DIYと異世界建築生活〜ギャル娘たちとパパの腰袋チート

みーくん

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第六章

第十四話

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それからおっさんは、
王都と下水道の、完全版相互マップを──

役人っぽい女性に、ポイっとくれてやった。

渡された役人は、しばらく震えながらそれを眺め、

……そして、泡を吹いて倒れた。

2枚の地図を照らし合わせると…
王城の間取りすら丸裸にできてしまう、
軍事機密級のブツが誕生してしまったらしい。

……だが。

おっさんには、そんなことはどうでもよかった。

掃除依頼ドブさらいの報酬は、どうやら莫大になるらしい。

だが──
「これ……どう計算すればいいんだガウ……?」

ライオンギルドマスターは、頭を掻きむしっていた。

そんな騒ぎをよそに、
おっさんの関心は、ひとつだけだった。

帰宅してからの、究極ラーメン。

腹っぺにして腹減らしてからけーっぺ帰ろう

そうつぶやきながら、
おっさんはふらりと依頼掲示板へ向かっていった。

後ろをご機嫌でついてくるリリに、
おすすめの依頼はないのか聞いてみる。

だが──返ってきた答えは、頬を染め…

「貴方が選べば、どれでも至高です」

……という、ありがたいんだか困るんだか…
よく分からないアドバイスだった。

……専属受付嬢とは、一体。

手短かんたんに終わりそうな仕事バイトを探してみるが、
なかなか見つからない。

そりゃそうだ。
金貨何十万円を積んで人を雇うような依頼が、
半日程度数時間軽作業レジ打ちで済むわけがない。

かといって、
孤児や子どもが受けるような“お使い仕事”を奪ってしまうのも、違う気がする。

悩んだ末──

「今日は仕事はやめて、食材でも探すけ」

そう決めたおっさんは、
娘たちを車に乗せ、街の外へと出発するのだった。

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

「おとーさんこれなにー?」

ガタガタ揺れるダンプの中、
トゥエラが渡してきたのは、

風呂の栓…ではなく、よく見直せば、
千切れたネックレスだった。

細い鎖の先に、栓にみえた黒い宝石。

チャラ、っとてのひらに載せられ、マジマジとみると、
けっこう高価な代物なのかもしれない。

風呂の栓かと床にうっちゃったのを、トゥエラが拾っておいたらしい。

鎖の部分を直して、
リリにでもくれてやるか──

そう思いながら、
おっさんはそれをポケットにしまい込んだ。

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

トラックは、黒煙を撒き散らしながら、
ガタ!ボコ!と街道を進む。

以前、薬草を摘んだ森でも良いが……

せっかくなら、未知のエリアも行ってみたい。

なにか、掘り出し物が見つかるかもしれないから。

馬車が行き交うような街道を走っていても、
めぼしい物は見つからんだろう。

そう思ったおっさんは、道を外れた。

起伏のある丘、谷のような窪地、獣道――
ダンプの硬いサスペンションが唸り、
子どもたちはキャーキャーと喜んで跳ねている。

おっさんは景色を観察しながら進んでいた。

林。
岩場。
小川。

……窪地。

……獣道。

……アジト。

アジト?

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

小川沿いの岩場を越えた、林に囲まれた窪地の、
獣道の奥にそれはあった。

まばらなボロいテントが、いくつか。

その隙間に、人の集まり……
まるで、浮浪者たちの住処のようにも見える。

「職人仲間で流行ってたな、グランピングとかいうやつけ?……」

一瞬だけそう思ったおっさんだったが――

すぐに気づく。

様子がおかしい。

子どもか、女性の……
甲高い悲鳴のような声が、かすかに聞こえた気がする。

それに、狩猟の痕には見えない。

テントの端に投げ出された、
“人っぽい、血まみれの物体”が──
目に入った。

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

愛娘たちは、悪路走行モトクロスを存分に楽しんだあと、
肩を寄せ合って、すうすうと眠っている。

おっさんは、変な絵柄のアイマスクをかぶせ、
タオルケットをそっと掛けてやった。

車外に降り、ドアをロックし、煙草に火を点ける。

……だが、吸い込んだ煙が喉に絡みつき、
嘔吐えずきそうになるのを、必死でこらえた。

以前出会ったアイツらとは、違う。

確かに彼らも犯罪者だった。
だが素直で、根はいい奴らだった。
今では、ファイアーダンサーとして立ち直ったことだろう。

けれど、今この眼下にあるのは……違う。

脚を失い、尚も這って逃げようとする者を、
笑いながら、弓で射抜き遊ぶ連中。

娘たちと歳も変わらぬような子どもを、
傷つけ、なぶって楽しんでいる。

こんな“悪意の塊”は、見たことがなかった。

サバンナの猛獣を囲う柵を作ったこともある。
国内の任侠屋敷をリフォームしたこともある。
刑務所の壁だって補修した。

けれど、そんな現場ですら、
ここまで胸の奥が腐るような匂いは、嗅いだことがない。

助けよう、成敗しよう――そんな考えすら浮かばない。

ただ、ただ……
おっさんは嗚咽おえつをこらえながら、地面にうずくまった。

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

一頻ひとしきりのお昼寝から目覚めた娘達。
寝惚け眼で外を見ると、優しいお父さんが、
…泣いていた。


おっさんは前を見た。
自分のやった仕事からは決して逃げたくなかった。

ちょうど、東京ドームを、逆さまにしたような…

窪地だった場所は…

おっさんの立つ地面と真っ平な、

コンクリートが打設され硬化し、

白く乾き、あたかもスケートリンクのように…

何も無い美しい更地になっていた。


完全に無意識だったと思う。
窪地を囲むように、
生コン車、ポンプ車、クレーン車…

それらをまるで、暴走族の集会のように並べ、
本人は急な傾斜をバイクで滑落し、
邪魔な汚物盗賊を跳ね飛ばし、
息のある怪我人をフレコンに叩き込み、
クレーン車から降ろしたワイヤーフックに玉掛けし、
汚物以外の生存者が居ないのを確かめ──
ポンプ車のリモコンを押し生コンを全方位から、
まるでナイアガラの滝の如く放出し、
吊り荷と共に地上へあがり、

そして今に至る。

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

娘達に泣きつき、重傷や瀕死の人々を治してもらう。

患部転移魔法痛いの飛んでけとやらで、
服も身体も、何事もなかったかのように…

静かに眠る二十数人の男女。

おっさんは現場送迎用の大型バスを召喚し、
全員を運び椅子にシートベルトで結いつけ発射。

「ラーメンの具材…にもならねえべ…」

と愚痴をこぼし、王都に帰還した。

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