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第九章
第六十六話
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天高く晴れ渡り、雲ひとつない秋の空。
乾いた涼しい風が、砂と荒地の大地を優しく撫でていく。
おっさんの新築した正八角形の純和風建築には、朝から大勢の民衆が集まり、参拝の列を作っていた。
子どもを肩車する親の姿もちらほら見え、広場は期待と熱気に包まれている。
カリファール王国の精鋭騎士たちも、普段は倉庫に脱ぎ捨ててある全身甲冑を秀麗に装着し、一糸乱れぬ行進と演舞で、このめでたき日を盛り上げる。
八角堂の大扉からは毛足の長い赤絨毯がまっすぐに伸び、その周囲には立食用の丸テーブルが整然と並べられていた。
和と西洋が混ざり合った光景はアンバランスながらも、不思議と華やかさに満ちている。
広場に停められたバスの中には、どこか見覚えのある執務机が一つ。
その上で金色の光を放ちながら浮遊しているのは、リゾートホテル『サンクチュアリィ』のダンジョンコア──『サンちゃん』である。
その瞬間、立食テーブルの上に突如として豪華な料理が現れた。
黄金色に輝くローストチキン、宝石のようなサラダ、キンキンに冷えた酒瓶の数々……
栓はすでに抜かれ、あとは乾杯を待つばかりであった。
おっさんに習った作法──『二礼、二拍手、一礼』。
二国の王が並び立ち、ゆっくりと頭を垂れる。
見よう見まねで手を合わせ、女神が住まう巨大な貝殻に祈りを捧げた。
参拝を終えた二人は、そのまま本殿の前に進み出て、民衆に向けて声を張り上げた。
「本日、我らが国にとって、この上なくめでたい日である!」
片方は荘厳な声音で、もう片方は妙に英単語を織り交ぜた奇妙な口調で……
それぞれが祝辞を述べ始めると、広場は期待と笑いに包まれていった。
宮殿から送迎されてきた、絢爛豪華な竜車がゆっくりと停まる。
その車体はまるで宝石箱のように輝き、竜の吐息が白い霧となって舞い散った。
扉が開かれ、ざわめきが広場を満たす。
今日の主役──新郎と新婦が、ついに姿を現した。
漆黒の儀礼用甲冑を纏い、真紅のマントを大きく翻したセーブルが、まずは堂々と竜車から降り立つ。
ほんのわずかに頬を緩め、少し照れくさそうに差し出したその手は、剣を握るためではなく、愛する者を導くためのものだった。
続いて──
淡い藤色のウェディングドレスに身を包み、煌めく宝石を散りばめた凛然たる美貌の花嫁シェリーが、その手を頼りに、優雅にステップを踏み降りる。
戦場では何百人の敵をも圧倒する化け物夫妻。
だが、この時ばかりは剛毅さを隠し、王都の民衆を魅了する優美な舞踏のような一幕となった。
二人が赤絨毯を歩き始めると、開いたままの竜車の扉から──
もう一組の男女が姿を現す。
あまりにも壮麗で絵画のようなセーブル夫妻の後という事もあり、否応なく視線が集まるその先にいたのは──
低身長、短足のおっさん。
今となっては死語でもある『ペンギン』と呼ばれる、背裾の割れた、やや古めかしい紳士服を身に纏い、ぎこちなくステップを踏んで降りてきた。
セーブルの真似をして、花嫁の手を握り、純白のウェディングドレスに、金縁の眼鏡が似合うリリを地面へと降ろす。
普段のようなガニ股にならぬ様に気を配り、リリのペースに合わせてもっさりと歩を進める。
出迎えた王達の前で膝をついて頭を垂れるセーブルと、華やかなカーテシーで微笑むシェリー。
二人の間を抜けて神殿へ入り、拝礼を済ませる。
用意された、新郎新婦のテーブルへと案内されて席へと着く。
一回り大きいそのテーブルには、パステリアーナ王女を始めとし、トゥエラ、テティスも座っている。
おっさんとリリも、拝礼を済ませてやって来る。
セーブルとシェリーが席に着いたタイミングで、拍手と歓声が会場に大きく沸き起こる。
