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第3話 チハーキュへようこそ日本人さん
Chapter-30
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コラベルン市。
“舟形遺跡” の発掘の拠点となりつつも、現在はその役割はほとんど終え、残った遺構の維持管理の為にその機能が残されている、人口15万に満たない都市に、不相応な、巨大な図書館のような建物があった。
「これが…… “聖遺箱”、ですか?」
「いえ、それはレプリカです」
その建物のエントランスホールに置かれた、ガラスケースの中に、2段重ねのベージュの箱が展示されていた。
克三郎と珊瑚が好奇心旺盛そうな様子でそれを覗き込んでいたが、克三郎の問いかける言葉に、アレクシオが答える。
「はー……」
克三郎がアサギリとアイリを見ると、どこか落ち着かない様子でいる。
「お2人も、緊張されているようですね?」
「そ、それは当然ですよ!」
克三郎が声をかけると、アサギリがひっくり返りかけた声を出した。
「“聖遺箱” 本体に関しては、今でも皇室の専権事項なんです……文書類の閲覧はともかく、実物を見るのは、一般人はもちろん、軍人でも私みたいな木っ端士官には早々縁のないものなんですよ……」
落ち着きなく、周囲をキョロキョロとしながら、アサギリはそう答えた。
「それほどのものを、日本人に見せる……と」
丈乃が、眉を顰めつつ、呟くように言う。
「はい」
アレクシオも、どこか緊張した様子で、答える。
「本来であれば外国の方にお見せする物ではないのですが、皇太女殿下がこれを日本人に見せるようにと……皇帝陛下の御免しをいただいた次第です」
「それ程のものを……」
学と丈乃が、ゴクリ、と喉を鳴らす。
「初回の視察班の方々は、まずこのゴラベルン市、 “舟形遺跡” まで御案内していませんし、それに……川口大尉には申し訳ありませんが、軍人の方ばかりでしたので……今回、多様な方々が来られたということで、是非にご覧になっていただき、意見をお伺いせよと……」
「あ、いえ」
自身の名前を出されて、学が慌てる。
「初回視察班が、海陸軍の偵察班じみた物だったのは、事実ですので……」
「それに、軍の中から川口大尉が選ばれたということは、我が国の海軍も、貴国のその、予感のようなものを汲み取っているのかも知れません」
「と、言いますと?」
続いて丈乃が言うと、右手に鍵を持ちながら、アレクシオは2人を振り返り、聞き返す。
「川口大尉は、在野では歴史の専攻者で、尚且つ、海軍では通信科に所属しています。おそらく、この両方を満たす人物でなければならなかった、という事ではないでしょうか?」
「そうなのですか?」
丈乃の言葉に、アレクシオは、学の顔に視線を向けて、そう訊ねた。
「いえ……大学で国史が専門だっただけですよ……」
気まずそうに、思わず苦笑してしまいながら、学は謙遜するように言う。
「ですが、大学を出ているのであれば、一般の方よりは遥かに見識をお持ちでしょう」
「うーん……そうだといいのですが」
アレクシオは口元で笑って言うが、学本人は、苦笑しながらむず痒そうにしている。
アレクシオの先導で、視察班、それにアサギリとアイリは、廊下を歩いていく。
左右は、古い文書が詰められた書庫になっている。
「ここは、かつて “聖遺箱” から取り出された文書、資料類が格納されています」
「そうということは、現在も “聖遺箱” の内容を知ることができるのですか?」
「いえ」
丈乃が聞き返すが、アレクシオは、淡々とした口調で否定する。
「最後に聖遺箱の内容を閲覧できたのは、チハーキュ帝国開闢の頃だと言われています。つまり、現在のチイイニ朝ではなく、イビムの支配を受けるよりさらに以前ですね」
「イビムは、この書庫にある文書や、 “聖遺箱” を、破壊したり、持ち去ったりはしなかったのですか?」
アレクシオの答えを聞いて、丈乃は更に質問する。
「植民地時代は……イエーデ・チハーキュ家は、イビムの支配者に対し、恭順する代わりに、これにだけは絶対に手を付けるなと確約させました。その確約は、イビムには丁度よかったのです。なぜなら、チハーキュの皇室も、これは神聖なものとして保管をし続けてきただけで、この内容は当時、何の価値があるのかも解っていませんでしたから」
「なんの価値があるのかも解らなかった?」
怪訝そうに、丈乃は聞き返す。
「はい。当時は」
「今は、解るみたいな言い方ですね?」
「当然ですよ」
「その内容は、ユーエンビー古代語、つまり、日本語で書かれた工業製品の図面なんです!」
「そ、と、言うことは、ここにある情報は……」
