21 / 55
第6話 貴族としての身の振り方を考えてみる。
Chapter-20
しおりを挟む
正直言って────
いま、ここまでの事態になって、ただ、生涯独身を通すつもりはない。準男爵家の家長になったわけだし、それなりに家庭も持ちたいかな、何ぞと考えてはいる。
ただ、俺は、この前のルイズの件で、ちょいとばかり女性不信に陥ってもいる。
いや、だって、以前も言ったけど、ルイズって『転生したら辺境貴族の末っ子でした』のキャラとしては、それなりに気に入ってたんだよ?
まぁどっちかって言うと、ユリア推しだったんだけど。
それを、この世界が現実のものとなった途端、その嫌な部分まで見せられてしまって、俺の精神的に負担になってしまったのだ。
で、そんな事があったから、俺が今、女性不信の対象にしないで済んでいるのが、キャロとエミしかいないわけだ。
あ、もちろん姉弟子とか師匠とかは最初から話が別だぞ?
まぁ、この2人もそれなりに下心があるのは承知している。
でも、それでも信頼に足ると言うだけのものも、見せてくれたからな。
ドラゴン退治の一件以来、この2人はもう、俺にとって、“噛ませ犬キャラ”なんかではないのである。
で、実際問題として、俺はどっちを正妻にするかまでは、決めかねているのが事実だ。
キャロの元気のいいところなんかは、正直見ていて気持ちがいいし、一方で、エミは……男が女にこういうのは変かもしれないが、頼もしく感じる。
で、キャロを正妻にする分にはいいんだが、問題は、エミを正妻にして、さらにキャロを序列夫人や陪臣という形で傍に置こうとした場合。
これ、今のままだと、嫡子のキャロに対して、エミは庶子なので、捻れてしまって、まずいんである。
エバーワイン男爵家のメンツも潰してしまう。
だが、俺がローチ伯爵家の寄騎ということになれば、優先度が変わってくるので、あまり問題にならなくなるのだ。
「なるほど」
なんとなく色めき立った様子のエミとキャロとをよそに、ウィリアムは、身を起こしながら、悪戯っぽく笑って、言う。
「どちらにしても、我がローチ家にとっては、ドラゴン・スレイヤーでもある新参貴族を寄騎にできて、損のない話だからね。父上も快諾するだろう」
「まぁ、俺自身は、ある程度落ち着いたら、自分の領地に引き籠もろうと思ってるんで、ご期待に添えるかは、微妙なんですが……」
「いや、それだとしても、別に我が家としてはまったく損にはならない話なんだ。だから、受けさせてもらうよ。枢密院にも、そう伝えてしまっても、構わないんだろう?」
え、いいの? そこまで話進めちゃって。
だって、ウィリアムはあくまで、帝都での当代のローチ伯爵の名代であって、その最終判断は、伯爵本人が決めないとまずいんじゃないの?
「いいんですか、その、ウィリアムさんが決めてしまって……」
「問うまでもない、君にブリュサンメル上級伯の寄騎になる意志がないというのであれば、自分のところで囲い込みたい貴族家はいくらでもいるだろう、父上に相談するまでもない話なんだ。得をすることはあっても、損をすることは、まずない話だからね」
まぁ、確かに。それなら、善は急げ、という話にもなるか。
「すみません、そう言う事でしたら、よろしくお願いします」
俺は、そう言って、頭を下げた。
「いやいや、こちらこそ、だよ」
ウィリアムは、穏やかに笑いながら、両手を広げるような仕種をして、そう言った。
「ところで──」
俺のローチ伯爵家の寄騎入りの話が一段落したところで、ウィリアムは話題を変えてきた。
「君達は、帝都での宿と言うか、滞在するところは、もう、確保してあるのかな?」
「あ、実は、これから宿を探そうと思っているところでして」
俺は、正直に言った。
まぁ、俺も実際、準男爵に叙せられた以上、帝都屋敷というものを構えなきゃならないのだが、今日授爵を受けたばかりで、はい、すぐに入居できます、なんて物件が、あるわけもない。
今日のところは、商人街まで出て、安宿でもいいから、当座の滞在先を、確保するつもりだった。
「だったら、我が家に滞在すればいい。見ての通り、この広い屋敷に、私と妻、それに数人の使用人しかいないんだ。部屋は、余ってるからね」
「それは、ありがたいですが、大丈夫なんですか?」
「ああ、構わないよ、なぁ?」
