38 / 279
第三章
第一話
しおりを挟む
樹海に帰ってきて幾ばくかの日々が過ぎた。
魚貝も最高だったが、肉もやっぱ美味いな。
娘たちとテーブルを囲み、食事に花が咲く。
海にいた頃は夏だったのだろうか?
異世界に四季があるのかどうかもわからんが。
樹海を見下ろしのんびり過ごす日々も…
…少し飽きてきた。
「地上500メートルにログハウスを建てた話したっけか?」
誰に語りかけているのかわからないが、
森に帰還した頃を思い出していた。
➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖
港町からダンプを爆走させ森まで帰って来ると、
懐かしい狼や鳥やらの化け物達が出迎えてくれた。
どうゆう訳か、みーちゃんは見かけないが。
片っ端から肉と魔石を補充した。
薄々解ってはいたのだが、
俺の腰袋から出る道具や資材、消耗品などは、
どうやら地球で使っていた頃とは何かが違うようだ。
普通に考えて、恐ろしいドラゴンの口をサポートで支えられるわけもないし、
あんな馬鹿でかい鳥を釘打ち機で撃ち落とせるわけがない。
「だいたい何百メートルも梯子が伸びる時点で…」
あの頃は生きるだけで必死だったので、
あまり違和感もなかった。
最初に建てた、樹木を水平に切った上の小屋に戻って来ると…
モンスターハウスになっていた。
縄張り争いでもあったのか、
血で血を洗ったようなスプラッターハウス。
勝者がのさばる小屋と、
屍が積み上がった地上。
「こりゃもう住めねーな」
チラリと内部を覗くと部屋目一杯の大きさのニワトリのような化け物がいた。
うっはぁ…美味そうな鳥だなぁ……
しかし
俺は考えた。
卵料理も食いたいよね。
なのでとっておきのドラゴンの肉を鶏に献上してやり、
「たまに卵よこせよ」と説得しておいた。
足元にあった軽自動車くらいの卵を譲ってもらい、
たくさんの密閉容器に小分けし冷蔵庫へ仕舞い…
また樹海を彷徨い始める。
トゥエラとテティスも機嫌良く歩いている。
繋げて呼ぶと、舌を噛みそうになる娘達だ。
トゥエラのナイフは整備してやったが、一回り小さくなってしまった。
テティスは…いつも無表情でつまらなそうにも見えるが、そうではなく顔に出ないだけだった。
毎日が踊りたくなるほど楽しいらしい。
特技を尋ねると、弓が得意らしい。
見せて貰うと、ショットガンのような弾幕を一度の発射で放っていた。
神殿時代、空き缶を並べて遊んでいたらしい。
「寝る場所探さなきゃなぁー」
良さそうなエリアはないか考えると、以前この樹海を見渡した巨木が見えてきた。
「ここに登れば、良さげなとこ見つかるかもな」
相変わらずぽっかりと空いたウロに、三人手を繋ぎ入ってみると…
地上500メートル。
──森のてっぺんからの風景は、まさに壮観だった。
朝靄に包まれた緑の海がどこまでも広がり、雲の切れ間から差す斜光が、森の表面にゆらめく模様を描いている。
その先──遥か彼方の地平線付近に、かすかに白い点がいくつか見える。
「……あれ、港町か?」
確信は持てない。けれど、見える気がする。
風の音だけが響く静かな空間で、俺はしばらく立ち尽くしていた。
その視線の先には、自らが築いた“島”と、笑顔が戻った人々の記憶が──たしかに在った。
「うーん住みやすそうなエリア…」
腰袋から取り出した双眼鏡を覗き込み、周囲の樹海を見渡す。
だが、どこを見ても──
鬼。虫。牛。鳥。ワニ。その他分類不能な連中が、木々をなぎ倒しながら好き放題に暴れている。
「……あっちもこっちも化け物だらけだなぁ。」
安全、日当たり、見晴らし、──そんな条件をすべて満たす場所など、そう簡単には見つからない。
「……って、もうここでいいんじゃね?」
そう、今この立っている場所が、何より理想的だった。
高い。広い。静か。しかも、安全。
「決まりだな──作業開始だっぺ!」
娘たちを張り出した枝に避難させると、腰袋からチェーンソーを引き抜いた。
「ギュウィィィィィィィィィィィン!!!」
振動が手に伝わる。
ここで標高はおよそ500メートル──だが、巨木の頂上まではまだ先がある。
幹はさらに天を目指し、堂々とそびえ立っていた。
俺はさらに上へと登りながら、適度な長さ(約4メートル)で、枝や幹を切断していく。
これらは後の柱材や梁に活用する予定だ。
そして徐々に降下しながら、
「このへんだな」と目星をつけた“ちょうど良さそうな太さと高さ”にたどり着く。
「よーし、土地づくりからだな──!」
伐った部分を均し、フラットな足場を整地していく。
この日から始まるのは、樹上500メートル、ログハウス建築だった
魚貝も最高だったが、肉もやっぱ美味いな。
娘たちとテーブルを囲み、食事に花が咲く。
海にいた頃は夏だったのだろうか?
