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あの日、本当は……
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「ちょ、ちょう、薫、外行こう、外」
俺はそう言って強引に薫を病院の中庭みたいなとこに連れ出した。
「そう、私は櫟原宗十郎の長女の娘、ホントは身内の会社になんて勤めたくなかったんだけど、許してくれなかったのよ。いくら武(たける)(社長の名前だ)叔父様に子供がいないからって、私にあそこで婿見繕おうなんて、前時代すぎよ。そんなの絵梨紗がいるじゃないって思ったし、この前デビくんも生まれたから、やっと解放されたと思ってたのに」
観念して薫は事情を説明し始めた。とはいえ、いまいち話が見えないが、これまで薫は社内のだれかと結婚して、跡継げって言われてた。でも社長んとこに待望の(デビくんっつーくらいだから男だろ)跡取りが生まれて、すべて丸く収まったと、そんなとこだな。
「私は長女の娘だから名字は違うし、武叔父様に『私が絶対に櫟原の一族だってことをバラさない』ってことを約束させて会社に入ったのよ」
じゃないと、思いっきり仕事できないじゃない? と薫は続けた。確かに使う側としちゃ使いにくいだろーな。
「で、何でバレたんだ?」
「うん……それなんだけどさ、あの日絵梨紗と一緒に私もいたのよ」
あの日と言われて、俺はゴクリとつばを飲み込んだ。って言うと、俺たちが事故った日のことか。
「出かけたのが久しぶりだったんで、絵梨紗が妙にはしゃいじゃって……道の向こうにほしかったものを見つけて、思わず飛び出しちゃって……そこに来たのが」
「俺らの乗ってた車って訳か」
俺の言葉に首だけで頷いた薫は、
「間一髪のタイミングで絵梨紗を交わした車は、ガードレールに吸い込まれるようにぶつかって火を噴いたの。私、慌てて車の中をのぞき込んでびっくりしたわ。乗ってたのが鮎川と宮本君だったから」
薫はとっちらからりながらも何とか消防に連絡し、やがて救急隊員が来て、俺たちを車から引きずり出した。そしてその途端、車は急に爆発し、木っ端微塵になったという。
「後少し救出が遅れてたらと思うと……」
薫はそのときのことを思い出して震えながらそう言った。どうせ、それはビクトールが車の張りぼてをごまかすために魔法で吹っ飛ばしたんだろう。満身創痍とか言う割に、えらく派手な演出じゃねぇか。あいつ、どんだけ魔力があるんだか。
一方、衝撃的な事故を目撃してしまった薫は、ショックでぶっ倒れ、一緒に病院に運ばれたらしい。俺たちが全然知らない奴らなら、ただ事故を目撃したで済んだんだが、事故の当事者が俺たちだったため、当事者が一本の線でつながって、薫が会長の孫だということが一気に社内に広がったみたいだ。
それから、上司は薫の顔色を伺いながら仕事を持ってくるし、女たちからは今まで気楽にグチってきた会社への不満やら悪口やらを薫が会社にチクっている様に思われて、シカトを食らうようになった。確かに、薫は会社の悪口は言わなかったさ。けど、こいつは誰の悪口だって言ってやしねぇぞ。
「ゴメンな、俺らのせいで」
「ううん、鮎川たちのせいじゃないよ。鮎川は絵梨紗を助けてくれたんだし」
「なぁ、薫……会社行きにくいんだったら、辞めて俺んとこくるか」
俺は、手に汗をびっしょりかきながら、薫にそう言った。 地球とオラトリオがパラレルワールドってんなら、オラトリオで王子と姫が結婚するんなら、俺たちも結婚するのが流れってもんだろ。
「俺んとこって、鮎川も一緒の会社でしょうが、何変なこと言ってんのよ」
だけど、薫は俺の言葉をプロポーズだと思わなかったらしく、ゲラゲラと笑いやがる。
「違う違う」
違うよ、この鈍感女めが。
「何が違うのよ」
「だから、鮎川薫になれってんだよ」
回りくどく言って解んねぇんならストレートに言ってやる。
お前、俺にキスするぐらい好きなんだろ? だが、それに対して薫は、
「イヤだ!」
と、間髪入れずに即答しやがった。なんだ、一発玉砕かよ。
何でだ? オラトリオはパラレルワールドじゃねぇのかよ!
