DIYと異世界建築生活〜ギャル娘たちとパパの腰袋チート

みーくん

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第九章

第九話

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「さっすがパーパっしょ★彡 
  相変わらずやる事バチくそヤバたにえ~んみたいな?」

出航して数日の航海で、亡霊の操る巨大海賊船を沈めたというセーブルからの報告を受けた国王は、
娘達との和やかな歓談を切り上げ、両国の関係者と共に執務へと戻っていった。

島国から訪れていた外交官である第二王子は、
王女パステリアーナに対し深く謝罪した。

「我が兄の不始末がこのような惨劇を──
   謝罪の言葉すら見つからない……」

パステルは悲しみに目を伏せ、幼かった昔の記憶を思い起こしていた。

──その頃は、国同士で決められた将来の婚約者でしかなかったが、
王子もパステルも非常に仲睦まじく、二人で花壇を育てたり、草で編んだ冠を被せあったりと
微笑ましい友好を暖め合っていた。

いつの頃からだったのか──
王子が人が変わったようになってしまい、
暴言を吐き、王族以外の貴族、平民達を見下すような性格になり、しまいにはパステルに手を上げようとする場面まであった。

勿論、その手は若きセーブルによって防がれたのだが……

それでも心優しいパステルは、何か悩みや原因があるのではと、真摯に話を聞き、捻じ曲がってしまった王子の性格をどうにか解きほぐそうと
逢瀬を重ねたのだったが──

成長するほどに手のつけられなくなった婚約者に、
ついにパステルは逃げ別れることを決めた。

──限界だったのだ。敬愛する国王や、
自らの父島国の国王のことまで乏める発言をし、
この世の全ての人間を、自分とパステルの下僕にしてやるなどと言い始めた。

その時の彼の眼は、濁りきっていて……
目の前の彼女を見てはいなかった。

実際に見たおっさん以外、誰も想像すらできなかった話──

それは、第一王子の心に巣くってしまった、病的なまでのパステルへの執着だった。

彼は、次第に「物言わぬ王女の人形リアルラブドール」──
パステリアーナの傀儡に執心するようになっていった。

現実の彼女ではなく、
ただ自分を肯定し、微笑んでくれる幻影のような存在。
頭の中にしかいない理想のパステルに、彼は恋をしてしまった。

本物の王女が、ほんの少しでも自分の意に沿わぬ行動をとるたび、
彼の目には「壊れた玩具」としてしか映らなくなっていく。
大切だったはずの婚約者さえ、己の理想に従わぬ
「欠陥品」として、冷たい眼差しで見下ろしていた。

──それでも、彼は「愛していた」のだ。

誰よりも、何よりも。

けれどそれは、
愛しすぎたがゆえに見えなくなった現実。
ひとりよがりの想いが暴走し、全てを狂わせた盲目の愛。

──そして、それが悲劇を招いたのだった。

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

死体の取り扱いに慣れているセーブルの、丁寧かつ正確な検死によって──
引き上げられた遺体の多くは、王国側に身元を報告されていった。

すべてを特定するには至らなかったものの、
行方不明とされていた者たちの大半が、この深海で発見された形となった。

本来であれば、海底を漂っていた水死体など、
腐敗と損壊により、身元の判別など到底不可能なはずである。

──しかし、名のある貴族や、国に仕える高官たちは、
各々の身に魔法的な護符を忍ばせていた。

それが効力を発し、彼らの遺体は“比較的軽微な損傷状態”で回収されたのだった。

一方で──
そういった護符を持たぬ者たち。
すなわち、船の乗組員や、護衛を務めていた兵士たちの姿は、
ただの一体も、発見されることはなかった。

纏め上げられた詳細な報告書は、
魔導伝書渡り鳥ツバメの背に預けられ、迅速にメール並みの速さで隣国──
島国の王へと届けられた。

報告を受けた島国の王は、
我が国の亡き第一王子の顛末と、その犠牲となった人々の記録に、しばし沈黙を落とす。

やがて彼は深く息を吐き──
これから来訪する予定の友好国の公爵一行を、国を挙げて歓待することを誓った。

友好国の公爵を盛大に歓迎する”という建前が添えられていたが──
実際のところは、王が自ら企画した、セーブルとシェリーの結婚式が主目的であった。

すべての報告を終えたセーブルは、静かに通話を終える。

そして、手にした小さな端末をおっさんに返そうと顔を上げれば──

そこに広がっていたのは、船首デッキで繰り広げられる海鮮と焼酎の宴。

朝から採れたての魚介が並べられ、どんちゃん騒ぎに明け暮れる公爵おっさんと船乗りたちの姿に──
セーブルは、静かに額に手を当てた。

「……せめて午後からに、なりませんでしたか……」

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

夕食を終えたトゥティパの三人娘は、
広々とした大浴場でゆっくりと一日の疲れを洗い流し──

王女の私室へと戻ると、
ふかふかのパジャマに着替えて、甘い香りのするお茶とお菓子を囲む小さな宴が始まる。

それは、どこにでもある女の子たちの時間。
だけど──どこにもない、絆と力に満ちた冒険者たちの夜。

笑い声が響き、枕が宙を舞い、夢みるような時間の中で、明日から再び始まるダンジョン探索に向けて、彼女たちは静かに英気を養うのだった。

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

「──ほんで?トゥーは何を覚えたワケ?」

翌朝、軽い朝食を部屋で済ませた三人は、
地下牢最奥の入り口から、再び迷宮へと身を投じていた。

トゥティパの遠距離オフェンサーギャル代表、テティスが、妹分のトゥエラに問いただす。

カクカクとした、立方体を貼り合わせたような質感の幼女は、朝からご機嫌でぴょんぴょんと飛び跳ね、体の調子を確かめている。

「えーっとねーあのねー……」

いつも元気一杯のトゥエラが、珍しく口籠る。

「ん~~っと……あのねー名前が決まらないのー」

技の出し方ではなく、まさかのネーミングの問題であった。

「トゥエラ、わたくし達に見せてくださいまし、
   良い名前が閃くかもしれませんわよ」

それを聞いて、パッと顔を明るくした彼女は──
フワリと立った自然体の格好から……
後方に重心を移し、数本後退りする。

1~2秒…後退したトゥエラは、その刹那──
己の全ての意識を前方に向け斧を素振った。

物凄い速さで翔んだ斧刃……ではない。
武器は彼女の手にしっかりと握られている。

飛んだのは、斬撃。
やはりカクカクとした、多面立方体のような樹木を、幹ごと切断したのだった。



「みたみたー!?斧の斧がねー!
   ぶあーってとんでくのー!」

「──これが…お父様の仰っていた、
   魂の重心移動コマンド入力ですか……」

「なんか?←に溜めて、→Pみたいな?
    そーゆー動き?」

現実の世界では、テティスは魔法が使えるので、火でも風の刃でも飛ばすことが出来るが、
トゥエラは一切の魔法を使えない。

なので、高所の敵を狙うときには斧をブーメランのように器用に投げて仕留めていた。

その場合、もし多対自分の戦いであったならば、斧刃が帰って来るまでは丸腰となってしまう。

しかし、斬撃を飛ばせ、それを何度も放てるのであれば、戦闘のバリエーションが革命的に広がる。
それを、編み出したのであった。

「音速の斬撃──ソニック……いいえ、
   トゥニックブームと名付けましょう。
   どうです?トゥエラ」

パステルは見たままの飛ぶ斬撃にそう命名した。

「とぅにっくぶーーーん!!
   かっこいいねー!」

お気に召したトゥエラは、上空、水平、地面スレスレなど、様々な撃ち方を瞬時に編み出し、
周辺の木々や草むらを根こそぎ刈ってゆくのだった。

「あーしもチビに負けてらんねーし?
   つーかさー……あーしの縄張り遠距離攻撃にしれっと
   入ってくんなっつーの!?」

目に火のついたテティスは皆と少々離れて、
心を落ち着け、何やら身体を揺すったり、ジャンプしたり、未知の何かを模索し始めた。

わたくしも負けてはいられませんわね」

そう呟いたパステルも、静かに首飾りを握りしめる。
まるで“コマンド”と対話するように、意識の深層へと入り込んでいくのだった。
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