DIYと異世界建築生活〜ギャル娘たちとパパの腰袋チート

みーくん

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第九章

第三十一話

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「──なんだと!?妖精女王が現れただと!?」

今日も王宮の最奥で、「了、了……否…了…否…」
と、堆く積もった羊皮紙を精査し、判を押すだけの仕事をこなす、国王・ハンオースは、突然の呼び出しにホッとひと息を吐き、魔法により密閉された密談室へと訪れた。

会談相手は近衛騎士団総隊長・オレーツエ。

「おっと、先に言っときやすぜ、悪口はお控えなすって──ここにいらっしゃられますからね…」

トントンと自分の頭を指で突き、何とも言えない苦笑いを浮かべる。

「お主の頭に……だと?──そうか、魔力か…」

屋上でのバーベキューや、おっさんの面白行動を逐一報告し、意見を交わし合う。

「信じられやすか?俺、後ろから肩叩かれたんですよ…」

だからどうしたと言う話では無い、王も目を剥いて驚く。

「お前がか──?」

「アンタの陰に潜んでいる……アル…なんとか君でしたっけ?

「……アルディスだ」

あー、そうそう。彼に突然襲われたとしたって──無傷たぁーいきやせんが、躱せやすぜ……」

おっさんは別に忍び足で近いたつもりはないのだが、普段からの歩法がそうなのだ。

「あの公爵殿は、ただもんじゃありやせんね……」

何気ないおっさんの動きを思い返しながら、オレーツエは眉をひそめた。

「そんなにか?──お前が斬れぬほどか?」

王の問いに、彼はゆっくりと首を振る。

「いえ……逆でさぁ。隙だらけなんでやす。試す気にもなれねえほど……だが──もし斬ったら?」

その場面を幾度も頭の中でなぞってみる。だが、無事に立っている自分の姿がどうしても想像できなかった。

「……やめやしょう。アンタの害になるまでは」

そう言って話を打ち切る総隊長。
妖精の処遇など自分の考えることではない。ただ情報を投げるだけ投げ、オレーツエは静かに任務へと戻って行こうとした──のだが──

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

おっさんの職人の目線で、ぱっと見ただけでわかるブーカの身長。
──二尺五寸約七五センチ

「随分と縮んじまったんでねぇの?」

中腰になり、目線を合わせて声をかけると──

orega俺が tijinnda縮んだ nokaのか
kodomoni子供に modotta戻った mitexedaみてぇだ

嫌に甲高い、まるでスメアゴルのような声でブーカは喋りかけてきた。

試しにおっさんは、作りかけの指輪を腰袋から取り出してブーカに渡してみる。

受け取ってジロジロと眺めるブーカ。
このサイズになっても、ゴツい体型はそのままなので、女性用の指輪は流石に入りそうもない。
だが──

koryasugeeコリャぁ凄え
 konotenaraこの手ならnanndemoなんでもtukuresou作れそう jyaneekaじゃねえか

彼は早速、自分の道具を取り出そうとするが、丁度良い作業台として使っていた荷車は──
今や、ちょっとしたビルになってしまった。
手に馴染んでいたであろうハンダゴテも、彼の胴体よりも太い持ち手であり、もし使ったとしたら、大筆を抱えた有名書道家みたいになってしまうであろう……

項垂れる彼に、おっさんはふと思い出したように腰袋を探り、過去に勤めていた工務店のイベント──
『ちびっ子大工さん体験会』のときに拵えた、ちゃぶ台ほどの高さの作業台と、ルーター一式を取り出してやった。

「ほれ。サイズ的には、ちょうどいいんでねぇの?」

小さくなった事で、巨人としての力も失われてしまうのでは──おっさんはそう思っていた。
だがブーカは当然のように手のひらで、粘土細工でもするかのように、妖精金属フェイヴァリウムを捏ね始めたのだ。

