上等だ

吉田利都

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真実

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ガチャ

「ただいまー」

「お帰りー。もうチャックの散歩行ってきたからね。」

「うん。ありがとう。」


手を洗いながらふと、鏡を見てみるとそこにはいつもの僕がいた。

美咲と友達になれた今ならもっといい顔をしていると思っていた。

「相変わらずだな。お前は。」

カバンに入れていたアイスを冷凍庫に入れ、テレビをつける。

お笑い番組を見て少し笑みがこぼれた。

「あ、そういえばテストだったんじゃない?」

「お、おう。」

「あんまりできなかったのね。」

母さんは僕の表情を見て察した。

「勉強はしてるの?」

「まあね。」

「進学したいんだったら今のうちに頑張っときなさいよ。」

「はーい。」

僕は、高校二年にもなって進路を考えたことがない。

正確に言えば将来やりたいことがない。

周りの会話を聞いてるとなんだかんだ大学に行くと言っている。

やりたいこともなく大学に行くのはどうなのだろう。

そういう人に限って単位が取れずろくに学校にも行かないような連中なんだ。

そんな連中よりも何も考えてない僕はよっぽど酷いのだけれど。

「ごはん出来たよ」

今日の晩御飯はビーフシチューだ。

「いただきまーす」

「あっつ!」

「大丈夫?きをつけなさい。」

僕の口に付いたビーフシチューを見て笑っていた。

「ねえ母さん。」

「なあに?」

「僕、学校でいじめられてるんだ。」

唐突に打ち明けた。

こうして打ち明けられたのは美咲の存在が大きい。

彼女が友達になっていなければぼくはずっと母さんに黙っていただろう。

母さんはお茶を一口飲む。

「知ってるわよ。そんなこと。」

「え」

「いくらドジだからってそんなほぼ毎日顔や体に傷なんか作らないでしょ。」

たしかにそうだが僕はこれでも気づかれないように

顔の腫れが収まるまで帰らないようにしてたんだけどな。

「いつから知ってたの?」

「うーんそうね。顔の傷の治りが遅い時におかしいなって思ったわ。」

初期のころは治りが遅いという理由にしていた気がする。

そのころからって、僕は騙していたんじゃなくて気を使われていたんだな。

いつか僕の口から本当のことを言える日まで待ってくれてたんだ。

「そっか・・・」

「でも、圭の口から言ってくれるなんて思ってなかったわ。」

「うん。僕にも友達ができたんだ。」

「美咲ちゃん?」

「うん、だからもう母さんに言っても心配しないだろうと思って。」

「馬鹿ね。圭がつらい時に相談に乗れない時のほうがよっぽど心配よ。」

母さんは目が少しうるんでいた。

それを見て僕はとっさに下を向き謝る。

「ごめんね。今まで言えなくて。」

「いいのよ。美咲ちゃんとは仲良くできそうなの?」

「うん。あいつも僕と似た者同士だったよ。」

「だからどこか安心する。」

「そう。これで学校も楽しくなりそう?」

「あ、うん。」

僕が毎朝うかない顔で学校に向かう様子も母さんは見ていたんだ。

「ごちそうさま。明日もテストだから今日はちゃんと勉強する。」

「そうね。あんまり無理はしちゃだめよ。」

「わかってる。」

二階に上がるとチャックもついてきた。

「チャック~最近一緒に散歩言ってやれなくてごめんな。」

チャックは舌を出して間抜けな顔をしている。

「プハハ、なんだよその顔。」

ワン!と吠えとびかかってきた。

「おい!チャック~」

顔をべろべろと舐められ顔中が犬のにおいになったが嬉しかった。

「テストが終わったらちゃんと相手してやるからな。」

チャックを降ろし机に向かう。

「よーし、頑張るぞー!」

明日は理科と数学だ。

理数系は得意じゃないけど。何問も解き完ぺきに復習した。

時計を見ると深夜一時。

「流石に寝ようかな。」

ベッドに倒れこみ、どこか犬臭いにおいのまま僕は深い眠りについた。
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