広場を包むその熱気は、戦場の鬨の声にも似ていたが、ここにあるのは戦いではなく祝福の喜びだった。
二人のすぐ横には、色鮮やかな装飾が施された椅子が並び、
王族席として、パステリアーナ王女、トゥエラ、テティスの三人が優雅に腰掛けている。
パステルは王女らしい落ち着いた所作で会釈をし、トゥエラは浮き立つように身を乗り出して手を振り、
テティスはギャルネイルをキラキラ光らせながら
「ガチ尊いんですケド?☆」と目を輝かせていた。
おっさんとリリは、赤絨毯を通り抜けて神殿内に入り、
深く一礼してから王族席の隣に設けられた席へと案内される。
「……おめでとう、セーブル、シェリー」
おっさんが短く、それでいて力強く祝辞を述べると、
セーブルは照れくさそうに、しかし誇らしげに胸を張り、
シェリーは微笑みながらも目元を潤ませて深く頭を下げた。
その瞬間、会場全体がふわりと温かい空気に包まれた。
これはただの披露宴ではなく、二つの国を繋ぎ、新しい未来を告げる儀式なのだと──
誰もが実感するひとときであった。
オルテメ国王が立ち上がり、宝石のようにきらめくグラスを高々と掲げた。
「HEY!皆!聞け!
本日ここに集った全員に、超感謝を贈るんJAN!!」
彼特有の英語まじりの号令が、広場の隅々まで響き渡る。
続けて国王はグラスを掲げたまま、まるでバンドのボーカルのように力強く叫んだ。
「セーブル!シェリー!
そして──DUKE~と~リリィ!
お前たちの未来に……
幸運とGLORIOUSを!!
さぁ、乾杯だっCHUUUNO!!」
――カァァァァン!!
オルテメの号令と共に無数のグラスが一斉に鳴り響き、
辺りはまるでライブ会場さながらの熱気と喝采に包まれた。
人々は立ち上がり、音楽が鳴り、歓声と拍手が夜空へと突き抜けていく。
祝宴はここから、まさにクライマックスへと突入していくのだった。
➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖
そして時間軸は、
「ア~~~~~レ~~~~~!!」
の直後まで遡る。
乾いた涼しい風が、砂と荒地の大地を優しく撫でていく。
おっさんの新築した正八角形の純和風建築には、朝から大勢の民衆が集まり、参拝の列を作っていた。
子どもを肩車する親の姿もちらほら見え、広場は期待と熱気に包まれている。
カリファール王国の精鋭騎士たちも、普段は倉庫に脱ぎ捨ててある全身甲冑を秀麗に装着し、一糸乱れぬ行進と演舞で、このめでたき日を盛り上げる。
八角堂の大扉からは毛足の長い赤絨毯がまっすぐに伸び、その周囲には立食用の丸テーブルが整然と並べられていた。
和と西洋が混ざり合った光景はアンバランスながらも、不思議と華やかさに満ちている。
広場に停められたバスの中には、どこか見覚えのある執務机が一つ。
その上で金色の光を放ちながら浮遊しているのは、リゾートホテル『サンクチュアリィ』のダンジョンコア──『サンちゃん』である。
その瞬間、立食テーブルの上に突如として豪華な料理が現れた。
黄金色に輝くローストチキン、宝石のようなサラダ、キンキンに冷えた酒瓶の数々……
栓はすでに抜かれ、あとは乾杯を待つばかりであった。
おっさんに習った作法──『二礼、二拍手、一礼』。
二国の王が並び立ち、ゆっくりと頭を垂れる。
見よう見まねで手を合わせ、女神が住まう巨大な貝殻に祈りを捧げた。
参拝を終えた二人は、そのまま本殿の前に進み出て、民衆に向けて声を張り上げた。
「本日、我らが国にとって、この上なくめでたい日である!」
片方は荘厳な声音で、もう片方は妙に英単語を織り交ぜた奇妙な口調で……
それぞれが祝辞を述べ始めると、広場は期待と笑いに包まれていった。
宮殿から送迎されてきた、絢爛豪華な竜車がゆっくりと停まる。
その車体はまるで宝石箱のように輝き、竜の吐息が白い霧となって舞い散った。
扉が開かれ、ざわめきが広場を満たす。
今日の主役──新郎と新婦が、ついに姿を現した。
