3 / 3
3
しおりを挟む
バロンが出してくれた紅茶を一口飲む。
「本当に美味しいですわ!こんなの初めて」
「気に入ってくれて嬉しいよ。これは俺も大好きで向こうでも暇があれば飲んでたんだ」
「そうだったんですの。もっと他国の話を聞かせてちょうだい」
バロンの話はとても面白かった。見たこともないはずなのにまるで今体験しているかのような時間はここ最近で一番安らぐ時間でした。
気が付けば夕日が沈む時間になって…家に帰らなければいけませんわね。
◇◇◇◇
待たせていた馬車に向かうライネをバロンは引き留める。
「結婚したって聞いたんだけど…」
「……ええ」
「風の噂で聞いた。あんまり出来た奴じゃないって」
「確かに…そうですわね。最初はこんな風になるなんて予想もつかなくて、見通しが甘いですわね私って」
自虐してしまうなんて…私どうやら疲れているみたいですね。あまりこんな姿をバロンには見せたくなかったのですけど…。
バロンはゆっくりとライネに近づき耳元でささやく。
「またここにきて。待ってるから」
「……もちろんですわ」
多分私達はお互いのことを好いている。
でもそれは決して許されてはいけないことですわ。この気持ちを言葉にしてしまったら、世間から何と言われるか分かりませんもの。
馬車に揺られながらライネは胸を締め付けられるほど苦しく、それでいて苦痛ではない不思議な感覚を身にやつしていた。
◇◇◇◇
家に帰る頃にはすっかり日が暮れていた。
カイルが玄関で私の帰りを待っている。
「遅かったじゃないか。どこで何してたの?」
「…お友達とお茶会を。気が付いたらこんな時間に。ごめんなさい」
「遅くなるならそう言っておいてくれよ」
どの口がそんなことを言えるんですか、そう思いましたけど口にはしません。
私とカイルは食卓に着き、一緒に食事をとりますが会話は一切ありません。
この重苦しい空気がカイルに対する嫌悪感をさらに増長されている気がします。
カイルは口にしている食事を見つめる。
「これ、ライネが作った奴じゃないよね?」
「…」
「どうしてこう僕をイラつかせるかな。僕は何も悪くないのに、むしろ頑張ってるだろ?領地の管理なんて大きな仕事を毎日こなしているんだから。って女の君に行っても分からないか」
貴族として当たり前にするべきことをあたかも偉業のように話すカイルに何も思わないわけではありません。ですが言い返す気にもなれません。
何というのでしょうか…たぶん私は心底カイルとの関わりを無意識のうちに避けてしまっているにですわ。喋るのも嫌なほどに彼を嫌悪している。愛なんて冷めてしまったのですね。
…バロンに会いたい。
「飲みに行くから」
そう言い残してカイルは出て行きました。
その日から2日間カイルは帰きませんでした。
「本当に美味しいですわ!こんなの初めて」
「気に入ってくれて嬉しいよ。これは俺も大好きで向こうでも暇があれば飲んでたんだ」
「そうだったんですの。もっと他国の話を聞かせてちょうだい」
バロンの話はとても面白かった。見たこともないはずなのにまるで今体験しているかのような時間はここ最近で一番安らぐ時間でした。
気が付けば夕日が沈む時間になって…家に帰らなければいけませんわね。
◇◇◇◇
待たせていた馬車に向かうライネをバロンは引き留める。
「結婚したって聞いたんだけど…」
「……ええ」
「風の噂で聞いた。あんまり出来た奴じゃないって」
「確かに…そうですわね。最初はこんな風になるなんて予想もつかなくて、見通しが甘いですわね私って」
自虐してしまうなんて…私どうやら疲れているみたいですね。あまりこんな姿をバロンには見せたくなかったのですけど…。
バロンはゆっくりとライネに近づき耳元でささやく。
「またここにきて。待ってるから」
「……もちろんですわ」
多分私達はお互いのことを好いている。
でもそれは決して許されてはいけないことですわ。この気持ちを言葉にしてしまったら、世間から何と言われるか分かりませんもの。
馬車に揺られながらライネは胸を締め付けられるほど苦しく、それでいて苦痛ではない不思議な感覚を身にやつしていた。
◇◇◇◇
家に帰る頃にはすっかり日が暮れていた。
カイルが玄関で私の帰りを待っている。
「遅かったじゃないか。どこで何してたの?」
「…お友達とお茶会を。気が付いたらこんな時間に。ごめんなさい」
「遅くなるならそう言っておいてくれよ」
どの口がそんなことを言えるんですか、そう思いましたけど口にはしません。
私とカイルは食卓に着き、一緒に食事をとりますが会話は一切ありません。
この重苦しい空気がカイルに対する嫌悪感をさらに増長されている気がします。
カイルは口にしている食事を見つめる。
「これ、ライネが作った奴じゃないよね?」
「…」
「どうしてこう僕をイラつかせるかな。僕は何も悪くないのに、むしろ頑張ってるだろ?領地の管理なんて大きな仕事を毎日こなしているんだから。って女の君に行っても分からないか」
貴族として当たり前にするべきことをあたかも偉業のように話すカイルに何も思わないわけではありません。ですが言い返す気にもなれません。
何というのでしょうか…たぶん私は心底カイルとの関わりを無意識のうちに避けてしまっているにですわ。喋るのも嫌なほどに彼を嫌悪している。愛なんて冷めてしまったのですね。
…バロンに会いたい。
「飲みに行くから」
そう言い残してカイルは出て行きました。
その日から2日間カイルは帰きませんでした。
15
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
さようなら、あなたとはもうお別れです
四季
恋愛
十八の誕生日、親から告げられたアセインという青年と婚約した。
幸せになれると思っていた。
そう夢みていたのだ。
しかし、婚約から三ヶ月ほどが経った頃、異変が起こり始める。
彼は亡国の令嬢を愛せない
黒猫子猫
恋愛
セシリアの祖国が滅んだ。もはや妻としておく価値もないと、夫から離縁を言い渡されたセシリアは、五年ぶりに祖国の地を踏もうとしている。その先に待つのは、敵国による処刑だ。夫に愛されることも、子を産むことも、祖国で生きることもできなかったセシリアの願いはたった一つ。長年傍に仕えてくれていた人々を守る事だ。その願いは、一人の男の手によって叶えられた。
ただ、男が見返りに求めてきたものは、セシリアの想像をはるかに超えるものだった。
※同一世界観の関連作がありますが、これのみで読めます。本シリーズ初の長編作品です。
※ヒーローはスパダリ時々ポンコツです。口も悪いです。
※新作です。アルファポリス様が先行します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる