偽装離婚のつもりでしたが、ちょうどいい機会なのでそのまま離婚します!

京月

文字の大きさ
2 / 3

2

しおりを挟む
「すまなかった!!」

 
 メイドから何があったか聞いたのだろう。私と会うなり頭を下げるカイル。


「…いいのよ。カイルも領地の仕事で疲れていらしたのよね」

「そうなんだ!!聞いてくれよ、3つの村を束ねてるゴゴっていう村長が僕のことを馬鹿にしたんだ!あのジジイが僕を馬鹿にしなければあんなことにならなくて済んだのに…」


 そう言ってすぐに責任転換をして自分を正当化したカイルを見てライネは表情を暗くする。

 カイルがこういう性格なのは元々知ってましたけど、最近はそれがどんどんと酷くなっているような気がします。なんででしょうか、カイルを見ていると嫌な気分になりますわ。


「そうですか。もうこんな時間ですが仕事に行かなくてよろしいのですか?」

「そうだった!今日は家で食事をするから。ライネの手料理が食べたいな」

「…分かりました。行ってらっしゃいませ」


 カイルが慌てて屋敷を飛び出した後、ライネはメイド長を呼ぶ。


「今日の料理を頼んでもいいかしら。どうしても作る気になれませんの」

「……畏まりました。それとお嬢様に手紙が届いております」

「手紙?」


 手渡された手紙の差出人を見てライネの表情は明るくなった。


「すぐに出かける準備をしますわ!手伝ってください!」


◇◇◇◇


 馬車を走らせライネがやってきたのは町のはずれにある一軒の小屋だった。

 馬車を下りるライネに1人の青年が声を掛ける。


「やあライネ!久しぶり」

「会えてうれしいですバロン!!」


 清潔に整えられた髪に整った容姿、程よく鍛えられた大きな体は頼りがいを感じる。
 
 彼の名はバロン、ライネの幼馴染だ。

 身分は平民だがその愛嬌の良さと何でもそつなくこなせる器用さからライネの両親に大変気に入られ幼少期にはよくライネの屋敷に出入りしていた。

 ある程度歳を重ねた頃、ライネの父の紹介で他国の学園に留学をしたのだが、届いた手紙に戻ってきたことが記されており急いで駆け付けたのだ。


「背が伸びましたわね」

「そうかな?ライネが小さくなっただけじゃない?」

「またそんなことを言って私をからかいますの?…フフフ」


 相変わらずの性格ですが最後に見た時からバロンは成長しています。背丈もライネと比べると15センチ程高いですね。スラっとした手足が何だか大人っぽくて素敵に…何を考えているんですの私は!!

 顔を赤くするライネを他所にバロンは小屋に入るよう促す。


「いいお茶を持ってきたんだ。飲んでいってくれ」

「もちろん!いただきますわ!!」



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

欲しいものが手に入らないお話

奏穏朔良
恋愛
いつだって私が欲しいと望むものは手に入らなかった。

盗み聞き

凛子
恋愛
あ、そういうこと。

さようなら、あなたとはもうお別れです

四季
恋愛
十八の誕生日、親から告げられたアセインという青年と婚約した。 幸せになれると思っていた。 そう夢みていたのだ。 しかし、婚約から三ヶ月ほどが経った頃、異変が起こり始める。

婚約者を寝取った妹に……

tartan321
恋愛
タイトル通りです。復讐劇です。明日完結します。

あなたでなくては

月樹《つき》
恋愛
私の恋人はとても女性に人気がある人です。いつも周りには美しい人達が彼を取り囲んでいます。でも良いのです。だって彼だけが私の大切な…。

婚約破棄を喜んで受け入れてみた結果

宵闇 月
恋愛
ある日婚約者に婚約破棄を告げられたリリアナ。 喜んで受け入れてみたら… ※ 八話完結で書き終えてます。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

彼は亡国の令嬢を愛せない

黒猫子猫
恋愛
セシリアの祖国が滅んだ。もはや妻としておく価値もないと、夫から離縁を言い渡されたセシリアは、五年ぶりに祖国の地を踏もうとしている。その先に待つのは、敵国による処刑だ。夫に愛されることも、子を産むことも、祖国で生きることもできなかったセシリアの願いはたった一つ。長年傍に仕えてくれていた人々を守る事だ。その願いは、一人の男の手によって叶えられた。 ただ、男が見返りに求めてきたものは、セシリアの想像をはるかに超えるものだった。 ※同一世界観の関連作がありますが、これのみで読めます。本シリーズ初の長編作品です。 ※ヒーローはスパダリ時々ポンコツです。口も悪いです。 ※新作です。アルファポリス様が先行します。

処理中です...