その姿は、子供が泥団子遊びをしているかのようでありながら──
あっという間に形を整え、おっさんと張り合うほどの精緻な装飾品を形作っていった。

電動精密ルーターは、一式しか所持していない為、おっさんは手持ち無沙汰になってしまい、頭を捻る。

ふと、ホビット族の街で扱った木の様な石材、ストーンウッドを思い出す。
バールで叩いても傷も付かないアレが、おっさんののこぎりやノミでは削ることが出来たのだった。

流石に金属は──と思いながらも、彫刻刀のセットを取り出してみる。
万が一、これで削れるのであれば、ルーターなんかよりもよっぽど精密な加工が出来るのだが……

普通に考えれば、力を入れた瞬間、刃先はパキッと欠けてしまうであろうが──

空中に穴を掘り出す、愛しきトゥエラを思い出す。

『出来る。出来る。掘れる。彫れる。切れる。』

そう、頭の中に念じ……恐る恐る刃先を──

いや、これではダメだ。こんな心構えでは、絶対に金属を木工用彫刻刀で斬ることなど出来ない。

少しだけ、自分にイラッときたおっさん。

腰袋から冷凍庫をドシンッと取り出す。
パカリと開いた、中に入っていた物は──

以前訪れたドワーフ帝国の地下蒸留所で、ひと舐めだけ試飲した酒。
土産にと、ボトルで一本だけ貰ってきた物だ。
酒精アルコール度数は不明だが……
ひと舐めで、アル中のおっさんの足がもつれた。
そんな酒だ。

もちろん、冷凍庫如きで凍りつくような酒ではない。おっさんはボトルの蓋を捻り開け──

ゴクリ、ゴクリ、ゴクリ……

コップ一杯分程をラッパ呑みで流し込んだ。

゛──ドクン!──゛

喉が…燃える……目が霞む……頭が茹る……

旨いとか不味いとかの次元ではない。

これは……覚醒酒だ。

そこから先は──あまり覚えていない。

後になって、ブーカから聞いた話だ。

おっさんはビー玉ほどに捏ねられた金属球を掴み、
切り出し尖った彫刻刀を突き刺した。

ギリ、ギリリ……と。
中身を抉り取り、リリの指にぴたりと合う寸法の穴を穿つ。

手は止まらなかった。
丸刀、平刀、三角刀──次々と道具を替え、呼吸もせずに彫り続ける。

わずか数分。

呆然と見守るブーカの目の前で、そこにあったのは……
雅やかに輝く、──結婚指輪だった──

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

「それでは俺は任務にもど──」

総隊長が退出しかけたその瞬間。

結界魔法。遮音魔法。誤認魔法。
何重にも張られ、絶対に侵入など不可能なはずの密談室に……

「妖精女王~!?マジいい加減にしろって~!」
わたくし……もうかんにんおくれやすぅ~」
「僕は大きくて楽しいけれどもね!」
「申し訳ありません──お邪魔いたします」

ガヤガヤと乱入する、見覚えのない四人組。

王も総隊長も──チビるほど驚いた。
地下シェルターに核弾頭が現れたような衝撃。
オレーツエは剣を抜くどころか、腰に差していることすら忘れていた。

「あーいた!アンタん中に女王いるっしょ!?
ちょいシバくから?ソッコー呼び出して!」

「御父様──モゴモゴモゴ……なのですわ!」

「国王様、無礼を承知でお詫び申し上げます。
こちら、パステリアーナ王女様にございます」

3人も4人も一度に喋り出すから、王も何が何だか……

「パステルだと!?」

振り返った先にいたのは──
ブサイクとまでは言わぬが、どう見ても田舎娘。
品も美貌も感じられぬその子を指して「王女」だなどと……

「お前は──公爵の妻ではないか……なんだこの騒ぎは……」

ようやく自我を取り戻した総隊長も、
「な、何ヤツ……いや、もう遅いか……」
と、ガックリ椅子に項垂れた。

テティスはイキんで魔力尿意を高める。
オレーツエの周りに揺らめく陽炎のような魔素。

それを、ホットコーヒーの湯気と例えるならば、
テティスの纏った陽炎…ですらない黒いガスバーナーのような魔素は──

沸騰したプール、とでも言えば良いだろうか?
それほどの差があった。

魔導騎士などと呼ばれて、全身鋼鉄甲冑の敵兵を一刀両断できるオレーツエは、ガタガタと震えて、遂にはジョロジョロと漏らしてしまった。

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