「はい。公にはしていませんが、我々が科学技術文明を急速に発展させたその黎明においては、ここにある情報の方が、 “舟形遺跡” から得られた情報量より多いと言えます。ただし、 “舟形遺跡” の存在意義が軽いというわけではありません。 “舟形遺跡” ──── 転移巡洋艦『畝傍』から、蒸気機関の製法を編み出し、ユーエンビー古代語の復元がなされなければ、ここの情報にアクセスし、その価値を知ることはできなかったのですから」
「なるほどな……」
それまで、会話を丈乃に任せていた学が、声を出した。
「だがそうすると、中身に価値があると分かった途端、イビムもこれを放置していなかったのでは?」
「…………その通りです」
学の問いに、アレクシオは、重々しい口調で答える。
「当時のイフイエ・チハーキュ家は、この情報と科学技術の力を基に、チハーキュの立場を見直させ、地位を向上させようとしていました。しかし、それを知った当時のイビムのカムイガルド総督、アレクセイ・グラント・ロズニアクは、チハーキュの謀反だと断じて、当時の帝都レーリーを制圧し、イエフエ・チハーキュ家を一族郎党、全員を処刑したのです」
「…………!!」
アレクシオの説明に、学と丈乃、それに克三郎と珊瑚も、顔を顰めた。
「ですがそれが、イビムにとっての綻びの始まりとなりました。チイイニ・チハーキュ家当主、リュカ・エール・スタニス・チイイニ・チハーキュ・ブラジンスは、直ちにチハーキュ皇帝即位を宣言し、レングードを根拠地として独立戦争が始まったのです。10年ほどに及ぶ戦争の末、カムイガルド全土を平定し、ロズニアクを含め3人のイビム・カムイガルド総督の首級を奪い、最終的にイビムにチハーキュ統治を放棄させたのです」
「…………一度支配を受け入れるということは、それから解かれるには、自決に向けた相当な覚悟が必要だということだろうな」
「川口大尉……」
学の、呟きにしてはやたら重苦しい口調に、丈乃が何かを心配したような表情で学の顔を見る。
「いや、俺は今すぐどうこうなるとは思わないしするつもりもないね。それこそ言葉の意味を理解してくれ。覚悟もなく挙兵してもろくな事にはならんよ」
「…………」
「…………?」
丈乃と学のやり取りの事情を知らない、アレクシオとアサギリ、アイリは不思議そうに見ることしかできない。
「流石に『“聖遺箱” の書庫』……今はこの建物とは別のものでしたが、戦火で半分は喪失しました。 “聖遺箱” 本体は死守されたのですが……」
「なるほど……」
そう言っている間に、書庫に挟まれた廊下の突き当りに行き着く。そこから、地下に降りる階段があった。アレクシスが壁面のスイッチを入れ、階段とその下の踊場の照明が点く。
地階に降りると、そこには、やや重厚だが、それそのものは特に変哲もない扉がある。だが、その扉には、鍵が2つも付いていた。
「ここが、 “聖遺箱” の保管室になります」
アレクシオが言い、扉のシリンダー錠と、上の方に付いている、日本でいうところの南京錠を、2本の鍵を使って解錠する。
日本人はもちろん、アサギリとアイリまでもが、固唾を飲みながらその様子を見ていた。
「…………どうぞ」
アレクシオは、扉を開けると、そのすぐ脇にある室内の電灯のスイッチを入れながら、後続を招き入れた。
「…………入口にあった模型と、よく似ていますね……」
克三郎が言う通り、入口にあったレプリカ同様、ガラスケースの中に、水平方向に広い形状の、ベージュの箱が置かれていて、その上に、自在に動くような台座のついた、立方体に近い箱が乗っている。
「いや……材質がだいぶ違うわ」
そう言って、珊瑚は “聖遺箱” の下の箱を観察し始める。
「箱の正面は、セルロイド……じゃないわね、ベークライト……とも違うようだし」
「上に乗っているのは、陰極管表示器のように見えますが」
アイリもそれを観察しつつ、言う。
「ここに、なにか表示されるっていうのかな?」
屈んで覗き込んでいるアイリの背後で、その表示器の画面らしき部分を見ながら、アサギリが言う。
「西尾君は、鉄道の通信機にも詳しいんじゃないのかい? 何か、似ているものはないか?」
自身も観察しつつ、丈乃は克三郎に問いかける。
「そこまで詳しいわけじゃありませんよ……」
まずは困惑気味に言う克三郎だったが、
「けれど、知る限りで良ければ、このような設備は見たことも聞いたこともありません」
と、どこか詰まるような口調でそう言った。
「そうか……川口大尉?」
「俺だってこんなものを見るのは初めてだ……ただ、やたら精密なのは解る。ドイツにだってこんなモノは作れるかどうか……」
学は、そう言いながら、観察しつつ、箱の真後ろに回り込んで、軽くガラスケースに触れてしまいながら、しゃがみ、箱の背面を見る。
「…………!!」
