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第16話 温泉を掘り当ててみる。ヒャホー!!
Chapter-09
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アルヴィンが温泉脈を掘り当ててから2週間ほど、デミ・ドワーフのお二方の協力で、当初ひと月はかかると見られていた冷却塔も完成しました。
どちらかと言うと、作業そのものよりも、青銅の資材を確保して、運び込むのに時間がかかりました。ローチ伯領内だけでは足りず、ブリュサンメル上級伯領の工廠からも買い付けていました。
ブリュサンメル上級伯に関しては、アルヴィンは気負うところがあるようなのだけど、上級伯の方はむしろ、アルヴィンを気にかけているみたい。
ひょっとしたら、御自身の子女を仕官させたり、あるいは序列夫人や妾として……などと狙っているのでしょうか?
アルヴィンは私ミーラ、それにキャロ、エミの3人以外は夫人にしないと公言していますし、そのことは上級伯もご存知のはず…………
と、したら、もしかして、その先を見据えて?
つまり…………
ど、どうやら、私も、エミも、責任重大のようですね……
しかし……私は温泉より、あの風車が一方向に回っている原理が、未だによくわかりません。
風車と言えば風上に向かって水平に建てるもの、と思っていましたから。
アルヴィンやフューリーさんに、何度か説明していただいたのだけど、やっぱりよくわからないです。
でも、ともあれ、揚水が確保できるようになったのは、良いことです。第2風車も、完成間近。水路はまだ、建設途中ですが、これで多くの農民が救われることでしょう。
ところで、私はと言えば。
この前のサラマンド・ドラゴン討伐には参加したのですが、それ以外では、最近はアドラス聖愛教会から派遣された宣教師の皆さんと、教会の再建をしていました。
教会の役割の1つに、時報があります。
時計を管理して、時刻を皆さんに教えるものです。
このため、領都にあるような教会には、24時間式の機械式時計と、南中時刻を割り出すための日時計が置かれています。
日時計で南中時刻を割り出して機械式時計の“下0時”にセットして、機械式時計を作動させます。
あとは、定期的に、機械式時計の狂いを日時計で調整していくことになります。
そう言えば、アルヴィンが「もう機械式時計もあるのか……」とか「あ、でも機械式時計の発明って10世紀頃だっけ」とか言ってましたが、その10世紀とはどの暦に基づいたものなのでしょうか?
ともあれ。
教会の役割の1つとして、時計の管理がある以上、そうそう教会を放擲して良いものではないのですが……
この教会を元々管理していた本祖派の神官達は、旧マークル子爵の領地返上とともに、ここを引き上げてしまっていたようです。
神職としてあるまじき怠慢です。
帝都のお祖父様に伝書を送り、また、ローチ伯領の新教派教会にも依頼して、教会の建物を直す大工、それに時計職人を送ってもらい、こちらもなんとか、形になりました。
領民の皆さんは、教会が再建されたことと、時計がまた動き始めたことを、いたく喜んでいるようです。良かったです。
気がつけば季節も少し移り変わり。
まだ、夏、と言うには早いのですが、日中は少し汗ばむ陽気になってきました。
ここ、アルヴィン・バックエショフ準男爵領は、南からの湿った風が、山地で冷やされる関係で、夏場もあまり蒸し暑くはならないそうですが、それでも、日差しが強い時期になってきています。
もしかして……
アルヴィンが温泉の開拓を急いだのは、これが理由でしょうか?
マークリスの屋敷にもお風呂はありますが、屋敷のお風呂に入るには風呂釜を焚かなければなりません。
いえ、使用人の方が、やってくれるのですが、時間と手間がかかることには、変わりありません。
そんなわけで、教会再建も一段落した私は。
ひとまず身内向けにと作られた温泉浴場に、やってきてしまいました。
最終的には、パイプをもう少し北に延長して、そこに公衆浴場や宿泊施設を、建設しようというのが、アルヴィンの考えのようですが。
帝都では見習い用の簡素な法衣を着けていた私ですが、今はこの領地の教会の責任者でもあります。しっかりとしたつくりの法衣を、丁寧に脱ぎます。
「~♪」
先客がいるようです。男の方のようですが……
ですが、その歌声でわかりました。アルヴィンです。
声自体でも解るのですが。
私達にはよくわからないその歌詞は、多分前世の記憶のものでしょう。
「アルヴィン!」
私は、思わず飛び込んでいました。
あ、いえ、ちゃんと、掛け湯は浴びましたよ?
「わぁっ!? み、ミーラ!?」
アルヴィンが驚いたような声を出します。
そして、視線を私から逸し気味にしてしまいます。
「な、なんでわざわざ……」
「お湯に浸かりに来たら、先にアルヴィンがいただけですよ」
アルヴィンが、顔を真っ赤にして、軽く潜った様子になるのを見て、私は、なんだか微笑ましくなってしまいました。
「今更、私の裸でそこまで初心な反応はしなくてもいいでしょう?」
「い、いやでもさ、ミーラはその……いろいろと、まずくない?」
私が言うと、アルヴィンは視線を逸したまま、そう言ってきます。
「まずいって、何がですか?」
「その……一応聖職者だしさ、俺と、その、婚約……はしてるとは言え、こういうのは」
アルヴィンの言葉に、私はくすくすっ、と笑ってしまいました。
「本祖派と違って、我々は神を絶対のものとして仕えているわけではありませんから、多少のことは、大丈夫ですよ」
「あ……」
私の言葉に、アルヴィンは直接答えず、お湯に使ったまま、私の顔を見つめてきます。
「? どうか、しましたか?」
「あ、いや、今のクスクスって笑う感じのミーラの笑顔、可愛いなって、改めて見とれちゃって」
私は、照れたように言うアルヴィンが可愛く見えてしまって、また、クスクスって笑ってしまいました。
この笑顔で、アルヴィンに幸せが届けられるなら、安いものです。
ちゃぷ……
私とアルヴィンがそんなやり取りをしていると、他にも誰か入ってきたようです。
「あら、ミーラ、それにアルヴィンも、入ってたの」
声の主は、キャロでした。
それに、エミも一緒です。
キャロに至っては、その、先程の私が言えた義理ではないのですが……
もうあけっぴろげと言いますか……
「あ、あのなキャロ、俺、その辺の木の棒じゃないんだぞ」
「その辺の木の棒に裸見せる趣味なんてないわよ」
アルヴィンが言いますが、キャロも即座に言い返します。
「それに……私達、アルヴィンがそういう反応してるところ、見るの、ちょっと嬉しい」
「そうなんですよね」
エミの言葉に、私も同意してしまいました。
「なんでだよ……」
「だって、アルヴィン、ちゃんと、私達のこと、女だと思って見てる」
エミが言います。
そうなんですよね。
若くして、それなりの歳の方に嫁ぐ娘も少なくないわけじゃありませんが……
アルヴィンが前世で36歳だったことを考えると、私達みたいな若輩者を、女としてみてくれるって言うのは少し、嬉しい気もします。
“綺麗”より“可愛い”が先立ってしまう、というのは、その限界なんでしょうけど。
「言っとくけど、エミも私もミーラも、誰でもいい、って意味じゃないからね?」
キャロが、少し険しい顔で言います。
「それは解ってるよ、解ってるけどなぁ……」
アルヴィンはそう言いつつも、どうしても反射的に視線を逸らそうとしてしまうようです。
「アルヴィン、洗っこしよ」
あら、珍しい。
今日は、エミが積極的にそう言って、アルヴィンの腕を引っ張ります。
「わっ、エミ、ちょっと待て。駄目とは言わんから、ちょっとだけ待て」
アルヴィンは、そんな事を言いながら、アルヴィンこそ、必死に前を隠そうとします。
まぁ、その理由は流石に、わからないほど、純真ってわけでもないんですけどね。
「もう、しょうがないわねぇ」
「クスッ」
思わず苦笑してしまったキャロと私は、お互い顔を見合わせてから、
「待ちなさいよー、エミ、ここで抜け駆けはずるいわよー」
「そうですよー、せっかく、4人、一緒なんですからー」
と、お湯をチャプチャプ言わせながら、エミと、引っ張られていくアルヴィンを、追いかけていきました。
どちらかと言うと、作業そのものよりも、青銅の資材を確保して、運び込むのに時間がかかりました。ローチ伯領内だけでは足りず、ブリュサンメル上級伯領の工廠からも買い付けていました。
ブリュサンメル上級伯に関しては、アルヴィンは気負うところがあるようなのだけど、上級伯の方はむしろ、アルヴィンを気にかけているみたい。
ひょっとしたら、御自身の子女を仕官させたり、あるいは序列夫人や妾として……などと狙っているのでしょうか?
アルヴィンは私ミーラ、それにキャロ、エミの3人以外は夫人にしないと公言していますし、そのことは上級伯もご存知のはず…………
と、したら、もしかして、その先を見据えて?
つまり…………
ど、どうやら、私も、エミも、責任重大のようですね……
しかし……私は温泉より、あの風車が一方向に回っている原理が、未だによくわかりません。
風車と言えば風上に向かって水平に建てるもの、と思っていましたから。
アルヴィンやフューリーさんに、何度か説明していただいたのだけど、やっぱりよくわからないです。
でも、ともあれ、揚水が確保できるようになったのは、良いことです。第2風車も、完成間近。水路はまだ、建設途中ですが、これで多くの農民が救われることでしょう。
ところで、私はと言えば。
この前のサラマンド・ドラゴン討伐には参加したのですが、それ以外では、最近はアドラス聖愛教会から派遣された宣教師の皆さんと、教会の再建をしていました。
教会の役割の1つに、時報があります。
時計を管理して、時刻を皆さんに教えるものです。
このため、領都にあるような教会には、24時間式の機械式時計と、南中時刻を割り出すための日時計が置かれています。
日時計で南中時刻を割り出して機械式時計の“下0時”にセットして、機械式時計を作動させます。
あとは、定期的に、機械式時計の狂いを日時計で調整していくことになります。
そう言えば、アルヴィンが「もう機械式時計もあるのか……」とか「あ、でも機械式時計の発明って10世紀頃だっけ」とか言ってましたが、その10世紀とはどの暦に基づいたものなのでしょうか?
ともあれ。
教会の役割の1つとして、時計の管理がある以上、そうそう教会を放擲して良いものではないのですが……
この教会を元々管理していた本祖派の神官達は、旧マークル子爵の領地返上とともに、ここを引き上げてしまっていたようです。
神職としてあるまじき怠慢です。
帝都のお祖父様に伝書を送り、また、ローチ伯領の新教派教会にも依頼して、教会の建物を直す大工、それに時計職人を送ってもらい、こちらもなんとか、形になりました。
領民の皆さんは、教会が再建されたことと、時計がまた動き始めたことを、いたく喜んでいるようです。良かったです。
気がつけば季節も少し移り変わり。
まだ、夏、と言うには早いのですが、日中は少し汗ばむ陽気になってきました。
ここ、アルヴィン・バックエショフ準男爵領は、南からの湿った風が、山地で冷やされる関係で、夏場もあまり蒸し暑くはならないそうですが、それでも、日差しが強い時期になってきています。
もしかして……
アルヴィンが温泉の開拓を急いだのは、これが理由でしょうか?
マークリスの屋敷にもお風呂はありますが、屋敷のお風呂に入るには風呂釜を焚かなければなりません。
いえ、使用人の方が、やってくれるのですが、時間と手間がかかることには、変わりありません。
そんなわけで、教会再建も一段落した私は。
ひとまず身内向けにと作られた温泉浴場に、やってきてしまいました。
最終的には、パイプをもう少し北に延長して、そこに公衆浴場や宿泊施設を、建設しようというのが、アルヴィンの考えのようですが。
帝都では見習い用の簡素な法衣を着けていた私ですが、今はこの領地の教会の責任者でもあります。しっかりとしたつくりの法衣を、丁寧に脱ぎます。
「~♪」
先客がいるようです。男の方のようですが……
ですが、その歌声でわかりました。アルヴィンです。
声自体でも解るのですが。
私達にはよくわからないその歌詞は、多分前世の記憶のものでしょう。
「アルヴィン!」
私は、思わず飛び込んでいました。
あ、いえ、ちゃんと、掛け湯は浴びましたよ?
