Cheeze Scramble

神山 備

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人はそれを……と呼ぶのでは? 3

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  それからは、寝ても覚めても『彼女』の歌う顔がちらついた。俺はハンナが病にかかったかと心配するほど、横になっているようになった。もちろん、折に触れて『彼女』の動向を『アクセス』するためだ。

『彼女』本人のことはもちろんのこと、『彼女』の住む国はアシュレーンとは全く違い、見るもの見るもの興味をそそられる。

『彼女』の世界では至る所に最初にいた場所にあったような光る箱があり、その箱の前で非常に長時間過ごしている。さながら彼らは箱に信奉しているかのようだ。

 毎朝早く『彼女』は、地下の穴蔵に置かれた四角い部屋に乗って出かける。信じられないことだが、その部屋は馬車よりもずっと速い速度で動くのだ。初めて見たときには、俺はその夢の中で酔ってしまったほどだ。 
 そして、着いた先ではあの光る箱が待っていて、『彼女』はその箱を眺めながら音楽を奏でるかのようにせわしく指を動かす。それを日がな一日続けて、日がとっぷりと暮れた後、『彼女』はまたあの四角い部屋に乗って『彼女』の家にもどってくるのだ。
 しかし、家に戻ってからも『彼女』はまだ眠らない。『彼女』の母上と思しき方の作った夕食を(そんな速さで食べては消化不良を起こさぬかと心配になるくらいの速度で)そそくさと食べると、とっとと自分の部屋に引きこもり、鞄の中から手のひらサイズの光る箱を取り出して、またバタバタとやっている。そして、
【うわっ、この主人公ほんまにアホ~!】
などと、時々机をバンバン叩きながら独り言をつぶやき、また光る箱に戻る。そうして長い夜を過ごすのだ。

 しかし俺はまだ、『彼女』のいる場所は、オラトリオのどこかだと思っていた。それにしては、こんなに面白い国が誰の口の端にも上らないとはおかしいと思ってはいたが、大海の向こう側にあって、まだ発見されていないだけだと思っていた。

 そんなある日、『彼女』は俺が『彼女』を見つけた塔に一人で出かけた。『彼女』は何かの思いを振り払うかのように、次々と歌っていく。                            
 そして、それは初めて出会ったあの日にも歌っていたオラトリオ語の曲を歌っていた時のことだった。
 『彼女』の足下に何か大きな力がみなぎっているのを感じた。何だろうと思った途端、その力の固まりはあっと言う間に膨らんで『彼女』の立っている場所の床を圧し上げ、突き抜けたのだ。(危ない!)そう思った俺は、咄嗟に[彼女』をこちらに!]と魔道語で叫んだ。 
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