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第21話 立太子の儀でひと悶着起こす事になる。
Chapter-28
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「お前が、さっきから火焔弾で大祭壇を攻撃していた魔導師だな?」
俺は、俺達の後尾の方から迫ってきたその魔導師に、指をさしながら言う。
「その通りよ」
魔導師は、ニヤリと笑いながら言う。
「なぜこのような真似をする。いや、貴様を雇った者は何者なのだ」
ガスパル国王が、俺の──その魔導師に対して──前から、そう、問いただした。
「別に私自身は陛下に恨みなどありませんが、あなたは結構な恨みを買っているのですよ、残念ながら私に依頼してきた人間の正体を話すわけには行きませんがね」
ちっ、やっぱり喋ってはくれないか。
前世の、昔のアニメなんかだと、こういう時、悪役、敵役はベラベラ自分のバックボーンを喋ってくれるというお約束があったが、現実にはやはりそういうわけには行かないらしい。
もっとも、俺には、どのあたりが怪しいのかは、だいたい察しはついているのだが……
「さて、申し訳ありませんが、陛下、シグル殿下、それにアドラーシールム帝国の親善大使の皆様も、ここでお命頂戴つかまつります」
!?
こいつ、なんで俺達が帝国親善使節団だって知っているんだ!?
などと言ってる場合じゃない。
魔導師は、質量の伴った火球を生み出し、それを下側にいる俺達めがけて放ってこようとする。
「メガ・バレット」
「フリーズ・ブリッド」
相手が、洒落にならないレベルの火焔弾を撃ち込んでこようとしたところへ、姉弟子が略詠唱からのクイックモーションで氷結魔法を複数、発動させ、その火焔弾めがけて撃ち込んだ。
「エミ!」
「わかった!」
ドォンッ
爆発するような圧力とともに、爆風を伴って水蒸気が俺達にまとわりつく。
「火焔魔法に、氷結魔法をぶつけて相殺するだと……理論上では可能であっても、そんなことが……!!」
蒸気の白い靄が晴れてくると、相手の魔導師は、唖然とした様子で、俺達の方を見てくる。
「魔法の使い方は搦手が基本だ。少し強力な攻撃魔法を使える程度で戦闘魔導師など名乗っていると、痛い目を見るぞ」
相手の魔導師に対し、姉弟子は不敵に笑って、そう言ってみせる。
「私達の正体を知っているんだ、お前が今、目の前に敵対しているのは、アドラーシールム西方の魔女、ディオシェリルの弟子がそれも2人だということぐらい、解っているんだろう?」
姉弟子は、挑発するように言う。
「ぬぅぅぅ……」
相手の魔導師は、悔しそうに姉弟子を見て唸り声を上げたが、その直後、
「貴様ら、王と王子はどうした!?」
と、驚いたように声を出した。
ついでにエミとジャックもいなかったりする。
「お前さんの派手な魔法に姉弟子が氷結弾ブチ込んだときの湯気を目くらましに、逃させてもらったぜ」
俺は、悪びれもせずしれっと言う。
エミとジャックは、その護衛についてもらっている。
「おのれっ」
男が逆上したように、放ってきたのは、オーソドックスな火焔弾だ。
流石にこいつは無詠唱で、クイックから放ってくる。
だが、こちらも姉弟子が無詠唱で、魔法のシールドを張り、弾き返す。
「シャイン・ブラスト」
バン!
