DIYと異世界建築生活〜ギャル娘たちとパパの腰袋チート

みーくん

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第八章

第二十話

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翌日は、なんとなくおっさんも新築現場に立ち会う事になった。

というのも、家の中心に立派な螺旋階段をこさえてしまったため、
おっさんが描いておいた間取りの平面図は、
0から考え直さねばならなくなった。

50坪という、平屋としてはかなり大きい面積はあるのだが、ど真ん中に階段。となると…

────
人が住む家には、「導線どうせん」というプランニングが必要だ。

玄関からリビングへ、風呂へ、トイレへ、そして個室へ──

こうした動きを、スムーズにできるように設計しておかないと困ったことになる。

たとえば、自室からトイレに行きたいだけなのに、
一度リビングを通らねばならない──
なんてことになったら最悪だ。

だからといって…
迷路みたいに廊下を這わせるのもナンセンス死語

生活の動きを“想像”できるかどうかが、設計の肝なんだ。

「──ふむ…」

おっさんは煙草を咥え、大黒柱に纏わりつく空中螺旋石板を見上げる。

この新築住宅は、禁煙ではない。

樹海のログハウスで暖炉を組み上げたとき、
サイが多少余ったのだ。

それを、屋根裏の梁の上に見えないように配置してある。

……昨夜の鉄板焼きパーティーの匂いすら、既に浄化されているのだ。

玄関ドアは南側の中心に配置した。

そこから入り、5メートル先には階段。
左右は、8メートルほどづつ。
──狭くはない。

狭くはないのだが…ここに六人分の個室と居間……

「ないなぁ」と呟く。

「こうなったらよ、ここ全部リビングでいいんでねえべか?」

──と皆に問いかける。

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

家族達は驚いた顔をする。

セーブル以外は全員女性だ。

着替えやらなんやら、いろいろあるだろう。

「パーパ?どこで寝るワケ?皆んなで雑魚寝とかマジスラムっぽくね?」

「いくら勇者様オジサマでも…恥ずかしいですわ…」

皆が不安そうに聞いてくるので、
ニヤリと笑って、

「部屋はあっこでいいべ」

指を刺したのは、屋根裏だ。

「空に床造れんだったら、どこでもありだっぺ?」

片流れ屋根の北側はかなりの高さがある。

そこに、各自独立した空中個室をこさえ、
空中通路で繋げれば──

地上には、
風呂とトイレ、洗面所は設けるが、それ以外は全てリビングとなるのだ。

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

そして、今日の工事が始まった。
もう要らないかと思っていた仮設足場を、
室内、隅々までに組み上げる。

そしておっさんも意気揚々とノミを構え、
あの頃に……

青鼻を垂らし、虫取り網を振り回していた、
あの頃の純朴な気持ちを思い出し…

──ハンマーを振るう──

「カツン!スカ……」

攻撃は外れてしまった。

おっさんは、親しかった沖縄出身の比嘉さん大工の口癖を思い出し、

「あぎちゃびよい…」

と、呟くのだった。

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

どれほど集中しようが、空は掘れなかったため、
小さなトゥエラに全てを託した。

おっさんはセーブルと共に、一人8畳の四角い個室を、地下に降りて組み立てる事にした。
六つ、これを宙に浮かすわけだ。

まるっきり四角い物体が浮いているのは物々しいので、室内は四角く、
外見は丸みを帯びたり、ぐにゃぐにゃさせたり…

まるで…意味不明な夢の中の世界だ。

おっさんは日本で死んだ時、
もっと面白い現場に関わってみたかった。
と悔いを残したが……

奇しくも異世界で、万博に置いたとしても、
気をてらいすぎであろう!と怒られそうな、
腹の捩れそうな建築に関われていた。

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

リリはギルドにお勤めに行き、
テティスは、

「マジガチ盛りデココーデ降ろしてくんわ~」

などと言い、ダークエルフの神殿へと向かった。

パステルは…普段はストーンウッド一個すら、
わたくしには重たいですわ」

などと言っていたのに、
おっさんとセーブルの加工している、8畳約3.6M×3.6Mの巨大な石の塊を、まるで風船を持つ女の子のように、ネックレスで浮かせて、外見の奇抜な加工を補佐してくれていた。