それを見つけて、学は、目を見開き、その場で驚愕のあまり身体を硬直させて、呼吸すら止まってしまったかのような状態になった。
「どうしました? 川口大尉?」
アレクシオが、その様子に気づいて、学に問いかける。
「サンミル中尉! ウェブスター二飛曹!」
「え? あ?」
「は、はい!?」
いきなり、学から、鬼気迫る様子の声で呼びかけられ、箱の観察に食い入っていた2人は、驚いて身を跳ねさせるようにしながら返事をした。
「西尾君と磯原さんを連れて出ていっていてくれ! ここにその2人はまずい、それに君たちもまだ知るべきじゃない!」
「え? え?」
「いや、ちょっと……」
克三郎と珊瑚は身を起こし、戸惑った声を出す。アサギリとアイリもまだ困惑している。
「早く! これは、どっちの国にとっても困ることになるぞ!」
「は、は、はい、すみません」
「い、いや、何を」
「いいから、磯原さん!」
渋る珊瑚を引っ張りつつ、アサギリとアイリ、克三郎が、室内から出ていった。
「…………」
「…………自分はいいんですか?」
丈乃が訊ねる。
「ああ、口は硬い方だと考えた」
「期待外れにならないようにします」
学の答えに、丈乃がそう答える。
「川口大尉は、それが、なにか解るのですか?」
アレクシオが、自身も興奮した様子で、学に問い質す。
「いや、物が何であるのかは、皆目見当もつかん」
学がそう答えると、丈乃とアレクシオは脱力したようなリアクションを取る。
「だが、これが相当にヤバいもの、とんでもないものだということは解る」
「それは、どういう……?」
アレクシオが聞き返しかける。
「丹波君も、これを見てくれ」
「え?」
それは、下の箱の出自を書かれているだろう、その側面に張られたシール。
日本電気株式会社
Made in Japan
「なっ……」
「字は少し違うが、日電の製品だということだ」
「ですが、日本にはこんなもの!」
「ああ、存在していない。ただ、今はな」
「今は……?」
学の言葉に、丈乃は不思議そうに聞き返す。
「『畝傍』は56年前の地球から300年前のエボールグに来た」
「そ、それじゃ、これは!!」
丈乃が驚愕の声を出し、アレクシオも色めき立ち、興奮したような瞳になる。
「未来の日本から来た ──── 確証があるわけじゃないが、そう考えれば説明がつく」
「そ、それじゃあ、この書庫に詰まっている情報というのは!?」
アレクシオは、周囲を見渡すように首を振りながら、問いかけるような声を出す。
「おそらく未来の日本からの情報でしょう。だから、いちいち工業製品が日本のものと共通点を持つ、そう考えれば説明がつく」
自身も険しい表情になって、丈乃は説明し、言い終えてから、アレクシオに視線を向けた。
「もちろん、チハーキュの努力がない、というわけじゃない」
学は、立ち上がって姿勢を整えながら、言う。
「自己努力で基礎技術力を上げ、必要な段階に達する度、ここから製造可能な製品の情報を取り出して製造している ──── そう考えれば、鉄道車両がそっくりな事も説明できる」
「ですが、まるっきり同じものがつくられているのは鉄道ぐらいで、特に航空機なんかはアメリカに近いような設計をしているとも聞きますが……!」
丈乃が問いただすように言う。
「そりゃ、こっちの技術者に開発能力がないわけじゃないからさ。自分達の都合に合わせて作った方がいいなら参考以上にはしない」
「鉄道車両は、日本のコピーの方がいいと?」
「たしかに、日本人には意外に感じるがな、だけど一方で、日本の鉄道は世界で一番正確だと言う説もある。もちろん、この国に開発能力自体はないわけじゃない」
「そう言う理解の仕方もあるか……」
丈乃が納得するような声を出す。
学は一度、視線をアレクシオに振った。
「この国は概ね地球の列強国と同じ程度の技術力だが、一部の技術はアメリカやドイツすら凌いでいる。その理由は昨日、説明してもらった通りなんだろう。実際、通信科員としてチハーキュの同軸ケーブルには驚かされた。あれは間違いなく今の地球には造れる国はない」
「は、はあ……」
称賛の言葉を告げられ、アレクシオは少しくすぐったそうな表情をする。
「その一方で、地球では開発できるものが、この国では再現できずにいるものがポロポロとあったりする。共鳴マグネトロンとかな。無理もない。地球が2000年以上かけて築き上げた科学技術時代を、この世界はここにある情報と、『畝傍』の実物だけを頼りに、1/10の200年ばかりで作ったんだからな。そう考えると恐ろしいぐらいだ」
「…………川口大尉」
険しい表情になって、丈乃が学に問う。
「大尉は、この事は上に?」
「当然、海軍の上の方は俺が、少なくとも “舟形遺跡” を見に行くことは承知だからな。信頼できる相手には、嘘にならない程度に報告するさ……ただ、吹聴して回るような事は避けるつもりでいる」