「ぬわっ!」
直後、俺──ではなくミーラが、魔法を発動させた。
光の弾ける球が、ヤツの周囲で強烈な光を放つ。
「はぁっ!」
「ぐべっ」
その直後、キャロの槍の柄が、そいつの脳天に叩きつけられた。
これも、ドサクサ紛れに俺のマントの中から、渡しておいたものだ。
そして、先程ミーラが放った光魔法。
あれも、元々は俺が考えていたものだ。
実は目くらましの為の魔法で、大した攻撃力はない。
ただ、俺がやるとなると、例によって光魔法の媒介になるものが必要になる。
それで、別にこんな事態になるとは思っていなかったが、以前にミーラに教えておいたのだ。
相手の魔導師は、キャロの槍の柄での一撃を浴びて、伸びてしまっている。
「こいつ、どうするの?」
キャロが、そいつが完全に意識がないことを確認しつつ、振り返って、険しい表情で、俺達に聞いてきた。
「縛り上げておくにも、ここにはロープなんて気の利いたものは……」
「いや、まぁ、その程度だったら、いつ入用になるかわからないから、ねぇ?」
俺は、マントの中の格納から、ふつーにごくありふれたロープを持ち出して、そう言った。
ついでに、同時に姉弟子も同じようにしている。
「うーん……」
俺は、少し考えてから、
「キャロとミーラは、先に行っててくれるか?」
「え?」
俺が言うと、キャロがキョトン、として聞き返してくる。
「頼むわ」
「わ、解ったわ」
そう言って、キャロとミーラは、大祭壇の下へとつながる階段を、先に降りていった。
「お前ねぇ、私ならいいってそれはどういう判断だよ?」
姉弟子が、呆れたような表情でそう言った。
「だって、姉弟子はこういうこと、全く経験もないわけでもないでしょ?」
「そりゃまぁ、そうだがなぁ、仮にも婚約者のいる独身女性なんだぞ。少しは考慮ってものがないのか」
そう言いながらも、俺と姉弟子は、魔導師の男に対して作業を進めていく。
無詠唱で火焔球を呼び出せる程度の魔導師、ロープで縛り上げて猿ぐつわにしたぐらいじゃ、完全に無力化したとは言えないからな。
いろいろ喋ってもらっても良かったんだが、ちょっと連れて行くのもめんどくさかったんで、まぁあんましエレガントとは言い難い方法で無力化させてもらう。
具体的に言うと、すっぽんぽんにひん剥いてから、縛り上げる。
これで、しばらくは意識が戻っても、すぐには身動きがとれないはずだ。
「まぁ、俺だって男ひん剥くのなんざ面白くもなんともないんですから、勘弁してくださいよ」
「お前は自業自得みたいなもんだろう」
俺が苦笑しながら言うと、姉弟子がそう言った。
そんなやり取りをしている間にも、いっちょ上がり。
最後にこいつの着ていた衣服を容赦なく燃やして、はい、出来上がり、と。
「よし、私達もガスパル王のところに行くぞ」
「はい」
姉弟子が言い、俺達は階段を駆け下りていく。
階段を駆け下りていくと、その最下層に、控室なのか、部屋の入口である扉があった。
俺は、その扉をノックする。
「アルヴィン?」
扉の内側から、エミの声が聞こえてきた。
「ああ、そうだ」
俺はそう言うが、
「アルヴィンなら、この質問に答えられるはず」
なんだなんだ、本人確認か?
悪いことじゃないが、合言葉も何も決めていないぞ。
「私達がパーティーを組みだしてひと月目ぐらいの時、ランサービーの討伐の依頼で、ジャックが刺された場所は?」
って、おい。
「ケツ!」
俺が呆れ混じりに声を張り上げると、ガチャリ、と扉の鍵を内側から外す音が聞こえた。
「アルヴィン、早く中に入って」
エミに促されるままに、俺は、姉弟子とともに、部屋の中に入った。
「にしても、もうちょっとマシな本人確認の方法はなかったのかよ」
「ホントよ。いくらなんでもあの話を持ち出すなんて」
俺が、エミに向かって抗議するような声を上げると、それにキャロが続いた。
キャロ達にも同じことをやったのか。
「私達だけに解って、単純明快なものというと、ああいうものしか思いつかなかった」
エミは、悪びれた様子もなく、ケロリとした口調で、そう言った。
「キャロとミーラ、俺と姉弟子の組み合わせで来たから良かったものの、もし、ミーラと姉弟子で外に残しちまったら、どうするつもりだったんだ?」
「…………」
俺が訊ねると、エミは、目を円くして、一瞬、黙り込んでしまった。
「そこまで、考えてなかった」
「おーい、もしもーし」
俺は後頭部にじっとり汗をかくような感触を受けながら、エミにツッコんでいた。
俺は、俺達の後尾の方から迫ってきたその魔導師に、指をさしながら言う。
「その通りよ」
魔導師は、ニヤリと笑いながら言う。
「なぜこのような真似をする。いや、貴様を雇った者は何者なのだ」
ガスパル国王が、俺の──その魔導師に対して──前から、そう、問いただした。
「別に私自身は陛下に恨みなどありませんが、あなたは結構な恨みを買っているのですよ、残念ながら私に依頼してきた人間の正体を話すわけには行きませんがね」
ちっ、やっぱり喋ってはくれないか。
前世の、昔のアニメなんかだと、こういう時、悪役、敵役はベラベラ自分のバックボーンを喋ってくれるというお約束があったが、現実にはやはりそういうわけには行かないらしい。
もっとも、俺には、どのあたりが怪しいのかは、だいたい察しはついているのだが……
「さて、申し訳ありませんが、陛下、シグル殿下、それにアドラーシールム帝国の親善大使の皆様も、ここでお命頂戴つかまつります」
!?
