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第九章
第二十九話
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「みなさーん、丸太が届きましたよ~」
まるで「パンが焼けましたよ」くらいの軽さで、変身組の三人を呼ぶリリ。
断崖の手前で空っぽにしか見えない大袋を広げると──
中には、隙間なくビッシリと詰まった太い丸太が現れた。
「トゥーもパーちんもリー姐も~
お疲れちゃーん☆彡 こっからはあーしの独壇場みたいな?冷蔵庫にナタピDEココオカ餡蜜入れといたし?ソレ食ってチルってろ的な?」
甘さだけは保証された謎のギャルスイーツをこしらえたテティスは、
何十トンあるのかも分からない大袋をフヨフヨと浮かせて、崖の先の空中へと歩み出す。
手を頭上にかざすと、丸太が一本ずつ引き出され──
トゥエラの彫った空間溝にパコリと嵌まる。
「これが魔抜けのチビの仕事とかさ~
……ダークエルフとドワーフがズッ友になれるワケねーっつーのも、納得だよね~」
ぶつぶつ文句を言いながらも、テティスの頭上には夥しい数の丸太が空を埋め尽くす。
指先3本でペン回しのように丸太をクルクルと操り、
太さや形を見極めては、根元と先端を交互に──ポスン、ポスン──と溝に落とし込んでいく。
この時点では丸太同士の間に隙間が空き、アスレチックのような橋に過ぎない。
だが、それで十分。
あとは王国の事業として、丸太の上に石畳を敷くなり何なりすれば、立派な街道になる。
もともと強靱な縄で吊り橋をかけるくらいしか方法がなかったこの渓谷工事。
今や、おっさんが重機でガタポコ走ってもびくともしない強度を誇る。
──こうして、トゥエラ曰く「明日に駆ける希望の道」が、対岸までつながったのだった。
➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖
その頃、おっさんは──
先ほどチェーンソーで切り出した丸太からこぼれた木屑を集め、ドラム缶ほどの燻製器に火を入れていた。
鉄網の上には肉や魚、ソーセージがずらりと吊るされ、白い煙に包まれていく。
人間の作った一般的な刃物では枝一本払うこともできない、鋼鉄のような樹海の大木。
不思議なことに、おっさんの道具ではサクサクと切れるのだが──その木屑から立ちのぼる香りもまた格別だった。
「な、なんという芳醇さ……! これが豚──いや、オークの肉だと言うのか!?」
セリオン王国の巨大な首都を護る騎士団、その中でも最強と謳われる総隊長・オレーツエ氏。
屈強な男の彼でさえ、おっさんの料理と焼酎の前では、目尻を下げて幸せそうに笑うしかない。
時刻はまだ昼。
平和な王都とはいえ、窃盗や交通事故など、日常の小さな事件まで防ぎきることはできない。
街中では今も、巡回に勤しむ騎士や兵士たちがいる。
だが──
物見のために異様なほど高く造られた騎士団本部の屋上では、そんな世間の喧騒とは無縁の大宴会が繰り広げられていた。
「ブーカ氏よい! 呑んでっけ!? やけに大人しいんでねえの!?」
巨人族は、とにかくメシも酒も量が桁外れだ。
そのため普段は、薄めた安酒や、量の獲れる巨大魚などを食材にする者が多い。
だが、おっさんのように豊富な調味料や、創意工夫を凝らさなければ──
どうしてもパサパサで旨味の乏しい、物足りないメシになってしまう。
今日振る舞われたのは、王宮の美人料理長ですら涎を垂らす、ドラゴンの極上部位。
それが畳ほどの大きさでステーキに焼かれ、まるで落ち葉のように高く積まれている。
草を積む農耕用フォークを手渡せば、それをブッ刺して豪快に喰らう騎士たち。
その喧噪から少し離れた場所で、ブーカはしみじみとドラム缶ジョッキを傾けていた。
「……旦那かい。──こんないい酒をありがとうよ」
いつもの窓を破るような声量が身を潜め、
何やら物思いに耽っている渋イケメン。
悪く言えば、魚くらい顔の整っていないおっさんは、そんなブーカを見て──
『きっとクソを気張っても絵になるんだっぺな』
……などと下世話な妄想をしていた。
「珍しく元気ねぇんでねぇの?なんかあったのけ?」
無遠慮に、鋼鉄の膝をペシンと叩き、隣に胡座をかいて座る。
見上げれば、ちょっとした大仏くらいの迫力がある彼が、ボソボソと語り出した。
「今日はよ…旦那の見事すぎる手先の技術を見ちまってよ……あの絵だけでも凄えと思ったのに、そこから発展した造形を刻んでいただろう?」
そう言いながら、自分のぶっとい指を見つめ、
「俺も旦那くれぇのサイズになれりゃ──もっと細けぇ細工も出来るのかなぁ…なんてよ。
巨人だからってこんな言い訳してんじゃ…まだまだなんだろうがな」
などと言っていた。
ふーむとおっさんは腕を組み、考える。
まぁ、あんな手で装飾品の荒型まで作れる時点で相当なもんなんだが、たしかにコイツが人間サイズになったなら、どんな仕事をするのだろう……と、ワクワクしてきてしまった。
たしか──パステル達がなんか女王にそんなアイテムを貰っていたような…?
