現場指紋係主任は転生先の異世界でも指紋捜査官として活躍します

ご隠居

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一兵、異世界に転生す

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 ここは…、どこだ…、病院か…、一兵はそう思いつつ、ゆっくりと目を開けた。目が開いたということは恐らくは助かったに違いない…、いや、三途(さんず)の川という可能性もなくはなかったが、しかし、目を開けた限りでは少なくとも、あの世ではなさそうだった。一兵が目を開けた先には天井があったからだ。

 いや、天井らしきものと言うべきか。一兵は違和感を禁じえなかった。それと言うのも警察病院の天井は白…、いや、警察病院に限らずすべての病院の天井は恐らくは白に違いなかったからだ。

 だが今、一兵が見上げる天井は白ではなかった。茶色、それもどうやら木の天井らしい。

「ここは…、ログハウスか…」

 ログハウスの病院など聞いたことがない。そもそも現代、平成、いや、令和には存在しないだろう。

 しかし実際、天井は一兵が見る限り、木であった。

「まるで…、まさかとは思うが…」

 これが異世界というものか…、一兵は一瞬、そう思った。以前、法事の折、甥っ子がラノベを熱心に読んでいた。

「叔父さんも読んでみる?」

 まだ叔父さんと呼ばれるには抵抗があったが、ともあれ一兵は甥っ子が差し出したそのラノベなる小説を手に取ってみた。タイトルには「異世界」の文字があった。正式なタイトルは覚えていなかった。確か、異世界転生何とやらであった。

 ともかくその表紙にはログハウスのような絵が描かれてあり、今、一兵の眼前に広がる光景そのものと言えた。

「まさか…、いや、転生なら西部劇だって…」

 ログハウスと言えば、何といっても西部劇である。いや、それ以前に転生したとも限らない。

 だが間もなく、一兵は異世界に転生したと思い知らされる。

 それからすぐのことであった。一兵が寝かされているベッドに一人の女が近付いて来た。

「看護婦か…、いや、今は看護師って言わなければならなかったんだっけか…」

 一兵は気配でそうと察すると、気配がした先へと顔を向けた。するとそこに立っていたのはやはり甥っ子が差し出したラノベの表紙に描かれていた姿格好そのもの女であった。まるで生き写しであった。

「俺は…、異世界に転生したのかっ!?」

 一兵は思わずそう叫んだ。
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