俺はそう言って強引に薫を病院の中庭みたいなとこに連れ出した。
「そう、私は櫟原宗十郎の長女の娘、ホントは身内の会社になんて勤めたくなかったんだけど、許してくれなかったのよ。いくら武(たける)(社長の名前だ)叔父様に子供がいないからって、私にあそこで婿見繕おうなんて、前時代すぎよ。そんなの絵梨紗がいるじゃないって思ったし、この前デビくんも生まれたから、やっと解放されたと思ってたのに」
観念して薫は事情を説明し始めた。とはいえ、いまいち話が見えないが、これまで薫は社内のだれかと結婚して、跡継げって言われてた。でも社長んとこに待望の(デビくんっつーくらいだから男だろ)跡取りが生まれて、すべて丸く収まったと、そんなとこだな。
「私は長女の娘だから名字は違うし、武叔父様に『私が絶対に櫟原の一族だってことをバラさない』ってことを約束させて会社に入ったのよ」
じゃないと、思いっきり仕事できないじゃない? と薫は続けた。確かに使う側としちゃ使いにくいだろーな。
「で、何でバレたんだ?」
「うん……それなんだけどさ、あの日絵梨紗と一緒に私もいたのよ」
あの日と言われて、俺はゴクリとつばを飲み込んだ。って言うと、俺たちが事故った日のことか。
「出かけたのが久しぶりだったんで、絵梨紗が妙にはしゃいじゃって……道の向こうにほしかったものを見つけて、思わず飛び出しちゃって……そこに来たのが」
「俺らの乗ってた車って訳か」
俺の言葉に首だけで頷いた薫は、
「間一髪のタイミングで絵梨紗を交わした車は、ガードレールに吸い込まれるようにぶつかって火を噴いたの。私、慌てて車の中をのぞき込んでびっくりしたわ。乗ってたのが鮎川と宮本君だったから」
薫はとっちらからりながらも何とか消防に連絡し、やがて救急隊員が来て、俺たちを車から引きずり出した。そしてその途端、車は急に爆発し、木っ端微塵になったという。
「後少し救出が遅れてたらと思うと……」
薫はそのときのことを思い出して震えながらそう言った。どうせ、それはビクトールが車の張りぼてをごまかすために魔法で吹っ飛ばしたんだろう。満身創痍とか言う割に、えらく派手な演出じゃねぇか。あいつ、どんだけ魔力があるんだか。
一方、衝撃的な事故を目撃してしまった薫は、ショックでぶっ倒れ、一緒に病院に運ばれたらしい。俺たちが全然知らない奴らなら、ただ事故を目撃したで済んだんだが、事故の当事者が俺たちだったため、当事者が一本の線でつながって、薫が会長の孫だということが一気に社内に広がったみたいだ。
それから、上司は薫の顔色を伺いながら仕事を持ってくるし、女たちからは今まで気楽にグチってきた会社への不満やら悪口やらを薫が会社にチクっている様に思われて、シカトを食らうようになった。確かに、薫は会社の悪口は言わなかったさ。けど、こいつは誰の悪口だって言ってやしねぇぞ。
「ゴメンな、俺らのせいで」
「ううん、鮎川たちのせいじゃないよ。鮎川は絵梨紗を助けてくれたんだし」
「なぁ、薫……会社行きにくいんだったら、辞めて俺んとこくるか」
俺は、手に汗をびっしょりかきながら、薫にそう言った。 地球とオラトリオがパラレルワールドってんなら、オラトリオで王子と姫が結婚するんなら、俺たちも結婚するのが流れってもんだろ。
「俺んとこって、鮎川も一緒の会社でしょうが、何変なこと言ってんのよ」
だけど、薫は俺の言葉をプロポーズだと思わなかったらしく、ゲラゲラと笑いやがる。
「違う違う」
違うよ、この鈍感女めが。
「何が違うのよ」
「だから、鮎川薫になれってんだよ」
回りくどく言って解んねぇんならストレートに言ってやる。
お前、俺にキスするぐらい好きなんだろ? だが、それに対して薫は、
「イヤだ!」
と、間髪入れずに即答しやがった。なんだ、一発玉砕かよ。
何でだ? オラトリオはパラレルワールドじゃねぇのかよ!
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