DIYと異世界建築生活〜ギャル娘たちとパパの腰袋チート

みーくん

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第九章

第四十五話

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HEYヤァ君達ユーたちREALLY本当に良くやってくれた!
   ISLANDPUSPERFECT完璧摘出ブッシャー!してくれたZE
   心の底ディープインサイドからGRATITUDE超感謝しているYO!!」

床も壁も天井も──どこを見ても宝石の輝きに満ちた謁見のホールへ、セーブルとシェリーは案内された。

その中央に仁王立ちしていたのは、この国の王にして最高の宝石細工職人、オルテメ。

先ほどの裁判の場では、陽気な気性を潜め、寡黙に事の成り行きを見極めていた彼だが──
すべての物事においてポジティブである彼は──
「ソレはソレ」として態度を切り替えるのだった。

「我々は、この妻となるシェリーの父親の無念を
   晴らすべく動いただけです。
   ──しかし、あれほど酷いものだったとは……」

宮殿に仕える鑑定師たちが遺骨を精査し、行方不明となっていた少年たちの身元を一つひとつ特定し、親元へ返還する段取りを整えていた。
あまりにも酷く、救いようのない事件ではあったが──せめて祈りの中で埋葬されれば、彼らも安らかに眠れるのかもしれない。

シェリーが幼い少女の頃、家を飛び出して王国へ渡ったのは、海女になるのが嫌だったからではない。
父親により、無理やり船へと押し込まれて送り出されたのだ。

「必ず……生き抜いて、幸せになってくれ。」

泣きながら愛娘を樽に詰め込み、わずかな水と食糧しか持たせることもできぬまま流した父の心中は、いかばかりであったろうか。

スマーザの病状ショタコンが悪化すると、夫である父ですら制御が利かなくなった。
愛娘までもが命を狙われるのではないか──そう思い詰めた末の、苦渋の決断だったのだ。

そして彼女自身もまた、暗黒ショタを身に宿し、狂おしい欲求に身を焦がしながらも──己を滅し、心を鍛え続けた。

その過程で、母のしていたことの意味をすべて理解してしまう。
いつか力を得て父を救い出すために、シェリーは隠密のような危険な仕事を請け負い、実力を磨いていった。

やがて彼女が道を踏み外さず、優秀な諜報員として王国にまで雇われるに至った裏には、セーブルの存在があった。

彼という拠り所で、好きなだけ欲求を発散できたからこそ──一線を越えずに堪え切ることができたのだ。

「だとしてもだYOヨ~
   YOUキミ達の成し遂げたアチーヴドFEAT偉業は、THISコレだけじゃなーい!
   MEぽっくんのバカSON息子がやらかした狂業マッドネスまで──
   止めてくれたプリベンテッドDA!!」

日焼けなのか、もとよりの肌なのかは判然としない。
浅黒く毛深い体に、独特な民族衣装をまとい、
オーバーな身振り手振りで感謝をアピールするオルテメ。

──もしおっさんがここにいたら、きっとこう言ったに違いない。
「アラジンっつーか、オヤビンだな」



EVEN,SOそれにしてもだぜ!?あのタートルSHELL甲羅
   CRUSHED砕いたんだって!?
   とてもじゃないがINCREDIBLE信じられない ってやつDAダッ!!」

オルテメは、その場に居合わせた貴族たちから話を聞き、セーブルの腕や背中に過剰なまでのスキンシップを仕掛けてきた。

あの大展覧室に飾られていた巨大な甲羅──
凄腕の国王オルテメでさえ宝石に加工できず、そのまま飾るしかなかった逸品を。
セーブルは、槍のひと突きで粉々に砕き散らしたのだ。

「それほどでも……」
思慮深く謙虚なセーブルは、自慢めいたことは言えずに言葉を濁す。

だが、その一突きは、ただの一撃ではなかった。

かつて、おっさんに見せられた釘投げの妙技。
四本の釘をほぼ同時に放ち、寸分違わず同じ箇所に命中させ、衝撃を重ねて一撃と化す奥義。
クアロトネイルシュー四重の極みト』。

その技に魅せられたセーブルは、おっさんがワープで姿を消した渡航中の船上で、寝食を忘れて研鑽を重ねた。

そして編み出したのは、一点を十度、刹那のうちに突き抜く攻撃法。

──『永遠の誓い十重の極みエターナルショック灰になるまで愛してる』。

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

天候にも恵まれて、絶好の新築工事日和を迎えた朝。

建築予定地の窪みに辿り着いたおっさんは、困惑していた。

「なんだっぺかねぇ…このゴミみてぇのは…」

今朝はまず、元々は泉だったという、この窪んだ広い土地を、重機でなんとなく凹型に削り取って、鉄筋を組み、庭となる部分を平らにコンクリートで埋めてしまおうと思っていたのだが──