「妖精っちゃー…魔力とやらの多いとこに住んでんだよな…?」
ソレ以前に魔力が何なのかもよくわかっていないおっさん。
臭いわけでも、色がある訳でもないべした…
「魔力だって?──あのお方は魔法の剣を扱う最強の魔導騎士だぜ?」
と、ブーカが指差した方を見れば──
燻製機に齧り付いて、燻したたくあんをパリポリと砕きながら酒を嗜む男がいた。
なんだか、オーラ?というのかガソリンを入れた時に見えるモヤモヤとした空気のようなものが、彼の周りに漂っていた。
おっさんはトコトコと近寄って、声をかける。
「オレーツエ氏、だっけか?あんたは魔力だかが多いんけ?」
恐れ多くも近衛総隊長。いったい誰がこんなフランクに話しかけれるというのか?大臣達でさえ言葉には気を使う、そんな男の肩をポンポンと叩くおっさん。
「ん…?公爵殿か、この燻った漬物は絶品であるな…酒が止まらんぞ」
機嫌良く酔って見えるが、実のところ一分の隙もない。
「で……魔力だと?──俺は、生まれつき漲っていたらしいが、それがどうした?」
騎士という、誉高い品のある要職に似合わない、どちらかというと、侍……人斬りのような鋭い眼光。そんな男に対しておっさんは──
ペシペシ、ポンポン、「いねぇのけ?」などとブツブツいいながら、総隊長の背中や頭を軽くはたいて回った。
機嫌良く呑んでいた周りの騎士達が、ビクリと体を硬らす。──がそんな中、
「妖精よおい、ちょっと出てきてくんちぇ~頼みがあんだっけ~」
と、オレーツエにではなく、その周りのモヤモヤに話しかける。
すると────
ボフン!と顕現する妖艶な美女。
妖精女王、その人が現れた。
騒然とする周囲。
だが、一番驚いているのはオレーツエであった。
自分の頭のてっぺんから、羽根の生えた女が飛び出してきたのだ。
反射的に剣へと手が伸びかけるが──
「なんじゃ……おっさんか。妾は寝ておったのじゃ。
此奴の魔力は皮膚がピリピリして心地よいのじゃ」
まるで総隊長を低周波治療器か何かのように扱う、無遠慮な人外。
おっさん以上に礼儀知らずである。
「こ、公爵? これは一体……?」
燻りがっこの欠片を口から落とし、呆然と頭上を見上げるオレーツエ。
「あー、驚かせたなら悪りかったね。このご婦人はよ、この国の最初の国王の嫁さんらしいんだっけ」
──初代王妃──!!?
