偽装離婚のつもりでしたが、ちょうどいい機会なのでそのまま離婚します！

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　今日は私ライネと夫であるカイルの結婚記念日。

　部屋の壁は綺麗に装飾され食卓には豪勢な料理が所狭しと並べられている。

　これは所謂サプライズというやつ、今日はカイルの帰りが少し遅いからその間にメイドと協力して急いで準備したの。

　6時には帰ってくると言っていたから間に合ってよかったわ。

　
「お嬢様、ケーキの準備も出来ております。ご要望ございましたらいつでもお声がけください」

「ありがとう。貴方達がいてくれて本当に助かったわ。私一人じゃこんなに豪勢にはできませんもの」

「いえいえ。私共も嬉しいのです。結婚されてまだ1年も経っていらっしゃらないのに何処かお2人は疎遠の様でしたので。旦那様もこれはお喜びになると思います」


　確かに私とカイルはまだ結婚して1年しか経っていないのにすれ違いが多い。仕事が忙しいのは分かるけどやっぱり寂しくて…。それをメイド長に相談したらこのサプライズを計画してくれたの。

　これならきっと今日が素晴らしい日になるわ！早く帰ってこないかしら、カイル。


◇◇◇◇


　ゴーン

　時計の針が2つとも12時を指し、今日という日の終わりを告げる。

　手も付けられていない豪勢な料理は既に冷め切っており、いつしか外は大雨になっていた。

　メイド長が1人食卓につくライネに声を掛ける。


「お嬢様…。今日はもうお休みになれてはどうですか？夜ももう遅いですし」

「いえ大丈夫よ。それよりカイルが心配なの。もしかしたら何か事故にでも巻き込まれているかもしれないじゃない。帰ってくるまで待つわ」

「分かりました。では暖かいココアをお持ちしますね」


◇◇◇◇


　時計の針が5時を示す頃、屋敷の扉を勢いよく開け男が一人入ってきた。

　顔が赤く、足取りがおぼつかずすぐに倒れてしまう程に酔ったカイルだった。

　ライネはカイルの近くに椅子を持ってきて座らせると1杯の水を渡す。


「お帰り。遅かったのね。これをお水」

「あ？何だか今日は飲みたかったんだよ」

「そうなの…。カイル、今日って何の日か知ってる？」

「知らないって」

「今日は…私達の結婚記念日だったのよ。あなたのためにいろんな料理も用意してたの」


　するとカイルはコップに入った水をライネにかける。


「なんだよ！！それじゃあまるで僕が悪いみたいじゃないか！悪いのは僕のことをボンボンの無能だと陰口を叩いたあの村長だろ！！ちょっとコネがあるからって偉そうに、僕は無いも悪くない」


　酔いの周りが酷く、何を言っているのかすら分からない。

　元々、責任を他人に擦り付ける傾向がある性格だったか今日は特にひどかった。

　水を掛けられたライネは酔ったカイルを放置して自室にこもる。


　せっかくの…せっかくの結婚記念日だったのに…。

　
　ライネは言い表しがたい感情に胸を締め付けられすすり泣いた。