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Edition:E
Chapter-36.5 Ver.E
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──※─※─※──
このグループの話は本編第1部Chapter-36.0
(https://www.alphapolis.co.jp/novel/177250435/358378391/episode/2971520)
からの分岐となります。
──※─※─※──
「え…………」
その人物は、短く声を上げたっきり、凍りついたかのように、一瞬、沈黙してしまう。
「わ、たし……?」
疑問と困惑とが入り混じった声で、言う。
そのことに悪意があるわけではないのは、俺にもよく解った。
構わず、俺は、彼女の右手を取り、両手で握る。
「エミ・クラーク・ローチ……俺、マイケル・アルヴィン・バックエショフと、結婚を、約束して、欲しい」
「…………」
即答は、してくれなかった。
ただ、いつもの、ニュートラルな表情で、俺を見つめてくる。
俺は、そこに流れる沈黙に、耐えきれなくなりかけていた。
いつもなら、こういう時、キャロがエミに声をかけてくれるのだが、今は、それは期待できない。
いや、期待してはいけない。
俺は、添い遂げる相手として、エミを選んだのだから。
「ダメ、だったか?」
俺が、少し……そう、絶望のような感情を覚えつつ、そう訊くと、エミは、ふるふる、と、左右に首を振った。
「ダメ……なわけない」
エミは、いつものように、静かな、しかしはっきりとした口調で、そう言った。
「でも、理由は知りたい……かな」
「理由か……うん」
言わなきゃならない、のか……
「いや、言わなきゃならないよな」
「言いにくい、の?」
エミは、小首をかしげるような仕種をして、そう言った。
「いや、言うべきなのは解ってるんだが」
緊張に耐えられなくなって、俺は、照れ隠しで苦笑してしまう。
「ちょっと」
そこへ、キャロの憤ったような声。
「エミはアルヴィンの言葉に真摯に対応してるのよ、そんな、ヘラヘラした態度はないんじゃない?」
「キャロ……気持ちはわかりますが、今は、2人に任せるべきです……」
少し苛立ったような様子のキャロを、ミーラが制した。
「いや、キャロの言うとおりだ、照れ隠しで逃げるとか、取るべき態度じゃないな」
俺は、表情をなんとか引き締める。
「これは……こんなことを、男が女に言うのは、ひょっとしたらおかしいのかもしれないけれど」
結局は予防線を張ってしまいつつも、なんとか、これは、吐き出すように、言おうとする。
「うん?」
エミが、どこかキョトン、としたように、問いかけるようにして続きを促してくる。
「エミは……頼もしく感じるから、だな」
「頼もしく感じる……」
エミは、俺の言葉を反芻する。
あれ?
なんか、俺は、俺が情けないことを言ったような気がしたが、エミは、なんだか顔を少し赤らめているように見えた。
「エミは常に冷静で……洞察力もあるっていうか、そういうところ、うん、なんか頼りにできるって感じで、そばにいてくれると、安心できるんだが……やっぱり、ちょっと、情けないかな」
キャロに戒められたばかりだと言うのに、俺は、また、苦笑しかけてしまう。
「そんな事、ない」
「え?」
言葉を訊き返したんじゃない。
エミが、口元で微笑んでいたから、少しドキッとしたのだ。
「アルヴィンに頼られるの、私は嬉しい」
「じゃ、じゃあ……」
俺は、自分の中で、芽生えた……動悸、とは違う。ドキドキが、高鳴っていくのを感じる。
「はい」
エミにしては珍しい、満面の──と言っても穏やかな感じではあるが──笑顔。
「私、エミ・クラーク・ローチは、マイケル・アルヴィン・バックエショフの伴侶になることを、誓います」
パチパチパチパチ……
最初に拍手を贈ってくれたのは、キャロだった。
「おめでとう、エミ、それにアルヴィン」
「ええ、きっと、神々もお2人を祝福されることでしょう」
ミーラも、そう言って、拍手をしだした。
「いよっ、おめでとう、お2人さん」
ジャックが、そんな囃し立てるような声を発しつつ、姉弟子ともども、拍手を送ってくれた。
「けど、アルヴィン」
念を押すように、キャロが言ってくる。
「さっきも言ったけど、私とミーラの事も、忘れたら許さないわよ」
「そうですね、今更、お別れだなんて、考えられません」
苦笑交じりに、ミーラが、そう言った。
「アルヴィンなら、それは大丈夫?」
「うーん……それは、大丈夫と言って良いのかな?」
笑顔のまま言うエミに、俺はどこか微妙な苦笑を浮かべてしまう。
「でも、ま、なんとかするしかないかなぁ」
「まったく、調子いいんだからなぁ」
俺が苦笑したままそう言うと、ジャックもまた、しょうのない悪友に対してかけるような、声を出してきた。
でも、後悔なんか、しなくたっていいんだろう?