辺りが一気にパニックに包まれる中、おっさんは平然と続ける。
「お休みんとこ申し訳ながったね。まぁ俺もこないだ起こされたからおあいこっちゅーことで。
そんでよ、巨人っちゃー、この前の指輪で縮めることは出来るのけ?」
狼狽える総隊長を置き去りにして話は進む。
「巨人とな……? あぁ、ちいと体のデカい人間のことか。
ヤツらは隔世遺伝じゃろう? 異種族というほど濃い血は流れておらんが……一時的にそれを隠す程度ならば──」
チャリン、と銀貨ほどのメダルが、おっさんの足元へ転がった。
──それを服にでも忍ばせておけ──
そう言い残すと、妖精女王はモヤモヤとした煙となり、ランプの魔人のように総隊長のつむじへ戻っていった。
「手間ぁかけさせて悪りかったね。これでも呑んでがっせ」
おっさんは、自作蒸留所の中でも希少な琥珀色の焼酎を、オレーツエのグラスに注いだ。
「半信半疑だったが……まさか俺の脳天に住んでいるとはな……妖精か。
王に報告せねばなるまいか……」
総隊長は酒をグイッと一気に飲み干し、「美味かった、感謝する」とだけ告げて、屋上を後にした。
──後には爽やかな秋風が吹き抜けるのみであった。
まるで「パンが焼けましたよ」くらいの軽さで、変身組の三人を呼ぶリリ。
断崖の手前で空っぽにしか見えない大袋を広げると──
中には、隙間なくビッシリと詰まった太い丸太が現れた。
「トゥーもパーちんもリー姐も~
お疲れちゃーん☆彡 こっからはあーしの独壇場みたいな?冷蔵庫にナタピDEココオカ餡蜜入れといたし?ソレ食ってチルってろ的な?」
甘さだけは保証された謎のギャルスイーツをこしらえたテティスは、
何十トンあるのかも分からない大袋をフヨフヨと浮かせて、崖の先の空中へと歩み出す。
手を頭上にかざすと、丸太が一本ずつ引き出され──
トゥエラの彫った空間溝にパコリと嵌まる。
「これが魔抜けのチビの仕事とかさ~
……ダークエルフとドワーフがズッ友になれるワケねーっつーのも、納得だよね~」
ぶつぶつ文句を言いながらも、テティスの頭上には夥しい数の丸太が空を埋め尽くす。
指先3本でペン回しのように丸太をクルクルと操り、
太さや形を見極めては、根元と先端を交互に──ポスン、ポスン──と溝に落とし込んでいく。
この時点では丸太同士の間に隙間が空き、アスレチックのような橋に過ぎない。
だが、それで十分。
あとは王国の事業として、丸太の上に石畳を敷くなり何なりすれば、立派な街道になる。
もともと強靱な縄で吊り橋をかけるくらいしか方法がなかったこの渓谷工事。
今や、おっさんが重機でガタポコ走ってもびくともしない強度を誇る。
──こうして、トゥエラ曰く「明日に駆ける希望の道」が、対岸までつながったのだった。
➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖
その頃、おっさんは──
先ほどチェーンソーで切り出した丸太からこぼれた木屑を集め、ドラム缶ほどの燻製器に火を入れていた。
鉄網の上には肉や魚、ソーセージがずらりと吊るされ、白い煙に包まれていく。
人間の作った一般的な刃物では枝一本払うこともできない、鋼鉄のような樹海の大木。
不思議なことに、おっさんの道具ではサクサクと切れるのだが──その木屑から立ちのぼる香りもまた格別だった。
「な、なんという芳醇さ……! これが豚──いや、オークの肉だと言うのか!?」
セリオン王国の巨大な首都を護る騎士団、その中でも最強と謳われる総隊長・オレーツエ氏。
屈強な男の彼でさえ、おっさんの料理と焼酎の前では、目尻を下げて幸せそうに笑うしかない。
時刻はまだ昼。
平和な王都とはいえ、窃盗や交通事故など、日常の小さな事件まで防ぎきることはできない。
街中では今も、巡回に勤しむ騎士や兵士たちがいる。
だが──
物見のために異様なほど高く造られた騎士団本部の屋上では、そんな世間の喧騒とは無縁の大宴会が繰り広げられていた。
「ブーカ氏よい! 呑んでっけ!? やけに大人しいんでねえの!?」
巨人族は、とにかくメシも酒も量が桁外れだ。
そのため普段は、薄めた安酒や、量の獲れる巨大魚などを食材にする者が多い。
だが、おっさんのように豊富な調味料や、創意工夫を凝らさなければ──
どうしてもパサパサで旨味の乏しい、物足りないメシになってしまう。
今日振る舞われたのは、王宮の美人料理長ですら涎を垂らす、ドラゴンの極上部位。
それが畳ほどの大きさでステーキに焼かれ、まるで落ち葉のように高く積まれている。
草を積む農耕用フォークを手渡せば、それをブッ刺して豪快に喰らう騎士たち。
その喧噪から少し離れた場所で、ブーカはしみじみとドラム缶ジョッキを傾けていた。
「……旦那かい。──こんないい酒をありがとうよ」
いつもの窓を破るような声量が身を潜め、
何やら物思いに耽っている渋イケメン。
悪く言えば、魚くらい顔の整っていないおっさんは、そんなブーカを見て──
『きっとクソを気張っても絵になるんだっぺな』
……などと下世話な妄想をしていた。
「珍しく元気ねぇんでねぇの?なんかあったのけ?」
無遠慮に、鋼鉄の膝をペシンと叩き、隣に胡座をかいて座る。
見上げれば、ちょっとした大仏くらいの迫力がある彼が、ボソボソと語り出した。
「今日はよ…旦那の見事すぎる手先の技術を見ちまってよ……あの絵だけでも凄えと思ったのに、そこから発展した造形を刻んでいただろう?」
そう言いながら、自分のぶっとい指を見つめ、
「俺も旦那くれぇのサイズになれりゃ──もっと細けぇ細工も出来るのかなぁ…なんてよ。
巨人だからってこんな言い訳してんじゃ…まだまだなんだろうがな」
などと言っていた。
ふーむとおっさんは腕を組み、考える。
まぁ、あんな手で装飾品の荒型まで作れる時点で相当なもんなんだが、たしかにコイツが人間サイズになったなら、どんな仕事をするのだろう……と、ワクワクしてきてしまった。
たしか──パステル達がなんか女王にそんなアイテムを貰っていたような…?
