妹の婚約者の娼婦になった私

京月

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 そして現在に至る。
 私の隣で寝顔を見せているのは私達を裏切りこんな目に合わせたレレイの婚約者オリン。
 先ずはこいつを懐柔する。
 そしてレレイを…。


「うんっ~!!朝か。いつの間にか寝てしまったのか」
「フフフ。とても気持ちよさそうな寝顔でしたよ」
「何だか恥ずかしいな…女性に寝顔を見られるというのは」
「これからはいつでもあなたと夜を共にしますよ」
「そ、そうか。昨夜も言ったがこれからもよろしく頼む!」
「はい。旦那様」


 オリンの胸に飛び込む私。
 演じよう、オリンが最も望む理想女性を。
 オリンは部屋を出てその足で馬車に乗り自宅に戻った。
 一緒には行かない。娼婦と貴族が同じ馬車に乗ることは身分の違いから暗黙の了解で禁止されているのだ。


 私は自室に戻り荷造りのすんだ物を手伝いさんに運んでもらう。
 ここに生活して2年苦しいこともあったがやっとここまで来たのね。
 思い出に浸っていると誰かが扉をノックする。
 コンシェルジュかしら?


「入っていいわよ」
「邪魔するぜ」


 訪ねてきたのはコンシェルジュではなく店主だった。
 彼はいつも以上ににやけて面で私の体を舐めるように見つめてくる。


「何の用?誰かを抱きたいなら受付に行きなさい」
「俺はお前を抱きに来たんだよライラ」
「…悪いけど私はもう身請けされたからここの娼婦じゃないの」
「知っているさ。だからここにわざわざ来たんだろ」


 店主は私の両手を片手でつかむと壁に押さえつける様にして私を動けなくする。


「痛っ!何するのよ!!」
「どうやら俺はお前のことが好きになってしまったらしい。当たり前だよな、あれだけ肌を重ねれば情も沸くさ」


 私は湧いてないわよハゲ。
 足が地面に届かない、踏ん張ることが出来ないから店主を振りほどけない。


「それでだ、ライラ。お前俺の女になれ。お前も知ってるだろ?俺には財力もある。それにお前を女にしたのも俺だ。俺とお前は運命の赤い糸でつながっているんだよ」

 キモッ!
 店主がクソ野郎だとは知っていたけどここまでとは知らなかった。
 しかもこの目は本気の目だな、たぶん私が嫌と言えば私を殺す。
 誰かを呼んでもその間に殺されるかもしれない。
 仕方ない…。


「分かった。服を脱ぐから手を放して」
「物分かりがいいな。流石は俺の女になるライラ。おい1人だけ給仕を呼べ、今日は朝まで抱いてやるよ」


 店主の言う通り1人の給仕を呼びつける。
 やってきたのは薄墨色の髪をした少女、少女はタオルと一杯のコップをお盆にのせて持ってきた。


「どうぞ」
「気が利くな」


 お盆の上に載っていた水を飲みほした店主。
 その瞬間全身に痺れが回った店主は膝から床に倒れこむ。


「ナ……ニ……ヲ……」
「毒よ。痺れ毒。あんたが飲んで水に痺れ毒を入れておいたのよ、このイサがね」

 
 薄墨色の髪をした少女。彼女の名前はイサ、元奴隷の暗殺者だ。
 娼婦をやっているからと言って完全に安全というわけではない。
 それを危惧した私はあまりあるお金を使って奴隷を買うことにした。
 最初は護身用にガタイのいい強そうな男にしようかと考えていたけど奴隷市場でこの子を見つけた時にピンときた。この子しかいないって。


「イサはまだ子供だけど暗殺技術や毒の知識、製造は得意分野。油断したわね」


 私はイサの頭を撫でる。
 イサは普段から無表情だからこんなことしても意味ないのかもしれないがありがとうの意を伝えるのは人として当然だろう。
 さて、店主の処分だけど…どうしよう。
 殺すのは流石に不味いわよね。
 いろいろ考えている私の服の袖をイサがちょんちょんと引っ張る。


「ここに来る途中、これを貰いました」
「手紙…?誰から?」
「コンシェルジュからです」


 手紙の内容は店主を始末してもこちらで後始末をするという内容だった。
 あの人、こうなることが分かっていたな。
 幼馴染と言っていたし、どこかで兆候があったのだろう。
 私は床で無様に倒れる店主を、ゴミを見るかのような目で見下す。


「これで私はあなたを殺してもいい大義名分を得た。この意味が分かる?永遠にさようならってこと」
「マ……テ……ユ……ル」
「さない。くたばれクソ野郎」


 イサに店主の口の中に毒を入れさせる。
 遅効性猛毒だ。死ぬまでの間死ぬほどつらい激痛が体中を巡る。
 考えてみればレレイにたどり着けるかもしれない可能性を見出してくれたのは店主だ。
 いつか言っていたみたいに感謝するべきなのかも。
 ありがとう店主。
 地獄で会おう。 
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