道の先には……(僕と先輩の異世界とりかえばや物語)

神山 備

文字の大きさ
28 / 65

ここはいっちょ踏ん張ってみますか

しおりを挟む
「じゃぁ、何で俺にキスなんかしたのかよ。宮本のバカ話にホイホイ乗せられる様な歳じゃねぇだろ、薫」
二十四歳でおとぎ話のお姫様を地でいったんだとしたらイタすぎだろ。
「うっ、そんなの当たり前じゃん。でも今はヤダ。今辞めたら逃げたって思われる。鮎川だって、きっと会長の孫って分かったから迫ったって言われるよ」
今辞めたら、今までこいつが頑張ってきたことなんてすっぱり忘れて、『それ見たことか、やっぱりお嬢様だ』とか言う奴が必ず現れるか。俺も逆玉狙いだって言われるだろうな。
「俺は、そんなもん何とも思わねぇよ」
それに対して、俺はそう即答した。
「周りが一夜にして変わっちゃっても?」
「仕事が変わる訳じゃねぇし、全員が敵になる訳でもないだろ。そんなもん、仕事で跳ね返してやるさ。お前も、負けたくねぇんなら辞めないで一緒にいればいいさ。けどさぁ」
「けど?」
「俺と一緒に闘おうや。一人で抱え込むのお前の悪い癖だぞ」
俺は薫の今にも泣き出しそうなほっぺたに手を当てて、そう言った。
どんな奴が相手でも、怯まずつっこんで行くところがお前の良いところだけどな。切り込み隊長にも、疲れたら帰る場所があってもいいんじゃね?
「鮎川ぁ、それってかっこ良すぎだよ」
薫は、そう言って口をとんがらせて鼻水をすすった。
「そうそう、俺ってホントカッコいいだろ」
「あんた、それ自分で言う?」
あきれた、と薫。
「おお、言うぞ」
俺は胸を張ってそう答えた。こんなの、自分が言わなきゃ、誰が言うんだ? 他人にこんなこと言われたら、どんな裏があるのかと思って逆に気色悪いだろうが。
「薫、お前いつ目が覚めるか分かんねぇ俺をずっと看てくれてたんだってな」
 それから俺はマジな顔になって薫にそう言った。
「うん……」
「もし俺が、この先ずっと寝たまんまだったとしても、そうしてくれたか?」
「たぶん、ね」
俺の頭ん中には、昨日の夜の宮本の説教じみたうわごとだか報告だか判んねぇ、俺が寝てる間の薫の話が渦巻いていた。一旦は速攻でフラれたけど、ここはいっちょ踏ん張ってみますか。
「俺、起きちまったけど、これからもずっと俺の傍にいてくれねぇかな。ってか、夢の中でもお前は俺の嫁だったし、なんか今更他の奴なんて考えられねーんだよな、だからさ」
俺は、そう言うと、異世界よろしく臣下の礼をとって、
「谷山薫さん、俺と結婚してください」
と一昔前の合コン番組みたく右手を差し出した。

 薫は、ぼろぼろ泣きながら黙って俺のその手を握った。 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

異世界に転移したらぼっちでした〜観察者ぼっちーの日常〜

キノア9g
ファンタジー
「異世界に転移したら、ぼっちでした!?」 20歳の普通の会社員、ぼっちーが目を覚ましたら、そこは見知らぬ異世界の草原。手元には謎のスマホと簡単な日用品だけ。サバイバル知識ゼロでお金もないけど、せっかくの異世界生活、ブログで記録を残していくことに。 一風変わったブログ形式で、異世界の日常や驚き、見知らぬ土地での発見を綴る異世界サバイバル記録です!地道に生き抜くぼっちーの冒険を、どうぞご覧ください。 毎日19時更新予定。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハーレム異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーレムです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

処理中です...