DIYと異世界建築生活〜ギャル娘たちとパパの腰袋チート

みーくん

文字の大きさ
15 / 279
第一章

第十五話

しおりを挟む
モーニングを済ませたら、今日もピクニックだ。
その前にムカデの解体を済ませ、
1キロ単位のブロック肉に分けて冷凍していく。
数えてみれば、合計で200個。
──生涯分の甘海老なのではないだろうか。

プレハブも片付け、トゥエラを先頭に歩き始めると……

のそのそと、後ろからジャガーが付いてくる。
「なんだ? まだ足りねえんけ?」
と声をかけるも、ツンとそっぽを向き、
数多い脚で器用に顎を掻いている。

まぁいいか、とうっちゃってほっといて歩き出す。

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

それからどのくらい歩いたか…
しばらくは我慢して、
トゥエラのあとを追っていたのだが、

悪意を感じる鬱蒼とした景色に…

イラっときた。

めんごいから可愛いからこっちゃさこぅこっちおいで

と、トゥエラを天ぐるまっこ肩車してやり…

ずねーデカい木、どこさあるんでぇ?」

と森を睨むと…

ザ…ザザ…ズザザザザザザザザ!

森が割れた。

いや…なんというか…

おっさん、モーゼじゃないんだが。

地平線が見えるほど良くなった視界に、

その遥か向こうに、

空高く聳える。
『木』 があった。

これは……
遥か昔、父親に連れられて見た。
横浜ランドマークタワー。

地面から見上げても先が霞むような、
あのビルを思わせる高さと存在感。

「……ずねーんで随分と大きいんじゃねんでねえのありませんか?……」

思わず口から漏れたのは、半分ため息、半分呆れ。

目の前の巨木は、
まるでこの森の王様のように静かに、
だが絶対的な存在感を放っていた。
その根元には、異様なほど巨大なうろ。
洞窟でもなく、谷でもなく──『木のうろ』だ。

黒くぽっかりと開いたその穴は、
光さえ飲み込んでしまうほど深く、底が見えない。
まるで、森の心臓へと繋がっているかのようだ。

おっさんは、いつもの現場仕事の延長で、
つい「足場組めるべか?」などと頭を巡らせたが……
「いやいや、そういう話じゃねーべ」
と自分でツッコミを入れる。

その隣では、
トゥエラがきゃっきゃと飛び跳ねながら、

「おーきーきあったー!」

無邪気に叫ぶ。
怖さなんてカケラも無いようだ。

「……ちょっと、入ってみっか……」

心のどこかで「やめとけ」と誰かが囁いたが、
もう手遅れだった。

おっさんはトゥエラの頭をポンと叩き、

「いぐべ、おめー先さ行くなよー?」

と軽口を叩きながら、
腰袋から懐中電灯と安全ヘルメットを取り出す。

目の前には、
見上げるだけで胃がキュッとなるような、
暗く深い未知の世界。
森の空気が、さっきまでより少しだけ冷たく感じた。

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

後ろを振り返ると、
ジャガーは丸くなってゴロンと寝転がっていた。
この巨大なうろには、まるで興味がないらしい。
まぁ猫は、暗くて狭いところが好きそうでいて、
時々まったく逆のことをする。

「時間かかるかもだべしな」

そう呟くと、
おっさんは洗面器いっぱいのカリカリを置いてやった。
これで文句はないだろう。

まずは安全確認だ。
腰袋から鉄釘を一本取り出し、
ダーツの要領で、暗闇の中にシュン!と投げ込む。

──カキン!

硬質な反響音が戻ってくる。

何も起こらない。
よし、大丈夫だべ。

おっさんは娘の小さな手をギュッと握り、
恐る恐るうろの中へと足を踏み入れる。

……その瞬間。

視界がぐにゃりと歪み、
地面が消えるような感覚に襲われた。

まるで高速エレベーターに乗った時のような、
あのふわりとした浮遊感。

「あっ……これヤベーやつか?」

言葉にする暇もなく、
二人の身体は闇に飲み込まれた。


娘の細い腕をぐいと引き寄せ、
おっさんは現場仕込みの反射で身構える。

──数秒間の、暗転。

……そして、唐突に差し込む眩い光。
目が慣れる間もなく、
視界一面に、果てしない空が広がっていた。

あんちゅーだっぺ何と言う事でしょう……」

呆けた声が漏れる。

そこは、巨木の頂上付近。
信じがたい高さから見下ろす、緑の絨毯。
遥か遠く、かすかに湾曲した地平線が見える。

この森は、間違いなく一つの大陸であり、
この世界は、間違いなく──惑星だった。

ほんの数秒前まで、
地べたでうろうろしていたおっさんたちは、
今や、天空に突き刺さる塔のてっぺんに立っていた。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

異世界は流されるままに

椎井瑛弥
ファンタジー
 貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。  日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。  しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。  これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。

転生したら王族だった

みみっく
ファンタジー
異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。 レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……

処理中です...