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第四章
第三話
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「jskgcbうぃwっk…」
「たまごおいしーだって」
トゥエラの通訳が飛んでくる。
昨夜のおでんの残り汁に…
適当に鶏肉と菜っ葉を入れ、
とき卵をぐるぐるかき回したうどんは──
見た目はまぁ雑だが、これが驚くほどうまい。
テティスは、箸を止める暇もなく口に運んでいる。
トゥエラはフォークでもきゅもきゅと。
ふたりとも、頬っぺたが落ちそうな顔をしている。
おっさんは、ふと思った。
──言葉が通じないなら、筆談って手もあるんじゃね?
現場用の小さな黒板をゴソゴソと取り出し、
「あいうえお」と白チョークで書いて、テティスに見せてみる。
すると──
「AIUEO~」
キュピーン!と目を輝かせ、口に出して読んだではないか!
「すげぇなお前、読めるのか?」
思わず身を乗り出して尋ねると…
「いlりwbcか…」
「まほーがつかえればめるみたいよー」
トゥエラがまた訳してくれた。
ふむふむ。
つまり──
書いてある“意味”は理解できる。
でも、正確に“日本語で喋る”のは、まだ難しい。
そういうことか。
【読解:○ 会話:△】って感じだな。
「すごいんでねーの?テティス!その調子だぞ!」
頭を撫でてやると、テティスは鼻を隠しながら、もじもじしていた。
外はまだ一面の雪景色。
けれど、こうして小さな成長があるだけで──
この冬ごもりにも、ちゃんと意味があったんだなぁと思えた。
➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖
ある日のトゥエラは…
目に涙を溜めていた。
南のほうを凝視し
「しれん」
とか言ってた。
「雪溶けたらな、つれてってやるからよ」
俺はピンクの頭を撫でてやる。
ある日の出来事だ。
➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖
またある日。
「そういやオーブン、全然使ってねーじゃん」
ふと思い立ち、キッチンに様子を見に行った。
暖炉とは違い、普通の──地球産耐火煉瓦で四角く組み上げただけの釜だ。
試運転はしたことある。問題なく使えるはず。
「生地からだっぺね」
ボウルに粉末魔石、花の怪物、粒魔石を入れ、水をちょっと加えてコネコネ。
さらに破砕魔石、搾り魔石、漉し魔石も混ぜ、ぐいぐいこねた。
伸びるくらいまで生地がまとまったら、冷蔵庫で寝かせる。
「…で、こちらに12時間寝かせた物が御座います」
倍ほど膨れた生地を取り出し、ガスを抜き、プチっと分割して薄く丸く伸ばす。
耐熱皿に一枚ずつ置き……気がつけば10枚。
「足りるのか、これ?」
その間にトマトソースも作る。
玉ねぎのみじん切りをオリーブオイルで炒め、トマトをぶち込み、
ガーリックパウダー、塩、ソース、ケチャップ、オレガノ──まぁ、全部魔石だ。
潰して煮詰め、冷まして水気を切る。
オーブンがいい温度になったら、生地にフォークでチクチク穴をあけ、オリーブオイルを塗り、
トマトソースを敷き、具を乗せ、チーズをこれでもかとぶっかける。
・パイナップルバージョン(ベーコン&コーン)
・普通バージョン(トマト&サラミ)
・ツナマヨバージョン
・照り焼きバージョン
・モチ明太子バージョン
好き勝手に並べ、好き勝手に焼く。
焼けた順からテーブルへ。
次から次へと平らげられ──
すべてのピザが焼き上がる頃には、
どうせこの、手に持った最後の一枚しか──
残ってはいないだろう。
➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖
雪に閉ざされた我が家。
外は真っ白、内はぬくぬく。
そんなある朝──
「……別に、今日やることなくね?」
目覚めて最初にそう思った。
娘たちはまだ、クッションの海の中で寝息を立てている。
暖炉の火は安定しているし、薪も充分にある。
となれば──
「……呑むか。」
冷蔵庫からキンッキンに冷えた瓶酒を取り出し、
コップにドバドバと注いで──
朝っぱらから、ぐびり。
ぬくい。
うまい。
世界が優しい。
二杯目を煽ったあたりで、トゥエラがむくりと起きてきた。
寝ぼけ眼で俺の手元を見て、首を傾げる。
「おとーさん、あさなのに、おさけ?」
「あぁ、ここは異世界だ。異世界では、朝酒は合法。」
よくわからない理屈を押し通し、またぐびり。
テティスも目を覚まし、
俺とトゥエラの間を見比べて、ふにゃっと笑う。
「fぇおぎゅじぇr!」
(訳:おさけはおいしい!)
──違う。
さすがにそれは違うぞ。
まぁいいか。
今日も平和だ。
「たまごおいしーだって」
トゥエラの通訳が飛んでくる。
昨夜のおでんの残り汁に…
適当に鶏肉と菜っ葉を入れ、
とき卵をぐるぐるかき回したうどんは──
見た目はまぁ雑だが、これが驚くほどうまい。
テティスは、箸を止める暇もなく口に運んでいる。
トゥエラはフォークでもきゅもきゅと。
ふたりとも、頬っぺたが落ちそうな顔をしている。
おっさんは、ふと思った。
──言葉が通じないなら、筆談って手もあるんじゃね?
現場用の小さな黒板をゴソゴソと取り出し、
「あいうえお」と白チョークで書いて、テティスに見せてみる。
すると──
「AIUEO~」
キュピーン!と目を輝かせ、口に出して読んだではないか!
「すげぇなお前、読めるのか?」
思わず身を乗り出して尋ねると…
「いlりwbcか…」
「まほーがつかえればめるみたいよー」
トゥエラがまた訳してくれた。
ふむふむ。
つまり──
書いてある“意味”は理解できる。
でも、正確に“日本語で喋る”のは、まだ難しい。
そういうことか。
【読解:○ 会話:△】って感じだな。
「すごいんでねーの?テティス!その調子だぞ!」
頭を撫でてやると、テティスは鼻を隠しながら、もじもじしていた。
外はまだ一面の雪景色。
けれど、こうして小さな成長があるだけで──
この冬ごもりにも、ちゃんと意味があったんだなぁと思えた。
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ある日のトゥエラは…
目に涙を溜めていた。
南のほうを凝視し
「しれん」
とか言ってた。
「雪溶けたらな、つれてってやるからよ」
俺はピンクの頭を撫でてやる。
ある日の出来事だ。
➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖
またある日。
「そういやオーブン、全然使ってねーじゃん」
ふと思い立ち、キッチンに様子を見に行った。
暖炉とは違い、普通の──地球産耐火煉瓦で四角く組み上げただけの釜だ。
試運転はしたことある。問題なく使えるはず。
「生地からだっぺね」
ボウルに粉末魔石、花の怪物、粒魔石を入れ、水をちょっと加えてコネコネ。
さらに破砕魔石、搾り魔石、漉し魔石も混ぜ、ぐいぐいこねた。
伸びるくらいまで生地がまとまったら、冷蔵庫で寝かせる。
「…で、こちらに12時間寝かせた物が御座います」
倍ほど膨れた生地を取り出し、ガスを抜き、プチっと分割して薄く丸く伸ばす。
耐熱皿に一枚ずつ置き……気がつけば10枚。
「足りるのか、これ?」
その間にトマトソースも作る。
玉ねぎのみじん切りをオリーブオイルで炒め、トマトをぶち込み、
ガーリックパウダー、塩、ソース、ケチャップ、オレガノ──まぁ、全部魔石だ。
潰して煮詰め、冷まして水気を切る。
オーブンがいい温度になったら、生地にフォークでチクチク穴をあけ、オリーブオイルを塗り、
トマトソースを敷き、具を乗せ、チーズをこれでもかとぶっかける。
・パイナップルバージョン(ベーコン&コーン)
・普通バージョン(トマト&サラミ)
・ツナマヨバージョン
・照り焼きバージョン
・モチ明太子バージョン
好き勝手に並べ、好き勝手に焼く。
焼けた順からテーブルへ。
次から次へと平らげられ──
すべてのピザが焼き上がる頃には、
どうせこの、手に持った最後の一枚しか──
残ってはいないだろう。
➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖
雪に閉ざされた我が家。
外は真っ白、内はぬくぬく。
そんなある朝──
「……別に、今日やることなくね?」
目覚めて最初にそう思った。
娘たちはまだ、クッションの海の中で寝息を立てている。
暖炉の火は安定しているし、薪も充分にある。
となれば──
「……呑むか。」
冷蔵庫からキンッキンに冷えた瓶酒を取り出し、
コップにドバドバと注いで──
朝っぱらから、ぐびり。
ぬくい。
うまい。
世界が優しい。
二杯目を煽ったあたりで、トゥエラがむくりと起きてきた。
寝ぼけ眼で俺の手元を見て、首を傾げる。
「おとーさん、あさなのに、おさけ?」
「あぁ、ここは異世界だ。異世界では、朝酒は合法。」
よくわからない理屈を押し通し、またぐびり。
テティスも目を覚まし、
俺とトゥエラの間を見比べて、ふにゃっと笑う。
「fぇおぎゅじぇr!」
(訳:おさけはおいしい!)
──違う。
さすがにそれは違うぞ。
まぁいいか。
今日も平和だ。
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