妹の婚約者の娼婦になった私

京月

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あれから2年、私は娼婦として立派に働いていた。
 どうやら私には演技力と愛想があったらしくこの顔も相まってかなりの指名が入る。
 一時期私はエルザンテ一の娼館で売り上げ3位を記録したほど娼婦としては順調な生活をしていた。


 私は今裸でお客さんの相手をしている。
 そのお客さんというのが2年前、私をここに連れてきた店主だ。
 最近はほぼ毎日のように通ってくる。
 店主は秘め事の最中に会話をするのが好きで今もくだらない雑談をしながら快楽を楽しんでいた。


「最近精力的に働いているらしいじゃないかライラ。俺の所にもお前の売り上げが入ってウハウハだ」
「それは良かったわね。人の働いた金で抱く女はさぞ気持ちがいいでしょう」
「言うじゃねえか。1年前とは大違いだ。やっぱり新しい出会いをすると何かを得るのか?」
「得たんじゃない。捨てたのよ」

(良心という足枷を)


 私の言葉にゲラゲラを笑う店主。
 私は店主に1枚の金貨を渡して話を変える。


「それで外の様子はどうなの?」
「はぁ~。なんでそんなこと知りたがるのか俺にはさっぱりだ」
「いいから教えなさい」


 娼婦という仕事はかなり儲かる。
 この店で売り上げ上位をキープしている私の手元には貴族でもおいそれと使えないような額のお金が入ってくる。
 私はそのお金を使ってエルザンテの外、国の貴族たちの情報を店主に集めてもらっているのだ。


「そうだな、最近ある貴族が婚約したことが話題になっていた。男の方はかなり評判のいい色男らしいが、女の方が少し変わっているらしい」
「変わっている?」
「ああ。男の名前はオリン、爵位は侯爵。同等の侯爵令嬢と婚約んだが相手は何と平民と貴族の間にできた子供らしい。訳あって家督を継ぐ資格はあるらしいがあまり例を見ない婚約にかなり噂が立ってた」


 平民との間に生まれた子。
 私はその女性に一人心当たりがあった。


「その女性の名前は?なんていう名前なの?」
「おお、確かレレイ・カルゼストだったか」


 ……見つけたわよレレイ!
 その時の私がどんな顔をしていたのかは分からない。
 でもあの店主の少し引き攣った顔を見れば何となく想像が出来る。
 たぶん、何を犠牲にしてでもやり遂げる、そんな顔をしていた。


 それから私は更なる営業努力を積んだ。
 相手に合わせ性格を変え、表情を変え、自分を偽り続けた。
 この店の客は比較的温厚だが中にはそうでない奴もいる。
 私達娼婦を道具としてしか見ていない客。
そういった客に限って金払いがいい。
 売り上げのため、そういった客が私を指名するように客の描く理想の女性を偽った。
 
 
 思い出せば辛くて惨めだった。
 痛い思いも沢山したな。
 体はもう汚れが取れない所までけがれてしまったけど…心だけはあの時と変わらない。
 私は今でもレレイのことを考え、レレイを恨んでいる。
 コンシェルジュが私住んでいる部屋を訪ねた。


「ライラ。お前の売り上げはこの娼館で歴代最高記録を記録した。これは名誉あることだ。誇っていい」
「ありがとう。それで?話はそれだけ?」
「いや、実は君に身請けの話が来た。相手の名前は確か…オリン。侯爵様だ。経験がないらしく一番の技術を持つライラに白羽の矢が立った。嫌なら別の娼婦を宛がうが…どうする?」
「……大丈夫よ。身請けの話受けておいて」


 コンシェルジュが去り、1人きりとなった部屋でライラは高笑いをする。

(会えるのが待ち遠しいわ、オリン…そして………レレイ)
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