罪なき令嬢 (11話作成済み)

京月

文字の大きさ
8 / 11

後編 1話 ベルゾルの乱心

しおりを挟む
 それはベルゾルが学園に戻る1日前の話。
 レナがベルゾルを自室に招き入れた時に遡る。


「私はレナではありません。私の本当の名前はバルメロ家令嬢、レレイナ・バルメロ。あなたのお父様が潰したバルメロ家の生き残りです」


 レナ改めレレイナはバルメロ家の国家反逆罪はバーファーによる偽装であるという真実をベルゾルに伝える。
 衝撃の事実に驚きを隠すことが出来ないベルゾル。
 やっとの思いで言葉を口にする。


「それを素直に信じろと言われても難しい。だが、もしもそれが本当だとして、君の目的は何だい?父上の暗殺か、バルメロ家の復興か?、それとも僕の命かい?」

「何も」

「え?」


 緊張を隠せないベルゾルと違い、レレイナはいつも通り無表情で何も望む物は無いと言い切った。


「最初はグルマ家当主であるバーファーに復讐するためこの屋敷にメイドとして働き始めました。ですが、そこであなたに出会ってしまった。あなたはバーファーとは違う。汚れを知らず、誰よりも真っ直ぐに正義のために動ける人間です。少なくとも私はそう感じました。バーファーは憎いです。ですがベルゾル様が今後当主となり、この国をより良い方向へと導いてくださるのなら私は何も望みません」

「では僕がグルマ家の当主となった後、君はどうするんだ?」


 ベルゾルはレレイナを手放したくは無かった。
 しかしサーマ王女と結婚は避けられない。
 最後の手段としてレレイナを妾として囲い込み、一緒に生活を共にしようとベルゾルは考えていた。


「死にます」

「何故!?もう復讐をしなくても済むのだろう?なら何故幸せになろうとしない?もし、幸せが何かわからないなら、僕と一緒にいよう」


 あたかも自分といることが幸せだと決めつけているベルゾル。
 その純粋過ぎる瞳でレレイナを見つめた。


「その気持ちはとても嬉しく思います。ですがなりません」

「どうしても君の気持ちは変わらないというのか?僕にできることがあれば何でもする。だから、頼む」

「…私を手に入れたいなら、1つだけお願いがございます」

「何でも言ってくれ、僕にできることなら何でも」


 レレイナはベルゾルの耳元でそっとささやく。


「グルマ家を潰してください」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

3歳児にも劣る淑女(笑)

章槻雅希
恋愛
公爵令嬢は、第一王子から理不尽な言いがかりをつけられていた。 男爵家の庶子と懇ろになった王子はその醜態を学園内に晒し続けている。 その状況を打破したのは、僅か3歳の王女殿下だった。 カテゴリーは悩みましたが、一応5歳児と3歳児のほのぼのカップルがいるので恋愛ということで(;^ω^) ほんの思い付きの1場面的な小噺。 王女以外の固有名詞を無くしました。 元ネタをご存じの方にはご不快な思いをさせてしまい申し訳ありません。 創作SNSでの、ジャンル外での配慮に欠けておりました。

新妻よりも幼馴染の居候を優先するって、嘗めてます?

章槻雅希
恋愛
よくある幼馴染の居候令嬢とそれに甘い夫、それに悩む新妻のオムニバス。 何事にも幼馴染を優先する夫にブチ切れた妻は反撃する。 パターンA:そもそも婚約が成り立たなくなる パターンB:幼馴染居候ざまぁ、旦那は改心して一応ハッピーエンド パターンC:旦那ざまぁ、幼馴染居候改心で女性陣ハッピーエンド なお、反撃前の幼馴染エピソードはこれまでに読んだ複数の他作者様方の作品に影響を受けたテンプレ的展開となっています。※パターンBは他作者様の作品にあまりに似ているため修正しました。 数々の幼馴染居候の話を読んで、イラついて書いてしまった。2時間クオリティ。 面白いんですけどね! 面白いから幼馴染や夫にイライラしてしまうわけだし! ざまぁが待ちきれないので書いてしまいました(;^_^A 『小説家になろう』『アルファポリス』『pixiv』に重複投稿。

試した心算などなかった

章槻雅希
恋愛
拙作『試し行為なんて、馬鹿ですか』の元婚約者サイド。 試し行為をした結果、延々と後悔するだけの話で、最後まで自分が悪かったと気づくことはありません。 ネタだしから書き上げるまでに間が空いたので今更感ありますが、勿体ない精神で書き上げて投稿。

てめぇの所為だよ

章槻雅希
ファンタジー
王太子ウルリコは政略によって結ばれた婚約が気に食わなかった。それを隠そうともせずに臨んだ婚約者エウフェミアとの茶会で彼は自分ばかりが貧乏くじを引いたと彼女を責める。しかし、見事に返り討ちに遭うのだった。 『小説家になろう』様・『アルファポリス』様の重複投稿、自サイトにも掲載。

王家の賠償金請求

章槻雅希
恋愛
王太子イザイアの婚約者であったエルシーリアは真実の愛に出会ったという王太子に婚約解消を求められる。相手は男爵家庶子のジルダ。 解消とはいえ実質はイザイア有責の破棄に近く、きちんと慰謝料は支払うとのこと。更に王の決めた婚約者ではない女性を選ぶ以上、王太子位を返上し、王籍から抜けて平民になるという。 そこまで覚悟を決めているならエルシーリアに言えることはない。彼女は婚約解消を受け入れる。 しかし、エルシーリアは何とも言えない胸のモヤモヤを抱える。婚約解消がショックなのではない。イザイアのことは手のかかる出来の悪い弟分程度にしか思っていなかったから、失恋したわけでもない。 身勝手な婚約解消に怒る侍女と話をして、エルシーリアはそのモヤモヤの正体に気付く。そしてエルシーリアはそれを父公爵に告げるのだった。 『小説家になろう』『アルファポリス』に重複投稿、自サイトにも掲載。

貴方の幸せの為ならば

缶詰め精霊王
恋愛
主人公たちは幸せだった……あんなことが起きるまでは。 いつも通りに待ち合わせ場所にしていた所に行かなければ……彼を迎えに行ってれば。 後悔しても遅い。だって、もう過ぎたこと……

断罪茶番で命拾いした王子

章槻雅希
ファンタジー
アルファーロ公爵嫡女エルネスタは卒業記念パーティで婚約者の第三王子パスクワルから婚約破棄された。そのことにエルネスタは安堵する。これでパスクワルの命は守られたと。 5年前、有り得ないほどの非常識さと無礼さで王命による婚約が決まった。それに両親祖父母をはじめとした一族は怒り狂った。父公爵は王命を受けるにあたってとんでもない条件を突きつけていた。『第三王子は婚姻後すぐに病に倒れ、数年後に病死するかもしれないが、それでも良いのなら』と。 『小説家になろう』(以下、敬称略)・『アルファポリス』・『Pixiv』・自サイトに重複投稿。

リリー・フラレンシア男爵令嬢について

碧井 汐桜香
恋愛
王太子と出会ったピンク髪の男爵令嬢のお話

処理中です...