DIYと異世界建築生活〜ギャル娘たちとパパの腰袋チート

みーくん

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第八章

第八話

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はっきりいって、
リリに譲渡したミニはポンコツである。
年式も相当古いし、おっさんが乗っていた頃から
エアコンもろくに効かず、
悪路を走れば、屋根に頭をぶつける様な乗り心地…
後部座席に至っては、トゥエラとテティスでも狭く感じるほどであり、
まぁ、歩いて探索するよりはマシだっぺ。
程度の軽い気持ちで譲ったのだが……

テティスの魔法改造違法改造により、別物となってしまった。
ヒンヤリとした車内。
ハイエースの様な広々とした居住性。
高級セダンのような穏やかなクッション性。
そして、F1かよ?と目を見張る超加速性能…

「魔法っちゃ~…」

と肩を落とし、家族の出発を見送るおっさんであった。

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

床の骨組みが完成したので、仮の足場としてコンパネを敷き詰める。
屋根や外壁が仕上がるまでは、本来の床材を張るわけにはいかない。
雨が降れば、せっかくの床がずぶ濡れになってしまうからだ。

柱を立て、桁を流し、梁をかける──
やっていること自体は、土台の時とさほど変わらない。

ただ、ここから先は“見せるための造り”になる。

天井板は張らない。
古民家のように、梁も桁も
──構造そのものをそのまま晒す工法。
だからこそ、ぶっとい樹海の梁を「井」の字に重ねてゆく作業にも、
精密さと美しさが求められる。

その仕上がりは、
──ささくれ一つ、薄紙一枚の隙間すら許さない。

ストーンウッドは、外壁と屋根に使うことにした。
冒険者ギルドのようなだだっ広い建物でもなし、
骨組みは材木で十分であった。
だが、断熱性能は別だ。
あの謎石材で外周を囲めば、エアコン一つあれば、
大きな平屋でも十分快適に過ごせる事だろう。

こうして、おっさんの作業工程を説明しているが……
当の本人の頭の中は、空っぽである。

セーブルに今晩の酒の話をしたり、
王都に彼女はいないのけ?などと揶揄からかったりしつつ、

手と体が勝手に動いている。
「この部分はどうゆう風に組むべか?」
という段階は、図面を描き終わったときに済んでいるのだった。

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

おっさんが、
ダイカーズハイ無意識大工状態に陥っていたその頃──

リリの運転するミニは、街からそう遠くない海辺で、
まるでジェットスキーのように海面を滑っていた。

おっさんがプレゼントしたのは、“普通の車”だったはずなのだが……

それを、テティスの水面瞬時結界ちょっと浮いてね?が変えてしまった。

タイヤの直下だけ、水面が“カチン”と硬くなるというこの魔法により、
ミニクーパーは、海の上を自由自在にすべっている。

トゥエラはと言えば、
屋根の上によじ登り──
おっさんから拝借した高所転落防止ネットを、
投網のように海に向かって放っていた。

車の中、パステルは小さな窓から顔を出し、
釣竿を構えて、真剣そのものの表情。

以前──港町での航行中、
乗った瞬間に船酔いし、自動サビキマシーンと化していたテティス。

だが今は違う。
後部座席の窓から半身を乗り出し、
まるでVIPのギャルタレントよろしく、いわゆる“箱乗り”状態。

潮風にゆれる長い銀髪。
細めた目で水平線を見つめながら、彼女は呟いた。

「……儚く短い、ギャルっていう時代を……満喫してんのよ……」

──数百年前から。

まるで時空を超えて、永遠の夏を走ってるかのようだった。



一方のリリは、
冷静な顔のままハンドルを切る。
時おり沖から押し寄せるうねりを、
峠道のヘアピンカーブに見立て──

アップ → スーン → ダウン と軽やかに波をいなしながら、
カットバック! オフザリップ!

……え、サーフィン……???

