上等だ

吉田利都

文字の大きさ
上 下
8 / 18

妬み

しおりを挟む
ジリリリリ! ダンッ

トントントントン

僕は階段を降り、いつもより早めの朝食を取る。

「あら、今日早くない?」

母さんが眠り眼に僕を見ていた。

「ちょっと早くいって最後の復習したいんだ。」

「そう。頑張ってるわね。」

母さんとしゃべりながらパンと牛乳をものすごいスピードで頬張る。

「じゃあ、行ってくる!」

「もういいの?」

「うん!」

ガチャ

家から飛び出し自転車にまたがる。

今日は雨じゃない。



梅雨は終わったのだろうか。

短いような気もするけど。

そんなことを考えていると学校に着いた。

駐輪場には美咲もいた。

「おー黒沢今日は早いな。」

「テストだからね。」

「関係あるのか?」

「美咲にはわからないよ。」

冗談交じりに言ってみるとヘッドロックされた。

ふと視線を横にずらすと山本がこちらを見ている。

「あ」

「どうした?」

山本は何も言わずその場から立ち去る。

「いや、なんでもない。」

「なんだよ。余計気になるじゃんか。」

「うん。山本がこっちを見てたんだ。」

「山本が?なんで」

「知らないよ。」

「ふーん」

教室に入ると朝早くにもかかわらずクラスの人たちが勉強をしていた。

みんな頑張っているな。

僕も頑張らなきゃ。



一時間目 理科

テスト用紙は流石に僕にも回ってくる。

お、これなら昨日やった所だから解けるぞ!

周りは早くも寝ている人や明らかにカンニングしている人なんかがちらほらいた。

僕はなるべく空欄を作らないように時間いっぱい使った。

キーンコーンカーンコーン

ふう、なんとか出来た。

「黒沢~」

美咲が教室に入ってくる。

「な、なんだよ大きな声で。」

「さっきのテスト出来た?」

「まあまあかな。」

「まじかよ!さっぱりわかんなかった」

そりゃあそうだあれは勉強しないと解けないさ。

「次の数学ちょっと教えようか?」

「お、気が利くね。頼みます!」

方程式と応用のコツを教えておいた。

「もうそろそろ始まるから行くわ。」

「うん。」

「ありがとな!」

ニコッと笑って走っていった。

喧嘩しなけりゃ可愛いのにな。

チャイムが鳴った。

しまった!自分の勉強できてないじゃん。

テストを見る。

あ、なんとか解けるかも?

10分経ったところでつまずいた。

なんだこの証明は。

まったくわからない。

これって習ったっけ?

そんな疑問が何問か続いた。

キーンコーンカーンコーン

「黒沢!」

また美咲が走ってきた。

「なんだよ。」

「結構解けた!」

「良かったね。」

「おう!証明とかも前にやったことあったから結構解けたぜ。」

「え、まじで」

「おう、じゃあな!」

美咲に教える前に僕が教えてもらうべきだった。

というかちゃんと勉強すれば美咲でも解けるんだな。


放課後になり、僕は美咲のクラスへと向かった。

まだいるかな。

教室を覗くと美咲はまだいた。

こちらに気づき手を振る。

「おー黒沢。帰ろうぜ。」

いつも中身の入ってなさそうな薄いカバンを持っている。

「今日は黒沢からくるなんてそんなにあたしと帰りたかったのか?」

ニヤニヤしながら肘でつついてくる。

「いや、昨日は一緒だったからとりあえず声かけようと思っただけだよ。」

「ふーん」


「で、今日はどうする?」

「どうって。」

「どっか行きたいところないの?」

「うーん。」

本屋に行きたいけど美咲は退屈しそうだしな。

そうだ。

「CD屋に行かない?」

「え、CD!?行きたい!」

案の定食いついた。

「じゃあ、駅前のCD屋に行こう。」

「了解!あそこはあたしもよく行くんだよ。」

「へえ、そうなんだ」

僕もよく行くんだけどな。

今まであったことがなかったのは偶然なのだろうか。

「何か買うの?」

「んー。いいのがあったら。」

「じゃあおすすめするから気に入ったら買ってよ。」

「わかった。もう持ってるかもしれないけどね。」

「マイナーなのもってきてやるよ。」

和気あいあいと話しながら駅前へ向かう。

そんな後姿を山本はひそかに陰から見ていた。
しおりを挟む

処理中です...