DIYと異世界建築生活〜ギャル娘たちとパパの腰袋チート

みーくん

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第八章

第九話

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──おっさんは、死にかけていた。
 

カツオの刺身が美味すぎたせいか。
家族の笑い声に酔ったのか。
それとも、調子に乗った自分のせいか。
 

「おっさんの~♪ちょっといいとこ見てみた~い!」

──などと自ら音頭を取り、
セーブルのグラスを奪ってグビィィッと煽った記憶だけが、かすかに残っている。
 

そして現在。
 

──危篤状態である。
 

全てがおかしいのだ。
 

敵の気配の起こりすら察知するセーブルが、
咄嗟におっさんの背に回り、両腕を拘束。
 

テティスも「だめだってば時空隔離結界魔法!」と叫び、
毒焼酎のグラスに即座に結界を張った。
 

──なのに。

「おめたづは~……ほんっに、めんごいなぁ~~~」

おっさんは陽気に笑い、
そのまま拘束ごと前進し、
結界ごとグラスをつかみ……飲み干した。
 

拘束も、結界も。
最初から無かったかのように。
 
➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

夜会は中断され、慌てふためく家族達。

セーブルは…

「このカクテル複合毒に解毒剤など……」と膝をつき悔やむ。

テティスは…完全回帰魔法マジありえないからを唱えようとするが…

「パーパ死んでほしくないけど…赤ちゃんになっちゃうし…」
と、苦悩する。

トゥエラはミロとカツオで満腹で、
みーくんを抱きしめて眠っている。

おっさんの顔色は、見る見るうちに血の気が引き、
セーブルにとっては、仕事柄見慣れている…
もう、間違いなく助からない状態。
へと落ちていった。

その土色の唇に………

パステリアーナ王女の桃色の美唇が重なった。

パステルは首元の黒石風呂栓を握りしめ、
おっさんの体内の毒を吸い出し…
ネックレスへと送り込んだ。

永遠かとも思える十数秒…

「ぷはっ」

と顔を上げた王女。

その下には…ただの酔い潰れた中年男性がいた。

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

公爵閣下おっさん寝所布団お連れした投げ込んだあと、
残った五人は夜更けに反省会を開いていた。

「申し訳ありません…私が…毒などを飲まねば…」

「いえ、セーブル伯爵の食事は皆把握しておりました…食器の配置も、閣下おっさんからは届かない筈でした…」

「マジありえないんだけど?結界魔法握り潰してたし!?」

「ん~?もう朝ごはんなの~?」

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

──なんてこった…酔っ払い過ぎたのか…

まさか自分が急性アルコール中毒で死ぬとは…

モヤモヤとした一寸ちょっと先も見えないような真っ暗な空間で、
おっさんは漂っていた。

「しくじったなぁ…せっかくあんなにめんこい家族と巡り会えたっちゅーのに…」

いい歳50も過ぎてして、調子に乗ってイッキやって死ぬなど、
恥ずかしいし情けない…

まぁ、あの家はストーンウッドは無理でもセーブルが完成させるだろうし、

黄金の詰まったフレコンも地下の隅っこに置いてある。

あいつらがこの先食っていくのに困ることはないだろうが…

ただ、横っちょでその風景をもっと見て居たかったなぁ。

酒での失敗談は、若い頃から何度もあった。
スナックで調子に乗って騒いでいたら、怖そうなサングラスのおっさんにボコボコにされたり、

飲み過ぎてまともに歩けず、畦道から田んぼに落ちて、そのまま寝てしまい…
パトカー数台に囲まれて居たり。

だが、今回の失敗は…取り返しがつかん。

まぁ、異世界に来て何年経ったのかは判らないが、日本で独りぼっちだった時よりは、
最高に楽しい人生だった。
トゥエラも、テティスも、リリも、パステルも、セーブルも…

ん?
セーブル?

──すると、視界が急に開けた──

立派な一枚板のテーブル。
レジン液で川を模して固められた美しい蒼。
その向こうには、大きな石で組まれた暖炉が見える。
「樹海のログハウスであんめか?」
辺りを見回そうとすると、また景色がボヤける。
今度は、街が見下ろせる割と高い景色…
遠くにポツンとお城が見える。
「王都け…?どうなってんだこりゃ?」

そして、ガバリ、と起き上がれば…
いつもの家族、いつもの仮設住宅が目に映った。

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

「朝け…」

急アルで死んだ夢を見たおっさんは…

必ず訪れる筈の、戒めの頭痛と胸焼けもなく、スッキリと目が覚めた。

いつも自分が最初に起きて、朝食を作るというのに、
何故か今朝は家族の皆がおっさんを囲んで変な顔で見ている。

「どうした?おめたつ、腹へったんけ?
 …なんで泣いてるんだっぺ?」

モゾモゾと起き上がると、突然、皆に拘束された抱きつかれた

ことの顛末を、皆々から説明説教されて、
申し訳ねかった。と床に頭をつける公爵閣下。
食材を豊富に使った、贖罪の朝食を皆に振る舞い、
パステルには、

「気色悪りいことさせちまって済まなかった。」

と何度も頭を下げた。

王女は頬を赤らめ…

「お気になさらないでくださいまし…
 その……初めてでしたの…」

と、おっさんにトドメをさした。

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

毒酒を吸い出した、姫の体調は無事なのか?
と心配になり聞いてみると、
全てをネックレスに封じ込め、それをセーブルが飲み干して処理したとの事。

「しっかしよぉ……セーブル。」

おっさんは徐に弟子の顔を見つめ、

「毒ってのぁ…本当にうめぇだなぁ…
死にたくねぇからもう飲まねぇけど…」

ニヤリと笑い背中を軽く叩き、腰袋を締め直す。

──今日も気持ちの良い一日が始まった。
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