──彼女が書類魔法アカシックレコードで引っ張ってきた知識とは、一体何の文献だったのか。

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

そんな時、王女パステルの手に持つ釣り竿が、ピクリと揺れた。
彼女は、昨夜おっさんに教わったとおり──

「えい! ですわっ!」
と、見事にアタリに合わせる。

「お魚釣りがしてみたいのですわ──」

そんなおねだりを受けたおっさんは、
腰袋の奥から、惜しげもなく自分の釣り人生の結晶とも言える道具を取り出した。

最も高価な一本──マグロこそ無理でも、
カンパチ級の大型青物なら余裕で引き上げられる
“ヘビーロッド”。
それに、全自動電動リールを装着。

極めつけは──
深海の高速魚も狙える“メタルジグ”という鉄製ルアー。

……だった、のだが。

おっさんは何を思ったか──
ハンダゴテを取り出し、
とある素材を、ルアーに一本一本、接着しはじめた。

それは──
ゴブリンから剃り取った、陰毛。

「え~!?!?」
誰もが声にならない悲鳴をあげたくなるその“禁忌擬似餌”は、しかし……

完成した瞬間、異様な存在感を放った。

──死んだ魚でさえ、目を見開いて喰いつく。
そんな伝説の“爆釣ジグ”を、王女に手渡したのだった。

なかなかの大物が喰いついたのか──
パステルの握るヘビーロッドが、音を立ててしなった。
竿の中心は、まるでUの字のように湾曲している。

だが、そこは流石におっさんセレクト。
折れない。決して折れない。

そして王女の腰には、竿元を固定するためのファイティングベルト。
さらに、安全を考慮してシートベルトも締められている。

すなわち──王女の体は、釣竿と車にガッチリと固定された状態。
逃げ場など、どこにもない。

「おへ!……おへ! おへそがぁぁぁぁぁ!!
とれてしまいますわぁぁぁぁああああ!!!」

若くして王女の悲鳴が、海原にこだました。

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

今日も一日、無事に作業は終わった。
骨組みはほとんど完了。
残るは、屋根と外壁を張る工程。
それが終われば、外回りの工事はひとまず一段落する。

道具を腰袋に仕舞い、
汗だくの体を風呂で洗い流して、ようやく一息ついたところで──

ボボボボボボボボボ……

と、遠くから唸るような爆音エンジン。
まるでスーパーカーか、はたまた戦闘機か。
……帰ってきたのは、小さなミニクーパーだった。

しかも、屋根の上には満タンに膨れたフレコンバッグが一つ。
降りてきた少女たちは、笑顔を浮かべながら──

「あづぃぃぃ~~~っっっ!!!」

肌が真っ赤に焼け、髪の毛も潮風でボッサボサ。
まるで遠足帰りの小学生のような姿だった。

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

海で釣りをして来たという娘達、
おっさんはフレコンを覗き込むが…
小魚や貝類も見えるが、よくこの袋に入ったな…と目を疑うような巨大な青魚。

おそらく…カツオだろうか?

が、縦になって無理やり詰め込まれていた。

うめそー美味しそうなカツオだなぁ!刺身でニンニクごてしらたくさん付けて食うべか!」

初夏限定の大好物を前にしてテンションの上がるおっさん。
とても、台所に運べるサイズではないし、
まな板も間に合わない為、
急遽、明日屋根に張ろうと準備していたストーンウッドを並べて解体ショーが始まる。

「おとーさーん!かちゅおはねーぱーるぅパステルがつったんだよー!」

パーちんパステル!マジやべーかんね!ヘソから竿生えてたっしょ!」

「~~~~~……」
俯き顔を赤らめる王女。
その下腹部は…赤く腫れ上げっていた。

あんちゅーだっぺ何という事でしょう!」

おっさんは焦り、現場用救急箱を取り出し、
赤チンで消毒を始める。

「ん…!あぁ…!…沁みますわ……」

涙目のお姫様のヘソに、ベタリ。とシップを張ってやり、

「無茶すんでねーどw」

と笑い飛ばすおっさん。

その夜は、トゥエラ以外皆、冷酒片手にカツオの刺身を囲み大円団を繰り広げるのであった。
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