異世界転生モノの主人公に転生したけどせっかくだからBルートを選んでみる。第2部

kaonohito

文字の大きさ
25 / 64
第21話 立太子の儀でひと悶着起こす事になる。

Chapter-25

しおりを挟む
「聞いちまったなぁ、これ、どうするか」

 俺、アルヴィンはこうめんどくさいのに巻き込まれるのが嫌だったけど……

「さっきも言ったけど、こういう国内の問題に、外国の人間入れて碌な事にはなりませんよ。本気で言ってるのですか?」

 俺は、アシル王子に問い質す。

「はい……残念ながら、我々の手だけでは、どうしようも……」
「アシル殿下、あなたはシグル殿下が王太子になることには不満はないのですか?」

 姉弟子が質問する。
 確かに、それは重要な質問だ。

「はい、シグルは私より武の才に秀でてますし、なにより人を引きつけるカリスマがあります。私が国を治めるより、安定するでしょう」

 アシル王子は、一見、真摯な顔でそう言った……が。

「誰が叛乱を起こそうとしているのかはだいたい分かります」
「おそらく、アルヴィン殿の予想は当たっているのではないかと思います」

 俺の言葉に、アシル王子はそう言った。

「けれど、殿下御自身に王位に対しての野心がないと、そう証明しきれますか?」
「それは……難しいです」

 俺が、険しい顔をしてそう言うと、アシル王子は、流石に言い澱んだ。

「どういうこと?」

 キャロが、俺に向かって訊いてくる。

「誰かが明日の立太子の儀でなにかやらかすのが本当だったとする。が、それを庇ったのが、外国の貴族である俺達だったとなると、第3王子と現国王は外国勢力に頼ったとして外患誘致で追放する。その後にアシル殿下が実権を握る。こういう筋書きも考えられるってことさ」

 俺は、考えられる最悪のシナリオを、この場でブチまけてみせた。

「残念ながら、この話は、私を信じていただく以外にないのですが……」

 心苦しそうな態度で、アシル王子は言った。
 だが、それも芝居かもしれない。

「私も気にかかっているんだが」

 姉弟子が、アシル王子に声をかける。

「ガスパル陛下やシグル殿下はその、襲撃計画の話、知っているのか?」
「はい。ですが、父上は、それで立太子の儀を中止すれば相手の思うツボ、立太子の儀は予定通りに行うと……」

 姉弟子の質問に、アシル王子は、苦い顔でそう答える。
 まぁ、話自体に矛盾はないな。

 ここで立太子の儀を延期や中止にすれば、それを妨害できたただけでも、ガスパル王やシグル王子に敵対している相手にとってはプラスの効果になるだろう。

「俺としては、今、アシル殿下が訪ねてきていることも含めて、一切合切聞かなかったことにしたいんだけどなー」

 俺は、困ったように、と言うか、多分面倒くさそうにため息をついて、そう言った。

「そう言うわけには、行かない……」
「そ、話、聞かされちまったからな。このまま明日、立太子の儀が平穏に済めばそれでいいが、もし、なんかあった場合、どちらにしても俺達をシレジアから出さない、と言うか、無事に帰さないつもりだろう」

 エミの呟くような声に続けて、俺はそう言った。

「無事に帰さない、といいますと?」
「飛空船の事故に見せかけて墜落死、とかな」

 ミーラの問いかけに、俺は端的に答えた。
 アシル王子は、どこか脂汗をかいたような顔をしている。

「ほんっとにめんどくせぇ話に、半ば無理矢理首を突っ込まされちまったが、1つだけ条件がある、それが通れば、引き受けてもいいぞ」
「本当ですか!?」

 アシル王子は、顔をぱっ、と明るくして、そう言った。

「おっと、アシル殿下。こういう時はきちんと相手の条件を聞いてから判断した方がよろしいぞ」
「そうねー、アルヴィン、突拍子もない事言い出しそうだし」

 姉弟子は、真面目な表情で、そう言ったのだが、キャロが、なぜだか面白そうに笑いながら、そう言った。

「その、条件というのは?」

 アシル王子が、改めて訊いてくる。

「俺達は、立太子の儀での国王陛下とシグル殿下の謀殺は食い止める。だが、あとのことは知らん。シレジアがどんな騒ぎになっても、責任とらん。そう言う事態になったら、俺らは陸路ででも帝国に帰る」

 俺は、すっとぼけたような声を出して、そう言った。

「追手を放つのはいいが、こちらは西方の魔女ディオシェリルの直弟子が2人に、後のメンバーもドラゴン・スレイヤーの称号を受けている。それを承知で、ということになる」

 俺が言うと、アシル王子は難しい顔をして押し黙ってしまった。

「最悪の場合、シレジアがいくつかの勢力に別れたら、帝国はシレジアに対して挙兵するかも知れない。俺が直接挙兵を促すようなことはしないがな」

 俺は、表情を険しくしつつ、そう言ってから、

「姉弟子も、それでいいですよね?」

 と、姉弟子の表情を覗き込むようにして、そう訊ねた。
 姉弟子の表情も、険しい。

「ああ、私もアルヴィンと同意見だ。帝国には帰る、だからといって陛下に挙兵の進言はしないさ。ただ、アルヴィンが言ったように、帝国西方の領主達が黙っている保証はできない」

「…………」

 俺と、姉弟子の言葉とに、アシル王子はしばらく押し黙ってしまっていたが、やがて、

「すみません、父上と、シグルの事を、助けてやってください」

 と、懇願するような声で、言ってきた。

「解った。それじゃあ、それだけはなんとかする。ただし、他のことは本当に何一つ責任取らないし、取れない。それでよろしいですね?」

「はい、よろしくお願いします!」


 アシル王子を帰した後、メンバーはそのままロビーで話を続けた。

「でも、シグル王子の立太子に反対している人って、誰なのかしら?」

 キャロが、怪訝そうな顔をしながら、そう言った。

「多分、この国の地方の領主だろう」

 俺は、あっさりとそう答える。

「ガスパル王は焦りすぎたんだ。それまで領主の権限だった兵力の準備を、いきなり国家の中央に取られます、なんてなったら、反発するのは当然さ」

 それに、ガスパル王は同時に並行して行うべき改革をやらなかった、ただ、国防軍の集約を行っただけだったんだ。だから、反発も受けている。
 と、俺は、口には出さずに、付け加えた。

「で、実際どうやって、ガスパル王やシグル王子への襲撃を防ぐつもりなの?」

 キャロが訊ねてくる。
 うん、実はね、それ、俺も考え中なんだよね。

「俺と姉弟子は腹痛でも起こしたってことにして、キャロかエミを使節団臨時団長にして、俺達は舞台の下にでも隠れてます?」
「お前、大見得は切ったはいいけど、結局いきあたりばったりじゃしょうがないぞ」

 俺がそう言うと、姉弟子が苦笑しながらそう言った。
 だってしょうがないじゃん、こんなことになるとは流石に露とも思ってなかったもん。

「それなら私に任せておけ。何、魔導の研究と研鑽はお前だけのものじゃないってことだ」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~

シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。 前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。 その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀
ファンタジー
 雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。  場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

処理中です...