異世界に四季があるのかどうかもわからんが。
樹海を見下ろしのんびり過ごす日々も…
…少し飽きてきた。
「地上500メートルにログハウスを建てた話したっけか?」
誰に語りかけているのかわからないが、
森に帰還した頃を思い出していた。
➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖
港町からダンプを爆走させ森まで帰って来ると、
懐かしい狼や鳥やらの化け物達が出迎えてくれた。
どうゆう訳か、みーちゃんは見かけないが。
片っ端から肉と魔石を補充した。
薄々解ってはいたのだが、
俺の腰袋から出る道具や資材、消耗品などは、
どうやら地球で使っていた頃とは何かが違うようだ。
普通に考えて、恐ろしいドラゴンの口をサポートで支えられるわけもないし、
あんな馬鹿でかい鳥を釘打ち機で撃ち落とせるわけがない。
「だいたい何百メートルも梯子が伸びる時点で…」
あの頃は生きるだけで必死だったので、
あまり違和感もなかった。
最初に建てた、樹木を水平に切った上の小屋に戻って来ると…
モンスターハウスになっていた。
縄張り争いでもあったのか、
血で血を洗ったようなスプラッターハウス。
勝者がのさばる小屋と、
屍が積み上がった地上。
「こりゃもう住めねーな」
チラリと内部を覗くと部屋目一杯の大きさのニワトリのような化け物がいた。
うっはぁ…美味そうな鳥だなぁ……
しかし
俺は考えた。
卵料理も食いたいよね。
なのでとっておきのドラゴンの肉を鶏に献上してやり、
「たまに卵よこせよ」と説得しておいた。
足元にあった軽自動車くらいの卵を譲ってもらい、
たくさんの密閉容器に小分けし冷蔵庫へ仕舞い…
また樹海を彷徨い始める。
トゥエラとテティスも機嫌良く歩いている。
繋げて呼ぶと、舌を噛みそうになる娘達だ。
トゥエラのナイフは整備してやったが、一回り小さくなってしまった。
テティスは…いつも無表情でつまらなそうにも見えるが、そうではなく顔に出ないだけだった。
毎日が踊りたくなるほど楽しいらしい。
特技を尋ねると、弓が得意らしい。
見せて貰うと、ショットガンのような弾幕を一度の発射で放っていた。
神殿時代、空き缶を並べて遊んでいたらしい。
「寝る場所探さなきゃなぁー」
良さそうなエリアはないか考えると、以前この樹海を見渡した巨木が見えてきた。
「ここに登れば、良さげなとこ見つかるかもな」
相変わらずぽっかりと空いたウロに、三人手を繋ぎ入ってみると…
地上500メートル。
──森のてっぺんからの風景は、まさに壮観だった。
朝靄に包まれた緑の海がどこまでも広がり、雲の切れ間から差す斜光が、森の表面にゆらめく模様を描いている。
その先──遥か彼方の地平線付近に、かすかに白い点がいくつか見える。
「……あれ、港町か?」
確信は持てない。けれど、見える気がする。
風の音だけが響く静かな空間で、俺はしばらく立ち尽くしていた。
その視線の先には、自らが築いた“島”と、笑顔が戻った人々の記憶が──たしかに在った。
「うーん住みやすそうなエリア…」
腰袋から取り出した双眼鏡を覗き込み、周囲の樹海を見渡す。
だが、どこを見ても──
鬼。虫。牛。鳥。ワニ。その他分類不能な連中が、木々をなぎ倒しながら好き放題に暴れている。
「……あっちもこっちも化け物だらけだなぁ。」
安全、日当たり、見晴らし、──そんな条件をすべて満たす場所など、そう簡単には見つからない。
「……って、もうここでいいんじゃね?」
そう、今この立っている場所が、何より理想的だった。
高い。広い。静か。しかも、安全。
「決まりだな──作業開始だっぺ!」
娘たちを張り出した枝に避難させると、腰袋からチェーンソーを引き抜いた。
「ギュウィィィィィィィィィィィン!!!」
振動が手に伝わる。
ここで標高はおよそ500メートル──だが、巨木の頂上まではまだ先がある。
幹はさらに天を目指し、堂々とそびえ立っていた。
俺はさらに上へと登りながら、適度な長さ(約4メートル)で、枝や幹を切断していく。
これらは後の柱材や梁に活用する予定だ。
そして徐々に降下しながら、
「このへんだな」と目星をつけた“ちょうど良さそうな太さと高さ”にたどり着く。
「よーし、土地づくりからだな──!」
伐った部分を均し、フラットな足場を整地していく。
この日から始まるのは、樹上500メートル、ログハウス建築だった
55
あなたにおすすめの小説
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
底辺から始まった俺の異世界冒険物語!
ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。
しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。
おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。
漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。
この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――
天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生
西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。
彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。
精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。
晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。
死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。
「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」
晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。
この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。
ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。
少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。
更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。
そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。
少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。
どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。
少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。
冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。
すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く…
果たして、その可能性とは⁉
HOTランキングは、最高は2位でした。
皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°.
でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )
氷河期世代のおじさん異世界に降り立つ!
本条蒼依
ファンタジー
氷河期世代の大野将臣(おおのまさおみ)は昭和から令和の時代を細々と生きていた。しかし、工場でいつも一人残業を頑張っていたがとうとう過労死でこの世を去る。
死んだ大野将臣は、真っ白な空間を彷徨い神様と会い、その神様の世界に誘われ色々なチート能力を貰い異世界に降り立つ。
大野将臣は異世界シンアースで将臣の将の字を取りショウと名乗る。そして、その能力の錬金術を使い今度の人生は組織や権力者の言いなりにならず、ある時は権力者に立ち向かい、又ある時は闇ギルド五竜(ウーロン)に立ち向かい、そして、神様が護衛としてつけてくれたホムンクルスを最強の戦士に成長させ、昭和の堅物オジサンが自分の人生を楽しむ物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる