DIYと異世界建築生活〜ギャル娘たちとパパの腰袋チート

みーくん

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第六章

第九話

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それからまた、幾日かをかけ──
屋根瓦、外壁、内装工事と、順調に工程を進めていった。

瓦はさすがに、再び巨大亀カコマールを探すわけにもいかない。

そこで、おっさんは以前採取しておいた樹海の泥を用い、
手で成形し、ひとつひとつ焼き上げて瓦を作った。

釜すらなかったが──
解体時に出た煉瓦を積み、娘の斧を置けば、立派な即席炉の完成だ。

外壁は、木板で下地をつくり、
そこに港町で拾い集めた“捨てるほどあった貝殻”と泥を練り込んだ漆喰を塗る。

内装には、暖かさを残しつつも“神域”としての厳かさを持たせた。

漆喰壁に丸太柱を組み合わせ、神殿のような装飾支柱を設置。
祭壇も、ひと彫りひと彫り丁寧に仕上げていく。

仮住まいを手配してから、ここまでおよそ三週間。

足場に貼られた防音シート遮音結界のおかげで、
近隣住民は“無音の平和”を満喫していたらしい。


➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

その後細かい箇所まで完成させ、内覧会の日を迎える。

ポーネ、エミリーは当然いるが、なぜかギルマスや受付嬢、孤児や近隣の住人や商人、
豪華な服の貴族っぽいやからまで、
わちゃわちゃと集まりやがった。

おっさんは気にせず、テティスにかけていてもらった霧の魔法ドライアイススモークを消して貰い、地上から天を照らす照明をON。

ライトアップされる新築教会



惚けたように見上げる見物客たちを尻目に、
おっさんは淡々と案内を始める。

「んじゃ、まずは一階な──ここが大聖堂だっぺ」

内容自体は以前と変わらない。
だが、椅子も祭壇も、厳かに輝きを放ち──
家出していた女神像も、ついに帰還を果たしていた。

金の鮭像──使い道がなくて仕舞っていた代物を、
どうせならと溶かして塗料にし、
下品にならないよう慎重に、祭壇や細部にアクセントとしてあしらった。

この世界の神様事情はさっぱり分からんので──
七福神だの、風神雷神だの、見たことある面子をバランスよく彫刻。

女神像も、漆喰と樹海材で丁寧に補修。
塗装を施し、目元や指先にまで筆を入れると──
まるで、今にも微笑みかけてきそうなほどに、美しく生まれ変わった。

「……神さまってのは、案外、手ぇかかるんだな」

おっさんはそうつぶやき、
静まり返った堂内を、一瞬だけ見上げた。

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

手を組み、神像へ静かに祈りを捧げる来賓たち。
その姿をひととおり見届け、おっさんはまた口を開いた。

「……じゃ、次。地下いくべ」

案内された階段を降りた先は──

猫カフェだった。

ただし、ただの癒し空間じゃない。

そこは、野良猫を拉致保護し、
餌付け体調管理し、
芸を教え懐いたら
利益を得るお布施をねだるための──

異世界教会式・完全合法“猫営利型福祉空間”である。

清潔な床。
ふかふかのクッション。
気ままにあちこちで丸くなる猫達。
腹が減ればお客の膝上に飛び乗り、
ゴロゴロとおねだりをし、

食べ終わればキャットタワーに飛び乗り、
惜しみなく金を払う人間達を見下ろし、
欠伸を一つ。

客と猫の間にあるのは、癒しと布施の等価交換。

「これは……聖域だ……」と、
財布を握りしめる貴族の姿もあったという。

そして最後に案内するのは──二階。

ここは、親や身寄りのない孤児たちの宿舎。
兼、学校。そして、職業訓練の場でもある。

「せめて一般教養くらいはな──
 読み書きと数の扱いができりゃ、働き口のひとつくらいはできるべ」

そうつぶやくおっさんの背に、
娘たちが誇らしげにくっついてくる。

教室として仕切られた部屋には、
小ぶりな机と椅子、そして手作りの黒板。
隅には大工道具のミニセットも並び、
希望者には「社会のイロハ」も叩き込める仕様だ。

そして奥──

そこは、ポーネとエミリーの住居スペース。

といっても、特別な装飾があるわけじゃない。
だが、床はしっかり断熱され、収納も充分。
洗濯・調理もひと通りこなせる、普通に住みやすい“家”だ。

「……まあ、派手さはねぇが──
 こういうのがいっちゃん大事なんだっぺよ」

誰に向けるでもないその言葉に、
近くにいたポーネが、ふいに目頭を押さえていた。

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

すべての案内を終え、
おっさんはシスターに玄関の鍵を手渡す。

「……まぁ、なんかあったら言いに来てくれ」

それだけ言い残し、
もはや“現場”ではなくなった神殿に背を向け、歩き出そうとしたそのときだった。

──光。

後方から、柔らかく、けれど確かに輝く光が差し込んできた。

振り返れば──

祭壇に鎮座する女神像が、
まるで笑ったかのように、淡く発光している。



頬に当たる風がやけに優しく、
光の粒が静かに舞っていた。

「……あんちゅーだっぺなんということでしょう

おっさんはぽつりとそう呟いた。

神様のことはよく分からんが──
ここまでやりゃ、さすがに伝わったろう。

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

猫カフェや学校、職業訓練の人事については──
ぜんぶ、受付嬢に丸投げしておいた。

「適当に金貨も配っといてくれや」
と、手持ちの袋ごと渡して。

おっさんは、あくまで“建てた”だけ。
運営とか、そういうのは別の話だ。

──まぁまぁの仕事だった。
上出来ってほどじゃねぇが、悪くはない。

だから今は、ただ一つの欲望に従おう。

酒に──浸かる。

そう決めて、
おっさんは静かに、娘達の手を引き、夕暮れの街へと帰っていった。
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