DIYと異世界建築生活〜ギャル娘たちとパパの腰袋チート

みーくん

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第八章

第五十四話

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リゾートホテルサンクチュアリィの精霊──
ダンジョンコアというのが正解なのだろうか?

つまりサンちゃんが、異世界に順応を始めたらしく、
ビュッフェに並ぶ豪華な料理も異世界仕様となってきた。

海藻サラダのワカメっぽいヤツにはニョロニョロと動く触覚が生えていたり、
立派な伊勢海老のような、活造りの刺身は、
等身が2メートル程もあったりする。

ズラリと並んだカラフルなドレッシングには、深海ゴブリンのなんたらとか書かれていたりする。

家族のみんなは大はしゃぎで、相変わらず皿を宙に浮かせて、大量の料理を確保していた。

どうやらサンちゃんが気を遣ってくれたらしく、
今宵のビュッフェ会場には、おっさんたち以外の客は一人もいない。

王様もようやく料理を選び終え、生ビールを片手に上機嫌で皿をつついている。

一番得をしているのは──たぶんブーカだろう。
どれだけ盛っても文句を言う店員はおらず、自前の洗面器のような皿やどんぶりに山盛りの料理を盛り付け、まるでフードファイターのように豪快に食べている。

おっさんはというと、相変わらず少食で、酒がメイン。
小皿に刺身と漬物をちょいとのせた程度だ。

──こうやって世の中というものは、うまくバランスが成り立っているんじゃないか?

そんな、どうでもいい哲学が、ふと頭をよぎったりしていた。

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

さっそく出来上がった試作品を、ブーカが見せてくれた。
ぼんやりとしたイメージしか伝えていなかったというのに、
まるで完成品のようなスケート靴が、食卓のテーブルの上に静かに置かれていた。

包丁のように鋭く研ぎ上げたあと、あえて刃を潰すように仕上げた靴底のブレードは、
手で触れても切れるほどではないが、
氷をしっかりと噛み込むための美しいエッジの波紋が刻まれている。

さらに、氷との摩擦を減らしてスピードを生むために、
刃先にはほんの僅かな反りが入れられていた。

靴は、軽くて丈夫な合金で作られているようで、
一昔前のスノーボード用ハードブーツを思わせる、ゴツくて無骨な見た目だった。

紐ではなく、ワンタッチの金具で足首全体をしっかりホールドする仕様まで、当時のブーツにそっくりだ。

……ただし、自分の足に合わせたのか、サイズはおよそ50センチ。

見た目のインパクトも半端じゃない。

「でっけえなぁ!人族の足なんて、この半分くらいだっぺよw」

と笑いながら足を入れてみると──

シュルルルル……っと、まるで生きているかのように靴が縮んでいき、
おっさんの足にぴったりとフィットした。

「へっへ~ん⭐︎ あーしの紋様?中敷に刻んでるし~?」

テティスが、ビュッフェの推しスイーツ
『ウニタピ・ア・ラモード』を頬張りながら、
ドヤ顔で自慢してきた。



んだばでしたら、アイツらに明日渡せるんであんめーかじゃないでしょうか?」

と聞くと、ブーカは照れた顔をして、
テティスはフフンと笑い、バルコニーへ向かい下界を指差した。

──凄い光景を見てしまった。

ラッキー君の頭上のミラーボールが照らす、ディスコみたいな氷上に……

サーカスがいた。



本物の靴を装備した彼らのスピード感は凄まじく、
振り回す火のついた棒が、残像を醸し出し──

炎のドラゴンが踊り狂う演舞に見える。

全体行動だけにとどまらず、黒子と協力した超ジャンプ──からのドラゴンブレスのような滑空。

こんなエンターテイメントは……見たことがない。

つい、王様にタメ口で喋ってしまう。

おんちゃんおっさんよぉ、カッケーべよ?
ほんでよ、国営のギャンブル作んねーべか?
KAKKEI滑競ってんだけどもよ……」

ニヤッと笑って顔を見れば──

プルプルと震え、目を宇宙みたいに輝かせた、
少年おじさんが、そこにいた。

背後から忍び寄った執事──
ではなく、王国ナンバー2の政治的権限を持つ、宰相さんがドサリと書類の束を王様の脇に置いた。

「王よ……これは、途轍もない規模の経済が動きますぞ。
ですが、借金奴隷などを出さぬ工夫、
そして、依存をせずに楽しめる工夫、
さらに、この街への街道の整備など、
貴方の仕事はこの夜空の星ほどもありますぞ。」

してやったり顔の老紳士は、おっさんにウインクをして、顔色の青くなった王様を引き連れて部屋へと帰っていった。

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

それから、予定日までの三日間──
国王の姿を見かけることはなかったが、
おっさんたちはどこ吹く風で、スケートに興じたり、
冷えた体を温泉でじっくりと癒やしたり、
いつも通りのマイペースで、穏やかな日々を過ごしていた。

とにかく──トゥエラが、めんこい。

ワニに喰われたような着ぐるみに身を包み、
なぜか両手にもスケート靴を装備した彼女は、
四足で氷上を疾走し、コーナーを華麗にドリフトするという妙技を披露していた。

その姿は、本当に楽しそうで、心の底から幸せそうだった。

──あの樹海で初めて出会った、魂の抜けたような幼い少女。
感情の色をどこかに置き忘れていた、
あの子の面影はもう、どこにもない。

最速ドリフトワニスケーターは、雹煙ひょうえんを巻き上げながら、視界の彼方へと消えていった。

テティスは、フィギュアスケートを軽やかに踊る。
バンクを利用しての跳躍から、竜巻の様なスピン。
体から、線香花火のような煌めきを撒き散らし──いや、あれではネズミ花火か。

本人は満足げな笑みを浮かべているので、余計なツッコミはすまい。と心に留めておくことにした。

リリは……まったくダメなようだ。

なんでもインストールできるというスキルには、なるべく頼りたくないらしく──

彼女なりに必死で頑張っているのだが……
歩行器のようなガイドに捕まり、へっぴり腰でプルプルと震えるその姿は、

スーパーのカートに歩かされているお婆ちゃんのようであった。

そして、全ての目線を釘付けにしたのは──
セーブルとシェリーの、圧巻のペア演舞だった。

一見すれば、ただのフィギュアペアのようにも見える。だが、影を操る彼らの舞いは、まるで一本の映画のよう。

魔王との死闘。シェリーの誘拐。セーブルの激怒と絶望──
そして、ふたりで力を合わせ、闇を砕くクライマックス。

スピードと重力を無視したかのような超絶アクションの連続。
シェリーが宙を舞い、セーブルはお姫様抱っこでキャッチする。
そして見つめ合う二人──
彼女が出した、遥か先に現れた魔王と、
そこまで伸びる影のレール。
セーブルが鮮やかにその上を滑り抜け、巨大なハルバードで魔王を真っ二つにした。

その一瞬一瞬が、氷上に刻まれた物語だった。

「溶けねぇ氷が溶けるかと思ったわ……」

そんな家族たちの楽しげな姿を、おっさんはゆったりと後ろ向きに滑りながら、携帯で静かに撮影していた。

…こんな時間が、ずっと続けばいいと思いながら。
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