なにをクヨクヨするものか、ゆくぞこの道どこまでも、だ。
このグループの話は本編第1部Chapter-36.0
(https://www.alphapolis.co.jp/novel/177250435/358378391/episode/2971520)
からの分岐となります。
──※─※─※──
「え…………」
その人物は、短く声を上げたっきり、凍りついたかのように、一瞬、沈黙してしまう。
「わ、たし……?」
疑問と困惑とが入り混じった声で、言う。
そのことに悪意があるわけではないのは、俺にもよく解った。
構わず、俺は、彼女の右手を取り、両手で握る。
「エミ・クラーク・ローチ……俺、マイケル・アルヴィン・バックエショフと、結婚を、約束して、欲しい」
「…………」
即答は、してくれなかった。
ただ、いつもの、ニュートラルな表情で、俺を見つめてくる。
俺は、そこに流れる沈黙に、耐えきれなくなりかけていた。
いつもなら、こういう時、キャロがエミに声をかけてくれるのだが、今は、それは期待できない。
いや、期待してはいけない。
俺は、添い遂げる相手として、エミを選んだのだから。
「ダメ、だったか?」
俺が、少し……そう、絶望のような感情を覚えつつ、そう訊くと、エミは、ふるふる、と、左右に首を振った。
「ダメ……なわけない」
エミは、いつものように、静かな、しかしはっきりとした口調で、そう言った。
「でも、理由は知りたい……かな」
「理由か……うん」
言わなきゃならない、のか……
「いや、言わなきゃならないよな」
「言いにくい、の?」
エミは、小首をかしげるような仕種をして、そう言った。
「いや、言うべきなのは解ってるんだが」
緊張に耐えられなくなって、俺は、照れ隠しで苦笑してしまう。
「ちょっと」
そこへ、キャロの憤ったような声。
「エミはアルヴィンの言葉に真摯に対応してるのよ、そんな、ヘラヘラした態度はないんじゃない?」
「キャロ……気持ちはわかりますが、今は、2人に任せるべきです……」
少し苛立ったような様子のキャロを、ミーラが制した。
「いや、キャロの言うとおりだ、照れ隠しで逃げるとか、取るべき態度じゃないな」
俺は、表情をなんとか引き締める。
「これは……こんなことを、男が女に言うのは、ひょっとしたらおかしいのかもしれないけれど」
結局は予防線を張ってしまいつつも、なんとか、これは、吐き出すように、言おうとする。
「うん?」
エミが、どこかキョトン、としたように、問いかけるようにして続きを促してくる。
「エミは……頼もしく感じるから、だな」
「頼もしく感じる……」
エミは、俺の言葉を反芻する。
あれ?
なんか、俺は、俺が情けないことを言ったような気がしたが、エミは、なんだか顔を少し赤らめているように見えた。
「エミは常に冷静で……洞察力もあるっていうか、そういうところ、うん、なんか頼りにできるって感じで、そばにいてくれると、安心できるんだが……やっぱり、ちょっと、情けないかな」
キャロに戒められたばかりだと言うのに、俺は、また、苦笑しかけてしまう。
「そんな事、ない」
「え?」
言葉を訊き返したんじゃない。
エミが、口元で微笑んでいたから、少しドキッとしたのだ。
「アルヴィンに頼られるの、私は嬉しい」
「じゃ、じゃあ……」
俺は、自分の中で、芽生えた……動悸、とは違う。ドキドキが、高鳴っていくのを感じる。
「はい」
エミにしては珍しい、満面の──と言っても穏やかな感じではあるが──笑顔。
「私、エミ・クラーク・ローチは、マイケル・アルヴィン・バックエショフの伴侶になることを、誓います」
パチパチパチパチ……
最初に拍手を贈ってくれたのは、キャロだった。
「おめでとう、エミ、それにアルヴィン」
「ええ、きっと、神々もお2人を祝福されることでしょう」
ミーラも、そう言って、拍手をしだした。
「いよっ、おめでとう、お2人さん」
ジャックが、そんな囃し立てるような声を発しつつ、姉弟子ともども、拍手を送ってくれた。
「けど、アルヴィン」
念を押すように、キャロが言ってくる。
「さっきも言ったけど、私とミーラの事も、忘れたら許さないわよ」
「そうですね、今更、お別れだなんて、考えられません」
苦笑交じりに、ミーラが、そう言った。
「アルヴィンなら、それは大丈夫?」
「うーん……それは、大丈夫と言って良いのかな?」
笑顔のまま言うエミに、俺はどこか微妙な苦笑を浮かべてしまう。
「でも、ま、なんとかするしかないかなぁ」
「まったく、調子いいんだからなぁ」
俺が苦笑したままそう言うと、ジャックもまた、しょうのない悪友に対してかけるような、声を出してきた。
でも、後悔なんか、しなくたっていいんだろう?
なにをクヨクヨするものか、ゆくぞこの道どこまでも、だ。
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