよな、納得。ま、それでもとりあえず薫とのバトルには乗っておくことにして、俺はそういった。
「イギリス人だからよ。私ね、教会で幼児洗礼受けてるの。フローリアはその洗礼名なの! だけど鮎川がなんでその名前を知ってんの?」
「俺の夢の中に出てきたお前にそっくりな女がその名前だったんだよ」
「もしかして、先輩も僕と同じ夢を見てたんですか?」
すると、今度は宮本が身体を乗り出して、その台詞に食いついてきた。
「僕と同じ夢って……お前、王都グランディーナとか言うとこに行ったか?」
俺はしれっとそう返す。
「はい、車ごとおっこちちゃいましたよね」
「スライム食ったか? しかも俺の分まで」
「はい。でも、ちゃんとスライムプリンって言ってくださいよ。なんかそれじゃ僕がスライムのおどり食いをしたみたいじゃないですか」
「似たようなもんだ。じゃぁ、マシュー・カールは?」
「はいっ! エリーサちゃんですよね」
単純な宮本の顔が喜びで輝く。
「俺と同じ夢見てたってのか?」
それに対して俺は首をひねりながら、そう答えた。夢オチにしてしまわなきゃな。じゃねぇと……
「そうです。二人で同じ夢を見てたんですよ!」
それを聞いて宮本が無邪気にはしゃぐ。
「信じらんねぇ。まぁ、そこまで一緒なんなら、同じ夢だったのかもな」
俺は、不承不承という体でそれを認める発言をした。これで完璧に、夢オチだ。俺は、あいつ等に聞こえないように安堵のため息を吐いた。
「そうですよ。僕が目を覚ましても先輩ずっと目を覚まさないし、もしかしたら同じ夢の中にいるのかもって、戦闘不能を治す呪文唱えたんですけど、それでも起きてこないし、途方に暮れてたんです。そしたら、谷山先輩が『王子ならお姫様のキスで目覚めるんじゃないか』って。いやぁ、ホントにお姫様のキスが効くとは思いませんでした」
げっ、こいつ戦闘不能回避の魔法なんつーもんをまだ覚えてたって? そういや、こいつ妙に記憶力が良かったんだっけ。それも好きなことに関してはとんでもない威力を発揮するとか? どんだけオタクなんだか。
ま、とにかく薫は俺のために俺にキスしようとしてくれてた訳か。でも、ふつうはキスされるのはお姫様の方だろ。結局俺の方からしてやったから、それも間違いでもないか。
「余計なことしやがって」
俺は顔がにやけてくるのを何とか抑えながらそう言った。
「は?」
「お前が余計なことしなきゃ、今頃はその夢の世界で、お姫様と甘い新婚生活の真っ最中だったんだ。何が悲しくてこの凶暴女のキスで戻らなきゃなんねぇんだ」
いや、ホントは嬉しかったんだが、そんなことは口が裂けても言えねぇから、俺はワザとそんな風に悪態を付いた。
「何ですって! 宮本君、あんたまだ魔法使える? お姫様として命じるわ、こいつを瞬殺して」
そしたら薫は顔を真っ赤にして怒りだして、宮本に命令する。宮本はちょっと困った顔をしながら、
「しゅ、瞬殺って、物騒な。でも、谷山先輩すごく心配してたんですよ。それなのに、そんな言い方するなんて。海より深く反省してください」
そう言って手を前に繰りした。お、お前まさかまだ他にも魔法を覚えてるってのか? い、一体他に何の魔法覚えてるってんだ?
「お、おい何の術をかけるつもりだ。宮本? まさか、あの『一億年』とか言わないでくれよ。ホント、ゴメンあやまるからさ」
俺は完全にビビりながらそう返した。夢オチにしたのはマズかったか、夢だと思ってる宮本は気楽に覚えている最高の魔法を使ってくる可能性大だもんな。
だが、宮本が手を振り上げてもうダメだと諦めた瞬間、あいつの身体はぐらりと傾いで
「なーんてね」
というふざけた一言を吐きながら宮本はばったりと倒れた。
そっか、王子に戦闘不能回避の魔法かけだんだっけな、こいつ。大変! と慌ててナースコールする薫を後目に、俺は内心、助かったぁと、胸をなで下ろしていたのだった。
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