「だから、磯原さんを追い出しましたね?」
丈乃が、重ねて問いかける。
「ああ、予防で一緒に西尾君も退室してもらったが……憶測混じりの記事を新聞に掲載されたら溜まったものじゃないからな」
「解りました」
丈乃は、どこか済ましたような表情で言う。
「自分も、あまりにも突拍子もない虚構を書きすぎて、恥をかかないようにします」
「そうしてくれ」
「我々は、どうすればいいですか?」
アレクシオが、真剣な表情で問いかける。
「元々これはチハーキュさんにあったものだ。そっちの処理は、そっちの政府で決めてくれ、と、俺からはそうとしか言えんな」
「そう……ですね」
アレクシオは、そう言いながら、視線を “聖遺箱” の正面に移す。
その正面、向かって左上に、シンプルに装飾された文字でこう書かれていた。
PC-9821Ra20
エボールグ。
オクシアント大陸、イビム連合王国。
王都ヴァシンテク。
王宮、御前会議の間 ────
「チハーキュ帝国で、戦時生産の動員がかかっている?」
怪訝そうな表情で、宰相マクシム・レオナルド・エルムストンは訊ねる。
白髪交じりの初老ではあるが、矍鑠とした男性だ。
「今、チハーキュ帝国が戦争準備をしなければならないような関係にある国家は存在したか……?」
「それが ────」
軍務卿、パヴェル・ヘンリー・ヴラントン伯爵が告げる。
「── 異世界国家と戦争状態にある、というのです」
「異世界国家、だと!?」
閣僚の1人が、素っ頓狂な声を出した。
他の閣僚も、俄には信じられない、と言った様子で、ざわついている。
「そのような眉唾物の情報が、信頼に足ると言うのですかな?」
外務卿の、ヴラディスラフ・エドワード・ラングフォード子爵が、どこか憤った様子で問い質すように言う。
「はい。実際に、世界をつなぐ “門” を挟んで、異世界側に同盟国が存在し、その国からの使者が、2度ほど訪れています。これがその写真です」
パヴェルは、そう言って、議場の卓に、カラーネガフィルムから引き伸ばされた、2枚の大きな写真を提示した。
「あの国に人間か……しかし、別にあの国は人間自体を拒絶しているわけではない。珍しい光景ではないのでは?」
大蔵卿、ドミトリー・ジョナサン・タリントン子爵が指摘する。
「いや……まて……」
マクシムは、その写真を見て、怪訝そうに眉をぴくん、と動かした。
「人間族であるにも関わらず、フィリシスにしか見られない黒い髪、白と言うには濃い肌! このような人間はいない……それも、こんな人数が……」
「言われてみれば……」
ドミトリーが、写真を見直す。
「こちらは、どう見ても軍服……だが、我々の知っているどこの国でもない……」
それは、初回視察班、陸軍も海軍も軍装丸出しの日本人を撮影した写真だった。
「それに、一部のチハーキュ大型艦の行方がわからなくなっています。あの国にしては珍しく、同盟国の軽空母部隊に、バイハイ島北の挑発航海を委任しているとも。3万トン以上の大型艦を完全に隠すのは無理です。しかし、異世界に行っているのなら説明がつく」
パヴェルは、手振りを交えて、そう説明した。
「なるほど……しかしそうであれば、これは我が国に対する戦争準備ではないということだろう……ひとまずは素知らぬふりをして静観しても大丈夫そうだ」
「何を言っておられるのですか!」
どこか安堵したように息を吐きながら言うマクシムに対し、パヴェルが、急に荒い声を出した。
「あの忌々しい犬どもの国が、他国と戦争を始めたのですよ! 当然、軍事力、生産力もそちらに奪われる。これは、我々があの犬どもの帝国に雪辱を晴らす、千載一遇のチャンスではありませんか!!」
「しかし……」
「ならーんっ!!」
マクシムが言いかけたのを遮って、若い声がそれを強く否定した。
「我が御代に、チハーキュと戦争を始めることは罷りならん!」
現イビム王、ミハイル・チャールズ・ドラゴミール・イビムスク・ウィンストン。
「しかし、我が王……」
「ならんと言っておる!! しつこいぞ!!」
王に直接食い下がろうとしたパヴェルに、王は憤ったような声を荒げ、その言葉を払った。
「チハーキュの生産力……王都に迫る空襲……余は伯父上の ──── 先代王の怯える姿を間近で見ておった…………」
先代王、イゴール・ウィリアム・ドラゴミール・イビムスク・ファーレル。現王からは伯父に当たる。
「挙句の果てに、引責退位という名の永久幽閉……嫌だ、余は絶対に嫌だ!!」
「ですから、それこそ!」
「ならんと言っておる! これ以上言うのであれば、貴殿の役職と爵位を剥奪するぞ!!」
「…………」
イビムは賢者評議会という議会は存在しているものの、基本的には絶対君主制だ。あまりに乱暴な事は憚られる事はあるとは言え、基本的には、王の意思が国家の意志である。
