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第九章
第二話
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無事にパーティ登録を終え、
絡んできた酔っ払い冒険者を秒で昏倒させた三人は、
リリの後輩である受付嬢の案内のもと、A級冒険者御用達と名高い防具店を訪れていた。
この工房は、王都で冒険者を志す者にとって、
まさに“到達点”。
並の装備とは桁が違う、ゼロが二つ三つ増える超高級店だ。
店内には、ハンガーに吊されたような量産品など一切なく、
すべての装備が重厚なガラスケースの中で、まるで美術品のように並べられている。
──だが。
クチャクチャとガムを噛みながら、行儀悪くズカズカと店内を一周したテティスは、眉をひそめて一言。
「ナニこれ?ダッサくね?ただの重そうな鉄じゃん?」
その瞬間、店内の空気がピシリと凍りついたような気配が走った。
がたいの良い戦士や、顔の整った剣士──
実力も、懐にも余裕のある客たちの視線が、
そして黒服を着たスタッフたちの眼光が、
まるで氷の矢のように少女へと突き刺さる。
その中を、金髪のつけ髭風店主が静かに歩み出る。
金縁メガネが光を反射し、その瞳には明らかな怒気が宿っていた。
「……お客様。うちの品に、何かご不満でも?」
静かな声の中に、明確な威圧を込めて。
だが、テティスは怯まない。むしろ、あきれたように肩をすくめて言った。
「つーかさ、アンタんとこ、センス皆無?
あーし、これで装備つくりたかったんだけど~?
ここで頼んだら、素材泣くっしょ?」
そう言って、カウンターに“ガシャリ”と音を立てて置いたのは──
三毛猫ドラゴンの三色鱗。
キビ魍魎の抜け毛。
そして、いつかの凍らせた鰐サソリの外殻。
その全てが、見るだけで吐き気を催しそうなほど強烈な魔素を帯びた、凶悪な素材だった。
次の瞬間──
店主も客も、腰を抜かし、
ガタガタと震えながらその場に凍りつくのであった。
「テティス、それを仕舞ってくださいまし。
他のお店を探しに参りましょう」
柔らかく場を締めくくろうとするパステルの声に、店の空気もやっと解放に向かいかけた、そのとき──
「グァッハッハッハッハッ!お嬢ちゃん達!
とんでもねぇモン持ってやがるなぁ!!」
奥からズシンと現れたのは、へたり込んだ黒服の店員たちをズカズカと踏みつけながら歩いてくる、下品な笑い声の主。
上半身ハダカ、下はステテコ。どこか既視感のあるそのだらしない風貌──そう、あの“おっさん”を彷彿とさせるワニの獣人だった。
「悪ぃなぁ、こんなカスみてぇな防具しか並べてなくてよ……」
ぶっとい腕で後頭部をガシガシかきながら、巨大な口をもごもごさせて頭を下げるワニ男。
その視線は、カウンターに置かれた素材に釘付けだった。
「こいつぁ……どんな魔物かすら想像もつかねぇ…
とんでもねぇお宝だ。
……そっちの、品のあるお嬢ちゃん──
一度、コイツを試してみてくれや」
そう言うなり、ワニ男は異空間のような穴に腕を突っ込み、ガサゴソと何かを探り出す。
取り出したのは──胡蝶蘭の花びらのように艶やかに輝く、薄桃色のチェーンメイル。
繊細な鱗が織り込まれたその一着は、まるでドレスのように優美で、
膝上のミニスカート仕様という、ちょっぴり大胆な“戦う姫様”スタイルのワンピース鎧だった。
「ちょ!? マ!? これマ!?
パーちんにバチくそ映えんじゃね!?」
テティスが叫んだその声は、店内の空気を一変させた。
日々、テティス先生から叩き込まれてきたギャル服指導により、多少の肌見せでは動じなくなっていたパステルであるが──
この防具は、完全に次元が違った。
上品な花弁のように編み込まれた鎖──要するに、
スッカスカなのである。
「こ……このような、破廉恥な……っ」
顔を真っ赤にして拒否の姿勢をとる王女。
だが──
「ぱーるぅ~♡かわい~ってば!着てみてぇ~!」
トゥエラに後ろからぐいっと背中を押され、そのまま強制的に試着室へと押し込まれる王女。
──数分後。
ヒールの音がコツリと響き、カーテンの奥から現れたその姿に、
店内は一瞬、時が止まった。
芸術品のようなその美貌と、鎧とは思えぬ優美なシルエット。
キラキラと光を受けて煌めく鎖が、まるで舞い落ちる花びらのように彼女を包み込む。
そして──次の瞬間。
店員たちが一斉に鼻血を吹き、
床は、まるでレッドカーペットならぬ「血の海」と化したのであった──。
➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖
銛で胴体を貫かれたにも関わらず、一向に暴れるのをやめなかった化け物ダコを、
セーブル達の協力を経てようやく息の根を止める。
苦し紛れにおっさんに向かって吐いた墨も、
シェリーが展開した大きな盾のような影の中に吸い込まれていった。
「こてぇたぁ…腰いわすかと思ったがや。」
おっさんは手摺りにもたれかかり、疲労困憊。
すると、上着の胸ポケットから、ワサワサと現れる、ビートル君出張組が五匹。
タコの体内に潜り込み、毒袋らしき内臓を引き摺り出してきた。
それを確認したセーブルは、自身から伸びた影を操って巨大ダコが見えなくなる程真っ黒に包み込み──
「これで汚れやヌメリは大丈夫でしょう」と言った。
おっさんは、ようやく呼吸を整えると、もっさりと立ち上がり、腰袋からスルリと取り出した一本の包丁を構えた。
──海竜のキバを研ぎ澄ました、異世界製の刺身包丁。
その蒼みがかった切っ先が、巨大なタコの足の付け根へと吸い込まれるように滑り込み──
ザクリ。
「まずは味見だっぺ」
ぶっとい足の一本を切り落とすと、まだ死後間もない足は、吸盤をパクパクと蠢かせながら、どこか意志を持ったようにうねっている。
断面を見れば、真珠のように淡く輝き、食欲をそそる。
おっさんは足の先を薄~くスライスし、ワサビ醤油にちょんとつけて、ひとくち。
──コリッ。
その瞬間、歯を押し返すほどの弾力、かすかに甘く、とろけるような旨みが、口いっぱいに広がった。
「んぁ~~っ!! こいつぁ美味ぇ!!」
その様子を見ていた船員たちが、思わず「ゴクリ」と唾を飲む音を立てる。
「じゃんじゃん切ってやっから、みんな食わっしぇ!」
おっさんが笑うと、まるで合図のように、ざわっと船の空気がはじけた。
潮風の吹き抜ける甲板の上。
乱雑に並べた樽をテーブル代わりに、即席のタコ刺しパーティーが始まる。
皿代わりの板に並べられていくスライスタコ。
小瓶に入った調味料が飛び交い、酒の栓が次々に抜かれる。
「ウメエ!こんなウメエ刺身初めてだ!!」
「すごいわ……アタイの躰まで蕩けちゃいそう……」
タコ足はどんどん切り分けられ、盛り付けられていく。
おっさんの手元で、包丁がシュッ、シュッと風を切り、巨大なタコの足が見事な薄造りになっていくたび、歓声が上がる。
──こうして、戦いのあとの祝宴は、異世界の甲板に咲く潮の香りと笑顔に包まれながら、静かに、でも豪快に幕を開けたのだった。
おっさんは酒樽を一つ取り出して、X状に組まれた台の上に置く。
中身は、自家製の焼酎と樹海の湧き水を1:1で割り、寝かせたもの。
酒精も程よく落ち着き、
即席で作った水割りとは全く違う、まろやかな旨さがある。