転げるように地下に降りてきたトゥエラは、

「おとーさんあれかしてー!!」

と、頬を膨らませおっさんの元へやって来て、
チェーンソーを強請った。
貸してやると、足場へ飛び乗り…

ギュュイィィィィィィ!と、
空を裂いて抉り始めた。

どうやら、ノミではらちが開かなかったらしい。

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

外出した皆には、昨日の余りで作った
焼きそばパンとホットドッグを持たせたのだが、

我々は特に用意していない。

「そろそろメシだっぺか?」

セーブルとパステルに問いかけると…

──「ごはーーーーーんーー?」──

と、足場とハシゴをトゥエラが滑り落ちて来た。

この高さ、完全な労災墜落事故である。

昼は簡単にササっと、と思っているのだが、
目を輝かせ涎を垂らすちびっ子を見ると…

「親子丼でも作っぺか?」

豊富にある卵を使い、フワトロに仕上げたのだった。

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

この世に一人しか居ない、王家にも認められた
キングス冒険者のおっさん。

…の専属受付嬢である、リリの朝は早い。

ギルドの自動ドアを抜け、真っ直ぐに受付カウンターへ……は行かない。

螺旋階段を登り、ギルドマスターの執務室へと向かう。

「──失礼します」

軽くドアを叩き、そっと開ける。

「おはよう、早くから済まないね。」

よく育ち、いつでも収穫出来そうな、
パイナップル…のような髪型のギルマスに挨拶を交わす。

「彼は……相変わらず凄まじいな」

ギルドマスターは書類の手を止め、ふと窓の向こうの空を仰ぐ。

その目はどこか遠く、敬意とも畏怖ともつかぬ色が浮かんでいた。

「あの山脈の澱みを浄化し、
森と平原の魔素流動を安定させたらしい──まったく、どんな手を使えば可能なのか」

それは、“みーくん神社”と呼ばれる聖域での出来事。
普通の冒険者なら近づくことすらできない瘴気の地で、
ただの一人の男が、大地ごと“息を吹き返させた”。

「──あの方は、本当に、素晴らしいお方です」

リリは真っ直ぐにギルマスターを見据え、言葉を続ける。

「誰もが諦め、見捨てたこの街を、
あの方は──たった一人で、生き返らせたんです」

かつてこの地は、「封緘ふうかんの谷」と呼ばれた。

数百年もの間、人々に忘れ去られ、立ち入ることさえ禁じられていた場所。

だが今では──
魔素に満ちた希少な石材が採掘され、
卓越した技を持つ職人たちが全国から集う。

街には新たなギルドが建ち、王国の地図に堂々と刻まれている。

かつて死の谷と呼ばれたこの地は今、
建築と再生の都、

ヴァイヴィベンヴァおいで横丁

として生まれ変わった。

その礎を築いたのは、ただ一人。

腰袋からすべてを取り出し、
大地すら組み替え、
空間さえ捻じ曲げた──

王家に認められし唯一人の冒険者。
キングス冒険者キング・ワン・クラフトマン

彼は今日もまた、誰にもマネできないやり方で、
静かに──だが確実に、世界を作り変えている。

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

真っ白な空間に足を踏み入れた瞬間、
煌びやかな電飾が走り、空間にラメと香水の匂いが弾けた。

──現れたのは、かつてこの地を支配していた古の女神の石像たち。
だがその姿は、どう見ても平成すぎるボディコンお姉様。

「──我らが愛しき娘よ~~ッ!」

「よく来たのじゃ~♡」

「んで、あれじゃろ?夜伽の儀式とか学びに来たんじゃろ?⭐︎」

「な、なんのことよ!?!?」

とテティスが顔を真っ赤にするが、お姉様方は気にするそぶりもなく──

「ほれほれ、遠慮すんな。
恋も修行のうちってね?どれ、“マハラジャ式秘奥義”、たっぷり伝授しちゃるけぇ~♡」

「あーしは、彩色暴風雨ガチ盛りメイク魔法の練習に来ただけだし~!?」

「つーか?パーパとかさ~手ぇ握ってきたことすらないし!?
 ガチでへにゃチンオブザイヤーだかんね!!」

「何を悠長なことを言っておるのじゃ~ッ!?」

「其方がくたばったら──ダークエルフ、滅びじゃぞ!?マジで!」

「今すぐ修行じゃ!愛と魂の!」

「“拐かしスクリュードライヴァー”伝授してやんよ!!」

「てか孕め!今すぐ!孕むのじゃ~~~~~!!!」

「ギャルの星の運命、背負ってんだからな~ッ!?」


「うるさーーーーーーーーーーい!
  あーしまだアレ生理ねーし!!!
  孕めるかっつーーーーーーーの!!!」


──厳かな神域に破廉恥な絶叫が響き渡るのであった。
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