こいつ、なんで俺達が帝国親善使節団だって知っているんだ!?
などと言ってる場合じゃない。
魔導師は、質量の伴った火球を生み出し、それを下側にいる俺達めがけて放ってこようとする。
「メガ・バレット」
「フリーズ・ブリッド」
相手が、洒落にならないレベルの火焔弾を撃ち込んでこようとしたところへ、姉弟子が略詠唱からのクイックモーションで氷結魔法を複数、発動させ、その火焔弾めがけて撃ち込んだ。
「エミ!」
「わかった!」
ドォンッ
爆発するような圧力とともに、爆風を伴って水蒸気が俺達にまとわりつく。
「火焔魔法に、氷結魔法をぶつけて相殺するだと……理論上では可能であっても、そんなことが……!!」
蒸気の白い靄が晴れてくると、相手の魔導師は、唖然とした様子で、俺達の方を見てくる。
「魔法の使い方は搦手が基本だ。少し強力な攻撃魔法を使える程度で戦闘魔導師など名乗っていると、痛い目を見るぞ」
相手の魔導師に対し、姉弟子は不敵に笑って、そう言ってみせる。
「私達の正体を知っているんだ、お前が今、目の前に敵対しているのは、アドラーシールム西方の魔女、ディオシェリルの弟子がそれも2人だということぐらい、解っているんだろう?」
姉弟子は、挑発するように言う。
「ぬぅぅぅ……」
相手の魔導師は、悔しそうに姉弟子を見て唸り声を上げたが、その直後、
「貴様ら、王と王子はどうした!?」
と、驚いたように声を出した。
ついでにエミとジャックもいなかったりする。
「お前さんの派手な魔法に姉弟子が氷結弾ブチ込んだときの湯気を目くらましに、逃させてもらったぜ」
俺は、悪びれもせずしれっと言う。
エミとジャックは、その護衛についてもらっている。
「おのれっ」
男が逆上したように、放ってきたのは、オーソドックスな火焔弾だ。
流石にこいつは無詠唱で、クイックから放ってくる。
だが、こちらも姉弟子が無詠唱で、魔法のシールドを張り、弾き返す。
「シャイン・ブラスト」
バン!