ジョッキに氷をごてしら詰め込み酒を注ぎ──
一杯を海賊風美人船長に差し出す。
「ア…アタイにくれんのかい?酔っちまうじゃねぇか──アンタによ…」
おっさんとジョッキをぶつけ、喉へと落とせば……
「ふぁぁ~~!!さ…最っっ高に旨いじゃねぇか!」
この時点で、おっさんの仕込んだこの酒は、
いつもの焼酎を完全に上回っていた。
これ以外にも、ビートル君達の技術によって、
ジンやウォッカ、ウイスキー風の酒も自宅で量産されており、
酒造場にしなかった地下室の半面も、棚と樽で埋め尽くされようとしているのだった。
➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖
そしてタコパーティーは第二フェーズへと向かい──
歪なくぼみのある巨大鉄板と、バーベキューグリルを展開したおっさんは、
手早くタコ焼きを丸めてゆく。
汗が落ちぬように捻ったはちまきを額に締めたその姿は……
どこから見ても夜店のたこ焼き職人であった。
オコの実を絞ったソースの香りが甲板状に広がり、
刺身とはまた違う、暴力的な食欲を誘発する。
気づけば──
空の色はすっかり茜に染まり、太陽は静かに海の向こうへと沈みかけていた。
夜間航海は命知らずの蛮行。
その危険性を知る船長は、誰よりも早く叫ぶ。
「錨を降ろしな!! 今日はここまでだよ!!」
バサッと帆が畳まれ、波間にゆっくりと船が落ち着いてゆく。
どことも知れぬ大海原、遥か空高く──
ただ一人、マストの天辺で見張りをしている船員だけが、恨めしそうに甲板を見下ろす。
その下では、無限に続くかのような乱痴気騒ぎ。
焼きたてのたこ焼きが次々と皿に盛られ、
ジョッキが何度も空になり、
笑い声と潮の香りが夜風に乗って、どこまでも広がっていった──。
絡んできた酔っ払い冒険者を秒で昏倒させた三人は、
リリの後輩である受付嬢の案内のもと、A級冒険者御用達と名高い防具店を訪れていた。
この工房は、王都で冒険者を志す者にとって、
まさに“到達点”。
並の装備とは桁が違う、ゼロが二つ三つ増える超高級店だ。
店内には、ハンガーに吊されたような量産品など一切なく、
すべての装備が重厚なガラスケースの中で、まるで美術品のように並べられている。
──だが。
クチャクチャとガムを噛みながら、行儀悪くズカズカと店内を一周したテティスは、眉をひそめて一言。
「ナニこれ?ダッサくね?ただの重そうな鉄じゃん?」
その瞬間、店内の空気がピシリと凍りついたような気配が走った。
がたいの良い戦士や、顔の整った剣士──
実力も、懐にも余裕のある客たちの視線が、
そして黒服を着たスタッフたちの眼光が、
まるで氷の矢のように少女へと突き刺さる。
その中を、金髪のつけ髭風店主が静かに歩み出る。
金縁メガネが光を反射し、その瞳には明らかな怒気が宿っていた。
「……お客様。うちの品に、何かご不満でも?」
静かな声の中に、明確な威圧を込めて。
だが、テティスは怯まない。むしろ、あきれたように肩をすくめて言った。
「つーかさ、アンタんとこ、センス皆無?
あーし、これで装備つくりたかったんだけど~?
ここで頼んだら、素材泣くっしょ?」
そう言って、カウンターに“ガシャリ”と音を立てて置いたのは──
三毛猫ドラゴンの三色鱗。
キビ魍魎の抜け毛。
そして、いつかの凍らせた鰐サソリの外殻。
その全てが、見るだけで吐き気を催しそうなほど強烈な魔素を帯びた、凶悪な素材だった。
次の瞬間──
店主も客も、腰を抜かし、
ガタガタと震えながらその場に凍りつくのであった。
「テティス、それを仕舞ってくださいまし。
他のお店を探しに参りましょう」
柔らかく場を締めくくろうとするパステルの声に、店の空気もやっと解放に向かいかけた、そのとき──
「グァッハッハッハッハッ!お嬢ちゃん達!
とんでもねぇモン持ってやがるなぁ!!」
奥からズシンと現れたのは、へたり込んだ黒服の店員たちをズカズカと踏みつけながら歩いてくる、下品な笑い声の主。
上半身ハダカ、下はステテコ。どこか既視感のあるそのだらしない風貌──そう、あの“おっさん”を彷彿とさせるワニの獣人だった。
「悪ぃなぁ、こんなカスみてぇな防具しか並べてなくてよ……」
ぶっとい腕で後頭部をガシガシかきながら、巨大な口をもごもごさせて頭を下げるワニ男。
その視線は、カウンターに置かれた素材に釘付けだった。
「こいつぁ……どんな魔物かすら想像もつかねぇ…
とんでもねぇお宝だ。
……そっちの、品のあるお嬢ちゃん──
一度、コイツを試してみてくれや」
そう言うなり、ワニ男は異空間のような穴に腕を突っ込み、ガサゴソと何かを探り出す。
取り出したのは──胡蝶蘭の花びらのように艶やかに輝く、薄桃色のチェーンメイル。
繊細な鱗が織り込まれたその一着は、まるでドレスのように優美で、
膝上のミニスカート仕様という、ちょっぴり大胆な“戦う姫様”スタイルのワンピース鎧だった。
「ちょ!? マ!? これマ!?
パーちんにバチくそ映えんじゃね!?」
テティスが叫んだその声は、店内の空気を一変させた。
日々、テティス先生から叩き込まれてきたギャル服指導により、多少の肌見せでは動じなくなっていたパステルであるが──
この防具は、完全に次元が違った。
上品な花弁のように編み込まれた鎖──要するに、
スッカスカなのである。
「こ……このような、破廉恥な……っ」
顔を真っ赤にして拒否の姿勢をとる王女。
だが──
「ぱーるぅ~♡かわい~ってば!着てみてぇ~!」
トゥエラに後ろからぐいっと背中を押され、そのまま強制的に試着室へと押し込まれる王女。
──数分後。
ヒールの音がコツリと響き、カーテンの奥から現れたその姿に、
店内は一瞬、時が止まった。
芸術品のようなその美貌と、鎧とは思えぬ優美なシルエット。
キラキラと光を受けて煌めく鎖が、まるで舞い落ちる花びらのように彼女を包み込む。
そして──次の瞬間。
店員たちが一斉に鼻血を吹き、
床は、まるでレッドカーペットならぬ「血の海」と化したのであった──。
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銛で胴体を貫かれたにも関わらず、一向に暴れるのをやめなかった化け物ダコを、
セーブル達の協力を経てようやく息の根を止める。
苦し紛れにおっさんに向かって吐いた墨も、
シェリーが展開した大きな盾のような影の中に吸い込まれていった。
「こてぇたぁ…腰いわすかと思ったがや。」
おっさんは手摺りにもたれかかり、疲労困憊。
すると、上着の胸ポケットから、ワサワサと現れる、ビートル君出張組が五匹。
タコの体内に潜り込み、毒袋らしき内臓を引き摺り出してきた。
それを確認したセーブルは、自身から伸びた影を操って巨大ダコが見えなくなる程真っ黒に包み込み──
「これで汚れやヌメリは大丈夫でしょう」と言った。
おっさんは、ようやく呼吸を整えると、もっさりと立ち上がり、腰袋からスルリと取り出した一本の包丁を構えた。
──海竜のキバを研ぎ澄ました、異世界製の刺身包丁。
その蒼みがかった切っ先が、巨大なタコの足の付け根へと吸い込まれるように滑り込み──
ザクリ。
「まずは味見だっぺ」
ぶっとい足の一本を切り落とすと、まだ死後間もない足は、吸盤をパクパクと蠢かせながら、どこか意志を持ったようにうねっている。
