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第九章
第六十五話
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「WHOAA! 何というTHINGだ!
こんなにBEAUTIFULJEWELSが
この世にEXISTなんて!
俺がUNTIL NOWCRAFTしてきた石は──
THISに比べたら……
DUNGBEETLEの糞……
否! POOP-LIKEPOOPだーー!!」
海の向こうの隣国、カリファールの宮殿では……
国王オルテメがついに最後の宝石の加工を終え、おっさんが作った指輪に嵌め込んだところだった。
食事も摂らず、水すら口にせぬまま、72時間にも及ぶ不眠不休の作業。
その瞳は血走り、指先は震え、もはや正気ではない。
完全なるクラフターズハイの極みに達したオルテメは、雄叫びを上げたまま気を失うように大の字に倒れ込み、深い眠りへと落ちていった──。
宰相を始めとする内務官達の働きにより、今やこの国の英雄となったセーブルとシェリーの結婚披露宴の段取りも、恙無く進行していた。
おっさんが建てた八角形の神社には到底入りきらず、外には広大な広場が設けられた。そこに集まった国民は一千を超え、熱気と歓声、そして嗚咽が入り混じる。
儀式は三部構成で進められる。
まずは貝殻の女神への参拝。
次に、陽気な立食パーティーで生者を祝福し──
そして最後に、天に召された子供達を偲ぶ厳かな弔い。
喜びと悲しみが交錯する、一日限りの国を挙げた祭典が、間もなく幕を開けようとしていた。
➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖
そのイベントの主役となる新郎新婦はといえば──
謎めいた甲冑騎士と、妖艶なクノイチという変装を施し、正体を隠したまま新事業『滑競─KAKKEI』のスケート特別顧問を務めていた。
黒鉄の甲冑は隙間なく体を覆い、声までも魔法で加工しているため、誰ひとり素顔を知らない。
一方、クノイチは紅い面頬で口元を隠し、氷のように冷たい視線だけが覗いていた。
二人の鬼のようなコーチぶりは苛烈そのものだったが、その甲斐あって選手たちの実力は飛躍的に向上した。
刃と氷が激突する甲高い音が響きわたり、人間離れした速度で選手たちが駆け抜ける。
そのスピードは、もはや人が氷の上を滑っているとは思えぬ域──時速150km。
実在する競技に例えるなら、大型バイクが激しく火花を散らす『オートレース』に匹敵するほどである。
こうして特別顧問としての指導を終え、肩の荷を下ろした二人。
次に彼らを待ち受けているのは、国中が見守る自らの結婚披露宴であった。
おっさんに電話連絡をし、依頼の遂行を報告したセーブルは、ワープによる迎えで、皆の待つ自宅へと帰り着いた。
「セー兄おっか~☆彡 いよいよジャン!?結婚パーリー?ガチリア充じゃんそれぇぇ!」
テティスが全力のギャルテンションで駆け寄り、セーブルの腕に飛びつく。
「セー君、おめでとうございます。幼い頃から私を守って頂いた貴方の結婚──
心から祝福しますわ」
パステルは穏やかな微笑みを浮かべ、丁寧に深くお辞儀をする。
「メシも酒もたっぷり用意したし、明日はおめ達が主役なんだ。胸張って祝って貰ちゃったらいいべ?」
それぞれの祝福の形が重なり、セーブルは胸の奥からじんわりと熱いものがこみ上げてくるのを感じていた──。
➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖
携帯電話の向こうから、唾が飛んできそうな勢いで捲し立ててきた国王。
あれ程の大事業を完遂させておいて、報告することすら忘れていたおっさんは──
「あぁ、んだ。そうそう、ウナギ倒すついでにトンネル掘ったんだっけー」
と、まるで定食にもう一品つけたようなノリで、事後報告をさらりと済ませてしまう。
「んな事より、明日セーブル達の披露宴だっぺよ?
準備出来てるんけ?」
などと、いまだ旅先から戻れていない国王夫妻を逆に急かす始末であった。
リリが王都から渓谷までをわずか一時間で爆走できるのは、
自身のスキルによる運転技術と、リニアモーターカー並の性能に魔法改造されたミニクーパーのお陰。
それに比べて──
騎士アルディスの運転するただの軽バンでは、帰還予定日すら読めないという有様であった。
「仕方ありませんわ、私がお迎えにあがって参りますわね」
パステルが一歩進み出て、優雅に指先を翻す。
その瞬間、空間に光り輝く草花のトンネルが展開され、甘やかな花の香りが辺りを包み込んだ。
「ああ、んだわ……パステル、ちょっといいけ?」
ワープトンネルに飛び込もうとした王女に、おっさんは耳打ちするように小声で頼み事をした。
その瞬間、パステルはぱぁっと満面の笑みを浮かべ──
「お任せ下さいませ!では、支度を整えて明日の朝こちらに参りますわ」
と、くるりと振り返り、リリの手を容赦なくガシィッと掴む。
「な、な、なんでしょうか!?パステリアーナ様!?
ア~~~~~レ~~~~~!!」
全く状況を理解できないリリは、目を白黒させながらも引きずられ、
華やかな異空間ゲートへと無情に攫われていくのであった。
こんなにBEAUTIFULJEWELSが
この世にEXISTなんて!
俺がUNTIL NOWCRAFTしてきた石は──
THISに比べたら……
DUNGBEETLEの糞……
否! POOP-LIKEPOOPだーー!!」
海の向こうの隣国、カリファールの宮殿では……
国王オルテメがついに最後の宝石の加工を終え、おっさんが作った指輪に嵌め込んだところだった。
食事も摂らず、水すら口にせぬまま、72時間にも及ぶ不眠不休の作業。
その瞳は血走り、指先は震え、もはや正気ではない。
完全なるクラフターズハイの極みに達したオルテメは、雄叫びを上げたまま気を失うように大の字に倒れ込み、深い眠りへと落ちていった──。
宰相を始めとする内務官達の働きにより、今やこの国の英雄となったセーブルとシェリーの結婚披露宴の段取りも、恙無く進行していた。
おっさんが建てた八角形の神社には到底入りきらず、外には広大な広場が設けられた。そこに集まった国民は一千を超え、熱気と歓声、そして嗚咽が入り混じる。
儀式は三部構成で進められる。
まずは貝殻の女神への参拝。
次に、陽気な立食パーティーで生者を祝福し──
そして最後に、天に召された子供達を偲ぶ厳かな弔い。
喜びと悲しみが交錯する、一日限りの国を挙げた祭典が、間もなく幕を開けようとしていた。
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そのイベントの主役となる新郎新婦はといえば──
謎めいた甲冑騎士と、妖艶なクノイチという変装を施し、正体を隠したまま新事業『滑競─KAKKEI』のスケート特別顧問を務めていた。
黒鉄の甲冑は隙間なく体を覆い、声までも魔法で加工しているため、誰ひとり素顔を知らない。
一方、クノイチは紅い面頬で口元を隠し、氷のように冷たい視線だけが覗いていた。
二人の鬼のようなコーチぶりは苛烈そのものだったが、その甲斐あって選手たちの実力は飛躍的に向上した。
刃と氷が激突する甲高い音が響きわたり、人間離れした速度で選手たちが駆け抜ける。
そのスピードは、もはや人が氷の上を滑っているとは思えぬ域──時速150km。
実在する競技に例えるなら、大型バイクが激しく火花を散らす『オートレース』に匹敵するほどである。
こうして特別顧問としての指導を終え、肩の荷を下ろした二人。
次に彼らを待ち受けているのは、国中が見守る自らの結婚披露宴であった。
おっさんに電話連絡をし、依頼の遂行を報告したセーブルは、ワープによる迎えで、皆の待つ自宅へと帰り着いた。
「セー兄おっか~☆彡 いよいよジャン!?結婚パーリー?ガチリア充じゃんそれぇぇ!」
テティスが全力のギャルテンションで駆け寄り、セーブルの腕に飛びつく。
「セー君、おめでとうございます。幼い頃から私を守って頂いた貴方の結婚──
心から祝福しますわ」
パステルは穏やかな微笑みを浮かべ、丁寧に深くお辞儀をする。
「メシも酒もたっぷり用意したし、明日はおめ達が主役なんだ。胸張って祝って貰ちゃったらいいべ?」
それぞれの祝福の形が重なり、セーブルは胸の奥からじんわりと熱いものがこみ上げてくるのを感じていた──。
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携帯電話の向こうから、唾が飛んできそうな勢いで捲し立ててきた国王。
あれ程の大事業を完遂させておいて、報告することすら忘れていたおっさんは──
「あぁ、んだ。そうそう、ウナギ倒すついでにトンネル掘ったんだっけー」
と、まるで定食にもう一品つけたようなノリで、事後報告をさらりと済ませてしまう。
「んな事より、明日セーブル達の披露宴だっぺよ?
準備出来てるんけ?」
などと、いまだ旅先から戻れていない国王夫妻を逆に急かす始末であった。
リリが王都から渓谷までをわずか一時間で爆走できるのは、
自身のスキルによる運転技術と、リニアモーターカー並の性能に魔法改造されたミニクーパーのお陰。
それに比べて──
騎士アルディスの運転するただの軽バンでは、帰還予定日すら読めないという有様であった。
「仕方ありませんわ、私がお迎えにあがって参りますわね」
パステルが一歩進み出て、優雅に指先を翻す。
その瞬間、空間に光り輝く草花のトンネルが展開され、甘やかな花の香りが辺りを包み込んだ。
「ああ、んだわ……パステル、ちょっといいけ?」
ワープトンネルに飛び込もうとした王女に、おっさんは耳打ちするように小声で頼み事をした。
その瞬間、パステルはぱぁっと満面の笑みを浮かべ──
「お任せ下さいませ!では、支度を整えて明日の朝こちらに参りますわ」
と、くるりと振り返り、リリの手を容赦なくガシィッと掴む。
「な、な、なんでしょうか!?パステリアーナ様!?
ア~~~~~レ~~~~~!!」
全く状況を理解できないリリは、目を白黒させながらも引きずられ、
華やかな異空間ゲートへと無情に攫われていくのであった。
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