先日行った地鎮祭の跡を見に来てみると、真っ赤に錆びきった巨大な中華鍋……?を、裏返しにしたような物が地面に置いてあったのだ。

四角張ったものではなく、やや楕円のような形状。
ざっと見積もっても畳六枚ほどの大きさはあるだろう。

どうにも、錆びついた中華鍋くらいしか喩えが浮かばない。
試しに足で軽く踏んだり、つま先で蹴ってみたが特に反応はない……魔物という訳でもなさそうだ。

「とりあえず、こんなもんここにあったら邪魔でしょうがねぇ」

程よいサイズのバックホーを腰袋から取り出し、
バケットの爪を引っかけて持ち上げてみると──

「……ははーん、貝け」

裏側も同じように膨らんでおり、大きすぎてまさかと思ったが……
どうやら立派な二枚貝の殻らしい。

片方ずつ浮かせて、下からワイヤーを通し、腰袋から呼び出したレッカー車で巨大な貝殻を吊り上げる。
ゆっくりと振って工事の邪魔にならない地上へと降ろした。

幸い、他に障害となりそうな岩や瓦礫は見当たらない。
これで朝の段取り通りに基礎工事へ取りかかれそうだ。

「地鎮祭んときゃ、あんなもんなかったっぺなぁ? 空からでも降ってきたんけ?」

ぶつぶつと文句を言いながらも、おっさんは手際よく地面を均していく。
そして次は鉄筋組み立てだ。

小指ほどの太さ、長さ五メートルはあろう鉄筋を──おっさんは無造作に手で曲げ、地面へ並べていく。
巻き尺も鉄筋曲げ機も使わず、碁盤の目のように等間隔で、正確に組み立てていった。

もちろん鉄筋は、地上にこれから建てる八角形の建物が乗っかる基礎部分も組み上げる。

そして、生コン車とポンプ圧送車を段取りして、コンクリートを流し込む。

ここまでの作業でも、地上のサマーベッドの上でくつろいでいるように見えるテティスが、魔法で全てを応援してくれている。

長さを切りたい鉄筋を見せれば、プツリと切れ、
足場が悪く、歩きづらい鉄筋の上にも透明な床がある。
流し込みの段階では、おっさんを宙に浮かしてコントロールしてくれるので──

あっという間に土間コンクリートが完成した。

もちろん既に乾燥して固まり、強度も十分に発揮されている。

時計を見れば、午前10時、一服休憩の時間だ。

これから高所作業に入る為、さすがに焼酎はやめておき、ビールで喉を潤した。

みんなは高い所に上がる必要はないので、先日完成した煌めくカクテルを、薄めに作って振る舞った。

彼女達にはゆっくり休んでてもらい、おっさんはいよいよ建てる、正八角形の建築物の外周を、ゆっくりと2週ほど回ってみる。

一片の長さはだいたい8メートル弱、内角は135度づつ。
住宅として見れば、あまりにもデカイ。
床面積は100坪程にもなる。

しかし、今回はこの場所に大勢の客を招いて結婚式を執り行うのだ。
このくらいあっても、コンパクトなもんである。

そんな事を思いつつ振り返れば、屋根の高さまで届く八角形の仮設足場が組み上げっていた。

時折り、薄めの焼酎で喉を湿らせながら、おっさんは鉄筋をどんどん組み上げていく。
型枠はテティス先生の魔法によって、白く曇った結界で形づくられていく。

出入口や窓の開口部、装飾の細工まで──図面すら存在しないこの建築物は、鉄筋と結界だけでもう家の形を成していた。

そして、ここからがメインイベント。
コンクリート一発打ちによる、和風建築の大舞台だ。

「テティス、頼むぞ~。あとで寿司握ってやっからよ。
パステルも、落っことさないでくんちぇなw」

おっさんの身体が、風船のように空へと浮かび上がる。
その“手綱”を握っているのは王女パステリアーナ。

彼女は王家の宝具『鎮魂の首飾り』を手に掲げ、おっさんの背に接続する。
すると──体重七十キロほどもある腹のでっぱった中年が、まるでヘリウムガスを詰め込まれた風船のように、フワフワと宙に舞いはじめた。

おっさんが小脇に抱えているのは、ポンプ圧送車から伸びた長くて太いホース。
ここから大量の生コンクリートが吐き出される。

手を挙げて合図を送ると、トゥエラが生コン車を操作。
ゴウン、と車体が唸りを上げ、ホースに振動とずっしりした重みが伝わってくる。

「よし──入れるぞ! テティス、頼むぞ!」

「あーい!
 鉄筋振動魔法震えてね?
 屋根結界魔法キャパいよ無理み
 部分配色魔法そこ赤じゃね?



本当にみんなのスキルや力を借りまくり、嬉しくてしょうがないおっさんは、顔をニヤけさせながらコンクリートを流し込んでいた。

──そういえば、昼メシを食うのを忘れていた。
アイツら、下でニコニコしてっけど……実は怒ってんじゃあんめーか?
……寿司握って、ラーメンこさえて、ケーキも作ってやっぺか。

モヤモヤと、家族の喜ぶ顔ばかりが頭に浮かぶ。
それでも手元は一切ブレることなく、まだ陽の高いうちに、工事はきっちりと完了した。
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