DIYと異世界建築生活〜ギャル娘たちとパパの腰袋チート

みーくん

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第八章

第十九話

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おっさんは、それほど言葉が上手いわけではない。
だからこそ──

「すげーなぁ、よくやったなぁ」

と、ただ頭を撫でてまわる。

年頃のギャルも、寡黙なイケメンの騎士も、ちびっ子大工も、王女様まで…ホコリと汗まみれ。

でも、皆んなどこか誇らしげな顔をしていた。

「んじゃ、まずは風呂さ入ってこ~」

そう言って全員を風呂に送り出すと──
おっさんは腰袋から、鉄板を引っ張り出す。

毎日、冷たい飯じゃ腹をむぐす下すかもしれない。
今日はちょっと趣向を変えて──
久しぶりに、お好み焼きでも焼いてやっか。

────
まずは下拵え。キャベツは芯を避けてシャキシャキ感を残すように刻み、
港町で手に入れた新鮮なシーフード──触手ピチピチのイカ貝に、甲羅が鎧兜みたいなカニも下処理。

柘榴ザクロみたいな赤黒い殻を割ると、中からはトロリとした“長芋のような根菜”が現れた。

それを擦りおろすと、妙に粘っこいが香りは良い。

ボウルには濃いめの和風出汁と、今朝収穫したばかりの“赤卵”をぶち込み、グルグル混ぜる。

ネタの準備が整ったら──あとは焼くだけ。

「ちょいとシャワー浴びてさっぱりしてくっか~」
バスタオル片手に風呂場へと消えていった。

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

出張用カバンに入っていた、スースーが脳天まで貫く
メントール系シャンプーとボデーソープで全身をくまなくリフレッシュ。

少し冷たいシャワーで汗も洗い流して、あとは──
キンキンに冷えた焼酎大五郎でカンパイするだけだ。

……いや、今日は車に酔ってゲロってしまった分まで、取り返す必要がある。

まだ家具も布団も揃ってない新居だが、広さは抜群。
大黒柱のそばに設置された仮設テーブルを囲んで、
ゾロゾロと皆も戻ってくる。

ギャル、姫、騎士、幼女、受付嬢──
皆も風呂上がりでさっぱりした薄着で、どこか達成感のある顔。

「俺では発想も出来なかった、こんなおもろい階段をありがとうな!
明日からも頼んます、乾杯~っ!!」

コップ同士が軽やかにぶつかり合い、乾杯の声が新築の空間に響いた──。

バーベキュー用の大きな鉄板を、どんとテーブルに直置き。
そこへ、トゥエラから借りてきた斧の柄をカチャリと接続する。

不思議なことに──
テーブルはまったく焦げず、鉄板だけがジワリと加熱されていく。

ちょうどそのとき、フワリと影がさした。

「今日は──食いもんは、熱々で頼むな。」

振り返れば、セーブルが腕を組みながら静かに立っていた。
その顔には、どこか楽しげな、いたずらっぽい笑み。

「承知しました。」

珍しく柔らかな表情で、セーブルが微笑む。

おっさんはハケを手に取り、鉄板の上に油を塗り広げてゆく。

薄切りの豚肉を、まるで花びらのように並べ──
その中心に、さっき混ぜたネタを豪快にぶっかける。

形を整えたら、上にも肉を並べてフタ代わり。

ちょうどいい蓋なんてあるわけもなく──
おっさんはテティスに目を向ける。

「魔法で、蒸し焼き頼めっぺか?」

「まっかせてっしょー⭐︎」

テティスはにんまりと笑い、指先からラメ入りの魔法陣を展開する。

パチンと指を鳴らすと、空間に見えないフタが生成される。

鉄板の上には、次々と“お好み焼き”が並べられていく。
ジュウジュウと油を飛ばし、焼けていく音はまさに灼熱。

……なのに──

鉄板に触れてみれば、ヒンヤリと冷たいのだ。
まるで熱はすべて、具材のためだけに使われているような……