憮然とした様子で、パヴェルは押し黙った。
──────── ように見えた。
“舟形遺跡” の発掘の拠点となりつつも、現在はその役割はほとんど終え、残った遺構の維持管理の為にその機能が残されている、人口15万に満たない都市に、不相応な、巨大な図書館のような建物があった。
「これが…… “聖遺箱”、ですか?」
「いえ、それはレプリカです」
その建物のエントランスホールに置かれた、ガラスケースの中に、2段重ねのベージュの箱が展示されていた。
克三郎と珊瑚が好奇心旺盛そうな様子でそれを覗き込んでいたが、克三郎の問いかける言葉に、アレクシオが答える。
「はー……」
克三郎がアサギリとアイリを見ると、どこか落ち着かない様子でいる。
「お2人も、緊張されているようですね?」
「そ、それは当然ですよ!」
克三郎が声をかけると、アサギリがひっくり返りかけた声を出した。
「“聖遺箱” 本体に関しては、今でも皇室の専権事項なんです……文書類の閲覧はともかく、実物を見るのは、一般人はもちろん、軍人でも私みたいな木っ端士官には早々縁のないものなんですよ……」
落ち着きなく、周囲をキョロキョロとしながら、アサギリはそう答えた。
「それほどのものを、日本人に見せる……と」
丈乃が、眉を顰めつつ、呟くように言う。
「はい」
アレクシオも、どこか緊張した様子で、答える。
「本来であれば外国の方にお見せする物ではないのですが、皇太女殿下がこれを日本人に見せるようにと……皇帝陛下の御免しをいただいた次第です」
「それ程のものを……」
学と丈乃が、ゴクリ、と喉を鳴らす。
「初回の視察班の方々は、まずこのゴラベルン市、 “舟形遺跡” まで御案内していませんし、それに……川口大尉には申し訳ありませんが、軍人の方ばかりでしたので……今回、多様な方々が来られたということで、是非にご覧になっていただき、意見をお伺いせよと……」
「あ、いえ」
自身の名前を出されて、学が慌てる。
「初回視察班が、海陸軍の偵察班じみた物だったのは、事実ですので……」
「それに、軍の中から川口大尉が選ばれたということは、我が国の海軍も、貴国のその、予感のようなものを汲み取っているのかも知れません」
「と、言いますと?」
続いて丈乃が言うと、右手に鍵を持ちながら、アレクシオは2人を振り返り、聞き返す。
「川口大尉は、在野では歴史の専攻者で、尚且つ、海軍では通信科に所属しています。おそらく、この両方を満たす人物でなければならなかった、という事ではないでしょうか?」
「そうなのですか?」
丈乃の言葉に、アレクシオは、学の顔に視線を向けて、そう訊ねた。
「いえ……大学で国史が専門だっただけですよ……」
気まずそうに、思わず苦笑してしまいながら、学は謙遜するように言う。
「ですが、大学を出ているのであれば、一般の方よりは遥かに見識をお持ちでしょう」
「うーん……そうだといいのですが」
アレクシオは口元で笑って言うが、学本人は、苦笑しながらむず痒そうにしている。
アレクシオの先導で、視察班、それにアサギリとアイリは、廊下を歩いていく。
左右は、古い文書が詰められた書庫になっている。
「ここは、かつて “聖遺箱” から取り出された文書、資料類が格納されています」
「そうということは、現在も “聖遺箱” の内容を知ることができるのですか?」
「いえ」
丈乃が聞き返すが、アレクシオは、淡々とした口調で否定する。
「最後に聖遺箱の内容を閲覧できたのは、チハーキュ帝国開闢の頃だと言われています。つまり、現在のチイイニ朝ではなく、イビムの支配を受けるよりさらに以前ですね」
「イビムは、この書庫にある文書や、 “聖遺箱” を、破壊したり、持ち去ったりはしなかったのですか?」
アレクシオの答えを聞いて、丈乃は更に質問する。
「植民地時代は……イエーデ・チハーキュ家は、イビムの支配者に対し、恭順する代わりに、これにだけは絶対に手を付けるなと確約させました。その確約は、イビムには丁度よかったのです。なぜなら、チハーキュの皇室も、これは神聖なものとして保管をし続けてきただけで、この内容は当時、何の価値があるのかも解っていませんでしたから」
「なんの価値があるのかも解らなかった?」
怪訝そうに、丈乃は聞き返す。
「はい。当時は」
「今は、解るみたいな言い方ですね?」
「当然ですよ」
「その内容は、ユーエンビー古代語、つまり、日本語で書かれた工業製品の図面なんです!」
「そ、と、言うことは、ここにある情報は……」
「はい。公にはしていませんが、我々が科学技術文明を急速に発展させたその黎明においては、ここにある情報の方が、 “舟形遺跡” から得られた情報量より多いと言えます。ただし、 “舟形遺跡” の存在意義が軽いというわけではありません。 “舟形遺跡” ──── 転移巡洋艦『畝傍』から、蒸気機関の製法を編み出し、ユーエンビー古代語の復元がなされなければ、ここの情報にアクセスし、その価値を知ることはできなかったのですから」
「なるほどな……」
それまで、会話を丈乃に任せていた学が、声を出した。
「だがそうすると、中身に価値があると分かった途端、イビムもこれを放置していなかったのでは?」
「…………その通りです」
学の問いに、アレクシオは、重々しい口調で答える。
「当時のイフイエ・チハーキュ家は、この情報と科学技術の力を基に、チハーキュの立場を見直させ、地位を向上させようとしていました。しかし、それを知った当時のイビムのカムイガルド総督、アレクセイ・グラント・ロズニアクは、チハーキュの謀反だと断じて、当時の帝都レーリーを制圧し、イエフエ・チハーキュ家を一族郎党、全員を処刑したのです」
「…………!!」
アレクシオの説明に、学と丈乃、それに克三郎と珊瑚も、顔を顰めた。
「ですがそれが、イビムにとっての綻びの始まりとなりました。チイイニ・チハーキュ家当主、リュカ・エール・スタニス・チイイニ・チハーキュ・ブラジンスは、直ちにチハーキュ皇帝即位を宣言し、レングードを根拠地として独立戦争が始まったのです。10年ほどに及ぶ戦争の末、カムイガルド全土を平定し、ロズニアクを含め3人のイビム・カムイガルド総督の首級を奪い、最終的にイビムにチハーキュ統治を放棄させたのです」
「…………一度支配を受け入れるということは、それから解かれるには、自決に向けた相当な覚悟が必要だということだろうな」
「川口大尉……」
学の、呟きにしてはやたら重苦しい口調に、丈乃が何かを心配したような表情で学の顔を見る。
「いや、俺は今すぐどうこうなるとは思わないしするつもりもないね。それこそ言葉の意味を理解してくれ。覚悟もなく挙兵してもろくな事にはならんよ」
「…………」
「…………?」
丈乃と学のやり取りの事情を知らない、アレクシオとアサギリ、アイリは不思議そうに見ることしかできない。
「流石に『“聖遺箱” の書庫』……今はこの建物とは別のものでしたが、戦火で半分は喪失しました。 “聖遺箱” 本体は死守されたのですが……」
「なるほど……」
そう言っている間に、書庫に挟まれた廊下の突き当りに行き着く。そこから、地下に降りる階段があった。アレクシスが壁面のスイッチを入れ、階段とその下の踊場の照明が点く。
地階に降りると、そこには、やや重厚だが、それそのものは特に変哲もない扉がある。だが、その扉には、鍵が2つも付いていた。
「ここが、 “聖遺箱” の保管室になります」
アレクシオが言い、扉のシリンダー錠と、上の方に付いている、日本でいうところの南京錠を、2本の鍵を使って解錠する。
日本人はもちろん、アサギリとアイリまでもが、固唾を飲みながらその様子を見ていた。
「…………どうぞ」
アレクシオは、扉を開けると、そのすぐ脇にある室内の電灯のスイッチを入れながら、後続を招き入れた。
「…………入口にあった模型と、よく似ていますね……」
克三郎が言う通り、入口にあったレプリカ同様、ガラスケースの中に、水平方向に広い形状の、ベージュの箱が置かれていて、その上に、自在に動くような台座のついた、立方体に近い箱が乗っている。
「いや……材質がだいぶ違うわ」
そう言って、珊瑚は “聖遺箱” の下の箱を観察し始める。
「箱の正面は、セルロイド……じゃないわね、ベークライト……とも違うようだし」
「上に乗っているのは、陰極管表示器のように見えますが」
アイリもそれを観察しつつ、言う。
「ここに、なにか表示されるっていうのかな?」
屈んで覗き込んでいるアイリの背後で、その表示器の画面らしき部分を見ながら、アサギリが言う。
「西尾君は、鉄道の通信機にも詳しいんじゃないのかい? 何か、似ているものはないか?」
自身も観察しつつ、丈乃は克三郎に問いかける。
「そこまで詳しいわけじゃありませんよ……」
まずは困惑気味に言う克三郎だったが、
「けれど、知る限りで良ければ、このような設備は見たことも聞いたこともありません」
と、どこか詰まるような口調でそう言った。
「そうか……川口大尉?」
「俺だってこんなものを見るのは初めてだ……ただ、やたら精密なのは解る。ドイツにだってこんなモノは作れるかどうか……」
学は、そう言いながら、観察しつつ、箱の真後ろに回り込んで、軽くガラスケースに触れてしまいながら、しゃがみ、箱の背面を見る。
「…………!!」
それを見つけて、学は、目を見開き、その場で驚愕のあまり身体を硬直させて、呼吸すら止まってしまったかのような状態になった。
「どうしました? 川口大尉?」
アレクシオが、その様子に気づいて、学に問いかける。
「サンミル中尉! ウェブスター二飛曹!」