「わぁっ!? み、ミーラ!?」
アルヴィンが驚いたような声を出します。
そして、視線を私から逸し気味にしてしまいます。
「な、なんでわざわざ……」
「お湯に浸かりに来たら、先にアルヴィンがいただけですよ」
アルヴィンが、顔を真っ赤にして、軽く潜った様子になるのを見て、私は、なんだか微笑ましくなってしまいました。
「今更、私の裸でそこまで初心な反応はしなくてもいいでしょう?」
「い、いやでもさ、ミーラはその……いろいろと、まずくない?」
私が言うと、アルヴィンは視線を逸したまま、そう言ってきます。
「まずいって、何がですか?」
「その……一応聖職者だしさ、俺と、その、婚約……はしてるとは言え、こういうのは」
アルヴィンの言葉に、私はくすくすっ、と笑ってしまいました。
「本祖派と違って、我々は神を絶対のものとして仕えているわけではありませんから、多少のことは、大丈夫ですよ」
「あ……」
私の言葉に、アルヴィンは直接答えず、お湯に使ったまま、私の顔を見つめてきます。
「? どうか、しましたか?」
「あ、いや、今のクスクスって笑う感じのミーラの笑顔、可愛いなって、改めて見とれちゃって」
私は、照れたように言うアルヴィンが可愛く見えてしまって、また、クスクスって笑ってしまいました。
この笑顔で、アルヴィンに幸せが届けられるなら、安いものです。
ちゃぷ……
私とアルヴィンがそんなやり取りをしていると、他にも誰か入ってきたようです。
「あら、ミーラ、それにアルヴィンも、入ってたの」
声の主は、キャロでした。
それに、エミも一緒です。
キャロに至っては、その、先程の私が言えた義理ではないのですが……
もうあけっぴろげと言いますか……
「あ、あのなキャロ、俺、その辺の木の棒じゃないんだぞ」
「その辺の木の棒に裸見せる趣味なんてないわよ」
アルヴィンが言いますが、キャロも即座に言い返します。
「それに……私達、アルヴィンがそういう反応してるところ、見るの、ちょっと嬉しい」
「そうなんですよね」
エミの言葉に、私も同意してしまいました。
「なんでだよ……」
「だって、アルヴィン、ちゃんと、私達のこと、女だと思って見てる」
エミが言います。
そうなんですよね。
若くして、それなりの歳の方に嫁ぐ娘も少なくないわけじゃありませんが……
アルヴィンが前世で36歳だったことを考えると、私達みたいな若輩者を、女としてみてくれるって言うのは少し、嬉しい気もします。
“綺麗”より“可愛い”が先立ってしまう、というのは、その限界なんでしょうけど。
「言っとくけど、エミも私もミーラも、誰でもいい、って意味じゃないからね?」
キャロが、少し険しい顔で言います。
「それは解ってるよ、解ってるけどなぁ……」
アルヴィンはそう言いつつも、どうしても反射的に視線を逸らそうとしてしまうようです。
「アルヴィン、洗っこしよ」
あら、珍しい。
今日は、エミが積極的にそう言って、アルヴィンの腕を引っ張ります。
「わっ、エミ、ちょっと待て。駄目とは言わんから、ちょっとだけ待て」
アルヴィンは、そんな事を言いながら、アルヴィンこそ、必死に前を隠そうとします。
まぁ、その理由は流石に、わからないほど、純真ってわけでもないんですけどね。
「もう、しょうがないわねぇ」
「クスッ」
思わず苦笑してしまったキャロと私は、お互い顔を見合わせてから、
「待ちなさいよー、エミ、ここで抜け駆けはずるいわよー」
「そうですよー、せっかく、4人、一緒なんですからー」
と、お湯をチャプチャプ言わせながら、エミと、引っ張られていくアルヴィンを、追いかけていきました。
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