漆黒の儀礼用甲冑を纏い、真紅のマントを大きく翻したセーブルが、まずは堂々と竜車から降り立つ。
ほんのわずかに頬を緩め、少し照れくさそうに差し出したその手は、剣を握るためではなく、愛する者を導くためのものだった。
続いて──
淡い藤色のウェディングドレスに身を包み、煌めく宝石を散りばめた凛然たる美貌の花嫁シェリーが、その手を頼りに、優雅にステップを踏み降りる。
戦場では何百人の敵をも圧倒する化け物夫妻。
だが、この時ばかりは剛毅さを隠し、王都の民衆を魅了する優美な舞踏のような一幕となった。
二人が赤絨毯を歩き始めると、開いたままの竜車の扉から──
もう一組の男女が姿を現す。
あまりにも壮麗で絵画のようなセーブル夫妻の後という事もあり、否応なく視線が集まるその先にいたのは──
低身長、短足のおっさん。
今となっては死語でもある『ペンギン』と呼ばれる、背裾の割れた、やや古めかしい紳士服を身に纏い、ぎこちなくステップを踏んで降りてきた。
セーブルの真似をして、花嫁の手を握り、純白のウェディングドレスに、金縁の眼鏡が似合うリリを地面へと降ろす。
普段のようなガニ股にならぬ様に気を配り、リリのペースに合わせてもっさりと歩を進める。
出迎えた王達の前で膝をついて頭を垂れるセーブルと、華やかなカーテシーで微笑むシェリー。
二人の間を抜けて神殿へ入り、拝礼を済ませる。
用意された、新郎新婦のテーブルへと案内されて席へと着く。
一回り大きいそのテーブルには、パステリアーナ王女を始めとし、トゥエラ、テティスも座っている。
おっさんとリリも、拝礼を済ませてやって来る。
セーブルとシェリーが席に着いたタイミングで、拍手と歓声が会場に大きく沸き起こる。
広場を包むその熱気は、戦場の鬨の声にも似ていたが、ここにあるのは戦いではなく祝福の喜びだった。
二人のすぐ横には、色鮮やかな装飾が施された椅子が並び、
王族席として、パステリアーナ王女、トゥエラ、テティスの三人が優雅に腰掛けている。
パステルは王女らしい落ち着いた所作で会釈をし、トゥエラは浮き立つように身を乗り出して手を振り、
テティスはギャルネイルをキラキラ光らせながら
「ガチ尊いんですケド?☆」と目を輝かせていた。
おっさんとリリは、赤絨毯を通り抜けて神殿内に入り、
深く一礼してから王族席の隣に設けられた席へと案内される。
「……おめでとう、セーブル、シェリー」
おっさんが短く、それでいて力強く祝辞を述べると、
セーブルは照れくさそうに、しかし誇らしげに胸を張り、
シェリーは微笑みながらも目元を潤ませて深く頭を下げた。
その瞬間、会場全体がふわりと温かい空気に包まれた。
これはただの披露宴ではなく、二つの国を繋ぎ、新しい未来を告げる儀式なのだと──
誰もが実感するひとときであった。
オルテメ国王が立ち上がり、宝石のようにきらめくグラスを高々と掲げた。
「HEY!皆!聞け!
本日ここに集った全員に、超感謝を贈るんJAN!!」
彼特有の英語まじりの号令が、広場の隅々まで響き渡る。
続けて国王はグラスを掲げたまま、まるでバンドのボーカルのように力強く叫んだ。
「セーブル!シェリー!
そして──DUKE~と~リリィ!
お前たちの未来に……
幸運とGLORIOUSを!!
さぁ、乾杯だっCHUUUNO!!」
――カァァァァン!!
オルテメの号令と共に無数のグラスが一斉に鳴り響き、
辺りはまるでライブ会場さながらの熱気と喝采に包まれた。
人々は立ち上がり、音楽が鳴り、歓声と拍手が夜空へと突き抜けていく。
祝宴はここから、まさにクライマックスへと突入していくのだった。
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そして時間軸は、
「ア~~~~~レ~~~~~!!」
の直後まで遡る。
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