影魔法と結界魔法の絶妙すぎるハーモニーだった。


頃合いをみて➰クルリとひっくり返せば、
肉に焦げ目もついていい感じだ。
下面の肉ももう少し焼きたいので、ソースを用意する。

オコの実という、いつも激怒している植物を採取してみたら、
丁度いいお好みソースが取れた。
怒りすぎて勝手に発酵してるっぽくて、
いい感じに酸味と甘みが調和する、

見た目はホウズキみたいなヤツだった。

港町で入手した本枯節ポンポコぶしを鉋《かんな》で削ってみれば…
熱も加わってないのに踊り出した。

濃厚なマヨネーズは、まぁあれだ。
ゴブリンから取れるやつだ。
容器も移してあるし、まったく問題はない。
三連ノズルからビームみたいに散らし、完成だ。

ヘラでザックリと割り、皆の皿に乗せてやる。

「いくらでもあるから好きなだけくいっせ~」

と鉄板パーティーが始まった。

キッチンはまだ据えつけてはないが、その辺にドカリと召喚し、焼きそばの準備もしておく。

どうせ足りないだろうし、第二弾は広島風だ。
フランクフルトなんかも鉄板の隙間に乗せてやる。

って言ってもただの肉じゃない。
火山にいた駅ビルサイズのミケの体内にちょっと入って、
コーキングガンで腸詰め作業までしてきたやつだ。

超高温、超多湿で、半日放っといたら勝手に燻製される魔境。

人間が入るにはヤバすぎる環境だけど、
おっさんの腰袋には耐熱空調服も入ってる。問題なしだ。

────
肉にも魚にも合う、ギンギンに冷やした赤ワインサイゼリアも振る舞い、
トゥエラにはトロピカルマンゴージュースを。


──そういえば、と思い出したのは…
先程の樹海爆走ドライブ中のこと、
超巨大で、首が何本もあった恐竜みたいなやつが…

死んでいたのだ。

その横には、一輪の綺麗な青いバラが咲いていた。

よく見ると…恐竜の足に小指の爪ほどの小さな棘が刺さっていた。

おっさんは恐ろしくなったが、セーブルの喜ぶ顔を思い出して、

長めのトングでそーっと挟み、採取してみた。
本来、釘とかを仕舞う用の木箱に入れ、蓋をし、養生テープで封鎖して持ち帰ったのだった。

「セーブルよい、土産があるんだけんども…もしかすっと、相当に危ない物かもしれないんだっけ…」──「なんでしょうか?」

と食い気味に寄ってくるイケメンに、
ここでは危険かもしれないから、外で開けっぺと、
ほかの家族には近寄るなよと念を押し、家から出る。



「これなんだけどもよ…
どデカい化け物が隣で死んでたんだ。
いくらおさでも危ないかもしんねぇ」

と、そっと箱を開けると…
昼に見た時とは違って、何やらブラックライトのような光を放ち、不気味に輝いていた。

「こ…これは……素晴らしい…ですね。」

見ただけで毒性の強さがわかるのか、
セーブルは指を棘に近づけた。

「だ…大丈夫なのけ?ヤバいかも…」

と、止める間もなく、棘を一本毟り、口へ入れやがった。

────
見上げるほどデカい、体格のいい男が……

ビクン!と震えた。

「おぉぉぉ…」

セーブルは呻き声を漏らし、両手を夜空に挙げ…光悦とした表情で……

「五臓六腑が…死滅するほど喜んでいます…」

などと言っていた。

暫く見ていると、表情も動きも落ち着いた。
のだが…
「なんか…光ってねえか?」

セーブルは真っ黒い部屋着を着ているのだが…
肌が、というよりは、内部からボンヤリと、
青白い光を…アレだ。最近は見なくなったが、
コンビニの外で、羽虫をバチバチと殺していた、殺虫灯。
あんな感じになってしまった。

結局、危なすぎて庭に植えることも出来ないので、おっさんは4㍑の焼酎を一本プレゼントし、その中に泳がせることになった。

電気を消しても辺りを怪しく照らす水中花。

セーブルの晩酌兼、家のオブジェとなったのであった。
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