理不尽フットボール~ただボールを蹴っただけなのに

砂糖水色

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2章

4話 天竜杯

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12月の晴れ。
唯一タイトルの可能性が残っている天竜杯準決勝。

相手はオフシーズンにボコされたプロンタール川崎。
現日本代表、元日本代表、アンダー世代の代表をずらっと揃えたメンツだ。
同い年の垣谷陽一はシャドーの位置でスタメン。
伊藤淳也も登録されている。
2人の契約形態が気になる所だけど、別に仲良しでは無いので聞けない。
 
  俺は今日もベンチスタートだ。
監督からは展開次第で後半出番があると言われている。
今日は藤沢ホームスタジアムだ。

今日ウチのチームもキャプテン宮元さんと仲川さんが復帰して、ベストメンバーと言える布陣での試合だ。

J2の下位クラブが準決勝まで来ただけでなく、この試合次第ではクラブ初のビッグタイトルが現実味を帯びてくる。
シーズン終盤になり主力メンバーが揃い準決勝。
まだアップの時間なのにサポーターの熱気もMAXだ。
太鼓のドンドンという音が緊張感を高めている。
サポーターから
「佐古ー今日も決めてくれよー」
そう声援を貰った。
出番があるかは分からないが体の芯が熱を帯びてくる。
 
相手コートを見てみると、
垣谷陽一がリフティングをしている。
ボールを高く蹴り上げ、足首でポンと柔らかくタッチする。
それだけで、空気感が違って見える。
それもそのはず、垣谷陽一はチームでもアンダー世代の代表でも10番を付け結果を出し続けている。
チェルシーからオファーが来たとかバルサが狙っているとかよくネットニュースにもなっている存在だ。
 その一方でテレビ等にも出演。紀香ちゃんとの美男美女双子と取り上げられたりしている。
 同い年なのに。
J2のベンチで燻っている俺とは大違いだ。
…羨ましい。
「よぉ!絶好調?佐古ちゃん。今日もよろしくな。」
 相変わらず胡散臭い笑顔で伊藤が話しかけてくる。
ウチが負けるわけない。そういう自信が滲み出ている。
伊藤はシーズン途中から出場機会を増やし、最近初アシストを記録した。
ユースの時と同じ14番を背負っているのでチームから期待されているのがわかる。
「うちの陽ちゃんも気合い入っとるで。で、紀香ちゃん来とんの?付き合っとるんやろ?」
何の勘違いだ。
 俺はまだ彼女いない歴=年齢だ。あんな美女と付き合えるわけない。試合を見に来てるのかも知らない。
「ナイナイ。付き合ってないよ。何の勘違いだよ。」
「ほォ。そうなんや。それで陽ちゃんメラメラしとんのかと思っとったわ。」
伊藤はニヤニヤと笑う。
「違うとなると…佐古ちゃん大変やなぁ。」
「何その思わせぶり。怖いんだけど」
「ま、今日は楽しもうや。」
そう言って拳を突き出してくる。
…正直こういうの憧れてた。
まぁ、お互いベンチスタートなんだけど。
俺も拳を突き出しコツンとぶつけ…ようとしたらサッと手をかわされた。
 なんだコイツ!
伊藤はケラケラと笑い
「じゃー試合後にでもまたな!」
そう言ってベンチに戻って行った。
紀香さん来てんのかな?そう思い観客席を眺めてみるが見つかる訳がない。
ホームのゴール裏に名前を呼ばれた気がして見てみると
「常識を覆せ!佐古剛!」
そう手書きで書いてある横断幕を見つけた。
横断幕の後ろには同じクラスの斎藤が全力で手を振っている。数人挟んで、気難しい顔をした英語教師の村田が立っている。
磐田のファンのはずなのに、ウチのユニフォームを着用している。ピシッと決めた七三に几帳面そうなメガネ。痩身な体にユニフォームが全然似合っていない。
だけど、試合に出たい。
そして結果を出したい。
初めて感じる強烈な使命感と高揚感。
身体が芯から震えるのを感じた。

 

 

 

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