「え? あ?」
「は、はい!?」
いきなり、学から、鬼気迫る様子の声で呼びかけられ、箱の観察に食い入っていた2人は、驚いて身を跳ねさせるようにしながら返事をした。
「西尾君と磯原さんを連れて出ていっていてくれ! ここにその2人はまずい、それに君たちもまだ知るべきじゃない!」
「え? え?」
「いや、ちょっと……」
克三郎と珊瑚は身を起こし、戸惑った声を出す。アサギリとアイリもまだ困惑している。
「早く! これは、どっちの国にとっても困ることになるぞ!」
「は、は、はい、すみません」
「い、いや、何を」
「いいから、磯原さん!」
渋る珊瑚を引っ張りつつ、アサギリとアイリ、克三郎が、室内から出ていった。
「…………」
「…………自分はいいんですか?」
丈乃が訊ねる。
「ああ、口は硬い方だと考えた」
「期待外れにならないようにします」
学の答えに、丈乃がそう答える。
「川口大尉は、それが、なにか解るのですか?」
アレクシオが、自身も興奮した様子で、学に問い質す。
「いや、物が何であるのかは、皆目見当もつかん」
学がそう答えると、丈乃とアレクシオは脱力したようなリアクションを取る。
「だが、これが相当にヤバいもの、とんでもないものだということは解る」
「それは、どういう……?」
アレクシオが聞き返しかける。
「丹波君も、これを見てくれ」
「え?」
それは、下の箱の出自を書かれているだろう、その側面に張られたシール。
日本電気株式会社
Made in Japan
「なっ……」
「字は少し違うが、日電の製品だということだ」
「ですが、日本にはこんなもの!」
「ああ、存在していない。ただ、今はな」
「今は……?」
学の言葉に、丈乃は不思議そうに聞き返す。
「『畝傍』は56年前の地球から300年前のエボールグに来た」
「そ、それじゃ、これは!!」
丈乃が驚愕の声を出し、アレクシオも色めき立ち、興奮したような瞳になる。
「未来の日本から来た ──── 確証があるわけじゃないが、そう考えれば説明がつく」
「そ、それじゃあ、この書庫に詰まっている情報というのは!?」
アレクシオは、周囲を見渡すように首を振りながら、問いかけるような声を出す。
「おそらく未来の日本からの情報でしょう。だから、いちいち工業製品が日本のものと共通点を持つ、そう考えれば説明がつく」
自身も険しい表情になって、丈乃は説明し、言い終えてから、アレクシオに視線を向けた。
「もちろん、チハーキュの努力がない、というわけじゃない」
学は、立ち上がって姿勢を整えながら、言う。
「自己努力で基礎技術力を上げ、必要な段階に達する度、ここから製造可能な製品の情報を取り出して製造している ──── そう考えれば、鉄道車両がそっくりな事も説明できる」
「ですが、まるっきり同じものがつくられているのは鉄道ぐらいで、特に航空機なんかはアメリカに近いような設計をしているとも聞きますが……!」
丈乃が問いただすように言う。
「そりゃ、こっちの技術者に開発能力がないわけじゃないからさ。自分達の都合に合わせて作った方がいいなら参考以上にはしない」
「鉄道車両は、日本のコピーの方がいいと?」
「たしかに、日本人には意外に感じるがな、だけど一方で、日本の鉄道は世界で一番正確だと言う説もある。もちろん、この国に開発能力自体はないわけじゃない」
「そう言う理解の仕方もあるか……」
丈乃が納得するような声を出す。
学は一度、視線をアレクシオに振った。
「この国は概ね地球の列強国と同じ程度の技術力だが、一部の技術はアメリカやドイツすら凌いでいる。その理由は昨日、説明してもらった通りなんだろう。実際、通信科員としてチハーキュの同軸ケーブルには驚かされた。あれは間違いなく今の地球には造れる国はない」
「は、はあ……」
称賛の言葉を告げられ、アレクシオは少しくすぐったそうな表情をする。
「その一方で、地球では開発できるものが、この国では再現できずにいるものがポロポロとあったりする。共鳴マグネトロンとかな。無理もない。地球が2000年以上かけて築き上げた科学技術時代を、この世界はここにある情報と、『畝傍』の実物だけを頼りに、1/10の200年ばかりで作ったんだからな。そう考えると恐ろしいぐらいだ」
「…………川口大尉」
険しい表情になって、丈乃が学に問う。
「大尉は、この事は上に?」
「当然、海軍の上の方は俺が、少なくとも “舟形遺跡” を見に行くことは承知だからな。信頼できる相手には、嘘にならない程度に報告するさ……ただ、吹聴して回るような事は避けるつもりでいる」
「だから、磯原さんを追い出しましたね?」
丈乃が、重ねて問いかける。
「ああ、予防で一緒に西尾君も退室してもらったが……憶測混じりの記事を新聞に掲載されたら溜まったものじゃないからな」