「ぬわっ!」
直後、俺──ではなくミーラが、魔法を発動させた。
光の弾ける球が、ヤツの周囲で強烈な光を放つ。
「はぁっ!」
「ぐべっ」
その直後、キャロの槍の柄が、そいつの脳天に叩きつけられた。
これも、ドサクサ紛れに俺のマントの中から、渡しておいたものだ。
そして、先程ミーラが放った光魔法。
あれも、元々は俺が考えていたものだ。
実は目くらましの為の魔法で、大した攻撃力はない。
ただ、俺がやるとなると、例によって光魔法の媒介になるものが必要になる。
それで、別にこんな事態になるとは思っていなかったが、以前にミーラに教えておいたのだ。
相手の魔導師は、キャロの槍の柄での一撃を浴びて、伸びてしまっている。
「こいつ、どうするの?」
キャロが、そいつが完全に意識がないことを確認しつつ、振り返って、険しい表情で、俺達に聞いてきた。
「縛り上げておくにも、ここにはロープなんて気の利いたものは……」
「いや、まぁ、その程度だったら、いつ入用になるかわからないから、ねぇ?」
俺は、マントの中の格納から、ふつーにごくありふれたロープを持ち出して、そう言った。
ついでに、同時に姉弟子も同じようにしている。
「うーん……」
俺は、少し考えてから、
「キャロとミーラは、先に行っててくれるか?」
「え?」
俺が言うと、キャロがキョトン、として聞き返してくる。
「頼むわ」
「わ、解ったわ」
そう言って、キャロとミーラは、大祭壇の下へとつながる階段を、先に降りていった。
「お前ねぇ、私ならいいってそれはどういう判断だよ?」
姉弟子が、呆れたような表情でそう言った。
「だって、姉弟子はこういうこと、全く経験もないわけでもないでしょ?」
「そりゃまぁ、そうだがなぁ、仮にも婚約者のいる独身女性なんだぞ。少しは考慮ってものがないのか」
そう言いながらも、俺と姉弟子は、魔導師の男に対して作業を進めていく。
無詠唱で火焔球を呼び出せる程度の魔導師、ロープで縛り上げて猿ぐつわにしたぐらいじゃ、完全に無力化したとは言えないからな。
いろいろ喋ってもらっても良かったんだが、ちょっと連れて行くのもめんどくさかったんで、まぁあんましエレガントとは言い難い方法で無力化させてもらう。
具体的に言うと、すっぽんぽんにひん剥いてから、縛り上げる。
これで、しばらくは意識が戻っても、すぐには身動きがとれないはずだ。
「まぁ、俺だって男ひん剥くのなんざ面白くもなんともないんですから、勘弁してくださいよ」
「お前は自業自得みたいなもんだろう」
俺が苦笑しながら言うと、姉弟子がそう言った。
そんなやり取りをしている間にも、いっちょ上がり。
最後にこいつの着ていた衣服を容赦なく燃やして、はい、出来上がり、と。
「よし、私達もガスパル王のところに行くぞ」
「はい」
姉弟子が言い、俺達は階段を駆け下りていく。
階段を駆け下りていくと、その最下層に、控室なのか、部屋の入口である扉があった。
俺は、その扉をノックする。
「アルヴィン?」
扉の内側から、エミの声が聞こえてきた。
「ああ、そうだ」
俺はそう言うが、
「アルヴィンなら、この質問に答えられるはず」
なんだなんだ、本人確認か?
悪いことじゃないが、合言葉も何も決めていないぞ。
「私達がパーティーを組みだしてひと月目ぐらいの時、ランサービーの討伐の依頼で、ジャックが刺された場所は?」
って、おい。
「ケツ!」
俺が呆れ混じりに声を張り上げると、ガチャリ、と扉の鍵を内側から外す音が聞こえた。
「アルヴィン、早く中に入って」
エミに促されるままに、俺は、姉弟子とともに、部屋の中に入った。
「にしても、もうちょっとマシな本人確認の方法はなかったのかよ」
「ホントよ。いくらなんでもあの話を持ち出すなんて」
俺が、エミに向かって抗議するような声を上げると、それにキャロが続いた。
キャロ達にも同じことをやったのか。
「私達だけに解って、単純明快なものというと、ああいうものしか思いつかなかった」
エミは、悪びれた様子もなく、ケロリとした口調で、そう言った。
「キャロとミーラ、俺と姉弟子の組み合わせで来たから良かったものの、もし、ミーラと姉弟子で外に残しちまったら、どうするつもりだったんだ?」
「…………」
俺が訊ねると、エミは、目を円くして、一瞬、黙り込んでしまった。
「そこまで、考えてなかった」
「おーい、もしもーし」
俺は後頭部にじっとり汗をかくような感触を受けながら、エミにツッコんでいた。
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