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遠い旋律
突然の別れ
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待ち合わせた店に着いた時、高広はもう先に来ていた。彼は一瞬だけど私をまるで眩しいものでも見るような目で見て…そして、こう言った。
「さくら…お前ホントに痩せたな」
「だって、高広から全然連絡ないんだもん。この際だからって頑張っちゃったわよ。見よ、このナイスバディーってね」
私はふざけてしな作ってみせた。でも、あいつは笑わなかった。逆にすごく寂しそうな目で私を見ただけだった。よく見ると、あいつも元々細かったのにさらに痩せたみたいだった。
それからしばらく、高広は何も言わずじっと私を見ていた。私がこの一ヶ月の間に起こった出来事を捲くし立てるようにしゃべるのをニコニコともせず、真顔で聞いていた。
そして…それが一段落すると、目を閉じて唾を呑み込んでから、言いにくそうに私に言った。
「大事な…話があるんだ」
「何?」
「突然なんだけど、オレと別れてくれ」
「冗談でしょ?」
思わずそう返してしまったけど、彼の目は笑ってはいなかった。来た時から同じ、寂しい目をしたままだった。
「こんなこと、冗談でなんか言えない。オレは本気だ」
でも、久しぶりに会って、いきなり別れたいって…一体何なの?!
「実は、おまえより好きな奴ができた」
「ウソ!」
「ウソじゃない!!だから、もう終わりにしよう。オレはもうお前の事なんて何とも思ってない」
高広は私から目を反らして、拳を握り締めて震わせながらそう言った。私の目を見られないって事が私には余計それがウソなんだと思えた。
「ウソよ!」
「ウソじゃねぇったら、ウソじゃねぇんだ!!もう、ウンザリなんだよ、さくらのオレのためにみたいな押し付けがましいその態度がよ!!」
それは私がいつも不安に思っていることだった。だから、私はその一言で尚更噛み付いた。
「ウソよ…どこにも行くなって言ってくれたじゃない!」
「あれはその場の雰囲気で、つい言っちまっただけだから……忘れろ……」
高広は依然、私の目なんかまるで見ないで吐くかのようにそう告げた。絶対にあいつはウソをついてる!私はそう確信した。だったら、何で別れなきゃならないの?
「どうして別れなきゃなんないのよ!」
お願い、本当の理由を教えて!
「だから、お前以外の奴に惚れたから……」
「そんなのウソよ!」
「ウソじゃねぇって!」
そんなやり取りばかりが続いた。
そのうちに、『なーんてな』とか言って笑ってくれないかと思って待ってみたけど、高広の態度は変わらなかった。
「もうオレの事なんか忘れてくれ」
その一点張りだった。
「高広のバカ!」
あんまりそんなことばっかり言うから、私はたまりかねて彼の頬を打った。そして、私が店を出ようとしたその時だった……
……あの曲が流れた-私たちを結びつけた想い出の着信音-高広のケータイのだった。
彼はものすごく狼狽えて電話なのに出ないまま、すぐ切ってしまった。
やっぱりあいつはウソをついている。私は確信した。他の娘を好きになんかなってない。心変わりしたのなら、あいつの性格ではのんきにこんな曲使ったりできない。じゃぁ…何故?!
「電話かかってきても、もうオレでないから。かけないから、オレの登録も外してくれ」
高広はそう言うと、私より先に店を出て行った。
後に残された私は、ただ呆然と涙を流すことしかできなかった。
「さくら…お前ホントに痩せたな」
「だって、高広から全然連絡ないんだもん。この際だからって頑張っちゃったわよ。見よ、このナイスバディーってね」
私はふざけてしな作ってみせた。でも、あいつは笑わなかった。逆にすごく寂しそうな目で私を見ただけだった。よく見ると、あいつも元々細かったのにさらに痩せたみたいだった。
それからしばらく、高広は何も言わずじっと私を見ていた。私がこの一ヶ月の間に起こった出来事を捲くし立てるようにしゃべるのをニコニコともせず、真顔で聞いていた。
そして…それが一段落すると、目を閉じて唾を呑み込んでから、言いにくそうに私に言った。
「大事な…話があるんだ」
「何?」
「突然なんだけど、オレと別れてくれ」
「冗談でしょ?」
思わずそう返してしまったけど、彼の目は笑ってはいなかった。来た時から同じ、寂しい目をしたままだった。
「こんなこと、冗談でなんか言えない。オレは本気だ」
でも、久しぶりに会って、いきなり別れたいって…一体何なの?!
「実は、おまえより好きな奴ができた」
「ウソ!」
「ウソじゃない!!だから、もう終わりにしよう。オレはもうお前の事なんて何とも思ってない」
高広は私から目を反らして、拳を握り締めて震わせながらそう言った。私の目を見られないって事が私には余計それがウソなんだと思えた。
「ウソよ!」
「ウソじゃねぇったら、ウソじゃねぇんだ!!もう、ウンザリなんだよ、さくらのオレのためにみたいな押し付けがましいその態度がよ!!」
それは私がいつも不安に思っていることだった。だから、私はその一言で尚更噛み付いた。
「ウソよ…どこにも行くなって言ってくれたじゃない!」
「あれはその場の雰囲気で、つい言っちまっただけだから……忘れろ……」
高広は依然、私の目なんかまるで見ないで吐くかのようにそう告げた。絶対にあいつはウソをついてる!私はそう確信した。だったら、何で別れなきゃならないの?
「どうして別れなきゃなんないのよ!」
お願い、本当の理由を教えて!
「だから、お前以外の奴に惚れたから……」
「そんなのウソよ!」
「ウソじゃねぇって!」
そんなやり取りばかりが続いた。
そのうちに、『なーんてな』とか言って笑ってくれないかと思って待ってみたけど、高広の態度は変わらなかった。
「もうオレの事なんか忘れてくれ」
その一点張りだった。
「高広のバカ!」
あんまりそんなことばっかり言うから、私はたまりかねて彼の頬を打った。そして、私が店を出ようとしたその時だった……
……あの曲が流れた-私たちを結びつけた想い出の着信音-高広のケータイのだった。
彼はものすごく狼狽えて電話なのに出ないまま、すぐ切ってしまった。
やっぱりあいつはウソをついている。私は確信した。他の娘を好きになんかなってない。心変わりしたのなら、あいつの性格ではのんきにこんな曲使ったりできない。じゃぁ…何故?!
「電話かかってきても、もうオレでないから。かけないから、オレの登録も外してくれ」
高広はそう言うと、私より先に店を出て行った。
後に残された私は、ただ呆然と涙を流すことしかできなかった。
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