俺が、念を押して問い返すと、ウィリアムは、俺にまずそう答えてから、エミとは反対側の隣に腰掛けていた、夫人に声をかけた。
「ええ、自分の家だと思って、寛いでくださいな」
アイヴィ夫人も、そう言ってくれた。その笑顔に、裏は、無いようだった。
「それに、久しぶりに、末の妹と一緒の時間も、欲しいからね」
ウィリアムは、そう言って、エミの頭を撫でた。
「すみません、そう言うことであれば、しばらくの間、お世話になります」
俺は、そう言って、頭を下げた。
正直、これから色々、官庁街で手続きしなきゃならないことがあるんで、そこに近い貴族屋敷に拠点を置けることは、ありがたいんである。
使用人に、各々の部屋の割当をさせて、ベッドなんかを準備してくれた。あ、なんか、エミの部屋は、最初から用意してあったようである。
いつでも、エミが、ローチ家を頼ってきてもいいように、ということなんだろう。
本当に、仲がいいんだな、この兄妹。
俺は……うん、転生して、前世の意識が戻ってからは、言ってしまうのもなんだが、あんましオツムの出来のよくない長男と、その他大勢に選り分けられた兄妹の中で、特に誰かと仲良くもなかったし、すぐに家を出て、師匠のもとに行ってしまった。
だからかな、ちょっと、羨ましい。
あ、蛇足を追加すると、前世では、俺は、2つ違いの、2人兄妹の長男長子だった。まぁ、両親ともに、所謂サラリーマン公務員だったから、現世みたいなしがらみはなかったんだけど。
ただ、現世でも、末っ子じゃなくて、そうだな、妹がいてくれたら、もう少し、楽しい人生になっていたのかもしれない。
……そうか、今の状況、俺はどっちかって言うと、エミにじゃなくて、ウィリアムの方に、感情移入してるのか……
いま、ここまでの事態になって、ただ、生涯独身を通すつもりはない。準男爵家の家長になったわけだし、それなりに家庭も持ちたいかな、何ぞと考えてはいる。
ただ、俺は、この前のルイズの件で、ちょいとばかり女性不信に陥ってもいる。
いや、だって、以前も言ったけど、ルイズって『転生したら辺境貴族の末っ子でした』のキャラとしては、それなりに気に入ってたんだよ?
まぁどっちかって言うと、ユリア推しだったんだけど。
それを、この世界が現実のものとなった途端、その嫌な部分まで見せられてしまって、俺の精神的に負担になってしまったのだ。
で、そんな事があったから、俺が今、女性不信の対象にしないで済んでいるのが、キャロとエミしかいないわけだ。
あ、もちろん姉弟子とか師匠とかは最初から話が別だぞ?
まぁ、この2人もそれなりに下心があるのは承知している。
でも、それでも信頼に足ると言うだけのものも、見せてくれたからな。
ドラゴン退治の一件以来、この2人はもう、俺にとって、“噛ませ犬キャラ”なんかではないのである。
で、実際問題として、俺はどっちを正妻にするかまでは、決めかねているのが事実だ。
キャロの元気のいいところなんかは、正直見ていて気持ちがいいし、一方で、エミは……男が女にこういうのは変かもしれないが、頼もしく感じる。
で、キャロを正妻にする分にはいいんだが、問題は、エミを正妻にして、さらにキャロを序列夫人や陪臣という形で傍に置こうとした場合。
これ、今のままだと、嫡子のキャロに対して、エミは庶子なので、捻れてしまって、まずいんである。
エバーワイン男爵家のメンツも潰してしまう。
だが、俺がローチ伯爵家の寄騎ということになれば、優先度が変わってくるので、あまり問題にならなくなるのだ。
「なるほど」
なんとなく色めき立った様子のエミとキャロとをよそに、ウィリアムは、身を起こしながら、悪戯っぽく笑って、言う。
「どちらにしても、我がローチ家にとっては、ドラゴン・スレイヤーでもある新参貴族を寄騎にできて、損のない話だからね。父上も快諾するだろう」
「まぁ、俺自身は、ある程度落ち着いたら、自分の領地に引き籠もろうと思ってるんで、ご期待に添えるかは、微妙なんですが……」
「いや、それだとしても、別に我が家としてはまったく損にはならない話なんだ。だから、受けさせてもらうよ。枢密院にも、そう伝えてしまっても、構わないんだろう?」
え、いいの? そこまで話進めちゃって。
だって、ウィリアムはあくまで、帝都での当代のローチ伯爵の名代であって、その最終判断は、伯爵本人が決めないとまずいんじゃないの?
「いいんですか、その、ウィリアムさんが決めてしまって……」
「問うまでもない、君にブリュサンメル上級伯の寄騎になる意志がないというのであれば、自分のところで囲い込みたい貴族家はいくらでもいるだろう、父上に相談するまでもない話なんだ。得をすることはあっても、損をすることは、まずない話だからね」
まぁ、確かに。それなら、善は急げ、という話にもなるか。
「すみません、そう言う事でしたら、よろしくお願いします」
俺は、そう言って、頭を下げた。
「いやいや、こちらこそ、だよ」
ウィリアムは、穏やかに笑いながら、両手を広げるような仕種をして、そう言った。
「ところで──」
俺のローチ伯爵家の寄騎入りの話が一段落したところで、ウィリアムは話題を変えてきた。
「君達は、帝都での宿と言うか、滞在するところは、もう、確保してあるのかな?」
「あ、実は、これから宿を探そうと思っているところでして」
俺は、正直に言った。
まぁ、俺も実際、準男爵に叙せられた以上、帝都屋敷というものを構えなきゃならないのだが、今日授爵を受けたばかりで、はい、すぐに入居できます、なんて物件が、あるわけもない。
今日のところは、商人街まで出て、安宿でもいいから、当座の滞在先を、確保するつもりだった。
「だったら、我が家に滞在すればいい。見ての通り、この広い屋敷に、私と妻、それに数人の使用人しかいないんだ。部屋は、余ってるからね」
「それは、ありがたいですが、大丈夫なんですか?」
「ああ、構わないよ、なぁ?」
俺が、念を押して問い返すと、ウィリアムは、俺にまずそう答えてから、エミとは反対側の隣に腰掛けていた、夫人に声をかけた。
「ええ、自分の家だと思って、寛いでくださいな」
アイヴィ夫人も、そう言ってくれた。その笑顔に、裏は、無いようだった。
「それに、久しぶりに、末の妹と一緒の時間も、欲しいからね」
ウィリアムは、そう言って、エミの頭を撫でた。
「すみません、そう言うことであれば、しばらくの間、お世話になります」
俺は、そう言って、頭を下げた。
正直、これから色々、官庁街で手続きしなきゃならないことがあるんで、そこに近い貴族屋敷に拠点を置けることは、ありがたいんである。
使用人に、各々の部屋の割当をさせて、ベッドなんかを準備してくれた。あ、なんか、エミの部屋は、最初から用意してあったようである。
いつでも、エミが、ローチ家を頼ってきてもいいように、ということなんだろう。
本当に、仲がいいんだな、この兄妹。
俺は……うん、転生して、前世の意識が戻ってからは、言ってしまうのもなんだが、あんましオツムの出来のよくない長男と、その他大勢に選り分けられた兄妹の中で、特に誰かと仲良くもなかったし、すぐに家を出て、師匠のもとに行ってしまった。
だからかな、ちょっと、羨ましい。
あ、蛇足を追加すると、前世では、俺は、2つ違いの、2人兄妹の長男長子だった。まぁ、両親ともに、所謂サラリーマン公務員だったから、現世みたいなしがらみはなかったんだけど。
ただ、現世でも、末っ子じゃなくて、そうだな、妹がいてくれたら、もう少し、楽しい人生になっていたのかもしれない。
……そうか、今の状況、俺はどっちかって言うと、エミにじゃなくて、ウィリアムの方に、感情移入してるのか……
0
あなたにおすすめの小説
異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい
ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。
強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。
ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
俺、何しに異世界に来たんだっけ?
右足の指
ファンタジー
「目的?チートスキル?…なんだっけ。」
主人公は、転生の儀に見事に失敗し、爆散した。
気づいた時には見知らぬ部屋、見知らぬ空間。その中で佇む、美しい自称女神の女の子…。
「あなたに、お願いがあります。どうか…」
そして体は宙に浮き、見知らぬ方陣へと消え去っていく…かに思えたその瞬間、空間内をとてつもない警報音が鳴り響く。周りにいた羽の生えた天使さんが騒ぎたて、なんだかポカーンとしている自称女神、その中で突然と身体がグチャグチャになりながらゆっくり方陣に吸い込まれていく主人公…そして女神は確信し、呟いた。
「やべ…失敗した。」
女神から託された壮大な目的、授けられたチートスキルの数々…その全てを忘れた主人公の壮大な冒険(?)が今始まる…!
異世界に転生したので幸せに暮らします、多分
かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。
前世の分も幸せに暮らします!
平成30年3月26日完結しました。
番外編、書くかもです。
5月9日、番外編追加しました。
小説家になろう様でも公開してます。
エブリスタ様でも公開してます。
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
竹桜
ファンタジー
武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる