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第16話 温泉を掘り当ててみる。ヒャホー!!
Chapter-08
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「アルヴィン! リリーさん来てるってホントか!?」
俺達が話をしていると、ジャックがそう言って飛び込んできた。
「ジャック?」
「ああ、ついさっき到着したところだ」
兵団の討伐隊に申し送りをしていたはずのジャックは、そう言って姉弟子の顔を見るなり、ぱっと表情を輝かせる。
「リリーさん! 会いたかったっすー!」
「おいおい、前にあってから1週間も経ってないだろう」
なんかもう辛抱たまらんといった感じで姉弟子に抱きつくジャック。いや、前世だったら完全に絵面的にポリスメン案件なわけだが。
とは言うものの、姉弟子も満更でもない様子、というか、割と喜んでる?
「姉弟子、まさかとは思いますけど、ジャックと一緒にいるために今回の寄り替えに賛同したわけじゃないですよね?」
俺は、自分でも解るくらいに憮然とした顔で言った。
「え? そんなわけ、ないじゃないか。あはは……」
こういう時に笑って誤魔化すのは女性の特権……か。
「ところで姉弟子、ひとつ確認したいことがあるんですが、それだけ終わったらいくらでもジャックとイチャついてていいですから」
「誰がイチャついてるだ。誰が」
自覚がないで言っている……わけじゃないな、これは。
「サラマンド・ドラゴンは毒素をもっている大地に棲み着くことがある……これは合ってましたよね?」
「あ、ああ、と言っても、私もお前と同じように、師匠の資料を読んだだけだが」
俺の質問に、姉弟子はそう答えてから、不思議そうな顔をする。
「それが、どうしたんだ?」
「いえ。それさえ確認できればいいんです」
俺は、あることを確信して、にっと笑った。
「このあたりには、もう魔獣がいないのはいいけど……なんだか殺風景よ?」
キャロは、周囲を見回すようにしながら、言う。
そこは、おそらくサラマンド・ドラゴンがねぐらをつくっていたあたり。
周囲は森だが、サラマンド・ドラゴンが俺達に向かって歩いていった後が、ちょうど道のように開けて、その周囲だけ木々が枯れている。
「周りの木全体が枯れていないところを見ると……致死量の硫化水素の心配はなさそうだな」
「硫化水素……致死量って、何よそれ!?」
初めて聞く単語に、物騒な単語。
まぁ、キャロが顔色変えるのも無理ないわな。
「火山ガスのことだろ?」
フューリーと2人して、地面を調べているペンデリンが、そう言った。
「良く知ってるな」
「火山の噴気に含まれることのあるガスなんだが、その他に硫黄が取れるところでもよく出る。高濃度になると人や動物が死に、草木も枯れる」
俺が、感心したように言うと、ペンデリンは、視線は地面を向いたまま、俺に、と言うよりキャロにそう言った。
「さすが、詳しいな」
俺も感心したように言う。
さすが、土と鉱石の種族って言われるだけのことはあるぜ。
「うーん……このあたりかな」
ちょうど、サラマンド・ドラゴンの巣をどかした中央辺りで、ペンデリンが、そう言った。
「フューリーはどう?」
「多分、ペンデリンと同じものを当ててると思います」
フューリーも顔を上げて、身体を起こし、そう言った。
「うーん……深さは、どれくらいだ?」
「原点は1,600シトリルを超える深さ。でも、もう100シトリル程度のところまで迫ってきてる」
ペンデリンも身を起こし、そう言った。
「ひょっとしたら、それがサラマンド・ドラゴンを呼び寄せたかな?」
浅い土地には硫化物が出てきているようには見えない。となると、そいつがサラマンド・ドラゴンを呼び寄せた可能性は高いな……
「ま、いいや。これは俺がすぐ欲しいし、ぱっぱとやっちまお」
「え? 何をするの?」
キャロは何をするのか、いまいち解っていない様子で、あたりをキョロキョロとする。
「悪い、圧力があるとそこそこ危ないから、みんな下がっててくれ。
「了解。森の中まで隠れてればいいかな」
俺が言うと、ペンデリンがそう訊き返してきた。
「ああ、もうちょっと離れてた方がいいような気もするが、ああ、キャロも一緒に離れててくれ」
「わ、解ったわ」
俺が何をしようとしているのか、まだわからない様子で、キャロはペンデリンやフューリーに連れられて、俺から距離を取り、森の中にかくれる。
俺は、ペンデリンやフューリーが示したところに、拳銃のようにした指を向けると、
「大地の精霊よ、我が呼びかけに応えよ、繋がりを断て、その力を開放せよ」
詠唱に、力が応える。発動体の腕輪が光を帯びる。
「グノーム・スプリント!」
本来は即席の落とし穴なんか開けたりする魔法を、しかし、俺は詠唱付きの本気の力で、水平に対して垂直方向に叩き込んだ。
一瞬、失敗かな。と思ったのだが。
その次の瞬間、ビシッ、と、地面に亀裂が入った。
あぶねぇ、シールドシールドっ
俺がシールドを張ったところで、大地に少しの裂け目ができ、そこから大量のお湯…………じゃないな、これ、ほとんど上昇していってる。つまり……
「あちゃー……蒸気井を掘り当てちまったか」
土の層は吹っ飛び、これを抑えていた岩盤が露出している。そこから真っ白な湯気が、とんでもない勢いで、天高く登っていた。
「な、なによ、これ……」
「温泉だよ、温泉には間違いない」
戸惑うキャロに、腕組したペンデリンが言った。
「だけど、これは圧力と温度が高すぎるんだ、温泉として使おうと思ったら、冷却塔を建てないと」
ペンデリンは、キャロにそう説明するように言う。
「冷却塔? 鉄か何かで?」
「いや、鉄じゃ駄目だ。温泉には鉄を腐らせる成分が混じってる。少しならいいが、長期間になるとな。これなら青銅のほうが良い」
キャロの問いかけに、ペンデリンがそう答えた。
確かに、デミ・ドワーフだけあって詳しいな。
本来なら、ステンレスの出番なんだが、あれを作るには、まず電力が必要なのよね。
「トホホ……」
正直、ここまで高温高圧の蒸気井が掘れるんだったら、その発電に使いたいぐらいなんだが。残念ながらこの世界、電気の研究は遅れてるし、俺も送電とか発電は専門外なのよね。
「ペンデリン、フューリー、冷却塔なんだけどさ……」
「つくれと言われればつくりますけど……」
「資材がないぜ?」
デスヨネー。
ま、結局ひとまず、銅の買付か……
俺達が話をしていると、ジャックがそう言って飛び込んできた。
「ジャック?」
「ああ、ついさっき到着したところだ」
兵団の討伐隊に申し送りをしていたはずのジャックは、そう言って姉弟子の顔を見るなり、ぱっと表情を輝かせる。
「リリーさん! 会いたかったっすー!」
「おいおい、前にあってから1週間も経ってないだろう」
なんかもう辛抱たまらんといった感じで姉弟子に抱きつくジャック。いや、前世だったら完全に絵面的にポリスメン案件なわけだが。
とは言うものの、姉弟子も満更でもない様子、というか、割と喜んでる?
「姉弟子、まさかとは思いますけど、ジャックと一緒にいるために今回の寄り替えに賛同したわけじゃないですよね?」
俺は、自分でも解るくらいに憮然とした顔で言った。
「え? そんなわけ、ないじゃないか。あはは……」
こういう時に笑って誤魔化すのは女性の特権……か。
「ところで姉弟子、ひとつ確認したいことがあるんですが、それだけ終わったらいくらでもジャックとイチャついてていいですから」
「誰がイチャついてるだ。誰が」
自覚がないで言っている……わけじゃないな、これは。
「サラマンド・ドラゴンは毒素をもっている大地に棲み着くことがある……これは合ってましたよね?」
「あ、ああ、と言っても、私もお前と同じように、師匠の資料を読んだだけだが」
俺の質問に、姉弟子はそう答えてから、不思議そうな顔をする。
「それが、どうしたんだ?」
「いえ。それさえ確認できればいいんです」
俺は、あることを確信して、にっと笑った。
「このあたりには、もう魔獣がいないのはいいけど……なんだか殺風景よ?」
キャロは、周囲を見回すようにしながら、言う。
そこは、おそらくサラマンド・ドラゴンがねぐらをつくっていたあたり。
周囲は森だが、サラマンド・ドラゴンが俺達に向かって歩いていった後が、ちょうど道のように開けて、その周囲だけ木々が枯れている。
