プリンセスになりたかった

浅月ちせ

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第2章

気持ちの在り方

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サルドナの態度は結構わかりやすいけど、ユミィは気付いていないみたい。
長年一緒の幼馴染という感覚が本人に強すぎて、サルドナの想いに鈍感になってしまっているのかなと思う。


まぁ、友愛と恋愛の差って難しいよね。そもそも人間として好意を持っていなければ友人にだってならないし。


ふと、イーゼル様のお屋敷からの帰り道、レグルスと野宿をした時のことを思い出した。
どこかすっとぼけていて、クールぶっていて頼りなくて。かと思えば一緒に居ると安心するような柔らかい強さを持っていてーー。


あれ以来何だかちょっとだけ、レグルスを特別視してしまう自分がいる。


でも、普段からずっと一緒にいるわけだし二人で住んでるし、誰よりも近い存在なのは間違いないから、これがどういう気持ちなのかまだわからないでいるのだけれど。


「カズハ聞いてるーー???」


ハッと気がつく。
いけない、講座中だったのに。


ユミィがうるうるの大きな瞳でわたしを覗き込んでいた。
頭に手を乗せられたままだったサルドナも、きょとんとしてこちらを見ている。


「ああ、ごめん。途中まではちゃんと聞いてたと思うんだけど…どこまで話してくれてたっけ?」
「もーぉ。アジトの入り方の話だよー!毎回入口が違って、暗号も時と場合で変わるからまずは入ることが難しいの!」


ユミィが厚紙の紙芝居をめくる。


「最近までは生写真の早期購入特典として、限定枚数の写真の裏側に暗号を載せてくれていたんだけど。」
「え?暗号なのにそんなに公開しちゃっていいの??!」
「どうせみんな行かないもん!『これが今回の暗号なのねーー!やだーアジトに入れちゃうぅぅぅ!』って興奮することだけの楽しみだもーーん!」


白いほっぺを真っ赤にさせてキラキラオーラを今まで以上に振り撒き、可愛く語る。いや、ほんと可愛い。


「あ、でもね。最近は実際にアジトに入ってくる子が出てきたんだって。だから特典で暗号を教えてくれることがなくなっちゃったの!」
「ていうか、入ってくる子がいるかもしれない前提で教えてたんじゃないの?間抜けすぎるんだけど。ていうか、もう、雑。」
「やだー!シャロン様たちのことを悪く言わないでー!!」


こっそりと席を立ったサルドナが紅茶を運んで戻ってきた。
そういえばレグルスがいない。ずっと。


「ねぇ、レグルスは?」
「ああ。だから盗賊団に潜入するんだろ?暫くは働けないからって色々手続きしに行ったぜ。」


そうだった。長期任務になりそうだから、今の職場やら関係各所に連絡しなくちゃって言っていたっけ。
わたしはロイドミックのアルバイトのみだから店長夫人のアイラさんにお許しをもらうだけで済んだんだった。


「レグルスが帰ってくる前に、盗賊団のお勉強しっかりしなきゃね!カズハ!」


厚紙の紙芝居をめくって更にやる気を見せるユミィ。



今までに発表された暗号は5つ。
入口は3つ。

拠点はアヌビスの森のみ。
未だに変更の様子はないらしい。

ファン対策に全て新しくなっている可能性はあるけれど、まずはできることから進めよう。

紅茶を一口飲んで喉を潤し、お芝居の台本の中の世界観を感じるようにユミィの解説に没頭する。


本当はお姫様を演じるのだけど、今のわたしはスパイの役づくりからしなくてはならないのだ。
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