断面を見れば、真珠のように淡く輝き、食欲をそそる。
おっさんは足の先を薄~くスライスし、ワサビ醤油にちょんとつけて、ひとくち。
──コリッ。
その瞬間、歯を押し返すほどの弾力、かすかに甘く、とろけるような旨みが、口いっぱいに広がった。
「んぁ~~っ!! こいつぁ美味ぇ!!」
その様子を見ていた船員たちが、思わず「ゴクリ」と唾を飲む音を立てる。
「じゃんじゃん切ってやっから、みんな食わっしぇ!」
おっさんが笑うと、まるで合図のように、ざわっと船の空気がはじけた。
潮風の吹き抜ける甲板の上。
乱雑に並べた樽をテーブル代わりに、即席のタコ刺しパーティーが始まる。
皿代わりの板に並べられていくスライスタコ。
小瓶に入った調味料が飛び交い、酒の栓が次々に抜かれる。
「ウメエ!こんなウメエ刺身初めてだ!!」
「すごいわ……アタイの躰まで蕩けちゃいそう……」
タコ足はどんどん切り分けられ、盛り付けられていく。
おっさんの手元で、包丁がシュッ、シュッと風を切り、巨大なタコの足が見事な薄造りになっていくたび、歓声が上がる。
──こうして、戦いのあとの祝宴は、異世界の甲板に咲く潮の香りと笑顔に包まれながら、静かに、でも豪快に幕を開けたのだった。
おっさんは酒樽を一つ取り出して、X状に組まれた台の上に置く。
中身は、自家製の焼酎と樹海の湧き水を1:1で割り、寝かせたもの。
酒精も程よく落ち着き、
即席で作った水割りとは全く違う、まろやかな旨さがある。
ジョッキに氷をごてしら詰め込み酒を注ぎ──
一杯を海賊風美人船長に差し出す。
「ア…アタイにくれんのかい?酔っちまうじゃねぇか──アンタによ…」
おっさんとジョッキをぶつけ、喉へと落とせば……
「ふぁぁ~~!!さ…最っっ高に旨いじゃねぇか!」
この時点で、おっさんの仕込んだこの酒は、
いつもの焼酎を完全に上回っていた。
これ以外にも、ビートル君達の技術によって、
ジンやウォッカ、ウイスキー風の酒も自宅で量産されており、
酒造場にしなかった地下室の半面も、棚と樽で埋め尽くされようとしているのだった。
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そしてタコパーティーは第二フェーズへと向かい──
歪なくぼみのある巨大鉄板と、バーベキューグリルを展開したおっさんは、
手早くタコ焼きを丸めてゆく。
汗が落ちぬように捻ったはちまきを額に締めたその姿は……
どこから見ても夜店のたこ焼き職人であった。
オコの実を絞ったソースの香りが甲板状に広がり、
刺身とはまた違う、暴力的な食欲を誘発する。
気づけば──
空の色はすっかり茜に染まり、太陽は静かに海の向こうへと沈みかけていた。
夜間航海は命知らずの蛮行。
その危険性を知る船長は、誰よりも早く叫ぶ。
「錨を降ろしな!! 今日はここまでだよ!!」
バサッと帆が畳まれ、波間にゆっくりと船が落ち着いてゆく。
どことも知れぬ大海原、遥か空高く──
ただ一人、マストの天辺で見張りをしている船員だけが、恨めしそうに甲板を見下ろす。
その下では、無限に続くかのような乱痴気騒ぎ。
焼きたてのたこ焼きが次々と皿に盛られ、
ジョッキが何度も空になり、
笑い声と潮の香りが夜風に乗って、どこまでも広がっていった──。
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