「周りの木全体が枯れていないところを見ると……致死量の硫化水素の心配はなさそうだな」
「硫化水素……致死量って、何よそれ!?」
初めて聞く単語に、物騒な単語。
まぁ、キャロが顔色変えるのも無理ないわな。
「火山ガスのことだろ?」
フューリーと2人して、地面を調べているペンデリンが、そう言った。
「良く知ってるな」
「火山の噴気に含まれることのあるガスなんだが、その他に硫黄が取れるところでもよく出る。高濃度になると人や動物が死に、草木も枯れる」
俺が、感心したように言うと、ペンデリンは、視線は地面を向いたまま、俺に、と言うよりキャロにそう言った。
「さすが、詳しいな」
俺も感心したように言う。
さすが、土と鉱石の種族って言われるだけのことはあるぜ。
「うーん……このあたりかな」
ちょうど、サラマンド・ドラゴンの巣をどかした中央辺りで、ペンデリンが、そう言った。
「フューリーはどう?」
「多分、ペンデリンと同じものを当ててると思います」
フューリーも顔を上げて、身体を起こし、そう言った。
「うーん……深さは、どれくらいだ?」
「原点は1,600シトリルを超える深さ。でも、もう100シトリル程度のところまで迫ってきてる」
ペンデリンも身を起こし、そう言った。
「ひょっとしたら、それがサラマンド・ドラゴンを呼び寄せたかな?」
浅い土地には硫化物が出てきているようには見えない。となると、そいつがサラマンド・ドラゴンを呼び寄せた可能性は高いな……
「ま、いいや。これは俺がすぐ欲しいし、ぱっぱとやっちまお」
「え? 何をするの?」
キャロは何をするのか、いまいち解っていない様子で、あたりをキョロキョロとする。
「悪い、圧力があるとそこそこ危ないから、みんな下がっててくれ。
「了解。森の中まで隠れてればいいかな」
俺が言うと、ペンデリンがそう訊き返してきた。
「ああ、もうちょっと離れてた方がいいような気もするが、ああ、キャロも一緒に離れててくれ」
「わ、解ったわ」
俺が何をしようとしているのか、まだわからない様子で、キャロはペンデリンやフューリーに連れられて、俺から距離を取り、森の中にかくれる。
俺は、ペンデリンやフューリーが示したところに、拳銃のようにした指を向けると、
「大地の精霊よ、我が呼びかけに応えよ、繋がりを断て、その力を開放せよ」
詠唱に、力が応える。発動体の腕輪が光を帯びる。
「グノーム・スプリント!」
本来は即席の落とし穴なんか開けたりする魔法を、しかし、俺は詠唱付きの本気の力で、水平に対して垂直方向に叩き込んだ。
一瞬、失敗かな。と思ったのだが。
その次の瞬間、ビシッ、と、地面に亀裂が入った。
あぶねぇ、シールドシールドっ
俺がシールドを張ったところで、大地に少しの裂け目ができ、そこから大量のお湯…………じゃないな、これ、ほとんど上昇していってる。つまり……
「あちゃー……蒸気井を掘り当てちまったか」
土の層は吹っ飛び、これを抑えていた岩盤が露出している。そこから真っ白な湯気が、とんでもない勢いで、天高く登っていた。
「な、なによ、これ……」
「温泉だよ、温泉には間違いない」
戸惑うキャロに、腕組したペンデリンが言った。
「だけど、これは圧力と温度が高すぎるんだ、温泉として使おうと思ったら、冷却塔を建てないと」
ペンデリンは、キャロにそう説明するように言う。
「冷却塔? 鉄か何かで?」
「いや、鉄じゃ駄目だ。温泉には鉄を腐らせる成分が混じってる。少しならいいが、長期間になるとな。これなら青銅のほうが良い」
キャロの問いかけに、ペンデリンがそう答えた。
確かに、デミ・ドワーフだけあって詳しいな。
本来なら、ステンレスの出番なんだが、あれを作るには、まず電力が必要なのよね。
「トホホ……」
正直、ここまで高温高圧の蒸気井が掘れるんだったら、その発電に使いたいぐらいなんだが。残念ながらこの世界、電気の研究は遅れてるし、俺も送電とか発電は専門外なのよね。
「ペンデリン、フューリー、冷却塔なんだけどさ……」
「つくれと言われればつくりますけど……」
「資材がないぜ?」
デスヨネー。
ま、結局ひとまず、銅の買付か……
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