Cheeze Scramble

神山 備

文字の大きさ
23 / 57

下着の次は……男の格好だと!?

しおりを挟む
 屋敷に戻ったChijuruは、ドレスを持ってきたハンナにこれでは動けないと言う。そして、男の格好をさせろと言うのだ。 そんなことはないだろう、実際お前がこの世界に来たときには丈は尋常じゃなく短かったが、スカートではなかったか? それに、ハンナはそれで十二分に動いているぞ。下着の次は男の格好か。俺はそう思ったが、黙って見ていた。案の定ハンナが
「いい若いお嬢様に男の格好をさせるなんて」
とあからさまに異を唱える。
「だって、あたしの世界では女だって普通に穿いてるんだよ」
するとChijuruは泣きそうな顔でそう言った。
「それはChiju、痛っChi……ju……ryu様の世界のことであって、このオラトリオではそんな格好をしている女性はおりませんから」
と言い返したが、
「そんなこと言ったってあたし、そんな格好じゃ動けないもん。そんなんじゃ、魔法使いの弟子修行できないじゃん」
と、譲らない。さっきからこやつ、本当に頑固だ。ほとんど自分の意見を曲げない。
「魔法使いの弟子修行でございますか、Chijuju(あうっ)様」
「うん、フレンが元の世界に戻る魔法知らないって言うから、修行して自分で探すの。
どーでもいいけど、あたしの名前ってそんなに言いにくい?」
と、ハンナに聞く。
「俺は普通に言えるぞChijuru」
俺がそう言うと、
「ブーっ、はい、フレンもアウト」
何か変な擬音付きでChijuruはそう返す。
「何がアウトだ」
「あたしの名前は千鶴。チジュルじゃないからね」
「だから、Chijuruだろうが」
俺がそう言うと、Chijuruは彼女の鞄の中から紙と棒をを取り出し、『Chiduru』と書いた。インク壷もなしに文字が書けるとはびっくりだ。後で聞くと、この中の細い管にインクをいれてあるらしい。
「チドゥルか?」
「ち・づ・る! 千鶴。sousand cranesだから」
「sousand cranes?」
千のcraneとはいったいなんだ。意味が分からん。
「あのね、あたしの国の文字は漢字って言ってね、その文字一つ一つが意味を持ってるの。たとえば千鶴の鶴は、本当はもう少し短いらしいけど、千年生きる言われていて、長生きするようにって願いがこめられているんだ」
すると、Chiduruはまことに興味深い話をする。
「ほう、文字自体が意味を持つのか。まるで魔道語のようだな。
魔道語は意味だけでなく力も持っているのだが」
普段会話している言葉に力があるとは。だからチキュウはあのように不思議なことに満ちているのか。
「あ、それ日本にもそういう考え方あるよ。言霊ことだまって言うんだ。言葉自体が意志をもってるって。
あたしもね、書いているキャラに引きずられることあるから、何となく解るし」
するとそれを聞いたChiduruは、目を輝かせてそう言った。キャラという言葉は解らなかったが、書くというので聞いてみると、仕事ではないが伽を紡いでいるという。
 Chiduruは鞄の中から更に小さな鞄を取り出した。中には、『アクセス』で見た、極小サイズの光る箱が入っていた。だが、Chiduruはその箱を軽くなでながらため息をつく。
【異世界トリップ顛末記、オイシイんやけどな……予備の電池も入ってるけど、そやから言うてそんなに長いこと保たへんやろからなぁ】
と、あちらの言葉でつぶやく。
 しかし、
【そや、千鶴は無理かもしらんけど、Cheezeやったらいけるんちゃうん。Cheezeは英語やもんなぁ。
こっちにチーズがあらへんかったらあれやけど】
と言うと、急に生き生きとした笑顔になって
ハンナに、
「ねぇ、Cheezeなら言える? あたし掲示板のハンドルネームはCheezeだったからそれでもいいよ」
と言った。掲示する板? 国のおふれを掲げる公告書の掲示のことだろうか。そんなものに一般人が気軽に名を冠して良いものなのか。本当にChiduruの世界は難解だ。
 まぁ、チーズはこの世界にもある食べ物だからな。と言うか、後で聞いてみると、魔物の名はほとんど知らなかったが、食べ物など生活にかかわるものはほぼ同じだった。
 そして、Chiduru改めチーズは、その後も執拗にハンナを説得して、ついにハンナに息子ヨエルの子供の頃の服を持ってこさせた。
 まぁいい、チーズはそれでなくても魔力垂れ流し状態だ。下手に女の格好をさせていて、それを妙齢の男になど見られたら禄なことがない。ならば、男の格好をさせておく方が何かと安心だろう。
 俺はそれがどういう感情なのか理解せぬままそう思っていつしか笑んでいた。 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

レオナルド先生創世記

ポルネス・フリューゲル
ファンタジー
ビッグバーンを皮切りに宇宙が誕生し、やがて展開された宇宙の背景をユーモアたっぷりにとてもこっけいなジャック・レオナルド氏のサプライズの幕開け、幕開け!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば
ファンタジー
剣があって、魔法があって、けれども機械はない世界。妖魔族、俗に言う魔族と人間族の、原因は最早誰にもわからない、終わらない小競り合いに、いつからあらわれたのかは皆わからないが、一旦の終止符をねじ込んだ聖女様と、それを守る5人の英雄様。 それが約50年前。 聖女様はそれから2回代替わりをし、数年前に3回目の代替わりをしたばかりで、英雄様は数え切れないぐらい替わってる。 英雄の座は常に5つで、基本的にどこから英雄を選ぶかは決まってる。 俺は、なんとしても、聖女様のすぐ隣に居たい。 でも…英雄は5人もいらないな。

企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する 

namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。  転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。  しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。  凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。  詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。  それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。  「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」  前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。  痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。  そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。 これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...