「解りました」
丈乃は、どこか済ましたような表情で言う。
「自分も、あまりにも突拍子もない虚構を書きすぎて、恥をかかないようにします」
「そうしてくれ」
「我々は、どうすればいいですか?」
アレクシオが、真剣な表情で問いかける。
「元々これはチハーキュさんにあったものだ。そっちの処理は、そっちの政府で決めてくれ、と、俺からはそうとしか言えんな」
「そう……ですね」
アレクシオは、そう言いながら、視線を “聖遺箱” の正面に移す。
その正面、向かって左上に、シンプルに装飾された文字でこう書かれていた。
PC-9821Ra20
エボールグ。
オクシアント大陸、イビム連合王国。
王都ヴァシンテク。
王宮、御前会議の間 ────
「チハーキュ帝国で、戦時生産の動員がかかっている?」
怪訝そうな表情で、宰相マクシム・レオナルド・エルムストンは訊ねる。
白髪交じりの初老ではあるが、矍鑠とした男性だ。
「今、チハーキュ帝国が戦争準備をしなければならないような関係にある国家は存在したか……?」
「それが ────」
軍務卿、パヴェル・ヘンリー・ヴラントン伯爵が告げる。
「── 異世界国家と戦争状態にある、というのです」
「異世界国家、だと!?」
閣僚の1人が、素っ頓狂な声を出した。
他の閣僚も、俄には信じられない、と言った様子で、ざわついている。
「そのような眉唾物の情報が、信頼に足ると言うのですかな?」
外務卿の、ヴラディスラフ・エドワード・ラングフォード子爵が、どこか憤った様子で問い質すように言う。
「はい。実際に、世界をつなぐ “門” を挟んで、異世界側に同盟国が存在し、その国からの使者が、2度ほど訪れています。これがその写真です」
パヴェルは、そう言って、議場の卓に、カラーネガフィルムから引き伸ばされた、2枚の大きな写真を提示した。
「あの国に人間か……しかし、別にあの国は人間自体を拒絶しているわけではない。珍しい光景ではないのでは?」
大蔵卿、ドミトリー・ジョナサン・タリントン子爵が指摘する。
「いや……まて……」
マクシムは、その写真を見て、怪訝そうに眉をぴくん、と動かした。
「人間族であるにも関わらず、フィリシスにしか見られない黒い髪、白と言うには濃い肌! このような人間はいない……それも、こんな人数が……」
「言われてみれば……」
ドミトリーが、写真を見直す。
「こちらは、どう見ても軍服……だが、我々の知っているどこの国でもない……」
それは、初回視察班、陸軍も海軍も軍装丸出しの日本人を撮影した写真だった。
「それに、一部のチハーキュ大型艦の行方がわからなくなっています。あの国にしては珍しく、同盟国の軽空母部隊に、バイハイ島北の挑発航海を委任しているとも。3万トン以上の大型艦を完全に隠すのは無理です。しかし、異世界に行っているのなら説明がつく」
パヴェルは、手振りを交えて、そう説明した。
「なるほど……しかしそうであれば、これは我が国に対する戦争準備ではないということだろう……ひとまずは素知らぬふりをして静観しても大丈夫そうだ」
「何を言っておられるのですか!」
どこか安堵したように息を吐きながら言うマクシムに対し、パヴェルが、急に荒い声を出した。
「あの忌々しい犬どもの国が、他国と戦争を始めたのですよ! 当然、軍事力、生産力もそちらに奪われる。これは、我々があの犬どもの帝国に雪辱を晴らす、千載一遇のチャンスではありませんか!!」
「しかし……」
「ならーんっ!!」
マクシムが言いかけたのを遮って、若い声がそれを強く否定した。
「我が御代に、チハーキュと戦争を始めることは罷りならん!」
現イビム王、ミハイル・チャールズ・ドラゴミール・イビムスク・ウィンストン。
「しかし、我が王……」
「ならんと言っておる!! しつこいぞ!!」
王に直接食い下がろうとしたパヴェルに、王は憤ったような声を荒げ、その言葉を払った。
「チハーキュの生産力……王都に迫る空襲……余は伯父上の ──── 先代王の怯える姿を間近で見ておった…………」
先代王、イゴール・ウィリアム・ドラゴミール・イビムスク・ファーレル。現王からは伯父に当たる。
「挙句の果てに、引責退位という名の永久幽閉……嫌だ、余は絶対に嫌だ!!」
「ですから、それこそ!」
「ならんと言っておる! これ以上言うのであれば、貴殿の役職と爵位を剥奪するぞ!!」
「…………」
イビムは賢者評議会という議会は存在しているものの、基本的には絶対君主制だ。あまりに乱暴な事は憚られる事はあるとは言え、基本的には、王の意思が国家の意志である。
憮然とした様子で、パヴェルは押し黙った。
──────── ように見えた。
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