「妖精っちゃー…魔力とやらの多いとこに住んでんだよな…?」
ソレ以前に魔力が何なのかもよくわかっていないおっさん。
臭いわけでも、色がある訳でもないべした…
「魔力だって?──あのお方は魔法の剣を扱う最強の魔導騎士だぜ?」
と、ブーカが指差した方を見れば──
燻製機に齧り付いて、燻したたくあんをパリポリと砕きながら酒を嗜む男がいた。
なんだか、オーラ?というのかガソリンを入れた時に見えるモヤモヤとした空気のようなものが、彼の周りに漂っていた。
おっさんはトコトコと近寄って、声をかける。
「オレーツエ氏、だっけか?あんたは魔力だかが多いんけ?」
恐れ多くも近衛総隊長。いったい誰がこんなフランクに話しかけれるというのか?大臣達でさえ言葉には気を使う、そんな男の肩をポンポンと叩くおっさん。
「ん…?公爵殿か、この燻った漬物は絶品であるな…酒が止まらんぞ」
機嫌良く酔って見えるが、実のところ一分の隙もない。
「で……魔力だと?──俺は、生まれつき漲っていたらしいが、それがどうした?」
騎士という、誉高い品のある要職に似合わない、どちらかというと、侍……人斬りのような鋭い眼光。そんな男に対しておっさんは──
ペシペシ、ポンポン、「いねぇのけ?」などとブツブツいいながら、総隊長の背中や頭を軽くはたいて回った。
機嫌良く呑んでいた周りの騎士達が、ビクリと体を硬らす。──がそんな中、
「妖精よおい、ちょっと出てきてくんちぇ~頼みがあんだっけ~」
と、オレーツエにではなく、その周りのモヤモヤに話しかける。
すると────
ボフン!と顕現する妖艶な美女。
妖精女王、その人が現れた。
騒然とする周囲。
だが、一番驚いているのはオレーツエであった。
自分の頭のてっぺんから、羽根の生えた女が飛び出してきたのだ。
反射的に剣へと手が伸びかけるが──
「なんじゃ……おっさんか。妾は寝ておったのじゃ。
此奴の魔力は皮膚がピリピリして心地よいのじゃ」
まるで総隊長を低周波治療器か何かのように扱う、無遠慮な人外。
おっさん以上に礼儀知らずである。
「こ、公爵? これは一体……?」
燻りがっこの欠片を口から落とし、呆然と頭上を見上げるオレーツエ。
「あー、驚かせたなら悪りかったね。このご婦人はよ、この国の最初の国王の嫁さんらしいんだっけ」
──初代王妃──!!?
辺りが一気にパニックに包まれる中、おっさんは平然と続ける。
「お休みんとこ申し訳ながったね。まぁ俺もこないだ起こされたからおあいこっちゅーことで。
そんでよ、巨人っちゃー、この前の指輪で縮めることは出来るのけ?」
狼狽える総隊長を置き去りにして話は進む。
「巨人とな……? あぁ、ちいと体のデカい人間のことか。
ヤツらは隔世遺伝じゃろう? 異種族というほど濃い血は流れておらんが……一時的にそれを隠す程度ならば──」
チャリン、と銀貨ほどのメダルが、おっさんの足元へ転がった。
──それを服にでも忍ばせておけ──
そう言い残すと、妖精女王はモヤモヤとした煙となり、ランプの魔人のように総隊長のつむじへ戻っていった。
「手間ぁかけさせて悪りかったね。これでも呑んでがっせ」
おっさんは、自作蒸留所の中でも希少な琥珀色の焼酎を、オレーツエのグラスに注いだ。
「半信半疑だったが……まさか俺の脳天に住んでいるとはな……妖精か。
王に報告せねばなるまいか……」
総隊長は酒をグイッと一気に飲み干し、「美味かった、感謝する」とだけ告げて、屋上を後にした。
──後には爽やかな秋風が吹き抜けるのみであった。
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